有資格者一覧表の作り方——免許・技能講習・特別教育を分けて書く
有資格者一覧表は、現場に入る作業員がどの資格を持っているかを1枚にまとめて元請に出す書類です。安全書類(グリーンファイル)の一部として求められることが多いのですが、この書類には決まった様式がありません。全建統一様式にも定めがなく、元請ごとに欄がばらばらです。
様式が決まっていないということは、何を書けば足りるのかを自分で判断しなければならないということです。ここで多くの表が同じ間違い方をしています。氏名と資格名だけを並べて、免許も技能講習も特別教育も同じ欄に混ぜてしまう。この3つは根拠になる条文が違い、証明書を携帯する義務があるかどうかも違います。
この記事では、条文をもとに「何を書けば足りるのか」を整理し、区分を分けて書ける様式を配布します。
有資格者一覧表に法定の様式は無い
まず前提を確認します。有資格者一覧表そのものを定めた法令はありません。全建統一様式(全国建設業協会)にも、この名前の様式は含まれていません。
ではなぜ提出を求められるのか。元請には、下請の労働者を含めて現場全体の安全衛生を統括する立場があり、就業制限のかかる業務に無資格者を就かせていないかを確認する必要があるからです。その確認手段として一覧表の提出を求めているのであって、様式が法定されているわけではありません。
様式が自由だからこそ、欄の設計がそのまま抜けにつながります。次の項目が、いちばん抜けやすいところです。
免許・技能講習・特別教育は、根拠も義務も違う
資格と呼ばれているものを、労働安全衛生法は大きく2つに分けています。就業制限のかかる業務と、特別教育が必要な業務です。
| 区分 | 根拠 | 中身 | 証明書の携帯 | 記録の保存 |
|---|---|---|---|---|
| 免許 | 安衛法61条1項 | 都道府県労働局長の免許。移動式クレーン運転士、ガス溶接作業主任者など | 義務あり (61条3項) | — |
| 技能講習 | 安衛法61条1項 | 登録教習機関の修了。玉掛け、車両系建設機械、足場の組立て等作業主任者など | 義務あり (61条3項) | — |
| 特別教育 | 安衛法59条3項 安衛則36条 | 事業者が自ら行う教育。低圧電気取扱、アーク溶接、足場の組立て等の業務など | 法令上の携帯義務は無い | 3年間 (安衛則38条) |
ここがこの書類のいちばんの分かれ目です。
就業制限業務(免許・技能講習)には、証明書の携帯義務があります。労働安全衛生法61条3項は、当該業務に従事するときは免許証その他その資格を証する書面を携帯していなければならない、と定めています。一覧表に書いてあるだけでは足りず、本人が現場に持っていなければなりません。一覧表に「携帯確認」の欄を置く意味はここにあります。
一方で特別教育に修了証番号はありません。事業者が自ら行う教育なので、登録機関が発行する番号が存在しないのが普通です。番号欄を1つしか作らないと、ここで手が止まります。外部機関に委託した場合に受講証が出ることはありますが、法令が求めているのは番号ではなく実施記録を3年間残すこと(安衛則38条)です。
有効期限がある資格と、無い資格
もうひとつ間違いやすいのが有効期限です。技能講習と特別教育に有効期限はありません。一度修了すれば失効しないので、期限欄を全行埋めようとすると行き詰まります。
期限や更新の考え方があるのは、次のようなものです。
| 種類 | 期限の考え方 |
|---|---|
| 技能講習・特別教育 | 期限なし。失効しない |
| 職長・安全衛生責任者教育 | 法令上の有効期限は無いが、おおむね5年ごとの能力向上教育が行政通達で示されている。元請が5年以内の受講を求めることがある |
| 危険物取扱者免状 | 資格自体は失効しないが、免状の写真の書換えが概ね10年ごとに必要(消防法) |
| 各種健康診断・特殊健康診断 | 資格ではないが、就業の前提として期限管理が要る。有機溶剤・石綿など |
