点検記録は何年保存すればよいのか|対象別の保存期間まとめ
「この点検表、いつまで取っておけばいいんですか」。現場でよく出る質問のひとつです。答えは対象によって1年から5年までバラバラで、しかも根拠となる法律が別々にあります。
この記事では、代表的な点検記録の保存期間を根拠法つきの早見表にまとめ、保存義務がない記録をどう扱うか、そして期間が違う記録を実務でどう保管するかを整理します。
この記事の内容(9項目)
保存期間の早見表
まず全体像です。自社に関係する行を確認してください。
(安衛法系の主流)
(自家用乗用車)
(建築物衛生法)
| 記録 | 保存期間 | 根拠法 |
|---|---|---|
| フォークリフトの定期自主検査(月例・年次) | 3年 | 労働安全衛生規則151条の23 |
| 車両系建設機械の定期自主検査 | 3年 | 労働安全衛生規則169条 |
| 高所作業車の定期自主検査 | 3年 | 労働安全衛生規則194条の25 |
| クレーンの定期自主検査(月例・年次) | 3年 | クレーン等安全規則38条 |
| 局所排気装置の定期自主検査 | 3年 | 有機則21条・特化則32条ほか |
| 動力プレス・シャーの定期自主検査 | 3年 | 労働安全衛生規則135条の2 |
| リスクアセスメントの記録(化学物質) | 次のリスクアセスメントまで(3年以内に行ったときは3年) | 労働安全衛生規則34条の2の8 |
| 特別教育の記録 | 3年 | 労働安全衛生規則38条 |
| 安全委員会・衛生委員会の議事の記録 | 3年 | 労働安全衛生規則23条4項 |
| 健康診断個人票 | 5年 | 労働安全衛生規則51条 |
| 足場の点検(悪天候・地震・組立て等の後) | 足場を使用する作業を行う仕事が終了するまで | 労働安全衛生規則567条3項(注文者は655条2項) |
| 作業構台の点検(悪天候・組立て等の後) | 作業構台を使用する作業を行う仕事が終了するまで | 労働安全衛生規則575条の8第3項 |
| 点検整備記録簿(1年ごとの定期点検の自動車。自家用乗用車など) | 2年 | 自動車点検基準4条2項 |
| 点検整備記録簿(3か月・6か月ごとの定期点検の自動車。事業用自動車、車両総重量8トン以上の自家用自動車、レンタカーなど) | 1年 | 自動車点検基準4条2項、道路運送車両法48条 |
| アルコールチェックの記録 | 1年 | 道路交通法施行規則9条の10第7号 |
| 空気環境測定の記録(特定建築物) | 5年 | 建築物衛生法施行規則20条 |
| 給水・排水の管理、清掃などの帳簿(特定建築物。貯水槽の清掃を含む) | 5年 | 建築物衛生法施行規則20条 |
| 介護サービスの提供記録 | 国の基準は完結の日から2年(条例で長くしている自治体がある) | 指定居宅サービス等基準39条2項ほか、各自治体の条例 |
迷ったら3年が実務の目安です。労働安全衛生法系の定期自主検査は横並びで3年にそろっており、点検記録の大半がここに含まれます。ただし足場のように年数ではなく「仕事が終わるまで」と決まっているものもあるので、該当する行だけは条文で確かめてください。
「保存義務がない記録」の扱い
すべての点検記録に保存義務があるわけではありません。義務がないものの代表が作業開始前点検(始業前点検)です。
保存義務あり
定期自主検査(月例・年次)、教育記録、測定記録など。法令に「◯年間保存しなければならない」と明記されている。保存義務なし
フォークリフト等の作業開始前点検、社内の日常点検。実施は義務だが記録の保存は求められていない。ただし「義務がない=捨ててよい」ではありません。記録を残す実益は3つあります。
- 異常の発見日が特定できる|いつから兆候が出ていたかが分かると、原因究明と対策が具体的になります
- 実施の証明になる|労災調査や監督署の臨検で「点検していた」と主張するには、記録以外の手段がありません
- 取引先の監査に対応できる|元請けや発注者から点検体制の確認を求められる場面が増えています
義務のない記録は1年程度を目安に保管し、月末にまとめてファイリングかPDF化する運用が現実的です。
起算日はいつか|「完結の日」に注意
保存期間の数え方でつまずくのが起算日です。多くはその記録を作成した日から数えますが、分野によって表現が違います。
検査を実施した日が起点
サービス提供が終わった日が起点
その仕事が終わるまで保存
特に注意したいのが介護・障害福祉サービスです。国の基準は「完結の日から2年」(たとえば指定居宅サービス等基準39条2項)ですが、条例で5年などに延ばしている自治体があります。所在地の条例を必ず確認してください(詳しくは自主点検表の記事)。
自動車の点検整備記録簿は「その記載の日から」と書かれています(自動車点検基準4条2項)。足場は「足場を使用する作業を行う仕事が終了するまでの間」(労働安全衛生規則567条3項)なので、工事が続く限り捨てられません。
