安全衛生教育の記録|雇入れ時・特別教育・職長教育で残すもの
安全衛生教育の記録のうち、条文で保存が決まっているのは特別教育の記録の3年保存です(労働安全衛生規則38条)。雇入れ時教育や職長等教育には保存の定めがありませんが、実施したことを示せるよう、同じように記録を残しておく会社が多くなっています。
さらに2024年4月から、雇入れ時教育の項目省略の規定が廃止されました。これまで一部の業種で省略できた4項目が、全業種で必要になっています。この記事で、安全衛生教育の種類と記録の残し方、保存期間を整理します。
この記事の内容(9項目)
4種類の教育|いつ誰に
| 教育 | いつ | 対象 | 記録 |
|---|---|---|---|
| 雇入れ時教育 | 雇い入れたとき | すべての労働者 (パート・アルバイト含む) | 保存義務の明記なし (3年推奨) |
| 作業内容変更時教育 | 作業内容を変えたとき | 該当する労働者 | 同上 |
| 特別教育 | 危険・有害業務に就かせるとき | 該当業務の従事者 | 3年保存(義務) |
| 職長等教育 | 職長等に就いたとき | 新たに職務に就く職長等 (建設業・製造業など、令19条の業種に限る) | 保存義務の明記なし (3年推奨) |
記録保存(義務)
省略規定が廃止
対象
(安衛則36条・枝番含む)
雇入れ時教育はパート・アルバイトも対象です。「短期だから」「学生だから」は理由になりません。むしろ経験の浅い人ほど災害に遭いやすいため、法の趣旨からも省略できません。
2024年4月の改正|省略規定の廃止
従来、雇入れ時教育の8項目のうち第1号から第4号までの4項目は、安衛令2条3号の業種(いわゆる「その他の業種」)では省略できるとされていました。この規定が2024年4月1日に廃止され、業種を問わず全項目の実施が必要になっています(令和4年厚生労働省令第91号)。
2024年3月まで
「その他の業種」では、機械・原材料の危険性、安全装置・保護具の取扱い、作業手順、作業開始時の点検の4項目を省略できた。2024年4月から
業種にかかわらず全項目が必要。事務職中心の会社でも、該当する内容を教育する。これにより、小売業・サービス業・事務所などで教育内容の見直しが必要になりました。古い教育カリキュラムのまま運用している場合は、項目の抜けがないか確認してください。なお、その事項について十分な知識と技能があると認められる労働者については、その事項の教育を省略できるという規定(安衛則35条2項)は今も残っています。
雇入れ時教育の項目
- 機械等・原材料等の危険性・有害性、これらの取扱い方法
- 安全装置・有害物抑制装置・保護具の性能と取扱い方法
- 作業手順
- 作業開始時の点検
- その業務で発生するおそれのある疾病の原因と予防
- 整理・整頓・清潔の保持
- 事故時等における応急措置・退避
- その他、業務に関する安全衛生のために必要な事項
記録に残す8項目
教育記録に決まった様式はありません。特別教育の記録について条文が求めているのは「受講者、科目等の記録」(安衛則38条)です。次の項目が揃っていれば、実施の証明として十分です。
- 実施日|いつ
- 教育の種類|雇入れ時/特別教育/職長等教育など
- 対象業務|特別教育なら業務名を正確に(例:アーク溶接等の業務)
- 教育内容(科目)|何を教えたか。省略項目がないか確認できる
- 時間数|特別教育は科目ごとに最低時間が定められている
- 講師名・所属|社内なら氏名、外部なら機関名
- 受講者名簿|誰が受けたか
- 理解度の確認方法|確認テスト、修了考査など
特に時間数が重要です。特別教育は業務ごとに科目と最低時間が告示(安全衛生特別教育規程など。安衛則39条にもとづく)で決まっており、時間が足りないと教育を実施したことになりません。
安全衛生教育 記録表(Excel・無料)
教育の種類・対象業務・科目・時間数・講師・受講者・理解度確認・記録の保存期限を1行で管理できます。保存期限が自動で見えるので、廃棄の判断も迷いません。
安全衛生教育 記録表を見る外部機関に委託した場合
