有資格者一覧表の作り方|免許・技能講習・特別教育を分けて書く
有資格者一覧表は、現場に入る作業員がどの資格を持っているかを1枚にまとめて元請に出す書類です。安全書類(グリーンファイル)の一部として求められることが多いのですが、この書類には決まった様式がありません。全建統一様式にも定めがなく、元請ごとに欄がばらばらです。
様式が決まっていないということは、何を書けば足りるのかを自分で判断しなければならないということです。ここで多くの表が同じ間違い方をしています。氏名と資格名だけを並べて、免許も技能講習も特別教育も同じ欄に混ぜてしまう。この3つは根拠になる条文が違い、証明書を携帯する義務があるかどうかも違います。
この記事では、条文をもとに「何を書けば足りるのか」を整理し、区分を分けて書ける様式を配布します。
重機まわりは、同じ機械でも運転・公道・作業で必要な資格が分かれます。一覧に落とす前に重機オペレーターの資格で分け方を押さえておくと、欄の作り方が決まります。
この記事の内容(9項目)
有資格者一覧表に法定の様式は無い
まず前提を確認します。有資格者一覧表そのものを定めた法令はありません。全建統一様式(全国建設業協会)にも、この名前の様式は含まれていません。
ではなぜ提出を求められるのか。元請には、下請の労働者を含めて現場全体の安全衛生を統括する立場があり、就業制限のかかる業務に無資格者を就かせていないかを確認する必要があるからです。その確認手段として一覧表の提出を求めているのであって、様式が法定されているわけではありません。
様式が自由だからこそ、欄の設計がそのまま抜けにつながります。次の項目が、いちばん抜けやすいところです。
免許・技能講習・特別教育は、根拠も義務も違う
現場で「資格」と呼ばれているものは、労働安全衛生法の上では主に、就業制限のかかる業務(61条)と、特別教育が必要な業務(59条3項)に分かれます。これとは別に、作業主任者を選任する作業(14条)があります。
| 区分 | 根拠 | 中身 | 証明書の携帯 | 記録の保存 |
|---|---|---|---|---|
| 免許 | 安衛法61条1項 安衛令20条 | 都道府県労働局長の免許。クレーン・デリック運転士(つり上げ荷重5t以上のクレーン)、移動式クレーン運転士(同5t以上)など | 義務あり (61条3項) | 事業者の保存義務の定めは無い(修了証は本人が持つ) |
| 技能講習 | 安衛法61条1項 安衛令20条 | 登録教習機関の修了。玉掛け(つり上げ荷重1t以上)、車両系建設機械の運転(機体重量3t以上)、フォークリフトの運転(最大荷重1t以上)など | 義務あり (61条3項) | 事業者の保存義務の定めは無い(修了証は本人が持つ) |
| 特別教育 | 安衛法59条3項 安衛則36条 | 事業者が自ら行う教育。低圧電気取扱、アーク溶接、足場の組立て等の業務など | 法令上の携帯義務は無い | 3年間 (安衛則38条) |
| 作業主任者 | 安衛法14条 安衛令6条 | 免許または技能講習を修了した者から選任。ガス溶接作業主任者(免許)、足場の組立て等作業主任者(技能講習)など | 61条3項の対象ではない | 氏名と職務を作業場に掲示する等で周知(安衛則18条) |
作業主任者の免許や技能講習も、一覧表には同じように書いて構いません。ただし根拠は61条ではなく14条です。配布している様式では区分を「免許」「技能講習」から選び、資格名に「〇〇作業主任者」まで書いておくと、61条3項の携帯確認の対象(運転や玉掛けなどの業務)と見分けられます。
ここがこの書類のいちばんの分かれ目です。
就業制限業務(免許・技能講習)には、証明書の携帯義務があります。労働安全衛生法61条3項は、当該業務に従事するときは免許証その他その資格を証する書面を携帯していなければならない、と定めています。一覧表に書いてあるだけでは足りず、本人が現場に持っていなければなりません。一覧表に「携帯確認」の欄を置く意味はここにあります。
一方で特別教育に修了証番号はありません。事業者が自ら行う教育なので、登録機関が発行する番号が存在しないのが普通です。番号欄を1つしか作らないと、ここで手が止まります。外部機関に委託した場合に受講証が出ることはありますが、法令が求めているのは番号ではなく実施記録を3年間残すこと(安衛則38条)です。
有効期限がある資格と、無い資格
もうひとつ間違いやすいのが有効期限です。技能講習と特別教育に有効期限はありません。一度修了すれば失効しないので、期限欄を全行埋めようとすると行き詰まります。
期限や更新の考え方があるのは、次のようなものです。
| 種類 | 期限の考え方 |
|---|---|
| 技能講習・特別教育 | 期限なし。失効しない |
