建機の点検記録3年保存|何を残し、何は残さなくてよいか
「点検記録は3年保存」と覚えている方は多いはずです。ただ実際には、3年ではないものと、そもそも保存義務が無いものが混ざっています。全部まとめて3年で運用すると、必要なものが抜けたり、不要なものを抱え込んだりします。
この記事では、建設現場で発生する点検・検査の記録を条文ごとに整理します。判断の軸はひとつで、その条文が「自主検査」と呼んでいるか、「点検」と呼んでいるかです。
この記事の内容(5項目)
3年保存になるもの・ならないもの
対象ごとに条文と保存期間を並べます。足場だけ考え方が違う点に注目してください。
| 対象 | 何の記録 | 保存 | 条文 |
|---|---|---|---|
| 車両系建設機械 | 年次(167条)・月例(168条) | 3年 | 安衛則169条 |
| フォークリフト | 年次(151条の21)・月例(151条の22) | 3年 | 安衛則151条の23 |
| 高所作業車 | 年次(194条の23)・月例(194条の24) | 3年 | 安衛則194条の25 |
| 不整地運搬車 | 2年ごと(151条の53)・月例(151条の54) | 3年 | 安衛則151条の55 |
| 絶縁用保護具等 | 6か月ごとの絶縁性能の自主検査 | 3年 | 安衛則351条4項 |
| 特別教育 | 実施の記録 | 3年 | 安衛則38条 |
| 足場 | 悪天候後・組立変更後等の点検 | 仕事が終了するまでの間 | 安衛則655条2項ほか |
| 作業開始前点検 | その日の点検(170条ほか) | 保存義務なし | — |
「自主検査」
記録して保存する条文が付いている。3年「点検」
作業開始前の点検には記録条文が無い。足場の点検は工事に紐づく保存
なぜ作業開始前点検に保存義務が無いのか
記録を定めた安衛則169条は「前二条の自主検査を行つたときは、次の事項を記録し、これを三年間保存しなければならない」と書いています。前二条=167条(年次)と168条(月例)です。170条の作業開始前は「点検」であって「自主検査」ではないため、条文の対象に入っていません。
ただし、実施したことを示す手段が何も無いのは別のリスクです。法令上の義務ではないことを理解したうえで、社内管理として残すかを決めてください。
記録すべき6項目
保存が必要な記録には、条文が定めた項目があります。どの機械でも構成は同じです。
| 記録事項 | 書き方のポイント | 抜けやすさ |
|---|---|---|
| 検査年月日 | 実施日。次回期限の起算になる | 低い |
| 検査方法 | 目視/作動確認/測定 など | 高い |
| 検査箇所 | 条文の号立てをそのまま行にすると漏れない | 低い |
| 検査の結果 | 良/否/対象外。対象外は空欄にしない | 中 |
| 検査を実施した者の氏名 | 検査業者に実施させた場合は「検査業者の名称」 | 中 |
| 補修等の措置を講じたときは、その内容 | 結果が「否」なのに空欄が最多の不備 | 最も高い |
「対象外」を空欄にしない
月例の第四号(特定解体用機械のみ)のように、機械によって対象外になる項目があります。空欄にすると実施漏れなのか対象外なのかが区別できません。「対象外」と記入してください。
結果が「否」のときの措置欄
6番目の項目は「補修等の措置を講じたときは、その内容」です。異常があったのに措置欄が空という記録は、実務で最もよく見かける不備です。その場で直せなかったなら「使用停止・○月○日修理予定」でも書いておくほうが、何も書かないより説明できます。
保存の実務
1. 機械単位で残す
現場単位でファイルを作ると、現場が終わった時点で記録が倉庫に入り、3年保存の対象がどこにあるか分からなくなります。管理番号ごとに1本にしてください。現場をまたいでも記録が追えます。
2. 電子で残してよいか
条文は保存の媒体を指定していません。電子的に保存すること自体は妨げられていませんが、必要なときに直ちに提示できる状態であることが前提です。スキャンして共有フォルダに入れるなら、ファイル名に管理番号と年月日を入れて検索できるようにしてください。
