日常点検15項目|社用車で毎日どこを見るか、区分ごとに解説
日常点検は道路運送車両法47条の2に基づく使用者の義務です。自家用乗用車は15項目、実施時期は「走行距離や運行時の状態等から判断した適切な時期」とされています。
一方で、白ナンバーでも小型・普通の貨物車(いわゆる4ナンバー・1ナンバーの車)は、緑ナンバーの事業用自動車と同じく、1日1回、運行の前に点検することと定められています(同条2項)。社用車がどちらの区分に当たるかを先に確かめておくのがポイントです。
とはいえ「どこをどう見るのか」が分からなければ実施できません。この記事では15項目を3区分に分けて、それぞれの見方と判断基準を解説します。
毎日見た結果は、日報と別々に残すと続きません。出庫前チェックと運行記録を1枚にまとめる形は車両の始業前点検と運行記録で扱っています。
この記事の内容(9項目)
15項目は3つの区分に分かれる
液量を中心に確認
ランプ類を確認
操作系を確認
根拠条文
などは運行前
実施時期
エンジンルーム|5項目
| 項目 | 見方 | 異常のサイン |
|---|---|---|
| ウインド・ウォッシャ液の量 | タンクの液面を見る | 空だと視界確保ができない。冬季は凍結にも注意 |
| ブレーキ液の量 | MAX〜MINの間にあるか | 減っている=漏れかパッド摩耗。補充より原因究明 |
| バッテリ液の量 | UPPER〜LOWERの間 | 減りが早い=過充電の疑い(液面が見えない密閉型は、取扱説明書の確認方法に従う) |
| 冷却水の量 | リザーバタンクの液面 | 減る=漏れ。オーバーヒートに直結 |
| エンジン・オイルの量 | レベルゲージで確認 | 減りが早い=内部の摩耗。焼き付きの前兆 |
ブレーキ液の減少は2つの意味があります。漏れているか、ブレーキパッドが摩耗してキャリパーのピストンが出た分だけ液面が下がったか。補充して終わりにせず、原因を確認してください。パッドの残りが少なければ、整備工場で交換の時期を見てもらいます。
クルマのまわり|4項目
| 項目 | 見方 | 判断基準 |
|---|---|---|
| タイヤの空気圧 | 外観のたわみ、または空気圧計 | 指定空気圧(運転席ドア付近のラベル) |
| タイヤの亀裂・損傷、異常な摩耗 | 側面と接地面を目視 | ひび割れ、釘の刺さり、片減り |
| タイヤの溝の深さ | スリップサインを見る | スリップサインが出たら交換(保安基準の溝の深さは1.6mm以上) |
| ランプ類の点灯・点滅、レンズの汚れ・損傷 | 点灯させて一周 | 球切れ、レンズの割れ・曇り |
タイヤの片減りは、アライメントのずれや空気圧不足のサインです。「外側だけ減っている」「内側だけ減っている」に気づいたら、整備工場で点検してもらってください。放置すると新品タイヤも同じように減ります。
ランプ類は1人だと確認しづらいのが難点です。壁やシャッターに向けて停め、反射で確認する方法が現場では使われています。
運転席まわり|6項目
| 項目 | 見方 |
|---|---|
| ブレーキ・ペダルの踏みしろ、ブレーキの効き | 踏み込んだときの深さと、床までの余裕。走り出して最初の制動で効きを確認 |
| パーキング・ブレーキ・レバーの引きしろ | 引いたときの段数(またはペダルの踏み代)が適正か |
| ウインド・ウォッシャの噴射状態 | 噴射位置が窓の適切な位置に当たるか |
| ワイパの拭き取りの状態 | スジが残らないか。ゴムの劣化 |
| エンジンのかかり具合、異音 | 始動時のセルの回り方、異音の有無 |
| エンジンの低速・加速の状態 | アイドリングの安定、加速のもたつき |
ブレーキペダルが以前より深く入るようになったら要注意です。パッドの摩耗、液漏れ、エア噛みのいずれかが起きています。走行前に気づける最も重要な項目です。
日常点検の義務と頻度|乗用車と貨物車・事業用で時期が違う
自家用乗用車・自家用の軽自動車など
