安全衛生

酸素欠乏危険作業の測定|作業前に測って、7つの事項を3年残す

公開 2026-09-19 執筆 点検板 編集部

マンホール、ピット、立坑、タンクの中。こうした場所での作業は酸素欠乏危険作業にあたることがあり、酸素欠乏症等防止規則がかかります。

この規則でいちばん外せないのが、その日の作業を開始する前の測定と、7つの事項を記録して3年間保存することです(酸欠則3条)。換気をしたから測らなくていい、にはなりません。この記事では、測る内容と残す内容を条文どおりに整理します。

酸素欠乏危険作業 作業開始前点検・測定記録表(Excel・無料)マンホール・ピット・立坑・タンク内などの酸素欠乏危険作業で、その日の作業を開始する前に行う測定と確認を1枚にまとめた様式。酸欠則3条が求める記録の7事項(測定日時・測定方法・測定箇所・測定条件・測定結果・測定を実施した者の氏名・講じた措置の概要)を欄にしてあり、そのまま3年間保存できます。判定基準の列に酸素18%以上・硫化水素100万分の10以下という数値を入れています。
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この記事の内容(7項目)

酸素欠乏危険作業で測るのは「その日の作業を開始する前」

酸欠則3条1項は、令21条9号に掲げる作業場について、その日の作業を開始する前に空気中の酸素(第二種酸素欠乏危険作業に係る作業場では酸素及び硫化水素)の濃度を測定しなければならない、と定めています。

18%以上酸素の濃度
(換気の基準)
10ppm以下硫化水素
(100万分の10)
3年記録の保存
7事項記録する内容

測るのは作業開始前だけではありません。作業主任者の職務として、全員がその場所を離れたあと再び作業を開始する前と、労働者の身体や換気装置等に異常があったときにも測ることになっています(11条2項2号)。昼休みを挟んだら測り直す、という運用になります。

換気の基準は5条です。酸素濃度を18パーセント以上(第二種は加えて硫化水素の濃度を100万分の10以下)に保つように換気します。そして「純酸素を使用してはならない」と3項に明記されています。酸素ボンベで濃度を上げる方法は取れません。

酸素欠乏危険作業の測定で記録する7つの事項|そのまま欄にする

酸欠則3条2項は、測定を行ったときはそのつど次の事項を記録して、3年間保存しなければならないと定めています。7つあります。

記録する事項書き方の例
測定日時2026/09/19 08:05
測定方法使った測定器の名称・型式
測定箇所2号マンホール 上・中・下の各層
測定条件換気の実施状況・天候・気温
測定結果酸素20.8% / 硫化水素2ppm(数値で)
測定を実施した者の氏名高橋
結果に基づいて防止措置を講じたときは、その概要換気20分後に再測定して入場

ポイントは五号です。「良」ではなく実測値を書いてください。数値で残っていないと、前回との比較も、後から見たときの説明もできません。四号の「測定条件」も、換気してから測ったのか、開けた直後に測ったのかで意味が変わります。

七号は、基準を外れたときにだけ書く欄です。空欄が続くのが正常で、埋まっている日が「何かあった日」として残ります。入場を見合わせた時刻まで書いておくと、あとで説明ができます。

第一種と第二種|測るものと資格が変わる

第一種酸素欠乏危険作業

測るもの:酸素
換気:酸素18%以上
作業主任者:酸素欠乏危険作業主任者技能講習または酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者技能講習の修了者

第二種酸素欠乏危険作業

測るもの:酸素+硫化水素
換気:酸素18%以上 かつ 硫化水素10ppm以下
作業主任者:酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者技能講習の修了者に限る

どちらに当たるかは、作業場所によって決まります(安衛令21条9号・別表第六)。下水道、汚水槽、し尿の貯留槽など硫化水素が発生するおそれのある場所が第二種です。判断に迷うときは所轄の労働基準監督署に確認してください。この記事で断定はしません。

第一種の作業に第二種の資格者を充てることはできますが、逆はできません。「主任者は立てているから大丈夫」ではなく、どちらの講習を修了しているかまで確認してください。

