建設機械・荷役車両

特定自主検査と定期自主検査の違い|対象機械・周期・資格・記録の保存を整理する

公開 2026-08-14更新 2026-10-03 執筆 点検板 編集部
点検板 編集部法令の原文と省庁の資料で確認:2026年10月3日

フォークリフトや建設機械を導入すると、「定期自主検査」「特定自主検査」という2つの似た言葉に出会います。どちらも労働安全衛生法に基づく検査ですが、周期・実施できる人・やることが異なり、混同すると未実施=法令違反の状態になります。

この記事では、2つの検査の違いと対象機械、検査を実施できる資格、検査標章(ステッカー)、記録の3年保存までを整理します。毎日の作業開始前点検も含めた「3層構造」で理解するのがいちばん分かりやすいので、その形で解説します。

フォークリフト点検表(Excel・無料)フォークリフトの作業開始前点検・月例の定期自主検査・年次の特定自主検査を1ファイルで記録できる様式。月例は装置ごとに36項目まで落とし込み、どの行が安衛則151条の22の法定項目かを「根拠」欄で示しています。
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この記事の内容(10項目)

結論|点検・検査は3層構造で理解する

フォークリフト・建機に義務付けられた点検・検査は、次の3層で整理できます。

層頻度誰ができるか記録
①作業開始前点検その日の作業前(毎日)運転者・職場の担当者保存義務なし
(残すことを推奨)
②定期自主検査(月例)おおむね1ヶ月ごと
(条文の文言は機種で違う。下の表)
資格要件なし
(事業者の責任で実施)
3年間保存
③特定自主検査おおむね1年ごと
(不整地運搬車だけ2年。下の表)
検査業者または有資格者のみ3年間保存+検査標章

つまり特定自主検査は、年次の定期自主検査のうち、対象機械について資格者による実施が義務付けられたものです。「定期自主検査の特別版」と理解すると、2つの言葉の関係がすっきりします。

建機・フォークリフトの点検3層構造
毎日作業開始前点検|運転者が実施。記録は残すことを推奨
毎月定期自主検査(月例)|資格不要。記録は3年保存
毎年特定自主検査|検査業者/有資格者のみ。検査標章+記録3年保存
下の層ほど実施のハードルが上がり、証拠(記録・標章)の要求も強くなる

対象となる機械|フォークリフトから建機・高所作業車まで

特定自主検査(年次・資格者による検査)の対象となる機械は次の5つです(労働安全衛生法45条2項・施行令15条2項)。

  • フォークリフト
  • 車両系建設機械|油圧ショベル、ブルドーザ、トラクターショベル(ホイールローダー)、ローラー(締固め用機械)、くい打機、解体用機械 など
  • 高所作業車|作業床の高さ2m以上のもの
  • 不整地運搬車
  • 動力プレス機械(プレスは検査内容が別体系)

これらの機械には月例の定期自主検査も同時に義務付けられています。条文は機械ごとに分かれていて、周期の文言も機械ごとに違います。

機械特定自主検査(条文の文言)定期自主検査=月例(条文の文言)条文
車両系建設機械
油圧ショベル・ブルドーザ・コンクリートポンプ車 など
一年以内ごとに一回一月以内ごとに一回安衛則167条/168条
高所作業車一年以内ごとに一回一月以内ごとに一回安衛則194条の23/194条の24
フォークリフト一年を超えない期間ごとに一回一月を超えない期間ごとに一回安衛則151条の21/151条の22
不整地運搬車二年を超えない期間ごとに一回一月を超えない期間ごとに一回安衛則151条の53/151条の54

検査項目の細目は機械ごとに違いますが、「ブレーキ・操作装置・作業装置」「ワイヤロープ・チェーン」といった大枠は共通しています。

よくある間違い|「月例点検」という言葉は法令にない

実務では「月例点検」と呼びますが、労働安全衛生規則にこの語はありません。条文が定めているのは「一月以内ごとに一回」または「一月を超えない期間ごとに一回」の定期自主検査で、しかも上の表のとおり文言が機械ごとに違います。フォークリフトの解説をそのまま建設機械や高所作業車に当てはめている資料が少なくないため、自社の機械の条文で確認してください。

