車両点検は義務?社用車・トラックに必要な点検を種類別に整理【日常・12ヶ月・車検】
会社の車両管理を任されると、「車両点検って結局どこまでやる義務があるのか」という疑問に突き当たります。日常点検、法定点検、車検、始業前点検、アルコールチェック|似た言葉が多いうえ、自家用と事業用(緑ナンバー)で義務の重さが違うためです。
この記事では、社用車を持つ会社に関係する車両点検の義務を種類別に整理し、それぞれ「誰が・いつ・何を・記録はどうするか」をまとめました。各点検の記録様式(Excel)は無料でダウンロードできます。
この記事の内容(10項目)
車両点検の全体像|4種類に整理する
社用車に関わる点検・確認の義務は、大きく4つに分かれます。
| 種類 | 根拠法 | 頻度 | 対象 |
|---|---|---|---|
| 日常点検 | 道路運送車両法47条の2 | 自家用乗用車など:適切な時期 事業用・自家用の普通/小型トラック・レンタカーなど:1日1回運行前 | すべての自動車 |
| 定期点検 (法定12ヶ月・24ヶ月点検) | 道路運送車両法48条 | 自家用乗用車:1年ごと 自家用の普通/小型トラック・レンタカー乗用など:6ヶ月ごと 事業用・8トン以上など:3ヶ月ごと | 自動車(小型特殊自動車を除く) |
| 車検(継続検査) | 道路運送車両法61条 | 自家用乗用車:2年ごと(初回3年) 貨物車・事業用など:1年ごと | 車検の対象になる車両 |
| 酒気帯び確認 (アルコールチェック) | 道路交通法施行規則9条の10 | 運転の前後 | 安全運転管理者の選任事業所 |
このほか、フォークリフトなどの構内車両には労働安全衛生法の点検義務が別にあります(後述)。以降、順に見ていきます。
(自家用乗用車)
記録の保存
検査記録の保存
日常点検|自家用乗用車は「適切な時期」、事業用・トラックは毎日
日常点検は、運転者が運行前に行う15項目の点検です(自家用乗用自動車の場合)。ブレーキ液・冷却水などのエンジンルーム5項目、タイヤ・ランプなどの外まわり4項目、ブレーキの効きなどの運転席まわり6項目で構成されます。
実施時期は車両の区分で異なります。自家用乗用車は「自動車の走行距離、運行時の状態等から判断した適切な時期」と定められており(道路運送車両法47条の2第1項)、毎日の義務ではありません。一方、定期点検が3ヶ月ごと・6ヶ月ごとになる車両は、1日1回、運行の開始前の実施が義務とされています(同条第2項)。具体的には、事業用自動車(緑ナンバー)、車両総重量8トン以上や乗車定員11人以上の自家用自動車、レンタカー、そして白ナンバーの普通・小型トラック(自家用の貨物車)が入ります(自動車点検基準3条)。
ポイントはここです。「白ナンバーだから毎日でなくてよい」とは限りません。白ナンバーでも、営業用のバンや2トン・4トントラックなど貨物登録の車は毎日の運行前点検の対象です。軽トラック・軽バン(自家用の軽貨物)は1年点検の区分のため、法律上は「適切な時期」の扱いです。区分は車検証の「用途」「自家用・事業用の別」「車両総重量」で確かめられます。
社用車のうち自家用乗用車は法律上「適切な時期」で足りますが、実務では週1回または毎日の運行前点検をルール化する会社が多数です。事故時に「点検をしていたか」を説明できる体制そのものが、会社の安全配慮義務の証拠になるためです。記録には社用車日常点検表(15項目・無料Excel)が使えます。毎日の運行記録とセットにするなら車両始業前点検・運行記録表が向いています。
法定12ヶ月点検|車検とは別の義務
「車検を受けているから点検はしている」というのはよくある誤解です。法定定期点検は車検とは別の制度で、道路運送車両法48条に基づく義務です。点検の周期は車両の区分で3つに分かれます。
| 周期 | 主な車両 | 点検整備記録簿の保存 |
|---|---|---|
