冷蔵庫・冷凍庫温度管理表の作り方|HACCPの温度記録を毎日続ける仕組み
保健所の立入りや営業許可の更新で「温度記録を見せてください」と言われる|HACCPに沿った衛生管理が制度化されて以降、冷蔵庫・冷凍庫の温度記録は、飲食店・給食施設・介護施設の厨房にとって「やっていて当たり前」の記録になりました。
この記事では、温度管理表に必要な項目と作り方、冷蔵・冷凍それぞれの基準温度の目安、異常があったときの書き方、そして現場が毎日続けられる運用のコツをまとめます。設計済みの無料Excelテンプレート(無料・メールでお送りします)もあります。
この記事の内容(9項目)
なぜ温度記録が必要か|HACCPでの位置づけ
2021年6月1日から、原則すべての食品等事業者が「HACCPに沿った衛生管理」に取り組むことになりました(2020年6月1日施行、1年の経過措置を経て完全施行)。小規模な飲食店は簡略化された「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」でよいとされていますが、その中核が衛生管理計画と、実施した記録です。
冷蔵庫・冷凍庫の温度は、この記録の代表格です。細菌の多くは10℃では増殖がゆっくりとなり、-15℃では増殖が停止するとされています(厚生労働省)。ただし細菌が死ぬわけではないので、庫内温度の維持は食中毒予防の土台になります。逆に言えば、扉の閉め忘れ・詰め込みすぎ・機器の故障による温度上昇は、日々の記録でしか捕まえられません。
厚生労働省の手引書でも、記録は保健所の食品衛生監視員から提示を求められたときに速やかに出せるようにしておくこととされています。記録がないと、管理していたことを示せません。様式を決めて毎日つける仕組みを作ることがスタートラインです。
(-18℃以下で運用する例も多い)
(営業前・営業後)
(厚労省の手引書)
基準温度の目安|冷蔵・冷凍・特殊なケース
管理基準は食品衛生法にもとづく保存基準と、扱う食材で決まります。厚生労働省の小規模な一般飲食店向けの手引書でも、庫内温度の確認の例として「冷蔵:10℃以下、冷凍:-15℃以下」が示されています。一般的な目安を整理します。
| 区分 | 基準の目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 冷蔵庫 | 10℃以下(多くの店は5℃前後で運用) | 食肉・生食用鮮魚介類の保存基準は10℃以下(食品、添加物等の規格基準)。余裕を見て低めに設定 |
| 冷凍庫 | -15℃以下(-18℃以下推奨) | 冷凍食品の保存基準は-15℃以下。品質を保つために-18℃以下で運用する店も多い |
| ショーケース・ネタケース | 店の管理基準を設定 | 開閉が多く温度が上がりやすい。時間帯での変動を把握する |
大事なのは、法令の数字をそのまま書くのではなく、自店の「管理基準温度」を機器ごとに決めて様式に明記することです。基準が書いてあれば、記録した数値が正常か異常かをその場で判断できます。
温度管理表に必要な項目|この7つで足りる
様式はシンプルで構いません。必要な項目は次の7つです。
- 機器名・設置場所|「冷蔵庫①(調理場)」のように誰でも特定できる名前
- 管理基準温度|機器ごとに明記(例:5℃以下)
- 日付|1ヶ月1枚のマトリクスが定番
- 測定値(午前・午後)|営業前と営業中〜後の2回が標準的
- 異常の有無
- 異常時の処置|何をしたかを書く欄。ここが最重要
- 記録者・確認者|つけた人と、週1回など定期的に見る責任者
測定は庫内温度計(外部表示のデジタル式が便利)を読み取って転記します。○×ではなく数値で記録するのがポイントです。「8℃・9℃・9.5℃」と徐々に上がる傾向は、故障の前兆をつかむ唯一の手がかりで、○×では絶対に見えません。
冷蔵庫・冷凍庫温度管理表(Excel・無料)
機器ごとの基準温度・午前午後の測定値・異常時の処置・月間の平均/最高温度まで記録できる様式です。印刷して厨房に貼る前提のA4設計。メールアドレスをご入力いただくと、すぐにダウンロードリンクをお送りします。
温度管理表を見る異常があったときの書き方|「捨てた・直した・様子を見た」を残す