もうひとつ間違いが多いのが不整地運搬車です。他の機械と同じ1年周期で紹介されることがありますが、条文は「二年を超えない期間ごとに一回」で、特定自主検査は2年ごとです(安衛則151条の53)。

条文の原文はe-Gov法令検索(労働安全衛生規則)で確認できます。

特定自主検査|誰が実施できるか

特定自主検査を実施できるのは、次のいずれかです。

  • 検査業者|厚生労働省または都道府県労働局に備える検査業者名簿に登録を受けた業者(安衛法54条の3)。整備部門を持たない事業所では、検査業者に頼む形が一般的です。
  • 事業内検査者(有資格者)|学歴に応じた点検・整備の実務経験などを満たし、厚生労働大臣が定める研修を修了した自社の従業員など(フォークリフトは安衛則151条の24第2項)。

検査を実施したら、機械の見やすい箇所に、特定自主検査を行った年月が分かる検査標章(ステッカー)を貼り付けます(安衛則151条の24第5項ほか)。現場でひと目で検査済みかを確認できる仕組みです。リース・レンタル機では、この標章で前回の検査の年月を確かめるのが実務の第一歩になります。

費用は機種・台数・地域で変わるため、検査業者から見積もりを取って比べるのが確実です。考え方は特定自主検査の費用にまとめています。台数が多い場合は、月例検査の代行やメンテナンス契約とセットで相談すると手間が減ります。

月例の定期自主検査|資格は不要だが、記録は必須

月例(車両系建設機械・高所作業車は「一月以内ごと」、フォークリフト・不整地運搬車は「一月を超えない期間ごと」)の定期自主検査には資格要件がなく、事業者の責任で実施します。実務では整備担当者・職長が行い、判断に迷う項目を整備業者に依頼する形が一般的です。

1ヶ月月例検査の上限間隔
1年特定自主検査の上限間隔
(不整地運搬車は2年)
3年検査記録の保存義務
6事項記録に書く項目
(年月日・方法・箇所など)

注意すべきは記録です。月例検査は検査年月日・検査方法・検査箇所・検査の結果・検査を実施した者の氏名・異常時の補修内容等を記録し、3年間保存する必要があります。法45条1項は検査を「行い、及びその結果を記録」することまでを求めているので、記録が無いと、検査をしたことを示せません。

月例検査でもうひとつ多い失敗が、「先月の検査日から1ヶ月を超えてしまう」ズレの累積です。毎月「第1営業日」「5日」のように日を固定してしまうのが、最も簡単で確実な運用です。

月例検査の記録を1枚の台帳に

複数台の建機・フォークリフトの月例検査を1枚で記録し、次回検査期限を自動計算する無料Excelを配布しています。記録3年保存にそのまま使えます。

車両系建設機械 定期自主検査 記録表(Excel・無料)を見る

作業開始前点検|毎日の1分が検査を支える

3層の土台になるのが、その日の作業前に運転者が行う作業開始前点検です。フォークリフトなら「制動装置と操縦装置」「荷役装置と油圧装置」「車輪」「前照灯・後照灯・方向指示器・警報装置」の4号(安衛則151条の25)、高所作業車なら制動装置・操作装置・作業装置の機能(194条の27)、車両系建設機械ならブレーキとクラッチの機能(170条)と、条文で項目が定められています。

作業開始前点検の記録には法令上の保存義務はありませんが、記録を残しておくと役に立ちます。異常の発見日が特定できると、月例検査・修理との対応関係が明確になり、事故時には「日常的に点検していた」証拠になるからです。当サイトの機械別テンプレート(フォークリフト・高所作業車・油圧ショベル)は、始業前・月例・年次の3層を1ファイルで記録できる構成にしています。

フォークリフト点検表(Excel・無料)フォークリフトの作業開始前点検・月例の定期自主検査・年次の特定自主検査を1ファイルで記録できる様式。月例は装置ごとに36項目まで落とし込み、どの行が安衛則151条の22の法定項目かを「根拠」欄で示しています。
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リース・レンタル機の扱いと、よくある違反パターン