保存期間が違う記録をどう保管するか
1年・2年・3年・5年が混在するため、まとめて管理しようとすると破綻します。実務で機能している方法は次の2つです。
①年度でまとめ、廃棄年を書いておく
ファイルの背表紙に「2026年度/廃棄:2029年4月」と書きます。中身の種類ごとに期間を確認する必要がなくなり、背表紙を見るだけで捨ててよいかが分かります。複数の期間が混ざるファイルは、いちばん長い期間に合わせます。
②様式そのものに保存年限を書いておく
点検表の欄外に「記録の保存:3年(労働安全衛生規則151条の23)」と印刷しておく方法です。担当者が代わっても迷いません。当サイトのExcelテンプレートは、この考え方で「この様式について」シートに根拠法と保存期間を明記しています。
電子保存は認められるか
労働安全衛生法系の記録は、省令で電子保存が認められています。「厚生労働省の所管する法令の規定に基づく民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する省令」(平成17年厚生労働省令第44号)の別表に、定期自主検査の記録(151条の23・169条など)や特別教育の記録、足場の点検記録(567条3項)が挙がっており、ファイルで作る方法とスキャナで読み取る方法のどちらでもよいとされています。実務では「原本は年度ファイル、日常の参照はPDF」の二本立てにしておくと、監督署から求められたときにすぐ出せます。
保存期間より大切なこと|探せる状態にする
監督署の臨検や事故調査で問題になるのは、保存期間そのものより「すぐ出せるか」です。3年分あっても、どの箱にあるか分からなければ「無い」と同じ扱いになります。
- 保管場所を1箇所に決める|「点検記録はこの棚」と決め、他の場所に置かない
- 年度と種類でインデックスをつける|探す手がかりは「いつ」と「何の」の2つで足ります
- 実施日を一覧化しておく|いつ実施したかが分かれば、該当のファイルにすぐたどり着けます
3つ目が効きます。点検の実施日を一覧で持っておくと、記録を探す前に「その点検をいつやったか」が即答できます。当サイトの点検期限管理表は次回期限の管理が主目的ですが、前回実施日の記録が残るため、記録を探すときの索引としても使えます。
期限管理そのものの進め方は法定点検の期限管理の記事にまとめています。
点検記録の保存期間にかかわる最近の動き(2026年10月時点)
点検記録の保存期間のうち、定期自主検査の「3年」はここ数年変わっていません。変わったのは、記録に書く項目と、記録が要る場面です。日付順に並べます。
| 日付 | できごと | 保存期間への影響 |
|---|---|---|
| 2023年4月1日・2024年4月1日 | 化学物質の自律的管理に関する改正省令(令和4年厚生労働省令第91号)が2段階で施行 | リスクアセスメントの結果などの記録(34条の2の8)は、次のリスクアセスメントまで(3年以内に行ったときは3年)保存 |
| 2023年10月1日 | 足場の点検で点検者の指名が必要になり、記録に点検者の氏名が加わった | 保存は「足場を使用する作業を行う仕事が終了するまで」のまま |
| 2023年12月1日 | 安全運転管理者によるアルコール検知器を使った酒気帯びの確認が始まった | 確認の内容の記録を1年間保存(道路交通法施行規則9条の10第7号) |
| 2026年1月1日 | フォークリフト・車両系建設機械・高所作業車などの特定自主検査基準が適用(旧「定期自主検査指針」は廃止) | 検査の中身の基準が変わった。記録の保存は3年のまま |
| 2026年4月1日 | 改正労働安全衛生法(令和7年法律第33号)の主な部分が施行 | 2026年10月3日時点で、151条の23・169条・194条の25の「3年間保存」は変わっていない |
ポイントは、年数が変わっていなくても、書く項目は増えていることです。足場の記録に点検者の氏名の欄があるか、アルコールチェックの記録に検知器を使った結果が残っているかを、様式で確かめておくとよくなります。
出典:e-Gov法令検索(労働安全衛生規則)、京都労働局「令和6年4月1日から新たな化学物質規制が全面施行されます」、警察庁 安全運転管理者による運転前後のアルコールチェック、厚生労働省 特定自主検査基準の制定等について(基発1226第2号)、厚生労働省「労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律案の概要」。確認日は2026年10月3日です。自社の記録の扱いは、所轄の労働基準監督署(自動車の記録は運輸支局、アルコールチェックは所轄の警察署)で確認してください。
点検記録の保存期間に出てくる用語
点検記録の保存期間を条文で読むときに出てくる言葉です。似た言葉でも、起算日や対象が違います。
| 用語 | 意味 | 出典 |