3. 3年の起算
各検査を行った日から3年です。機械を手放しても、その期間は保存が続きます。売却・返却した機械の記録を処分してしまう事例があるので注意してください。
4. 保存期間の違うものを混ぜない
足場の点検記録は「仕事が終了するまでの間」です。同じ棚に3年保存のものと混ぜると、どちらの基準で捨ててよいか分からなくなります。保存の基準を記録の様式に書いておくと迷いません。
記録が無いことに気づいたとき
棚卸しをすると、記録が見つからない期間が出てくることがあります。取るべき順番があります。
やっていない検査の記録を後から作ることは避けてください。記録全体の信頼性を壊します。実施していない期間はそのように扱い、これからの計画を示すほうが説明が通ります。罰則と是正勧告の関係は特定自主検査を受けていないとどうなるかで扱っています。
関連:建機の点検期限を1枚で管理する、点検記録の保存期間。条文はe-Gov法令検索(労働安全衛生規則)で確認できます。
よくある質問
- Q. 建設機械の点検記録は何年保存しますか
- 定期自主検査(年次・月例)の記録は3年間です。車両系建設機械は安衛則169条、フォークリフトは151条の23、高所作業車は194条の25、不整地運搬車は151条の55がそれぞれ定めています。
- Q. 作業開始前点検の記録も3年保存ですか
- 法令上の保存義務はありません。記録を定めた条文は「前二条の自主検査を行つたときは」と書いており、年次と月例だけを指しています。作業開始前は「点検」であって「自主検査」ではないためです。社内管理として残すかは事業者の判断です。
- Q. 足場の点検記録も3年ですか
- 違います。足場の点検記録は「足場を使用する作業を行う仕事が終了するまでの間」の保存です(安衛則655条2項ほか)。年数ではなく工事に紐づくため、3年保存の記録と同じ棚に入れると管理が合わなくなります。
- Q. 記録に書くべき項目は何ですか
- 検査年月日、検査方法、検査箇所、検査の結果、検査を実施した者の氏名、補修等の措置を講じたときはその内容の6つです。どの機械でも構成は同じです。
- Q. 検査業者に依頼した場合、実施者欄には何を書きますか
- 「検査業者の名称」です。条文で読み替えが定められています(車両系建設機械は安衛則169条の2第7項)。社内の事業内検査者が実施した場合は、その検査者個人の氏名を書きます。
- Q. 対象外の項目は空欄でよいですか
- 「対象外」と記入してください。空欄にすると実施漏れなのか対象外なのかが区別できません。月例の第四号のように、機械によって対象外になる項目があります。
- Q. 電子データで保存してもよいですか
- 条文は保存の媒体を指定していません。電子的に保存すること自体は妨げられていませんが、必要なときに直ちに提示できる状態であることが前提です。ファイル名に管理番号と年月日を入れて検索できるようにしておいてください。
- Q. 機械を売却したら記録も処分してよいですか
- いけません。3年の保存期間は各検査を行った日から起算され、機械を手放してもその期間は続きます。売却・返却した機械の記録を処分してしまう事例があるので注意してください。
- Q. 現場ごとにまとめて保存してもよいですか
- 機械の管理番号単位でまとめることをおすすめします。現場単位にすると、現場が終わった時点で記録が倉庫に入り、3年保存の対象がどこにあるか分からなくなります。
- Q. 過去の記録が見つかりません。作り直してよいですか
- 避けてください。実施していない検査の記録を後から作ることは、記録全体の信頼性を壊します。まず現在の状態を確認し、どの機械の何年分が無いかを把握したうえで、これからの実施計画を示すほうが説明が通ります。
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本記事は一般的な情報の整理であり、法令への適合を保証するものではありません。個別の義務内容は所管行政庁または専門家にご確認ください。記事の内容は2026-09-08時点の情報です。