| 職長・安全衛生責任者教育 | 法令上の有効期限は無いが、概ね5年ごとなどに能力向上教育に準じた教育を行うよう、通達(安全衛生教育等推進要綱、平成3年1月21日 基発第39号)で示されている。元請が5年以内の受講を求めることがある |
| 危険物取扱者免状 | 資格自体は失効しないが、免状の写真は過去10年以内に撮影したものとされ(危険物の規制に関する規則51条2項)、記載事項に変更が生じたときは書換えの申請が必要(危険物の規制に関する政令34条) |
| 各種健康診断・特殊健康診断 | 資格ではないが、就業の前提として期限管理が要る。有機溶剤・石綿など |
つまり期限欄は「全部埋める欄」ではなく「期限がある資格だけ埋める欄」です。配布している様式では、期限を入れた行だけ残日数が自動で出て、60日を切ると色が変わるようにしてあります。空欄の行は何も起きません。
掲示するときの個人情報
有資格者一覧表は現場に掲示することがあります。掲示する場合は、一覧表に入れる情報を必要な範囲に絞ってください。
この書類の目的は「就業制限業務に有資格者が就いていること」を確認することなので、そのために要るのは氏名・職種・資格名・区分・交付年月日・番号までです。生年月日、住所、連絡先、健康診断の結果は、この目的には必要ありません。作業員名簿に書く内容とは目的が違うので、同じ情報を機械的に転記しないほうがよいです。
配布している様式に生年月日や住所の欄を置いていないのは、この理由によるものです。元請から指定様式で求められた場合はそちらに従ってください。
様式の使い方
配布している 有資格者一覧表 は、次の構成になっています。
| シート | 中身 |
|---|---|
| 記入シート | 実際に使うシート。職種と区分はドロップダウン、残日数は自動計算 |
| 記入例 | 重機オペレーター・とび工・電工・溶接工など6名分の記入例。期限が切れている行の書き方まで入れています |
| この様式について | 根拠法令・使い方・注意事項 |
使うときの順番は、人ごとではなく資格ごとに1行です。1人が3つの資格を持っていれば3行になります。人ごとに1行にまとめると、区分も番号も期限も混ざって、結局どれがどれだか分からなくなります。
A4横1枚に収まる印刷範囲を設定してあり、PDFも同梱しています。現場に貼るだけなら印刷して手書きでも使えます。
有資格者一覧表にかかわる最近の動き(2026年10月時点)
有資格者一覧表そのものを定めた法令の改正はありません。ただし、一覧表に載せる資格の種類や、一覧表で確認する相手の範囲にかかわる改正が続いています。確かめられたものを日付順に並べます。
| 時期 | できごと | 根拠 |
|---|---|---|
| 2024年2月 | テールゲートリフターの操作の業務(荷の積み卸しを伴うもの)が特別教育の対象になる | 安衛則36条5号の4 |
| 2025年5月14日 | 改正労働安全衛生法(令和7年法律第33号)が公布。個人事業者等(一人親方など)を含む「作業従事者」への災害防止対策が盛り込まれる | 改正法の概要 |
| 2026年4月1日 | 改正法の主な部分が施行。注文者や元方事業者が講じる措置の対象が、労働者だけでなく一人親方などの作業従事者に広がる | 改正法の概要 |
| 2026年5月27日 | 令和7年の労働災害の確定値が公表。全産業の死亡者は700人で過去最少、建設業は214人、墜落・転落による死亡は186人 | 厚生労働省 |
| 2027年1月1日・4月1日(予定) | 個人事業者等自身が講じる措置(安全衛生教育の受講など)の一部が施行される予定 | 改正法の概要 |
ポイントはここです。2026年4月からは、元方が安全を確認する相手に一人親方なども含まれる形になりました。一覧表に自社の労働者だけを載せている場合は、現場に入る一人親方の資格も同じ表で確認できるようにしておくと、元請とのやり取りが一度で済みます。どこまでを求めるかは元請の判断なので、提出先にも確認してください。
出典:厚生労働省 労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律の概要、厚生労働省 令和7年の労働災害発生状況、e-Gov法令検索(労働安全衛生規則)。確認日は2026年10月3日です。資格の要否は所轄の労働基準監督署にご確認ください。
有資格者一覧表に出てくる用語
有資格者一覧表では、法令の言葉と現場の呼び名が並びます。意味と出どころを表にしておきます。
| 用語 | 意味 | 出典 |
|---|---|---|
| 有資格者一覧表 | 現場で就く業務に必要な資格を持っていることを一覧にした書類。法令上の定義はない | なし |
| 就業制限業務 | 免許または技能講習の修了などが無ければ就かせてはならない業務。クレーンの運転、玉掛けなど | 安衛法61条1項・安衛令20条 |
