建物管理

空気環境測定とは|特定建築物の2ヶ月ごとの義務と、基準値の見方

公開 2026-08-14更新 2026-10-03 執筆 点検板 編集部
点検板 編集部法令の原文と省庁の資料で確認:2026年10月3日

「ビル管法」と呼ばれる建築物衛生法は、一定規模以上の建物に環境衛生の管理を義務付けています。その中核が空気環境測定です。

2ヶ月以内ごとに1回=年6回という高い頻度で、しかも記録は5年保存。点検の中でも周期が短く、保存期間が長い部類です。この記事で対象・項目・基準値を整理します。

空気環境測定記録表(Excel・無料)建築物衛生法に基づく2ヶ月以内ごとの空気環境測定結果を記録・保存する様式。
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この記事の内容(8項目)

特定建築物に該当するか

対象は特定建築物です。次の2つを両方満たす建物が該当します。

  • 特定用途に使われる部分の延べ面積が3,000㎡以上(学校教育法1条の学校と幼保連携型認定こども園だけに使う建物は8,000㎡以上)
  • 特定用途=興行場、百貨店、集会場、図書館、博物館、美術館、遊技場、店舗、事務所、それ以外の学校(研修所を含む)、旅館(建築物衛生法施行令1条)
3,000㎡特定建築物の
面積要件
2ヶ月以内測定周期
(=年6回)
5年記録の保存
7項目測定項目

該当すると、空気環境測定のほかに給水・排水の管理、清掃、ねずみ等の防除も義務になり、建築物環境衛生管理技術者(ビル管理技術者)の選任が必要です(法6条)。使用を始めた日から1か月以内に、所在地の都道府県知事(保健所を設置する市・特別区は市長・区長)への届出も要ると定められています(法5条)。

工場・倉庫・共同住宅は特定用途に含まれないため、面積が大きくても該当しません。複合ビルでは特定用途部分の面積で判断するため、テナント構成が変わると該当・非該当が変わることがあります。

7つの測定項目と基準値

項目基準超えたときに疑うこと
浮遊粉じん量0.15mg/㎥以下フィルタの汚れ、外気の流入
一酸化炭素6ppm以下燃焼機器、駐車場からの流入
二酸化炭素1,000ppm以下換気量の不足/在室人数の増加
温度18℃以上28℃以下空調の能力・設定
相対湿度40%以上70%以下加湿器の不具合(冬季に下限割れが多い)
気流0.5m/s以下吹出口の風量・向き
ホルムアルデヒド0.1mg/㎥以下新築・改築後の建材(測定は特定の時期に1回)

浮遊粉じん・一酸化炭素・二酸化炭素は、1日の使用時間中の平均値で基準と比べます(施行規則3条の2第2号)。空気調和設備ではなく機械換気設備だけの建物では、2ヶ月ごとの測定は浮遊粉じん・一酸化炭素・二酸化炭素・気流の4項目で、温度と相対湿度は入りません(同条3号)。

実務で最も超えやすいのが二酸化炭素と相対湿度(冬季の下限割れ)です。

二酸化炭素が超える理由

CO2濃度は換気量の指標です。1,000ppmを超えるのは、在室人数に対して外気の取り入れが足りていないことを意味します。省エネのために外気導入を絞っていると起きやすく、コロナ禍以降は換気の指標としても注目されました。

ホルムアルデヒドは別扱い

ホルムアルデヒドだけは毎回の測定ではありません。建築・大規模の修繕・大規模の模様替をした階の居室で、使用開始後に最初に来る6月1日〜9月30日の間に1回測定すると定められています(施行規則3条の2第4号)。内装工事をしたら忘れずに実施してください。

測定の実際

測定の進め方
① 測定箇所を決める各階の居室の中央部
床上75〜150cm
→
② 通常の使用時間中に測定人がいる状態で測る
(空室では意味がない)
→
③ 記録測定日時・箇所・値
基準内外の判定
→
④ 不適合なら措置換気量の増加など
措置内容も記録
②が重要。人がいない時間に測っても実態が分からず、法の趣旨にも反する

測定は、都道府県知事の登録を受けた業者(建築物空気環境測定業・建築物環境衛生総合管理業。法12条の2)に頼む形が一般的です。登録は任意の制度ですが、登録業者は講習を修了した測定者と、決められた測定器をそろえていることが条件になっています。建築物環境衛生管理技術者は、維持管理が基準どおりに行われるよう監督する立場です(法6条)。

空気環境測定 記録表(Excel・無料)

