くさび緊結式足場の点検|くさびの打込みと、注文者の点検
くさび緊結式足場(ビケ足場)の点検は、基本のところは足場一般と同じです。作業開始前、組立て・変更の後、悪天候の後。足場の点検にまとめた3つのタイミングがそのまま当てはまります。
ただ、くさび緊結式には固有の見どころがあります。くさびが所定の位置まで打ち込まれているか、抜け止めが入っているか、緊結方式の違う部材を混ぜていないか。この記事では、そこと、注文者(元請)にかかる点検を整理します。
この記事の内容(7項目)
くさび緊結式足場の点検は、区分で見る項目が違う
| 区分 | 点検事項 | 記録 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| その日の作業開始前 | 足場用墜落防止設備の取り外し・脱落の有無だけ | 保存義務なし | 567条1項 |
| 組立て・一部解体・変更の後 | 9項目 | 結果と点検者の氏名を記録し、仕事が終わるまで保存 | 567条2項・3項 |
| 悪天候・中震以上の地震の後 | 同上(9項目) | 同上 | 567条2項・3項 |
ここを取り違えている現場が多くあります。毎日9項目を見る紙ではありません。作業開始前に条文が求めているのは、その日に作業する箇所の墜落防止設備が外れていないか・落ちていないかの1点だけです。
逆に、組立てや変更の後と悪天候の後は9項目を見たうえで、点検者の氏名まで記録に残す必要があります。2023年10月・2024年4月の改正で、点検者をあらかじめ指名することと、氏名を記録することが義務になりました。
くさび緊結式に固有の見どころ
くさび緊結式足場は、支柱のポケット(受け金具)にくさびを打ち込んで固定します。この打込みが甘いと、見た目では組み上がっているのに保持力が出ません。単管足場のクランプのように、締付けの手応えで分かるものではない点が違います。
手すり先行工法を採っているなら、手順まで見る
手すり先行工法は、上の層に上がる前に手すりを先に設置する組み方です。部材があるかどうかではなく、手順どおりに使われているかを見ます。先行用手すりが現場に置いてあるのに、組立ての途中で使われていない、という形が起こります。
くさび緊結式足場を数値で判断するところ|作業床・手すり・幅木
条文の9項目は「損傷」「緩み」といった言い方なので、数値の基準は別の条文から取ります。点検表の判定基準の欄には、この数字を書いておくと現場でものさしを当てて判断できます。
| 見るもの | 基準 | 根拠 |
|---|---|---|
| 作業床の幅 | 40cm以上 | 563条1項2号イ |
| 床材間のすき間 | 3cm以下 | 同ロ |
| 床材と建地とのすき間 | 12cm未満 | 同ハ |
| 手すり等 | 高さ85cm以上 | 552条1項4号イ |
| 中桟等 | 高さ35cm以上50cm以下 | 同ロ |
| 幅木等 | 高さ10cm以上 | 563条1項6号 |
壁つなぎの間隔は、条文の表に載っていない
鋼管足場の壁つなぎの間隔を定めた安衛則570条1項5号の表には、「単管足場(垂直5m・水平5.5m)」と「わく組足場(垂直9m・水平8m)」しかありません。くさび緊結式足場はこの表に出てきません。
そのため、くさび緊結式の壁つなぎの間隔は、使用する製品の取扱説明書と組立図に従うことになります。571条の建地の間隔や建地間の積載荷重も、単管足場用鋼管規格に適合する鋼管を用いる足場の規定なので、そのまま当てはめないでください。点検表に数値を書き込むなら、製品名を根拠の欄に添えておくと、あとで出どころが分かります。
注文者(元請)には、別の点検がかかる
足場を使わせる注文者には、安衛則655条が別にかかります。下請の点検とは別に、元請としてやることがあるという構造です。
下請(足場を使う事業者)
567条・作業開始前の点検
・組立後/悪天候後の9項目
・結果と点検者の氏名を記録
・仕事が終わるまで保存
注文者(元請)
655条・最大積載荷重を定めて見やすい場所に表示
・組立後/悪天候後に点検者を指名して点検
・記録して仕事が終わるまで保存
ポイントはここです。655条は「点検者を指名して」と書いています。元請の担当者が見て回るだけでは足りず、誰に見せるかを決めておく必要があります。実務では、足場の組立て等作業主任者の資格を持つ人や、元方安全衛生管理者を指名している例が多くあります。
最大積載荷重の表示も注文者の義務です(655条1項1号)。表示が無いと、資材を積みすぎる原因になります。同じ内容が562条にも事業者の義務としてあるので、どちらの立場でも表示は必要です。
くさび緊結式足場だけの点検表にすると、短くなる
足場の点検表を1枚で全種類に対応させると、使わない項目が並びます。くさび緊結式の現場で「建わくの交さ筋かい」を毎回とばす、という運用になりがちです。