| 免許 | 都道府県労働局長が与える免許 | 安衛法61条1項・72条 |
| 技能講習 | 都道府県労働局長の登録を受けた者(登録教習機関)が行う講習 | 安衛法61条1項・76条 |
| 特別教育 | 危険・有害な業務に就かせるときに、事業者が行う安全衛生のための特別の教育。記録は3年間保存 | 安衛法59条3項・安衛則36条・38条 |
| 作業主任者 | 政令で定める作業ごとに、免許を受けた者または技能講習を修了した者から選任し、労働者の指揮などを行わせる者 | 安衛法14条・安衛令6条 |
| 職長教育 | 新たに職長などに就く者に行う教育。対象の業種は政令で定められている | 安衛法60条 |
| 安全衛生責任者 | 特定元方事業者以外の請負人が選任する者。安全衛生責任者教育は通達に基づくもので、法令上の受講義務の規定はない | 安衛法16条 |
| 資格を証する書面 | 就業制限業務に従事するときに携帯する免許証・技能講習修了証など | 安衛法61条3項 |
有資格者一覧表と一緒に押さえておきたいこと
有資格者一覧表は、欄の設計さえ決まれば作るのは難しくありません。そのうえで、テンプレートだけでは見えにくい点を3つ挙げます。
有資格者一覧表の掲示に法律上の義務はない
有資格者一覧表を現場に掲示すること自体を定めた法令はありません。法令が掲示などで周知することを求めているのは、作業主任者の氏名と、その者に行わせる事項です(安衛則18条)。現場で一覧表を掲示している例は多いですが、これは元請の指示や現場の運用によるものです。作業主任者の掲示を一覧表で兼ねる場合は、作業主任者の行に「行わせる事項」まで書いておくと、18条の求めと形がそろいます。
特別教育の「証拠」は一覧表ではなく記録
特別教育を行ったときは、受講者・科目などの記録を作成して3年間保存することとされています(安衛則38条)。一覧表は、この記録から書き写した要約です。一覧表の「特別教育」の行は、元の記録をたどれる形(実施日や実施した機関の名前)にしておくと、元請や監督署に聞かれたときに記録まで一度でたどれます。記録の残し方は安全衛生教育記録の様式で扱っています。
同じ機械でも、境目の数字で区分が変わる
運転の資格は、機械の大きさで免許・技能講習・特別教育が分かれます。たとえばフォークリフトは最大荷重1トン、車両系建設機械(整地・運搬・積込み用など)は機体重量3トン、玉掛けはつり上げ荷重1トンが境目です(安衛令20条11号・12号・16号、安衛則36条5号・9号・19号)。一覧表の資格名には「〇トン以上」「〇トン未満」まで書いておくと、現場の機械と資格が合っているかをその場で確かめられます。
よくある質問
- Q. 有資格者一覧表に決まった様式はありますか
- 法令で定められた様式はありません。全建統一様式にも含まれていないため、元請ごとに欄が異なります。提出先から様式を渡されている場合はそちらを使ってください。指定が無い場合は、就業制限業務に有資格者が就いていることを確認できる項目(氏名・職種・資格名・区分・交付年月日・番号)が揃っていれば足ります。
- Q. 特別教育も一覧表に書く必要がありますか
- 元請の求めによりますが、書いておくほうが安全です。特別教育が必要な業務(労働安全衛生規則36条)に無資格で就かせることはできないため、確認対象になります。ただし修了証番号が無いのが普通なので、区分の欄で「特別教育」と分かるようにしておくと、番号の空欄が不備と誤解されません。
- Q. 技能講習の修了証に有効期限はありますか
- ありません。一度修了すれば失効しないため、有効期限の欄は空欄で構いません。期限の考え方があるのは、職長・安全衛生責任者教育(概ね5年ごとの教育が安全衛生教育等推進要綱で示されている)や、危険物取扱者免状の写真(過去10年以内に撮影したものとされ、超えたら書換え)などです。
- Q. 一覧表に書いてあれば、修了証は現場に持って行かなくてよいですか
- いいえ。就業制限業務(免許・技能講習が必要な業務)に従事するときは、免許証その他その資格を証する書面を携帯していなければならないと労働安全衛生法61条3項が定めています。一覧表の提出とは別の義務です。配布している様式に「証明書 携帯確認」の欄を置いているのはこのためです。
- Q. 作業員名簿と有資格者一覧表は何が違いますか
- 目的が違います。作業員名簿は現場に入る作業員の把握(雇用関係・社会保険・緊急連絡先など)が目的で、全建統一様式第5号が使われます。有資格者一覧表は就業制限業務に有資格者が就いているかの確認が目的で、法定の様式はありません。目的が違うので、掲示する場合は書く情報の範囲も分けて考えてください。
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