特別教育を教習機関・労働基準協会などに委託した場合、受講者には修了証が交付されます。この場合の記録の扱いは次のとおりです。
- 修了証の写しを事業者が保管する|原本は本人が携帯します。事業者は写しを台帳に綴じます
- 受講日・機関名・科目を自社の記録表にも転記する|修了証だけだと一覧性がなく、誰が何を受けたか把握できません
- 修了証の番号と交付日も控える|紛失したときの再交付の申し出や、現場で資格を確かめられたときに使います
実務では、「誰が・どの業務の資格を持っているか」の一覧があると配置の判断が速くなります。無資格作業は重大な違反なので、作業を割り当てる前に確認できる状態にしておいてください。一覧の作り方は有資格者一覧表の作り方で、免許・技能講習・特別教育を分けて書く形にまとめています。
点検業務でいえば、フォークリフト・高所作業車・建機の運転、玉掛け、クレーン操作などが資格を要する業務です(特定自主検査の記事で機械ごとの資格要件に触れています)。
教育の管理も期限管理の一部
安全衛生教育は「一度やって終わり」ではありません。次の場面で再度必要になります。
- 新しい機械・原材料を導入したとき|作業内容変更時教育に該当する場合があります
- 作業方法を大きく変えたとき|同上
- 職長が交代したとき|新たに職長になる人への職長等教育
- 危険有害業務に就いている人への教育|厚生労働省の指針で、一定期間ごとの「定期教育」と、機械設備が新しくなったときなどの「随時教育」を行うよう示されています(安衛法60条の2の努力義務)
この指針は、実施した教育の記録を個人別に保存することも求めています。特別教育の3年保存とあわせて、1人1行で追える形にしておくと両方を満たせます。
これらは点検の期限と同じく、忘れた頃にやってくるものです。教育の実施予定を点検の期限管理表に一緒に載せておくと、月1回の確認で拾えます(期限管理の記事)。
安全衛生教育の記録にかかわる最近の動き(2026年10月時点)
安全衛生教育の記録の対象は、2023年から少しずつ広がっています。確かめられた出来事を日付順に並べます。
| 日付 | 出来事 | 記録への影響 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 2023年4月1日 | 職長等教育の対象業種に、食料品製造業(全部)と新聞業・出版業・製本業・印刷物加工業を追加 | 該当する事業場は職長等教育の記録が新たに要る | 安衛令19条(令和4年政令第51号) |
| 2024年4月1日 | 雇入れ時等教育の項目省略の規定(その他の業種の第1〜4号)を廃止 | 記録の「教育内容」に8項目すべてが並ぶ形になる | 安衛則35条(令和4年厚生労働省令第91号) |
| 2025年5月14日 | 改正労働安全衛生法(令和7年法律第33号)公布 | 個人事業者や作業に従事する役員などへの安全衛生の措置が、段階的に広がる | 厚生労働省 改正法の資料 |
| 2026年5月25日 | 危険有害業務従事者への安全衛生教育の指針を改正(安全衛生教育指針公示第7号、2027年4月1日適用) | 作業に従事する役員なども教育を受けるよう努める対象に。委託した教育は修了証の写しなどで記録を残す | 厚生労働省 公示 |
ポイントはここです。特別教育の3年保存(安衛則38条)は変わっていませんが、記録を残しておくべき人と教育の範囲は広がっています。食品工場や印刷工場で職長を置いている場合は、2023年4月以降の職長等教育の記録があるかを確かめておくと安心です。
出典:兵庫労働局 職長等に対する安全衛生教育の対象業種が拡大されます/厚生労働省 化学物質による労働災害防止のための新たな規制について/厚生労働省 改正労働安全衛生法(令和7年法律第33号)の資料/厚生労働省 安全衛生教育指針公示第7号/e-Gov法令検索 労働安全衛生規則
確認日は2026年10月3日です。自社の業種や業務が対象になるかは、所轄の労働基準監督署に確認してください。
安全衛生教育の記録に出てくる用語
安全衛生教育の記録をつけるときに出てくる言葉を、出どころと一緒に並べます。
| 用語 | 意味 | 出典 |