リース・レンタルの機械では、義務の分担がよく問題になります。条文に沿って整理すると次のとおりです。

  • 貸す側(機械等貸与者)|貸す前に機械を点検し、異常があれば補修などの整備をすること、能力や使用上の注意事項を書いた書面を渡すことが求められています(安衛則666条)。
  • 作業開始前点検|使用する事業者(借りた側)の義務。毎日必要です。
  • 月例・年次の定期自主検査|条文の主語は機械を使う事業者です。借りている期間に検査の期限が来る場合に誰が行うかは、契約で決めておくと抜けません。
  • 特定自主検査(年次)|レンタル機は検査済みの機体が貸し出されることが多いので、検査標章の年月を借りるたびに確認してください。

現場で起きやすい抜けは、①月例検査の記録がない、②検査標章の年月から1年を過ぎたまま使っている、③作業開始前点検が形だけになり異常の報告が上がらない、の3つです。いずれも様式と期限管理を整えれば防げるものです。まず自社の機械の一覧と検査期限の棚卸しから始めると進めやすくなります。レンタル機の扱いはレンタル建機の特定自主検査で詳しく扱っています。

特定自主検査と定期自主検査の違いにかかわる最近の動き(2026年10月時点)

特定自主検査と定期自主検査の違いは、2025年の法改正で「基準」と「指針」の分かれ目として、よりはっきりしました。確かめられた出来事を日付順に並べます。

日付出来事2つの検査の違いへの影響根拠
2025年5月14日改正労働安全衛生法(令和7年法律第33号)公布特定自主検査は、厚生労働大臣の定める基準に従って行う義務になった(法45条3項)。それ以外の定期自主検査は、引き続き指針(45条4項)厚生労働省 改正法の資料
2025年12月24日車両系建設機械などの特定自主検査の基準を告示特定自主検査の側の「定期自主検査指針」は廃止され、告示の基準に置き換わった厚生労働省 告示
2026年1月1日基準の適用と、基準に従う義務の施行年次の特定自主検査は、告示の検査項目・判定基準で行う厚生労働省 告示
2026年4月1日改正労働安全衛生法の主な部分が施行機械の貸与者などの措置の対象が、一人親方などの作業従事者に広がった厚生労働省 改正法の資料
2026年4月30日天井クレーンの定期自主検査指針を公示(公示第29号・第30号、2027年4月1日適用)特定自主検査ではない定期自主検査の側でも、指針の中身が入れ替わっている厚生労働省 公示

ポイントはここです。特定自主検査は告示の基準から外れた様式では成り立たず、それ以外の定期自主検査は指針を目安に自社で組み立てられる、という違いが条文の上でも分かれました。新しい基準の中身は特定自主検査の新基準で整理しています。

出典:厚生労働省 労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律(令和7年法律第33号)の資料/厚生労働省 特定自主検査の基準の告示/厚生労働省 自主検査指針公示第29号/e-Gov法令検索 労働安全衛生法45条

確認日は2026年10月3日です。自社の機械がどちらに当たるかは、所轄の労働基準監督署に確認してください。

特定自主検査と定期自主検査の違いに出てくる用語

特定自主検査と定期自主検査の違いを読むときに出てくる言葉を、条文の書き方で並べます。

用語意味出典
定期自主検査政令で定める機械等について、事業者が定期に行い、結果を記録する検査安衛法45条1項、安衛令15条1項
特定自主検査定期自主検査のうち、資格を持つ者か検査業者が行わなければならないもの。対象は5機種の年次の検査安衛法45条2項、安衛令15条2項
検査業者検査業者名簿に登録を受け、他人の求めに応じて特定自主検査を行う者安衛法45条2項・54条の3
検査標章特定自主検査を行った年月が分かるように、機械の見やすい箇所に貼るもの安衛則151条の24第5項・169条の2第8項ほか
作業開始前点検その日の作業を始める前の点検。記録の保存義務の規定はない安衛則151条の25・170条・194条の27
特自検特定自主検査の略称法令上の定義はない
月例点検・年次点検月1回・年1回の定期自主検査を指す現場の呼び方法令上の定義はない