つまり期限欄は「全部埋める欄」ではなく「期限がある資格だけ埋める欄」です。配布している様式では、期限を入れた行だけ残日数が自動で出て、60日を切ると色が変わるようにしてあります。空欄の行は何も起きません。
掲示するときの個人情報
有資格者一覧表は現場に掲示することがあります。掲示する場合は、一覧表に入れる情報を必要な範囲に絞ってください。
この書類の目的は「就業制限業務に有資格者が就いていること」を確認することなので、そのために要るのは氏名・職種・資格名・区分・交付年月日・番号までです。生年月日、住所、連絡先、健康診断の結果は、この目的には必要ありません。作業員名簿に書く内容とは目的が違うので、同じ情報を機械的に転記しないほうがよいです。
配布している様式に生年月日や住所の欄を置いていないのは、この理由によるものです。元請から指定様式で求められた場合はそちらに従ってください。
様式の使い方
配布している 有資格者一覧表 は、次の構成になっています。
| シート | 中身 |
|---|---|
| 記入シート | 実際に使うシート。職種と区分はドロップダウン、残日数は自動計算 |
| 記入例 | 重機オペレーター・とび工・電工・溶接工など6名分の記入例。期限が切れている行の書き方まで入れています |
| この様式について | 根拠法令・使い方・注意事項 |
使うときの順番は、人ごとではなく資格ごとに1行です。1人が3つの資格を持っていれば3行になります。人ごとに1行にまとめると、区分も番号も期限も混ざって、結局どれがどれだか分からなくなります。
A4横1枚に収まる印刷範囲を設定してあり、PDFも同梱しています。現場に貼るだけなら印刷して手書きでも使えます。
よくある質問
- Q. 有資格者一覧表に決まった様式はありますか
- 法令で定められた様式はありません。全建統一様式にも含まれていないため、元請ごとに欄が異なります。提出先から様式を渡されている場合はそちらを使ってください。指定が無い場合は、就業制限業務に有資格者が就いていることを確認できる項目(氏名・職種・資格名・区分・交付年月日・番号)が揃っていれば足ります。
- Q. 特別教育も一覧表に書く必要がありますか
- 元請の求めによりますが、書いておくほうが安全です。特別教育が必要な業務(労働安全衛生規則36条)に無資格で就かせることはできないため、確認対象になります。ただし修了証番号が無いのが普通なので、区分の欄で「特別教育」と分かるようにしておくと、番号の空欄が不備と誤解されません。
- Q. 技能講習の修了証に有効期限はありますか
- ありません。一度修了すれば失効しないため、有効期限の欄は空欄で構いません。期限の考え方があるのは、職長・安全衛生責任者教育(おおむね5年ごとの能力向上教育が通達で示されている)や、危険物取扱者免状の写真書換え(概ね10年ごと)などです。
- Q. 一覧表に書いてあれば、修了証は現場に持って行かなくてよいですか
- いいえ。就業制限業務(免許・技能講習が必要な業務)に従事するときは、免許証その他その資格を証する書面を携帯していなければならないと労働安全衛生法61条3項が定めています。一覧表の提出とは別の義務です。配布している様式に「証明書 携帯確認」の欄を置いているのはこのためです。
- Q. 作業員名簿と有資格者一覧表は何が違いますか
- 目的が違います。作業員名簿は現場に入る作業員の把握(雇用関係・社会保険・緊急連絡先など)が目的で、全建統一様式第5号が使われます。有資格者一覧表は就業制限業務に有資格者が就いているかの確認が目的で、法定の様式はありません。目的が違うので、掲示する場合は書く情報の範囲も分けて考えてください。
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本記事は一般的な情報の整理であり、法令への適合を保証するものではありません。個別の義務内容は所管行政庁または専門家にご確認ください。記事の内容は2026-08-15時点の情報です。