7項目の基準値を列見出しに入れてあり、測定値を入れるだけで基準内外が判断できます。二酸化炭素が1,000ppmを超えると赤く表示される設定つき。記録5年保存に対応。

空気環境測定 記録表を見る

基準を超えたときの対応

基準不適合が判明したら、原因を調べて措置を講じ、その内容も記録します。「測って終わり」ではありません。

項目よくある措置
二酸化炭素の超過外気導入量を増やす、換気設備の運転時間を延長、在室人数の見直し
浮遊粉じんの超過空調フィルタの清掃・交換、清掃頻度の見直し
湿度の下限割れ加湿器の能力確認・給水経路の点検(冬季に多い)
温度の逸脱空調の能力確認、設定温度の見直し、日射対策

都道府県知事(保健所)は、特定建築物に立ち入って帳簿書類や維持管理の状況を検査できると定められています(法11条)。帳簿には測定の結果と設備の点検・整備の状況を書き、5年間保存します(施行規則20条)。超過した事実より、超過に対して何もしていないことが問題になりやすいところです。

空調設備の点検とセットで考える

測定値の悪化は、空調・換気設備の劣化として現れることが多いものです。フィルタの目詰まり、ドレンの詰まり、ファンの能力低下。これらは空調設備点検表で日常的に確認できます。測定は結果、点検は原因という関係です。

特定建築物では、空気環境測定のほかに建築基準法12条の定期報告(12条報告の記事)、消防設備点検、貯水槽の管理(貯水槽の記事)が並走します。周期が2ヶ月・1年・3年とバラバラなので、年間表での管理が不可欠です。

空気環境測定記録表(Excel・無料)建築物衛生法に基づく2ヶ月以内ごとの空気環境測定結果を記録・保存する様式。
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空気環境測定にかかわる最近の動き(2026年10月時点)

空気環境測定の基準値と頻度は、2022年4月1日の改正(一酸化炭素10ppm以下→6ppm以下、温度の下限17℃→18℃)のあと変わっていません。2023年以降に動いたのは、同じ特定建築物の給水の検査と、届出などの様式です。確かめられた出来事を日付順に並べます。

日付出来事特定建築物の管理への影響根拠
2025年6月30日環境省が水質基準に関する省令の改正を公布。PFOSとPFOAを合わせて0.00005mg/L(50ng/L)以下を水質基準にした水道の水質基準に加わる(施行は2026年4月1日)環境省 報道発表
2025年12月22日建築物衛生法施行規則の改正(令和7年厚生労働省令第115号)が施行様式が改められた。旧様式の用紙も当分の間は取り繕って使えるe-Gov法令検索 施行規則 附則
2025年12月23日建築物衛生法施行規則の改正(令和7年厚生労働省令第124号)を公布別表第2にPFOS及びPFOAの項を加え、以下の項を1つずつ繰り下げた千葉市 保健所の案内、e-Gov法令検索
2026年4月1日PFOS・PFOAの水質基準と、上の施行規則の改正が施行特定建築物の給水開始前の水質検査にPFOS・PFOAの測定が加わる。冷却塔・加湿装置に供給する水にも基準がかかる環境省 報道発表、千葉市 保健所の案内
2026年10月1日建築物衛生法施行規則の改正(令和8年厚生労働省令第107号)が施行様式が改められた。旧様式の用紙は当分の間は取り繕って使えるe-Gov法令検索 施行規則 附則

ポイントはここです。空気環境測定の記録表は、2022年の基準値に直してあればそのまま使えます。見直しが要るのは、加湿装置や冷却塔の水の管理表と、保健所に出す届出の様式の側です。

出典:環境省 「水質基準に関する省令の一部を改正する省令」等の公布について/千葉市 特定建築物(ビル衛生管理)に関する情報/e-Gov法令検索 建築物における衛生的環境の確保に関する法律施行規則/e-Gov法令検索 建築物における衛生的環境の確保に関する法律施行令