| 3ヶ月ごと | 事業用自動車(緑ナンバー)、車両総重量8トン以上の自家用自動車、乗車定員11人以上の自家用自動車、貨物車などのレンタカー | 1年間 |
| 6ヶ月ごと | 自家用の普通・小型トラック、乗用車のレンタカー、自家用有償旅客運送の車など | 1年間 |
| 1年ごと | 上記以外(自家用乗用車、自家用の軽自動車など) | 2年間 |
根拠:道路運送車両法48条1項、自動車点検基準3条(対象の区分)・4条2項(記録簿の保存期間)。
- 12ヶ月点検|自家用乗用車は1年ごと。かじ取り装置・制動装置・走行装置・原動機などを、自動車点検基準の別表に沿って点検します
- 24ヶ月点検|2年ごと。1年ごとの項目に点検項目が加わります(車検時に同時実施されることが多い)
自家用乗用車の12ヶ月点検は、受けなくても道路運送車両法上の罰則はないとされていますが、義務であることに変わりはありません。点検したら点検整備記録簿に記載し(同法49条)、自家用乗用車なら2年間保存します。事業用自動車は運輸支局の監査で定期点検の実施状況が確認され、未実施は行政処分の対象になり得ます。
社用車で漏れやすいのは、車検(2年ごと・満了日が書類に明記される)と違い、12ヶ月点検には「満了日」という概念が書類上見えにくいことです。前回実施日から12ヶ月後を管理表で追う方法が確実です。
車検・12ヶ月点検・保険の期限を1枚で管理
車両ごとに車検満了日・自賠責・任意保険・12ヶ月点検の期限を並べ、直近の期限と残日数を自動計算する無料Excelを配布しています。12ヶ月点検は実施日から次回期限を自動計算します。
車検・保険 期限管理表(Excel・無料)を見るアルコールチェック|白ナンバーの会社も対象
乗車定員11人以上の車1台以上、またはその他の自動車5台以上を使用する事業所は、安全運転管理者の選任が必要です。そして安全運転管理者には、運転者の運転前後の酒気帯び確認と、記録の1年間保存が義務付けられています(道路交通法施行規則9条の10)。2023年12月からはアルコール検知器の使用と常時有効な保持も義務化されました。
記録には確認者名・運転者名・車両番号・確認日時・確認方法・酒気帯びの有無・指示事項など8項目が必要です。この8項目を様式化したアルコールチェック記録簿(無料Excel)を配布しています。直行直帰の運転者は電話+検知器の写真送付など非対面での確認方法をあらかじめ決めておくと運用が回ります。
構内車両|フォークリフト・建機は労働安全衛生法
公道を走らない構内車両には、道路運送車両法ではなく労働安全衛生法の点検義務がかかります。代表例がフォークリフトです。
- 作業開始前点検|その日の作業前に、制動装置・荷役装置・車輪・灯火類を確認
- 定期自主検査(月例)|1ヶ月を超えない期間ごと。記録3年保存
- 特定自主検査(年次)|1年を超えない期間ごと。検査業者または有資格者が実施し、検査標章を貼付。記録3年保存
高所作業車や油圧ショベルなどの車両系建設機械も同じ3層構造です。ナンバーを付けて公道も走る機体は、道路運送車両法の点検・車検と労働安全衛生法の検査の両方がかかります。ただし、道路運送車両法48条の定期点検を行った部分は、年次の特定自主検査を省くことができると定められています(フォークリフトは労働安全衛生規則151条の24第3項、車両系建設機械は169条の2第6項)。重なる部分は記録で示せるようにしておくと二重の手間が減ります。様式はフォークリフト点検表・高所作業車点検表・油圧ショベル点検表を配布しています。
車両管理の実務|最低限この3つを仕組みにする
ここまでの義務を、担当者の記憶に頼らず回すための最小構成は次の3つです。
- 台帳|全車両の車検満了日・自賠責・任意保険・12ヶ月点検実施日を1枚に並べ、月1回確認する。期限の自動計算付きの車検・保険期限管理表をそのまま使えます。
- 日常点検の様式と置き場所|車両ごとに点検表を備え付け、月末に回収してファイルする。回収日を決めるのがコツです。