|---|---|---|
| 雇入れ時教育 | 労働者を雇い入れたときに、従事する業務の安全・衛生について行う教育 | 安衛法59条1項、安衛則35条 |
| 作業内容変更時教育 | 作業内容を変えたときに行う教育。中身は雇入れ時教育と同じ8項目 | 安衛法59条2項、安衛則35条 |
| 特別教育 | 危険・有害な業務に就かせるときに行う教育。受講者・科目等の記録を3年保存 | 安衛法59条3項、安衛則36条・38条 |
| 職長等教育 | 政令の業種で、新たに職長など現場で直接指導・監督する人に行う教育(作業主任者を除く) | 安衛法60条、安衛令19条、安衛則40条 |
| 危険有害業務従事者への教育 | 危険・有害な業務に今就いている人に、定期または随時に行う教育。事業者の努力義務 | 安衛法60条の2、安全衛生教育指針 |
| 安全衛生特別教育規程 | 特別教育の科目と時間を業務ごとに定めた告示 | 安衛則39条 |
| 修了証(特別教育) | 特別教育を終えた人に教習機関などが出す証明 | 法令上の定義はない |
| 安全衛生教育記録表・教育台帳 | 教育の実施を残す社内の書類の呼び方 | 法令上の定義はない |
安全衛生教育の記録と一緒に押さえておきたいこと
安全衛生教育の記録を整えるときに、上位の解説ではあまり触れられない点を3つ取り上げます。
職長等教育は、業種と時間で決まっている
職長等教育が義務になるのは、建設業、製造業(たばこ製造業・一部の繊維工業などを除く)、電気業、ガス業、自動車整備業、機械修理業の事業場です(安衛令19条)。教える事項と時間も定められていて、作業手順の定め方など2時間、指導・教育の方法など2.5時間、危険性・有害性等の調査など4時間、異常時・災害発生時の措置1.5時間、設備・作業場所の保守管理など2時間の、合わせて12時間以上です(安衛則40条2項)。記録には、事項ごとの時間を書いておくと足りているかがすぐ分かります。
派遣労働者の教育は、派遣元と派遣先で分かれる
雇入れ時教育は派遣元が行います。作業内容変更時教育は、派遣元に加えて派遣先にも義務がかかります。特別教育と職長等教育は派遣先の義務です(労働者派遣法45条1項・3項)。記録もそれぞれの義務を負う側で残すので、派遣先は自社で行った特別教育の記録を3年保存します。
危険有害業務の教育は、就業時間内が原則
危険有害業務に就いている人への教育について、厚生労働省の指針は、原則として就業時間内に行うこと、外部の安全衛生団体などに委託した場合は交付された修了証の写しを入手するなどして記録を保存することを示しています。外部の講習を使うときは、受講日と機関名を自社の記録表にも書き写しておくと、一覧で追えます。
よくある質問
- Q. 雇入れ時教育に決まった時間数はありますか?
- 雇入れ時教育には法定の最低時間がありません(特別教育は業務ごとに定めあり)。内容を網羅していることが要件です。ただし実施したことが分かるよう、時間数も記録しておくことをおすすめします。
- Q. 特別教育を社内で実施できますか?
- できます。科目ごとに定められた内容と時間を満たし、その科目について十分な知識・経験を有する者が講師を務める必要があります。実技を伴う業務では設備の準備も必要なため、外部機関への委託が一般的です。
- Q. 派遣労働者への教育は誰が行いますか?
- 雇入れ時教育は派遣元が行います。作業内容変更時教育は派遣元と派遣先の両方に義務があり、特別教育と職長等教育は派遣先が行います(労働者派遣法45条)。契約時に分担を確認してください。
- Q. 記録を紛失した場合は?
- 再作成できる範囲で復元し、受講者本人の修了証や外部機関の受講履歴から確認します。特別教育の記録は3年保存が義務なので、紛失したままにせず経緯を残してください。
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本記事は一般的な情報の整理であり、法令への適合を保証するものではありません。個別の義務内容は所管行政庁または専門家にご確認ください。記事の内容は2026-10-03時点の情報です。