法定整備とは?車検整備との違いと、中古車の「法定整備付き」の意味を解説
中古車のサイトや店頭で「法定整備付き」「法定整備なし」という表示を見て、この記事にたどり着いた方が多いと思います。あるいは、車検の見積りに「法定整備費用」という項目があって、車検代と何が違うのか気になった方もいるでしょう。
法定整備とは、ひとことで言えば法定点検(12ヶ月点検・24ヶ月点検)を行い、その結果必要になった整備をすることです。この記事では、車検との関係、中古車購入時の「法定整備付き/なし」の意味と落とし穴、点検整備記録簿の見方までを整理します。
この記事の内容(9項目)
法定整備とは|「法定点検+必要な整備」のこと
法定整備は法律上の正式な用語ではなく、実務・販売の現場で使われる言葉です。指しているのは、道路運送車両法48条に基づく法定点検(定期点検整備)と、その点検で見つかった不具合の整備をセットにしたものです。
- 12ヶ月点検|自家用乗用車は1年ごと・29項目。ブレーキ・かじ取り・原動機などの状態を見る
- 24ヶ月点検|2年ごと・1年ごとの29項目を含む60項目。車検の時期に合わせて実施されることが多い
項目数は国土交通省の案内によるもので、2021年10月からは車載式故障診断装置の診断結果を見る「OBD点検」も加わっています。点検の間隔は車の用途で違い、自家用の貨物車(中小型トラック・4ナンバーのバンなど)は6ヶ月ごと、事業用の車は3ヶ月ごとです(道路運送車両法48条、自動車点検基準3条)。
点検はあくまで「調べる」行為なので、調べた結果ブレーキパッドの交換やオイル漏れの修理が必要なら、そこで初めて「整備」が発生します。「法定整備」という言葉は、この点検と整備をまとめて指す商慣行上の呼び名と理解してください。
実施した内容は点検整備記録簿に記録されます。この記録簿が、後述する中古車の「法定整備付き」の実体を確認する手がかりになります。
(自家用乗用車)
保存(自家用乗用車)
(付き/なし)
車検と法定整備の違い|「検査」と「整備」は別物
車検の見積りに「法定整備費用(24ヶ月点検整備)」が入っているため、車検=整備と誤解されがちですが、制度上は別のものです。
| 車検(継続検査) | 法定整備(定期点検整備) | |
|---|---|---|
| 目的 | 保安基準に適合しているかを検査時点で確認する | 点検で不具合を見つけ、故障・事故を予防する |
| 性質 | 合格しないと公道を走れない | 使用者の義務(道路運送車両法48条)。点検をしなかったことへの罰則の規定はない |
| やること | 検査ラインでの測定・確認 | 分解を含む点検と、必要になった部品交換・調整 |
ここで知っておきたいのが、車検は「整備なし」でも通せるという事実です。現在の制度では「前検査」といって、点検整備をせずに検査だけ先に受けることが認められています(ユーザー車検で使われる方法です)。つまり「車検に通った」ことは「整備された」ことを意味しません。
一般的なディーラー・整備工場の車検パックは「24ヶ月点検整備+検査代行」のセットなので、通常はここで法定整備も済んでいます。見積りの「法定整備費用」はこの点検整備部分の料金です。詳しい制度の関係は法定点検と車検の違いの記事でも解説しています。
中古車の「法定整備付き」「法定整備なし」「整備別」の意味
中古車の価格表示には、整備に関する表示があります。2023年10月1日からは、自動車公正取引協議会の規約で「定期点検整備付き」か「定期点検整備なし」のどちらかを明瞭に表示する形になりました。ここがこの記事でいちばん実益のある部分です。
| 表示 | 意味 | 注意点 |
|---|---|---|
| 法定整備付き (定期点検整備付き) | 販売店が定期点検整備を実施し、その費用は車両価格に含まれる | 「何をどこまでやるか」は店により幅がある。12ヶ月相当か24ヶ月相当か、記録簿が交付されるかを確認 |
| 法定整備なし (定期点検整備なし) | 定期点検整備を実施しないで販売する。要整備箇所がある場合はその旨が表示される | 購入後の点検整備は自分持ち。安く見えても整備費用を足して比較する |
| 整備別 (法定整備費用別途) | 2023年10月より前に多かった表示。整備費用を車両価格と別に請求する形 | 今の規約では、販売の条件にしている整備の費用を支払総額と別に請求すると「不当な価格表示」にあたるとされている |
ポイントは、「法定整備付き」の中身は店によって差が大きいことです。24ヶ月点検相当の分解点検+消耗品交換までやる店もあれば、点検のみで交換部品は別料金という店もあります。確認すべきは次の3つです。
