年間の法定点検を棚卸しする|年度スケジュールの作り方
法定点検は「その都度、業者から案内が来たら対応する」形で回している建物が多数です。これでも点検自体は実施されますが、案内が来ない点検には永久に気づけません。
年に一度、建物にある設備から必要な点検を洗い出して年間スケジュールに落とすと、この穴が塞がります。この記事では棚卸しの4ステップと、3年周期の点検で予算が跳ねる年を先に見つける方法、点検月を寄せて立会いの手間を減らすコツをまとめます。
この記事の内容(7項目)
「案内が来たら対応」の限界
業者からの案内で回している場合、次の3つが構造的に抜けます。
- そもそも契約していない点検|案内する業者がいないので、永久に来ません。設備を後から増設した場合に起きがちです
- 3年周期の点検・報告|前回から3年空くため、担当交代をまたぐと誰も覚えていません
- 自社でやるべき作業|報告書の提出、是正の手配、記録の保管。業者は点検までしか案内しません
棚卸しの目的は、「案内が来ないもの」を見つけることです。案内が来る点検は放っておいても実施されます。
(年度初めが定番)
(2回目以降は1時間)
点検の周期
ステップ①|設備から点検を洗い出す
契約書からではなく建物にある設備から始めるのがポイントです。契約書から始めると、契約していない点検は見つかりません。
| 設備があれば | 必要になる点検 | 周期の目安 |
|---|---|---|
| 消火器・自火報・誘導灯など | 消防用設備等点検+消防署への報告 | 点検6ヶ月・1年/報告1年or3年 |
| 受水槽・高置水槽 | 貯水槽清掃、簡易専用水道の検査 | 各1年 |
| キュービクル(自家用電気工作物) | 保安規程に基づく月次・年次点検 | 月次・年次 |
| 浄化槽 | 保守点検、清掃、11条検査 | 3〜4ヶ月/1年/1年 |
| エレベーター | 昇降機定期検査+特定行政庁への報告 | 1年 |
| 換気・排煙・非常照明 | 建築設備定期検査+報告 | 1年 |
| 防火扉・防火シャッター | 防火設備定期検査+報告 | 1年 |
| (建物そのもの) | 特定建築物定期調査+報告 | おおむね3年 |
| 業務用空調(一定規模以上) | フロン簡易点検・定期点検 | 3ヶ月ごとほか |
実際に建物を歩いて確認するのが確実です。図面や書類に出てこない設備(増設したもの、前任者が把握していなかったもの)は現物からしか見つかりません。全体像は建物の法定点検 種類一覧にまとめています。
ステップ②|点検と報告を別の行にする
洗い出した点検を表に落とすとき、点検の行と報告の行を分けます。消防用設備が典型で、点検は年2回、報告は1年または3年ごとと周期が違うためです。
× まとめて1行
「消防設備点検(年2回・報告あり)」→ 報告年がいつか追えない
○ 3行に分ける
「機器点検(6ヶ月)」「総合点検(1年)」
「結果報告(1年 or 3年)」
→ それぞれに期限が出る
ここで3年周期の行が表に載ります。棚卸しの最大の成果はこれです。非特定防火対象物(事務所・共同住宅など)の消防報告と、特定建築物の定期調査が該当します。
ステップ③|実施月を決めて寄せる
周期さえ守れば実施月は自由です。バラバラのまま回すと、毎月どこかで立会いが発生します。寄せられるものは寄せるのが実務の定石です。
貯水槽清掃
建築設備 定期検査
寄せるときの注意
- 周期を超えないこと|6ヶ月周期を7ヶ月にすると違反です。寄せるときは前倒しで調整します
- テナントの繁忙期を避ける|断水・停電を伴う作業(貯水槽清掃、電気年次点検)は特に調整が必要です
- 停電作業は年1回にまとめる|キュービクルの年次点検と、他の電気工事があれば同日に
ステップ④|予算が跳ねる年を見つける
年間スケジュールができたら、3年周期の点検がどの年度に来るかを確認します。特定建築物の定期調査など、通常年にはない費用がその年度だけ発生します。
これを年度初めに把握しておくと、次の2つができます。
- 予算に織り込める|「今年度は12条調査の年なので、例年より◯万円多く必要です」と事前に説明できます
- オーナー・管理組合への説明が楽になる|突然の支出ではなく、計画された支出として扱えます
あわせて委託先と年間費用を並べておくと、契約更新月に見積り比較を仕掛けられます(委託先管理の記事)。
法定点検 年間スケジュール表(Excel・無料)
点検名称・根拠法・点検周期・報告周期・前回実施日を入れると、次回予定日と残日数が自動計算されます。主要な法定点検を記入例として最初から入れてあるので、自社にある設備の行だけ残せば棚卸しが終わります。
年間スケジュール表を見る年度途中の見直しと、翌年への引き継ぎ
棚卸しは年1回で十分ですが、次の場合は途中でも見直します。
- 設備を増設・更新した|新しい点検が発生します。工事の完了時が更新のタイミングです
- 用途が変わった|テナントが事務所から飲食店に変わると、防火対象物の区分が変わり報告周期が1年になることがあります
- 担当者が交代した|引き継ぎ時に一度見直すと、抜けを発見できます(引き継ぎの記事)
2番目は見落とされやすい項目です。テナント構成の変更が法令上の義務を変えることがあるため、入退去があった年は区分の確認をおすすめします。
日々の期限管理は年間表とは別に、期限管理表で月1回確認する運用が回しやすい形です。進め方は法定点検の期限管理にまとめています。物件数が増えて表での管理が苦しくなったら、点検板クラウドで同じ管理ができます(現在は期間限定で全機能無料)。
よくある質問
- Q. 棚卸しはいつやるのがよいですか?
- 年度初め(4月)が定番ですが、いつでも構いません。担当が交代した直後、建物を取得した直後は、時期を問わず実施してください。
- Q. 自社に必要な点検が分からない場合は?
- 管理会社または点検業者に「この建物に必要な法定点検の一覧を出してください」と依頼するのが最短です。その回答を年間スケジュール表に書き写す形で使ってください。
- Q. 点検を前倒しで実施しても問題ありませんか?
- 周期は「◯ヶ月以内ごと」と定められているため、前倒しは問題ありません。ただし前倒しすると次回期限も前倒しになるので、管理表の前回実施日を実際の日付に更新してください。
- Q. 複数物件をまとめて棚卸しできますか?
- できます。物件名の列を作り、物件×点検の組み合わせで1行にすると、全物件の年間スケジュールが1枚に収まります。20〜30行を超えると見づらくなるため、その規模になったら物件ごとにシートを分けるか、ツールへの移行を検討してください。
この記事で紹介した無料テンプレート
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本記事は一般的な情報の整理であり、法令への適合を保証するものではありません。個別の義務内容は所管行政庁または専門家にご確認ください。記事の内容は2026-08-02時点の情報です。