走行距離や運行時の状態等から判断した適切な時期に実施(47条の2第1項)。点検項目は自動車点検基準の別表第2で、これが15項目。事業用自動車・白ナンバーの小型と普通の貨物車など
1日1回、運行前に実施(47条の2第2項)。乗車定員11人以上の車、車両総重量8トン以上の車、レンタカーなども同じ区分。点検項目は別表第1。どちらの区分になるかは、道路運送車両法48条1項1号・2号と自動車点検基準3条で決まります。白ナンバーでも、用途が貨物の小型・普通自動車(ライトバンやトラック)は運行前の区分です。軽自動車は、貨物用(軽バン)でも「適切な時期」の区分に入ります。
運行前の区分で使う別表第1には、エア・タンクの凝水、ディスク・ホイールの取付状態など、15項目にない項目もあります。なお別表第1でも、バッテリ液やエンジン・オイルの量などの印の付いた項目は「適切な時期」で足りるとされています。
白ナンバーの乗用車は法律上「適切な時期」でよいのですが、実務では週1回または毎日のルール化をおすすめします。理由は2つあります。
- 事故時の説明|業務中の事故で整備不良が絡むと、会社の管理体制が問われます
- 異常の早期発見|タイヤの空気圧やブレーキの効きは、日々の変化として現れます
点検義務の全体像(12ヶ月点検・車検・アルコールチェック)は車両点検の義務の記事に、期限の管理方法は車検・保険期限管理表にまとめています。
日常点検15項目にかかわる最近の動き(2026年10月時点)
日常点検15項目そのもの(自動車点検基準の別表第2)は、2023年以降で項目の増減は確認できませんでした。動いているのは、点検のやり方と、社用車を使う会社側の管理です。
| 時期 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 2023年7月1日 | 定期点検の見直し。「点火時期」などを点検しなくてよい項目にし、5項目でOBD(車載式故障診断装置)を使った点検を認めた | 自動車点検基準などの改正(2023年3月31日公表、国土交通省) |
| 2023年12月1日 | 安全運転管理者に、アルコール検知器による酒気帯びの確認、記録の1年保存、検知器を常に使える状態にしておくことを義務付け | 道路交通法施行規則9条の10第6号・第7号(警察庁) |
| 2026年10月時点 | 国交省の手引では、日常点検でも、電動式駐車ブレーキやブレーキ・ペダルの異常を検知するセンサ、タイヤ空気圧監視装置を備えた車は、表示灯や表示を目で確かめる方法で点検できると書かれている | 自動車の点検及び整備に関する手引(国土交通省) |
日常点検15項目の表を作るときは、電動パーキングブレーキの車なら「引きしろ」の欄に「警告灯の点灯なし」と書けるようにしておくと、車種が混ざっても1枚で使えます。
出典:国土交通省「自動車の点検及び整備に関する手引」/国土交通省 報道発表(2023年3月31日)/警察庁 安全運転管理者制度とアルコールチェック/e-Gov法令検索 自動車点検基準
確認日は2026年10月3日です。車の区分や点検の中身は所轄の運輸支局、安全運転管理者の業務は所轄の警察署で確認できます。
日常点検15項目に出てくる用語
日常点検15項目の説明で出てくる言葉を、法令上の意味と出典で整理します。
| 用語 | 意味 | 出典 |
|---|---|---|
| 日常点検 | 灯火装置の点灯、制動装置の作動など、日常的に点検すべき事項を目視等で点検すること | 道路運送車両法47条の2 |
| 使用者 | 点検の義務を負う人。車検証の使用者欄に書かれた人や会社 | 道路運送車両法47条・47条の2 |
| 適切な時期 | 走行距離、運行時の状態等から判断した時期。法令で日数は決まっていない | 道路運送車両法47条の2第1項 |
| 別表第1/別表第2 | 日常点検の項目表。第1は事業用・自家用貨物車など、第2は自家用乗用車など | 自動車点検基準1条 |