- 整備の基準(12ヶ月点検か24ヶ月点検か)と、交換部品がどこまで含まれるか
- 整備を実施した証拠として点検整備記録簿が納車時にもらえるか
- 保証との関係(整備付きを条件に保証が付くケースが多い)
2023年10月1日からの規約では、価格は「支払総額」の名前で表示し、内訳として「車両価格」と「諸費用」を示します。定期点検整備と保証を付けて売る場合、その費用は「車両価格」に含めて表示するとされています。総額と内訳の両方を見る習慣をつけてください。
点検整備記録簿の見方|「整備された車」を書類で確認する
法定整備の実体を確認する唯一の書類が点検整備記録簿です。中古車選び・売却の両方で効くので、見方を覚えておきましょう。
- 実施日と走行距離|定期的に記録が続いている車は、前オーナーの管理が良い車です。空白期間が長い車は、その間の整備履歴が不明ということになります。
- 実施者|ディーラー・認証工場の名称と住所があるか。記録簿には点検・整備をした者の氏名または名称と住所を書くと定められています(自動車点検基準4条1項)。
- 交換部品の記載|ブレーキパッド・ベルト・オイル類の交換時期が分かると、購入後の出費を予測できます。
記録簿の保存期間は、自家用乗用車など1年ごとに点検する車で記載の日から2年、6ヶ月・3ヶ月ごとに点検する車で1年と定められています(自動車点検基準4条2項)。実際には車の履歴書として全期間分を保管しておく価値があります。売却時の査定でも「記録簿あり」はプラス評価です。
社用車の法定整備|台帳で「実施日」を管理する
会社の車両では、法定整備(12ヶ月点検)の実施漏れが起きやすいことは12ヶ月点検の記事で解説したとおりです。車検と違って期限が書類に見えないため、実施日からの間隔を台帳で数える仕組みが必要になります。営業用のバンや小型トラックなど自家用の貨物車は6ヶ月ごとなので、乗用車と同じ1年で数えていないかを先に確かめてください。
中古で導入した社用車は特に注意が必要です。「法定整備なし」で購入した車両は、納車直後に12ヶ月点検相当の点検整備を入れて起点を作ることをおすすめします。起点がないと、次回期限の管理が最初から狂います。
車両ごとの点検実施日と期限を1枚で管理
車検・自賠責・任意保険・法定12ヶ月点検の期限を車両ごとに並べ、12ヶ月点検は実施日から次回期限を自動計算する無料Excelを配布しています。
車検・保険 期限管理表(Excel・無料)を見る法定整備にかかわる最近の動き(2026年10月時点)
法定整備の中身である定期点検の決まりは、2021年10月にOBD点検が加わってから大きくは変わっていません。2023年以降に動いたのは、中古車の価格表示と、車検(継続検査)の側です。確かめられた出来事を日付順に並べます。
| 日付 | 出来事 | 法定整備への影響 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 2023年10月1日 | 中古車の価格表示が「支払総額」に変わる(自動車公正取引協議会の規約・規則の改正) | 定期点検整備の費用は車両価格に含め、「定期点検整備付き」か「定期点検整備なし」と表示する | 自動車公正取引協議会 |
| 2024年10月1日 | 車検でOBD検査が始まる(国産車) | 2021年10月1日以降のフルモデルチェンジ車が対象。電子制御装置の故障があれば、整備しないと車検に通らない | 国土交通省 |
| 2025年4月1日 | 車検を受けられる期間が、有効期間満了日の2か月前からに広がる | 2か月前から受けても残りの有効期間を失わない。点検整備の予約を早めに入れやすくなった | 国土交通省 近畿運輸局、道路運送車両法施行規則44条 |
| 2025年10月1日 | 車検でOBD検査が始まる(輸入車) | 2022年10月1日以降のフルモデルチェンジ車が対象 | 国土交通省 |
ポイントはここです。法定整備の項目そのものより、「いつ・どこで受けるか」と「中古車の表示」が変わっています。社用車の台帳では、車検の期限の2か月前を予約の目安にしておくと、年度末の混雑を避けやすくなります。
出典:自動車公正取引協議会 中古車の価格は10月1日から「支払総額」に変わります/国土交通省 OBD検査について/国土交通省 近畿運輸局 令和7年4月より車検を受けられる期間が延びます/国土交通省 点検整備の種類/e-Gov法令検索 道路運送車両法/e-Gov法令検索 自動車点検基準
確認日は2026年10月3日です。自分の車の点検の間隔や車検の扱いは、ディーラー・認証工場か、管轄の運輸支局に確認してください。