温度記録の価値は、異常時の記録で決まります。基準を超えていたときは、次の3点を書きます。
- 状況|「冷蔵庫①が9℃。扉の閉まり不良」
- 食材の判断|「庫内の生鮮品は中心温度を確認し使用/期限内だが状態不良のため廃棄」など、食材をどうしたか
- 機器の処置|「パッキン清掃で復旧」「メーカーへ修理依頼(○日予定)」
このとき「何℃まで上がって、何時間その状態だったか」が分かると、食材の廃棄判断が的確になります。デジタル温度計の最高・最低温度メモリ機能を使うと、夜間の異常も朝の記録で拾えます。
異常の記録は、万一の食中毒疑い時に「この日は正常に管理していた」ことを示す証拠にもなります。書きにくいことこそ書いてある記録が、信頼される記録です。
毎日続ける運用のコツ
温度記録が続かない原因は、様式ではなくほぼ運用です。現場で続けやすいコツを3つ挙げます。
- タイミングを既存業務に紐づける|「開店前チェックの1項目」「締め作業の1項目」にすると、単独のタスクとして忘れることがなくなります。開店前後の確認全体は開店前チェックリストと組み合わせるのが定番です。
- 記録用紙は機器の近くに貼る|事務所のファイルに綴じた様式は続きません。クリップボードで冷蔵庫の扉横に。月末回収でファイルへ。
- 確認者は「異常欄だけ」見る|店長・施設長が週1回、異常の処置が完了しているかだけを確認します。全マスのチェックは不要です。
記録の保存期間は、厚生労働省の小規模な一般飲食店向けの手引書で「1年間程度は保管」が目安として示されています。自治体の手引きや、業種別の手引書で期間が示されている場合はそちらに従ってください。
温度の記録はHACCPで残す記録の1つです。清掃や健康管理まで含めた様式の全体はHACCPの記録様式まとめで整理しています。
冷蔵庫の温度管理表にかかわる最近の動き(2026年10月時点)
冷蔵庫の温度管理表の土台になっているのは、2021年に完全施行されたHACCPに沿った衛生管理です。その後、温度の基準の数字は変わっていませんが、手引書と所管の役所に動きがありました。日付順に並べます。
| 時期 | できごと | 根拠 |
|---|---|---|
| 2021年6月1日 | HACCPに沿った衛生管理が完全施行(2020年6月1日施行、1年の経過措置)。衛生管理計画の作成と、実施状況の記録・保存が求められる | 厚生労働省 HACCPのページ |
| 2024年1月15日 | 小規模な一般飲食店事業者向けの手引書が改訂第3版になる。記録の振り返りの実施などが書き加えられた。庫内温度の確認の例(冷蔵10℃以下・冷凍-15℃以下)と、記録を1年間程度保管する目安はそのまま | 手引書 改訂経緯 |
| 2024年4月1日 | 食品の規格基準(保存基準など)を定める行政が、厚生労働省から消費者庁へ移る。この記事で使っている保存基準の数字(10℃以下・-15℃以下)は、確認日の時点でも同じ | 消費者庁 |
ポイントはここです。2024年の手引書の改訂で、記録を「つける」だけでなく、定期的に「振り返る」ことが書き加えられました。月末に温度管理表を回収するときに、異常の欄と処置の欄だけを見直す時間を決めておくと、手引書の形にそのまま合います。
出典:厚生労働省 HACCP(ハサップ)、HACCPの考え方を取り入れた衛生管理のための手引書(小規模な一般飲食店事業者向け・令和6年1月改訂)、消費者庁 食品安全に関する取組。確認日は2026年10月3日です。自店の基準や保存期間は、営業許可を受けている保健所にご確認ください。
冷蔵庫の温度管理表に出てくる用語
冷蔵庫の温度管理表や衛生管理計画に出てくる言葉を、出典つきでまとめます。
| 用語 | 意味 | 出典 |
|---|---|---|
| HACCPに沿った衛生管理 | 原則すべての食品等事業者が取り組む衛生管理。「HACCPに基づく衛生管理」と、小規模事業者などの「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」の2つがある | 厚生労働省 HACCPのページ |