混用
アームロック
建地間の積載荷重
歯止めの機能
一般には、足場の種類ごとに紙を分けている事業者が多くあります。分けると1枚あたりが短くなり、現場で全部の行を見るようになります。種類が混在する現場では、面ごとに紙を替える運用が扱いやすくなります。
屋内で使うローリングタワー(移動式足場)は、同じ「足場」でも見るところがまったく違います。転倒に直結する高さと脚輪間隔の関係が中心になるので、こちらは別の紙にしてください。
組む人の資格|高さで変わる
くさび緊結式足場を組む作業には、高さによって別の要件がかかります。点検の前に、そもそも組める体制になっているかを確認する部分です。
| 足場 | 必要なもの | 根拠 |
|---|---|---|
| つり足場、張出し足場、高さ5m以上の構造の足場 | 足場の組立て等作業主任者の選任 | 安衛令6条15号 |
| 足場の組立て・解体・変更の作業に係る業務 (地上または堅固な床上における補助作業を除く) | 特別教育 | 安衛則36条39号 |
高さ5m未満でも、組立ての作業そのものには特別教育が必要です。「主任者が要らない高さ」と「教育が要らない」は別の話なので、ここを混ぜないでください。
組立て等の作業のときは、点検とは別の措置が要る
安衛則564条は、つり足場・張出し足場または高さ2m以上の構造の足場の組立て・解体・変更の作業を行うときの措置を定めています。
- 時期、範囲及び順序を作業に従事する労働者に周知させる
- 作業区域内に関係者以外の立入りを禁止する(表示等)
- 強風、大雨、大雪等の悪天候のため危険が予想されるときは作業を中止する
- 幅40cm以上の作業床を設ける/要求性能墜落制止用器具を安全に取り付けるための設備等を設けて使用させる
- 材料・器具・工具等を上げ下ろしするときは、つり綱・つり袋等を使用させる
「悪天候のときは中止」は、点検の話と混ざりやすいところです。悪天候の後は点検、悪天候の中は組立ての中止。この2つは別の条文(567条2項と564条1項3号)です。
作業主任者の職務も条文にあります(566条)。材料の欠点の有無の点検と不良品の取り除き、器具・工具・要求性能墜落制止用器具・保護帽の機能の点検と不良品の取り除き、作業の方法と労働者の配置の決定と進行状況の監視、器具・保護帽の使用状況の監視の4つです。点検表の点検者に作業主任者を指名しておくと、この職務と自然につながります。
よくある質問
- Q. くさび緊結式足場は毎日9項目を点検するのですか
- いいえ。安衛則567条1項が作業開始前の点検事項としているのは「作業を行う箇所に設けた足場用墜落防止設備の取り外し及び脱落の有無」だけです。9項目(567条2項)を見るのは、組立て・一部解体・変更の後と、強風・大雨・大雪等の悪天候または中震以上の地震の後です。
- Q. くさび足場の壁つなぎの間隔はいくつですか
- 安衛則570条1項5号の表には単管足場とわく組足場しか載っていません。くさび緊結式足場は表に出てこないため、使用する製品の取扱説明書と組立図で定められた間隔に従ってください。571条の建地の間隔も、単管足場用鋼管規格に適合する鋼管を用いる足場の規定です。
- Q. 点検の記録は何年保存しますか
- 年数ではありません。安衛則567条3項は「足場を使用する作業を行う仕事が終了するまでの間」と定めています。注文者の記録も655条2項で同じ扱いです。工事が終わるまで、というのが条文の書き方です。
- Q. 点検者は誰を指名すればいいですか
- 条文に資格要件は書かれていませんが、足場の構造を理解している人が想定されています。実務では、足場の組立て等作業主任者の資格を持つ人や、元方安全衛生管理者を指名している例が多く見られます。指名したことと氏名が記録に残る形にしてください。
- Q. メーカーの違う部材を混ぜて使ってもいいですか
- 緊結方式が異なる部材の混用は避けてください。ポケット(受け金具)の寸法が合わず、くさびが所定の位置まで打ち込めないことがあります。見た目では組み上がっていても保持力が出ないため、点検で気づきにくい形の不具合になります。
- Q. 元請も点検しないといけませんか
- 必要です。注文者として労働者に足場を使用させるときは、安衛則655条により、最大積載荷重を定めて見やすい場所に表示すること、悪天候・地震・組立て等の後に点検者を指名して点検させること、その記録を仕事が終了するまで保存することが求められます。下請の点検とは別に行うものです。
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本記事は一般的な情報の整理であり、法令への適合を保証するものではありません。個別の義務内容は所管行政庁または専門家にご確認ください。記事の内容は2026-09-11時点の情報です。