- アルコールチェックの記録動線|出社時・退社時に確認する場所と、直行直帰時の非対面手順を決め、記録簿を1年分保管する。
この3つが回っていれば、警察・監督署・保険会社への説明で困ることはまずありません。台数が20台を超えて表計算での管理が苦しくなってきたら、車両管理システムの導入を検討するタイミングです。
車両点検にかかわる最近の動き(2026年10月時点)
車両点検そのものの義務(日常点検・定期点検)の条文は変わっていませんが、2023年からの数年で、車検の受け方とアルコールチェック、構内車両の検査基準に変更が続いています。日付順に並べます。
| 時期 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 2023年12月1日 | 安全運転管理者による酒気帯び確認に、アルコール検知器の使用が義務化。検知器を常時有効に保持することも必要に | 道路交通法施行規則9条の10第6号・第7号(警察庁) |
| 2024年10月1日 | 車検に「電子装置の検査」(OBD検査)が追加。対象は2021年10月1日以降のフルモデルチェンジ車(国産車) | 国土交通省 OBD検査の案内 |
| 2025年4月1日 | 車検(継続検査)を、有効期間満了日の2か月前から受けても残りの有効期間が失われないことに(従来は1か月前) | 道路運送車両法施行規則の改正(近畿運輸局の報道発表) |
| 2025年10月1日 | 輸入車のOBD検査が開始(2022年10月1日以降のフルモデルチェンジ車) | 国土交通省 OBD検査の案内 |
| 2026年1月1日 | フォークリフト・車両系建設機械・高所作業車などの特定自主検査基準が適用され、従来の「定期自主検査指針」は廃止 | 厚生労働省 基発1226第2号(2025年12月26日) |
社用車の管理で効いてくるのは、2025年4月の変更です。期限管理表の「車検の予約を入れる合図」を満了日の2か月前に置くと、繁忙期の年度末でも予約が取りやすくなります。
出典:警察庁「安全運転管理者の業務の拡充等」/国土交通省「OBD検査について」/近畿運輸局「令和7年4月より、車検を受けられる期間が延びます」/厚生労働省「高所作業車特定自主検査基準等の制定等について」/e-Gov 道路運送車両法
確認日は2026年10月3日です。自動車の点検・車検は管轄の運輸支局、アルコールチェックは所轄の警察署(安全運転管理者の担当)、構内車両の検査は所轄の労働基準監督署で確かめられます。
車両点検に出てくる用語
車両点検の書類や条文に出てくる言葉を、意味と出典つきでまとめます。通称と法令上の呼び方が違うものが多いので、役所や整備工場とのやり取りで迷ったときに使ってください。
| 用語 | 意味 | 出典 |
|---|---|---|
| 使用者 | 日常点検・定期点検の義務を負う者。車検証の「使用者」欄に記載される。リース車ではリースを受けて使う会社がこれにあたるのが一般的 | 道路運送車両法47条の2・48条 |
| 日常点検 | 灯火装置の点灯、制動装置の作動など、日常的に点検すべき事項を目視等で確かめる点検 | 道路運送車両法47条の2、自動車点検基準 別表第一・第二 |
| 定期点検(法定点検) | 3ヶ月・6ヶ月・1年ごとに行う点検。条文の見出しは「定期点検整備」で、「法定点検」「12ヶ月点検」は法令上の定義はない通称 | 道路運送車両法48条 |
| 点検整備記録簿 | 定期点検の年月日・結果・整備の概要などを記載し、車に備え置く記録。保存は1年または2年 | 道路運送車両法49条、自動車点検基準4条 |
| 継続検査(車検) | 車検証の有効期間を更新するための国の検査。「車検」は法令上の定義はない通称 | 道路運送車両法61条・62条 |
| 事業用自動車 | 自動車運送事業の用に供する自動車。「緑ナンバー」は法令上の定義はない通称 | 道路運送車両法48条1項1号 |