作業に就く労働者には特別の教育も必要です(12条)。科目は、酸素欠乏の発生の原因、酸素欠乏症の症状、空気呼吸器等の使用の方法、事故の場合の退避及び救急そ生の方法、その他必要な事項です。

酸素欠乏危険作業 作業開始前点検・測定記録表(Excel・無料)マンホール・ピット・立坑・タンク内などの酸素欠乏危険作業で、その日の作業を開始する前に行う測定と確認を1枚にまとめた様式。酸欠則3条が求める記録の7事項(測定日時・測定方法・測定箇所・測定条件・測定結果・測定を実施した者の氏名・講じた措置の概要)を欄にしてあり、そのまま3年間保存できます。判定基準の列に酸素18%以上・硫化水素100万分の10以下という数値を入れています。
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酸素欠乏危険作業で、測定のほかにその日の作業前にやること

測定と同じタイミングで、保護具等の点検もあります。酸欠則7条が「その日の作業を開始する前に」点検し、異常を認めたときは直ちに補修し、又は取り替えることを求めています。

入る前に、この順で確認する
① 測定酸素・硫化水素(3条)
② 換気18%以上/純酸素は使わない(5条)
③ 保護具の点検空気呼吸器等・墜落制止用器具等・取付設備(7条)
④ 人員点検入場する時(8条)
④は退場する時も行う。入った人数と出た人数が合うことを確かめるのは、この欄だけ

換気ができない場合や、作業の性質上著しく困難な場合は、同時に就業する労働者の人数と同数以上の空気呼吸器等を備えて使用させます(5条の2)。人数ぶんあるかを、入る前に数えてください。

転落のおそれがあるときは要求性能墜落制止用器具等を使用させ、それを安全に取り付けるための設備等を設けることも必要です(6条)。この設備も7条の点検対象に入ります。

監視人は、入る人数に数えない

13条は、常時作業の状況を監視し、異常があったときに直ちに作業主任者等へ通報する者を置くこと等の措置を求めています。監視人は坑外に立つ人なので、入場者の人数には数えません。ここを混ぜると、8条の人員点検が合わなくなります。

異常が出たとき|救出に素手で入らない

酸素欠乏等のおそれが生じたときは、直ちに作業を中止し、作業従事者をその場所から退避させなければなりません(14条1項)。おそれがないことを確認するまでは、指名した者以外の立入りを禁止して表示します(同2項)。

そして、いちばん重いのが救出のときです。酸素欠乏症等にかかった人を救出する作業に従事する労働者には、空気呼吸器等を使用させなければなりません(16条)。

二次災害助けに入った人が
倒れる
空気呼吸器救出者にも
必ず使わせる
退避おそれが生じたら
直ちに中止
連絡先消防・監督署
掲示しておく

酸欠の災害は、倒れた人を助けに入った人が続けて倒れる形で被害が広がります。救出用の器具と空気呼吸器を、入場前に点検して数を確かめておくのは、そのためです。

発電機や溶接を持ち込むときは、さらに条件が付く

通風が不十分な場所でアルゴン、炭酸ガス又はヘリウムを使って溶接する作業には、換気で酸素18%以上に保つか、空気呼吸器等を使用させるかのいずれかが必要です(21条1項)。

また、可搬式発電機を中に持ち込むと、排気ガスで酸素濃度がさらに下がります。発電機は屋外に置いて、ケーブルだけを引き込む形が確実です。中で使う電気の取り回しは仮設分電盤の点検とあわせて確認してください。

どこが酸素欠乏危険場所に当たるか

酸素欠乏症等防止規則がかかるのは、安衛令別表第六に挙げられた場所での作業です。「狭くて空気が悪そうな場所」という感覚ではなく、場所の種類で決まります。

区分建設現場でよくある場所
第一種(酸素のみ測定)上層に不透水層がある砂れき層等の内部の井筒・立坑・ずい道・潜函・ピット等/長期間使用されていない井戸等/ケーブル・ガス管等の暗きょ・マンホール・ピット/サイロ・タンク・反応塔等の密閉された施設/穀物・飼料の貯蔵施設 ほか
第二種(酸素+硫化水素)し尿・腐泥・汚水等を入れてある槽・暗きょ・マンホール・溝・ピット/海水が滞留したことのある熱交換器・暗きょ・マンホール・ピット ほか