| 衛生管理計画 | 何を・いつ・どのように確かめ、問題があったらどうするかを決めた計画。庫内温度の確認はその項目の1つ | 手引書(小規模な一般飲食店事業者向け) |
| 保存基準 | 食品ごとに国が定める保存の条件。食肉や生食用鮮魚介類は10℃以下、冷凍食品は-15℃以下など | 食品、添加物等の規格基準 |
| 管理基準温度 | 店が機器ごとに決める「この温度を超えたら異常」という線。法令上の定義はない | 店の衛生管理計画 |
| 危険温度帯 | 細菌が増えやすい温度の幅。法令上の定義はない。大量調理施設衛生管理マニュアルでは発育至適温度帯を約20℃〜50℃としている | 大量調理施設衛生管理マニュアル |
| 大量調理施設 | 同じメニューを1回300食以上、または1日750食以上提供する調理施設。大量調理施設衛生管理マニュアルの適用対象 | 大量調理施設衛生管理マニュアル |
冷蔵庫の温度管理表と一緒に押さえておきたいこと
冷蔵庫の温度管理表は、飲食店なら「庫内温度を1日2回」で回ることが多いのですが、給食施設や仕込みの多い店では、もう一歩足すと記録の役に立ち方が変わります。
給食施設は、大量調理施設衛生管理マニュアルの記録も確かめる
同じメニューを1回300食以上または1日750食以上出す施設には、大量調理施設衛生管理マニュアルが適用されます。原材料の搬入時の時刻・室温・冷凍または冷蔵設備内の温度を記録することとされ、下処理では食肉類10℃以下、魚介類5℃以下、冷凍は-15℃以下で保存する形が示されています。このマニュアルを示した厚生労働省の通知では、中小規模の調理施設でもマニュアルの趣旨をふまえた衛生管理を求めています。保育所や介護施設の厨房で何を記録するかは、所轄の保健所に確かめておくと安心です(大量調理施設衛生管理マニュアル(厚生労働省))。
冷やす途中の温度と時間も残す
作り置きの料理は、冷蔵庫に入れる前の冷やし方も記録の対象になります。大量調理施設衛生管理マニュアルでは、30分以内に中心温度を20℃付近(または60分以内に10℃付近)まで下げる工夫をし、冷却の開始と終了の時刻を記録することとされています。小規模な一般飲食店の手引書では、例として「2時間以内に20℃以下」が挙げられています。温度管理表の備考欄に、冷却を始めた時刻と冷蔵庫に入れた時刻を書く欄を足すと対応できます。
自動記録の温度計を入れるなら、計画に書いておく
無線の温度ロガーやIoT温度計は、夜間や休業日の温度まで残せるのが強みです。使う場合は、衛生管理計画に「庫内温度は○○で自動記録し、毎朝△△が確認する」と書いておくと、手書きの表と同じように説明できます。異常のときに食材をどうしたかは自動では残らないので、処置の欄は紙でも画面でも残しておきましょう。
よくある質問
- Q. 温度記録は1日に何回つければよいですか?
- 小規模店では1日1〜2回(営業前・営業後)が一般的です。HACCPの考え方を取り入れた衛生管理では頻度の一律の定めはなく、自店の衛生管理計画で決めた頻度を守ることが重要です。
- Q. 自動記録(IoT温度計)なら手書きは不要ですか?
- 温度の数値は自動記録のデータで残せます。使う場合は、衛生管理計画に自動記録で管理することと、誰がいつ確認するかを書いておくと説明しやすくなります。異常時に「食材をどうしたか」の判断記録は自動化できないため、異常対応の記録欄は残してください。扱いに迷うときは所轄の保健所にご確認ください。
- Q. 何℃になったら食材を捨てるべきですか?
- 一律の基準はなく、温度の上がり幅と時間、食材の種類で判断します。判断に迷う場合は「疑わしきは使わない」が原則です。廃棄判断の目安をあらかじめ衛生管理計画に書いておくと、現場が迷いません。
- Q. 保健所に温度記録の提出を求められますか?
- 監視指導の際などに、記録の提示を求められることがあります。厚生労働省の手引書では、保健所の食品衛生監視員から提示を求められた場合は速やかに対応できるよう、記録を1年間程度保管しておくこととされています。
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