| 安全運転管理者 | 乗車定員11人以上の車1台以上、またはその他の車5台以上を使う事業所で選任する管理者 | 道路交通法74条の3、同法施行規則9条の8 |
| アルコール検知器 | 呼気に含まれるアルコールを検知する機器で、国家公安委員会が定めるもの | 道路交通法施行規則9条の10第6号 |
| 特定自主検査 | フォークリフトや車両系建設機械などの年次の自主検査を、有資格者または検査業者が行うもの | 労働安全衛生法45条2項、労働安全衛生規則151条の24・169条の2 |
車両点検と一緒に押さえておきたいこと
車両点検の義務を整理したあと、実務で抜けやすい点を3つ挙げます。どれも条文に書かれているのに、点検表だけを見ていると気づきにくいところです。
安全運転管理者の点呼で、日常点検の実施も確かめる
車両点検とアルコールチェックは別々に運用されがちですが、安全運転管理者の業務には「運転しようとする運転者に対して点呼を行う等により、道路運送車両法47条の2第2項の点検の実施を確認すること」が含まれています(道路交通法施行規則9条の10第5号)。白ナンバーのトラックを使う事業所なら、運転前の酒気帯び確認と同じ場で「日常点検は済んだか」を聞き、記録簿に1欄足すだけで両方の義務に対応できます。
運転日誌の備え付けも安全運転管理者の業務
同じ条文の第8号で、運転者名・運転の開始と終了の日時・運転した距離などを記録する日誌を備え付け、運転を終えた運転者に記録させることが定められています。日常点検表と運転日誌を1枚にまとめた様式を使うと、記入の手間が1回で済みます。車両始業前点検・運行記録表はこの形です。
車検証の区分で、自社の義務を先に確定させる
同じ「社用車」でも、乗用車・軽バン・2トントラックで日常点検の頻度と定期点検の周期が変わります。車両台帳に「自家用・事業用」「用途(乗用・貨物)」「車両総重量」の3列を足し、そこから点検周期を決めておくと、担当者が替わっても判断がぶれません(道路運送車両法48条1項、自動車点検基準3条)。
よくある質問
- Q. 社用車の日常点検は毎日必要ですか?
- 自家用乗用車は法律上「適切な時期」でよいとされています(道路運送車両法47条の2第1項)。一方、事業用自動車(緑ナンバー)、白ナンバーの普通・小型トラック、車両総重量8トン以上の車、レンタカーなどは1日1回運行前の実施が義務です(同条第2項)。乗用車でも週1回以上をルール化すると、点検していたことを説明しやすくなります。
- Q. 12ヶ月点検を受けないと罰則はありますか?
- 自家用乗用車の定期点検には道路運送車両法上の罰則はないとされていますが、法律上の義務です(48条)。事業用自動車の定期点検の未実施は行政処分の対象になり得ます。未実施はメーカー保証や事故時の説明にも影響することがあります。
- Q. 車両点検の記録は何年保存しますか?
- 点検整備記録簿は、自家用乗用車など1年ごと点検の車は2年、3ヶ月・6ヶ月ごと点検の車は1年です(自動車点検基準4条2項)。アルコールチェックの記録は1年(道路交通法施行規則9条の10)、フォークリフト等の定期自主検査記録は3年です。根拠法が異なるため、様式ごとに保存年限を書いておくと混乱しません。
- Q. リース車・レンタカーの点検は誰の義務ですか?
- 日常点検・定期点検は「使用者」の義務です。リース車は車検証の使用者である自社に義務があります(リース会社が点検の案内・手配を代行するのが一般的)。レンタカーは貸渡事業者に3ヶ月または6ヶ月ごとの定期点検が義務付けられています(自動車点検基準3条)。
この記事で紹介した無料テンプレート
あわせて読みたい記事
本記事は一般的な情報の整理であり、法令への適合を保証するものではありません。個別の義務内容は所管行政庁または専門家にご確認ください。記事の内容は2026-10-03時点の情報です。