特定自主検査と定期自主検査の違いと一緒に押さえておきたいこと

特定自主検査と定期自主検査の違いを調べている人がよく迷う点を、4つ取り上げます。

クレーンに特定自主検査はない

クレーンは定期自主検査の対象ですが、特定自主検査の対象ではありません。令15条2項が指定しているのは、フォークリフト・建設機械・不整地運搬車・高所作業車・動力プレスの5つだけです。クレーンは、年次の定期自主検査(荷重試験を伴う。クレーン則34条)と月例の定期自主検査(35条)を行い、つり上げ荷重3トン以上のものは、これとは別に検査証の更新のための性能検査を受けます。点検表の作り方はクレーンの点検表の作り方にまとめています。

特定自主検査のステッカー(検査標章)は年月を見る

検査標章には、特定自主検査を行った年月が分かるように表示されています。次の期限は、その年月から1年(不整地運搬車は2年)を超えないうちです。月例の定期自主検査には標章の定めがないので、月例は記録で示すことになります。期限の一覧は点検期限管理表で管理できます。

車検の点検をした部分は、特定自主検査を省ける

ナンバー付きのフォークリフトや建設機械などで、道路運送車両法48条1項の定期点検を行った場合は、その点検をした部分については年次の自主検査を行わなくてよいとされています(安衛則151条の24第3項、169条の2第6項、194条の26第3項、151条の56第3項)。点検をしていない部分は残るので、どこが重なっているかを整備記録で確かめておきます。

特定自主検査の資格と、検査業者に頼むときの記録

自社で特定自主検査を行う場合は、機種ごとに定められた資格が要ります。検査業者に頼む場合は、記録の「検査を実施した者の氏名」の欄が「検査業者の名称」に読み替えられます(安衛則151条の24第4項ほか)。記録を3年保存するのは、頼んだ側の事業者です。検査業者の選び方は特定自主検査の検査業者で扱っています。

点検板 編集部がまとめました様式を無料で配り、使い方と法令の決まりを記事にまとめています。法令の数字は e-Gov の原文で確かめてから載せています。

よくある質問

Q. 特定自主検査と車検は同じものですか?
別の制度です。特定自主検査は労働安全衛生法に基づく検査で、公道走行のための車検(道路運送車両法)とは目的も根拠も異なります。ただし、道路運送車両法48条1項の定期点検を行った部分については、年次の自主検査を行わなくてよいとされています(安衛則151条の24第3項ほか)。
Q. 月例検査を自社で行う場合、資格は必要ですか?
月例の定期自主検査に資格要件はありません。ただし検査項目を適切に判断できる人が行う必要があり、記録の3年保存は必須です。年次の特定自主検査は検査業者または有資格者のみ実施できます。
Q. 記録の様式は決まっていますか?
法定の統一様式はありません。検査年月日・方法・箇所・結果・実施者・補修内容が記録されていれば、自社様式やExcelで問題ありません。当サイトでも無料のExcel様式を配布しています。なお、年次の特定自主検査の検査項目と判定基準は告示で決まっているため、そこは告示に沿った様式にします。
Q. 検査を忘れて期間が空いてしまいました
まず速やかに検査を実施し、記録を残してください。空白期間の日付をさかのぼって記録を作ると、事実と違う記録になります。実施した日付のまま残してください。再発防止には検査期限の一覧管理が有効です。
フォークリフト点検表(Excel・無料)フォークリフトの作業開始前点検・月例の定期自主検査・年次の特定自主検査を1ファイルで記録できる様式。月例は装置ごとに36項目まで落とし込み、どの行が安衛則151条の22の法定項目かを「根拠」欄で示しています。
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本記事は一般的な情報の整理であり、法令への適合を保証するものではありません。個別の義務内容は所管行政庁または専門家にご確認ください。記事の内容は2026-10-03時点の情報です。