法定整備に出てくる用語
法定整備の見積り・中古車の表示・条文に出てくる言葉を、根拠と一緒に並べます。
| 用語 | 意味 | 出典 |
|---|---|---|
| 法定整備 | 法定点検(定期点検)と、その結果必要になった整備をまとめた呼び方 | 法令上の定義はない |
| 定期点検整備 | 車の用途に応じて3ヶ月・6ヶ月・1年ごとに、国土交通省令の基準で行う点検 | 道路運送車両法48条、自動車点検基準2条・3条 |
| 日常点検整備 | 灯火の点灯やブレーキの作動など、日常的に目視等で行う点検 | 道路運送車両法47条の2 |
| 点検整備記録簿 | 点検の年月日・結果・整備の概要などを書いて車に備え置く記録 | 道路運送車両法49条、自動車点検基準4条 |
| 特定整備 | 原動機・制動装置などを取り外して行う整備や、その作動に影響する整備。以前の「分解整備」にあたる | 道路運送車両法49条2項 |
| 継続検査(車検) | 自動車検査証の有効期間の満了後も使うときに受ける国の検査 | 道路運送車両法62条 |
| OBD点検 | 車載式故障診断装置の診断結果を点検する項目。2021年10月1日から定期点検に加わった | 自動車点検基準2条、国土交通省 |
| 定期点検整備付き/なし | 中古車の広告や値札で、定期点検整備をして売るかどうかを示す表示 | 自動車公正取引協議会の規約(法令上の定義はない) |
| 前検査 | 点検整備の前に車検の検査を先に受けるやり方 | 法令上の定義はない |
法定整備と一緒に押さえておきたいこと
法定整備について調べると、乗用車の話と会社の車の話が混ざってきます。分けておきたいところを3つ挙げます。
法定整備の間隔は、ナンバーと用途で決まる
自家用の乗用車は1年ごと、自家用の貨物車(中小型トラックや4ナンバーのバン)とレンタカーの乗用車は6ヶ月ごと、事業用の車や車両総重量8トン以上の自家用車は3ヶ月ごとです(道路運送車両法48条1項、自動車点検基準3条)。社用車を何台か持っているなら、台帳に「点検の間隔」の列を1つ足しておくと、乗用車と貨物車の数え違いを防げます。
法定整備をしないまま車検を通すと、勧告を受けることがある
前検査で車検に通っても、定期点検の義務がなくなるわけではありません。地方運輸局長が保安基準に合わない車に整備を命じる場面で、その不具合が劣化や摩耗によるもので、記録簿などを確かめた結果、定期点検をしていないことが分かったときは、点検と整備を勧告できると定められています(道路運送車両法54条1項・4項)。記録簿に点検の日付を残しておくことが、そのまま説明の材料になります。
「法定整備なし」で買った車は、記録簿の最後の日付を確かめる
「法定整備なし」の車でも、前の持ち主の記録簿が残っていれば、最後に定期点検をした日が分かります。次の期限はそこから数えるのが基本で、記録が無ければ納車後すぐに点検を入れて起点を作ります。社用車として入れるなら、社用車の日常点検表と合わせて、日常点検と定期点検の両方の記録を同じ場所に綴じておくと管理しやすくなります。
よくある質問
- Q. 法定整備は義務ですか?
- 法定整備の中身である法定点検(12ヶ月・24ヶ月点検)は道路運送車両法48条に基づく使用者の義務です。点検をしなかったことへの罰則の規定はありませんが、メーカー保証・査定・事故時の説明に実質的に影響します。
- Q. 「法定整備なし」の中古車は買わないほうがよいですか?
- 一概には言えません。価格が安い分、購入後に自分で点検整備を入れる前提なら合理的な選択です。ただし購入後の整備費用を上乗せした支払総額で比較すること、納車後すぐに点検を入れることが条件です。
- Q. 法定整備費用の相場はいくらですか?
- 車種・店・点検の種類で幅が大きく、決まった相場はありません。点検料に、交換部品が出ればその部品代・工賃が加わります。中古車では、定期点検整備付きなら費用は車両価格に含まれるので、点検の範囲(12ヶ月相当か24ヶ月相当か)と交換部品の扱いを確認してください。
- Q. 法定整備とリコール対応は違うものですか?
- 別物です。リコールはメーカーの設計・製造起因の不具合を無償修理する制度で、法定整備は使用者側の定期的な点検整備です。中古車購入時はリコールの未実施がないかも併せて確認すると安心です。
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本記事は一般的な情報の整理であり、法令への適合を保証するものではありません。個別の義務内容は所管行政庁または専門家にご確認ください。記事の内容は2026-10-03時点の情報です。