確認日は2026年10月3日です。自社の建物の測定や届出の扱いは、所在地を管轄する保健所に確認してください。

空気環境測定に出てくる用語

空気環境測定の条文と、業者の報告書に出てくる言葉を、根拠と一緒に並べます。

用語意味出典
特定建築物特定用途の延べ面積が3,000㎡以上(学校教育法1条の学校等は8,000㎡以上)の建築物建築物衛生法2条、施行令1条
建築物環境衛生管理基準空気環境の調整、給水・排水の管理、清掃、ねずみ等の防除について政令で定めた基準法4条、施行令2条
建築物環境衛生管理技術者特定建築物の維持管理が適正に行われるよう監督する者。免状を持つ者から選任する法6条
空気調和設備空気を浄化し、温度・湿度・流量を調節して供給できる設備施行令2条1号イ
機械換気設備空気を浄化し、流量を調節して供給できる設備(温度・湿度は調節しない)施行令2条1号ロ
測定期間ホルムアルデヒドを測る6月1日から9月30日までの期間施行規則3条の2第4号
空気環境測定実施者厚生労働大臣の登録を受けた者が行う講習を修了し、6年を経過しない者など。登録業者の測定者に求められる施行規則26条2号
建築物空気環境測定業建築物の空気環境の測定を行う事業。営業所ごとに都道府県知事の登録を受けることができる(有効期間6年)法12条の2
帳簿書類測定・検査の結果や設備の点検・整備の状況を書いた帳簿。5年間保存施行規則20条

空気環境測定と一緒に押さえておきたいこと

空気環境測定について調べると、資格・やり方・特定建築物でない建物の話が混ざってきます。分けておきたいところを4つ挙げます。

空気環境測定の資格は、登録業者の条件として出てくる

測定の方法を定めた施行規則3条の2には、測定する人の資格は書かれていません。資格が出てくるのは登録業者の基準で、建築物空気環境測定業の登録には、講習を修了して6年以内の「空気環境測定実施者」が測定することが条件になっています(施行規則26条2号)。自社の社員が測る場合も、同じ講習を受けておくと、保健所に方法を説明しやすくなります。

空気環境測定のやり方は「各階・中央・通常の使用時間中」

測定は、各階ごとに居室の中央部の床上75cm以上150cm以下で、建物を通常使っている時間に行うと定められています(施行規則3条の2第1号)。浮遊粉じん・一酸化炭素・二酸化炭素は1日の使用時間中の平均値で比べるため、1日のうちに複数回測ることになります。回数や測定点の数の目安は、保健所の手引きで確かめてください。

浮遊粉じんの測定器だけは較正の決まりがある

浮遊粉じんは、重量法で測る機器か、厚生労働大臣の登録を受けた者がその機器を標準として較正した機器で測ると定められています。一酸化炭素・二酸化炭素・温度・湿度・気流は、決められた測定器と同程度以上の性能のものでよいとされています(施行規則3条の2第1号の表)。自社で測るなら、粉じん計の較正の期限を記録表の上に書いておくと管理しやすくなります。

特定建築物でない事務所にも、空気の決まりはある

特定建築物に当たらない建物でも、多数の人が使う建物は管理基準に従って維持管理するよう努めるとされています(法4条3項)。また、事務所で人を雇っている事業者には、労働安全衛生法の事務所衛生基準規則がかかります。二酸化炭素は5,000ppm以下(3条2項)、空気調和設備や機械換気設備を設けている場合は1,000ppm以下(5条)です。中央管理方式の空気調和設備がある室は、2ヶ月以内ごとに測定して記録を3年保存すると定められています(7条)。

点検板 編集部がまとめました様式を無料で配り、使い方と法令の決まりを記事にまとめています。法令の数字は e-Gov の原文で確かめてから載せています。

よくある質問

Q. 測定は自社でできますか?
測定する人の資格は施行規則3条の2に書かれていないため、自社で測ること自体はできます。ただし浮遊粉じん計は登録を受けた者が較正した機器などに限られ、ほかの項目も決められた性能の測定器が要ります。実務では登録業者への委託が一般的です。
Q. 2ヶ月以内ごととは、具体的にどう数えますか?
前回の測定日から2ヶ月を超えないうちに次の測定を行います。「奇数月に実施」のように固定すると管理しやすくなります。
Q. 記録の保存期間5年は長くないですか?
建築物衛生法で定められた期間です。他の点検記録(3年が多い)より長いため、廃棄年を記録しておかないと誤って捨ててしまいます。
Q. 特定建築物に該当しない建物でも測定すべきですか?
建築物衛生法では努力義務です(法4条3項)。ただし事務所では、事務所衛生基準規則で二酸化炭素5,000ppm以下(空調・機械換気がある場合は1,000ppm以下)とされ、中央管理方式の空調がある室は2ヶ月以内ごとの測定と記録3年保存が定められています。
空気環境測定記録表(Excel・無料)建築物衛生法に基づく2ヶ月以内ごとの空気環境測定結果を記録・保存する様式。
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本記事は一般的な情報の整理であり、法令への適合を保証するものではありません。個別の義務内容は所管行政庁または専門家にご確認ください。記事の内容は2026-10-03時点の情報です。