|---|---|---|
| 保存 | 法令上の定義はない。条文は「記録し、これを三年間保存しなければならない」の形で書かれている | 労働安全衛生規則151条の23ほか |
| 定期自主検査 | 事業者が一定の機械について定期に行う検査。結果の記録を3年間保存する | 労働安全衛生法45条1項、規則151条の21〜23ほか |
| 特定自主検査 | 定期自主検査のうち、資格者か登録検査業者が行わなければならないもの(フォークリフト・車両系建設機械・動力プレスなどの年次検査) | 労働安全衛生法45条2項、規則135条の3ほか |
| 作業開始前点検 | その日の作業を始める前に行う点検。フォークリフトは制動装置など4項目。記録の保存の定めはない | 労働安全衛生規則151条の25 |
| 仕事が終了するまで | 足場や作業構台の点検記録の保存期間。年数ではなく、その足場を使う工事が終わるまで | 労働安全衛生規則567条3項・575条の8第3項 |
| 完結の日 | 法令上の定義はない。介護サービスなどの記録の起算日で、解釈は自治体の手引きで確かめる | 指定居宅サービス等基準39条2項 |
| 電磁的記録による保存 | 書面の代わりにファイルで保存すること。ファイルで作る方法とスキャナで読み取る方法がある | 平成17年厚生労働省令第44号4条 |
点検記録の保存期間と一緒に押さえておきたいこと
点検記録の保存期間は、労働安全衛生法の外にも定めがあります。入力候補にもよく出てくる3つの分野をまとめます。
危険物の点検記録の保存期間は原則3年、例外が長い
危険物施設の定期点検の記録は、原則3年間保存すると定められています(危険物の規制に関する規則62条の8第5号)。ただし例外があり、移動貯蔵タンクの漏れの点検は10年間、屋外貯蔵タンクの内部点検は26年間(条件により30年間)です。記録には点検の方法と結果、点検年月日、点検を行った危険物取扱者などの氏名を書きます(62条の7)。確認先は所轄の消防本部です。
消防用設備の点検記録は「維持台帳」に残す
消防用設備等の点検の結果は、維持台帳に記録すると定められています(消防法施行規則31条の6第3項)。この条文には保存の年数が書かれていません。維持台帳は届出書類の写しや工事・整備の経過一覧表をまとめて綴じたものなので、年度で捨てず、台帳として持ち続ける扱いにしておくと、報告のときに困りません。
フロンの点検記録の保存期間は「廃棄してから3年」
業務用エアコン・冷凍冷蔵機器の点検記録簿は、機器の廃棄等に係るフロン類の引渡しを行った日から3年間保存するとされています。機器を売るときは記録も一緒に引き渡します。廃棄時に受け取る引取証明書も3年間保存です(環境省「第一種特定製品の管理者等に関する運用の手引き」)。詳しくは空調設備の点検とフロン簡易点検にまとめています。
よくある質問
- Q. 保存期間を過ぎた記録は捨ててよいですか?
- 法令上の保存義務は終わります。ただし、人の生命・身体を害する不法行為の損害賠償請求権は、損害と加害者を知った時から5年で時効になる(民法724条の2)など、法定の保存期間より長く争いになりうる場面があります。設備の経年変化を追う目的もあるため、重要な設備の記録は長めに保管する会社もあります。廃棄する前に、その記録が事故対応で必要にならないかを一度確認してください。
- Q. 電子データだけの保存でも大丈夫ですか?
- 労働安全衛生規則の定期自主検査の記録などは、平成17年厚生労働省令第44号で電子保存が認められています。改ざんしにくい形(PDF化など)にして、担当者以外もアクセスできる場所に保管してください。
- Q. 足場の点検記録は何年保存しますか?
- 年数ではなく「足場を使用する作業を行う仕事が終了するまでの間」保存すると定められています(労働安全衛生規則567条3項)。記録する事項は点検の結果と点検者の氏名、補修などをした場合はその内容です。
- Q. リスクアセスメントの記録は3年で捨ててよいですか?
- 次にリスクアセスメントを行うまで保存します。前回から3年以内に次のリスクアセスメントを行ったときは、3年間保存します(労働安全衛生規則34条の2の8)。つまり、次を行うまでは3年を過ぎても捨てられません。
- Q. 記録を紛失してしまいました
- 再作成できるものは作成し、できないものは「いつ・何を紛失したか」を記録に残してください。紛失そのものより、隠したり日付を遡って作成したりするほうが重大な問題になります。
- Q. 保存期間は法令のどこに書いてありますか?
- 定期自主検査であれば労働安全衛生規則の各条文(フォークリフトは151条の23、車両系建設機械は169条など)に「3年間保存しなければならない」と明記されています。e-Gov法令検索で条文を確認できます。
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