下水道工事、汚水槽の清掃、ポンプ場のピットは第二種側になることが多い場所です。硫化水素は空気より重く、底にたまります。上層で測って18%以上あっても、底に降りたところで急変することがあるため、測定箇所は上・中・下に分けます。

「該当するか」を現場で判断しない

別表第六の書き方は場所の性質で決まっていて、読み分けに幅があります。該当するかどうかを現場でその日に判断する運用にしないでください。着工前に対象作業を洗い出して、対象なら作業主任者の選任・特別教育・測定器の手配まで先に済ませておく形が確実です。

判断に迷うときは所轄の労働基準監督署に確認してください。この記事で断定はしません。

測定器は、較正の期限まで見る

4条は、測定を行うため必要な測定器具を備え、または容易に利用できるような措置を講じておくことを求めています。「持っている」だけでは足りず、動くものが要ります。

  • 較正の期限|期限切れの値は根拠になりません。点検表に期限の欄を作る
  • 電池|入る直前に電池切れで測れない、が起きます
  • 吸引式か拡散式か|底の濃度を上から測るなら吸引式が要ります
  • 複合型|第二種では酸素と硫化水素の両方が測れるものを用意する

入場する人数と同数以上の空気呼吸器等が要る場面(5条の2)もあるので、器具の数を人数と突き合わせる欄を点検表に作っておくと、その日に足りないことが入る前に分かります。

よくある質問

Q. 酸欠の測定記録は何年保存しますか
3年間です。酸素欠乏症等防止規則3条2項が「そのつど、次の事項を記録して、これを三年間保存しなければならない」と定めています。記録する事項は、測定日時・測定方法・測定箇所・測定条件・測定結果・測定を実施した者の氏名・防止措置を講じたときはその概要、の7つです。
Q. 換気をすれば測定は省略できますか
できません。3条1項は「その日の作業を開始する前に」測定することを求めています。換気は5条の別の義務です。換気したうえで、測って18パーセント以上(第二種は硫化水素10ppm以下も)であることを確かめてから入ります。
Q. 第一種と第二種の違いは何ですか
第二種では酸素に加えて硫化水素の濃度も測ります。換気の基準も酸素18パーセント以上に加えて硫化水素100万分の10以下です。作業主任者は、第二種では酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者技能講習の修了者に限られます。第一種はどちらの講習でも構いません。
Q. 測定は誰が行うのですか
3条は事業者の義務として定めていて、測定者の資格要件は書かれていません。ただし作業主任者の職務として、その日の作業を開始する前・全員が場所を離れたあと再開する前・身体や換気装置に異常があったときの測定が定められています(11条2項2号)。記録には測定を実施した者の氏名を残します。
Q. 換気に酸素ボンベを使ってもいいですか
いけません。酸欠則5条3項が「純酸素を使用してはならない」と明記しています。純酸素は火災・爆発の危険を高めます。送風機による換気で18パーセント以上に保ってください。
Q. 倒れた人を助けに入るときは何が必要ですか
救出作業に従事する労働者には、空気呼吸器等を使用させなければなりません(16条)。酸欠の災害は、助けに入った人が続けて倒れる形で被害が広がります。救出用の器具と空気呼吸器の数を、入場前の点検で確かめておいてください。
酸素欠乏危険作業 作業開始前点検・測定記録表(Excel・無料)マンホール・ピット・立坑・タンク内などの酸素欠乏危険作業で、その日の作業を開始する前に行う測定と確認を1枚にまとめた様式。酸欠則3条が求める記録の7事項(測定日時・測定方法・測定箇所・測定条件・測定結果・測定を実施した者の氏名・講じた措置の概要)を欄にしてあり、そのまま3年間保存できます。判定基準の列に酸素18%以上・硫化水素100万分の10以下という数値を入れています。
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本記事は一般的な情報の整理であり、法令への適合を保証するものではありません。個別の義務内容は所管行政庁または専門家にご確認ください。記事の内容は2026-09-19時点の情報です。