| 点検整備記録簿 | 定期点検や整備の結果を書く記録簿。車に備え置く。保存は乗用車など2年、貨物車など1年 | 道路運送車両法49条、自動車点検基準4条2項 |
| 安全運転管理者 | 乗車定員11人以上の車1台、またはその他の車5台以上を使う事業所で選ぶ管理者 | 道路交通法74条の3、同法施行規則9条の8 |
| スリップサイン | タイヤの溝が減ったことを示す目印。法令上の定義はない。溝の深さの基準(1.6mm以上)は保安基準で定められている | 道路運送車両の保安基準とその細目を定める告示 |
日常点検15項目と一緒に押さえておきたいこと
日常点検15項目を回せるようになったら、次の3つも押さえておくと、社用車の管理がひと続きになります。
安全運転管理者の仕事に「点検の確認」が入っている
安全運転管理者の業務には、運転しようとする人に点呼などをして、道路運送車両法47条の2第2項の点検(貨物車などの運行前点検)が行われたかを確かめることが入っています(道路交通法施行規則9条の10第5号)。点検表を運転者が書き、管理者がアルコールチェックのときに見て印を押す形にすると、確認の跡が残ります。アルコールチェックの記録の書き方はアルコールチェック記録の書き方で扱っています。
見つけたら「直す」までが使用者の義務
点検の結果、保安基準に適合しなくなるおそれがある状態なら、必要な整備をしなければならないとされています(道路運送車両法47条の2第3項)。点検表には「異常あり」で終わらせず、誰に報告し、いつ直したかを書く欄を置いておくのがポイントです。
定期点検は区分で周期が違う
日常点検とは別に、定期点検があります。自家用乗用車は1年ごと、白ナンバーの小型・普通の貨物車は6か月ごと、事業用自動車は3か月ごとです(道路運送車両法48条1項)。日常点検の区分と同じ分かれ方なので、車ごとに「区分」の欄を1つ持たせると、両方の管理が楽になります。
よくある質問
- Q. 日常点検の記録に保存義務はありますか?
- 日常点検の記録そのものに、道路運送車両法上の保存義務は定められていません。定期点検の点検整備記録簿は、乗用車などで2年、貨物車などで1年の保存です(自動車点検基準4条2項)。事業用のトラックは点呼の記録(1年保存)で日常点検の実施を確認します。事故のときの説明資料として、日常点検の記録も1年程度は残しておくと安心です。
- Q. 毎日15項目すべてを見る必要がありますか?
- 自家用乗用車は「適切な時期」の実施でよいため、毎日全項目は必須ではありません。国交省の手引でも、全部の項目をまとめて行う必要はないとされています。実務では「毎日:タイヤ・ランプ・ブレーキの効き」「週1回:全15項目」と分ける運用がよく見られます。白ナンバーでも小型・普通の貨物車は、1日1回、運行前の点検が必要です。
- Q. 社用車がどちらの区分か、どこで分かりますか?
- 車検証の「自家用・事業用の別」と「用途」(乗用・貨物)で確かめられます。白ナンバーで用途が貨物の小型・普通自動車なら、1日1回運行前の区分です。軽自動車は貨物用でも「適切な時期」の区分です。迷うときは所轄の運輸支局で確認してください。
- Q. 液量の点検は誰でもできますか?
- ボンネットを開けて目視で確認するだけなので、資格は不要です。ただし走行直後は高温で危険なため、エンジンが冷えてから行ってください。
- Q. 異常を見つけたらどうすればよいですか?
- 走行を中止し、管理者に報告してください。ブレーキ・タイヤの異常は特に危険です。記録表の「異常・処置」欄に、誰に報告して何をしたかを書き残してください。
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本記事は一般的な情報の整理であり、法令への適合を保証するものではありません。個別の義務内容は所管行政庁または専門家にご確認ください。記事の内容は2026-10-03時点の情報です。