法定点検と車検の違いとは?受けないとどうなるかまで整理する
「車検を通したばかりなのに、ディーラーから法定点検の案内が来た。車検と何が違うの?」|車を持つと必ず一度は浮かぶ疑問です。両方とも道路運送車両法に基づく制度ですが、目的がまったく違います。
車検(継続検査)
公道を走ってよいかを国が確認する検査。受けないと走れない。自家用乗用車は2年ごと(初回3年)。法定点検(定期点検整備)
故障・事故を防ぐために使用者が行う点検。自家用乗用車は1年ごと(2年ごとの点検で項目が増える)。車検に通っても点検した事にはならない。ひとことで言えば、車検は「その車が公道を走ってよいか」を国が確認する検査、法定点検は「故障や事故を防ぐため」に使用者が行う点検です。この記事では2つの違いを表で整理し、法定点検を受けないとどうなるか、費用の目安、記録簿の扱い、社用車を複数台持つ会社の管理方法まで解説します。
中古車の広告にある「法定整備付き」も、この2つとは別の言葉です。何を指しているのかは法定整備とはで整理しました。
この記事の内容(10項目)
車検と法定点検の違い|比較表で見る
まず全体を比較表で押さえます。
| 車検(継続検査) | 法定点検(定期点検整備) | |
|---|---|---|
| 目的 | 保安基準に適合しているかを検査時点で確認する | 故障・事故を予防するために点検・整備する |
| 根拠 | 道路運送車両法第58条・第62条(継続検査) | 道路運送車両法第48条(定期点検整備) |
| 性質 | 受けないと公道を走れない(強制) | 使用者の義務(自家用乗用車は罰則なし) |
| 周期 | 自家用乗用車:初回3年、以後2年ごと(第61条) | 12ヶ月点検:1年ごと 24ヶ月点検:2年ごと(車検時に同時実施が多い) |
| 内容 | 検査時点の状態確認(ブレーキ制動力・灯火・排ガスなど) | 分解を含む点検・整備(自家用乗用車は12ヶ月点検で29項目、24ヶ月点検は29項目を含む計60項目) |
| 実施場所 | 運輸支局・軽自動車検査協会・指定整備工場 | 整備工場・ディーラー(一部は自分でも可) |
誤解が多いのは「車検に通った=車の状態が良い」という理解です。車検は検査した瞬間に保安基準を満たしているかを見るだけで、次の2年間の安全を保証するものではありません。その隙間を埋めるのが法定点検です。だから制度が2本立てになっています。
法定点検の中身|12ヶ月点検と24ヶ月点検
自家用乗用車の法定点検は2種類です。
12ヶ月点検(1年ごと)
エンジンルーム・室内・足回り・下回りの29項目を点検します(国土交通省の案内)。ブレーキパッドの残量、ブレーキの効き、エンジンオイルの漏れ、ベルトの緩みなど、走行に直結する箇所の分解を含む点検です。点検の基準は自動車点検基準の別表第6に定められています。費用は依頼先ごとの点検料に、見つかった交換部品の代金が加わる形が一般的で、車種と依頼先で変わります。事前に見積もりを取って比べると安心です。
24ヶ月点検(2年ごと)
12ヶ月点検の29項目を含めて、計60項目まで広がる、より詳細な点検です。車検と時期が重なるため、実務では「車検整備」として車検と同時に実施されるのが一般的です。「車検のときに点検もやっている」が正しいのはこの24ヶ月点検の話で、12ヶ月点検は車検と車検の間の年に別途やって来ます。
+24ヶ月点検
+24ヶ月点検
なお、点検の周期は車の種類と使い方で3つに分かれています(道路運送車両法第48条、自動車点検基準第3条)。
| 周期 | 主な対象 |
|---|---|
| 3か月ごと | 事業用自動車(緑ナンバー・黒ナンバー)、車両総重量8トン以上の自家用車、乗車定員11人以上の自家用車、貨物用などのレンタカー |
| 6か月ごと | 自家用の貨物自動車(普通・小型。8トン未満)、乗用のレンタカー、自家用有償旅客運送の車など |
| 1年ごと | 上の2つ以外。自家用乗用車、自家用の軽自動車(軽トラックを含む)、二輪車など |
3か月・6か月ごとの車は、1日1回運行の前に日常点検をすることも定められています(第47条の2第2項)。事業用の車は運送事業の監査でも点検の実施状況が確かめられるので、自家用乗用車とは責任の重さが違います。
法定点検を受けないとどうなるか
自家用乗用車の法定点検には罰則がありません。では受けなくてよいかというと、実務上のデメリットがはっきり存在します。
- メーカー保証が受けられないことがある|保証修理の条件に「法定点検の実施」が含まれており、記録簿がないと保証を断られる場合があります。
- 故障の予兆を拾えない|ブレーキパッドの摩耗やオイル漏れは、日常の運転では気づけません。12ヶ月点検はこれを拾う唯一の定期機会です。
- 下取り・売却の査定に影響する|点検整備記録簿が揃っている車は「整備履歴が分かる車」として評価されます。
- 事故時の説明が苦しくなる|整備不良が絡む事故では、点検をしていたかどうかが過失の評価に影響し得ます。社用車では会社の安全配慮義務の観点からも重要です。
「罰則がない=やらなくていい」ではなく、「罰則はないが、やらないコストは自分に返ってくる」制度だと理解するのが正確です。
点検整備記録簿|保存年限と使いどころ
法定点検を実施すると、点検整備記録簿に結果が記録されます(道路運送車両法第49条)。この記録簿は1年ごとの点検の車(自家用乗用車など)で2年、3か月・6か月ごとの点検の車で1年の保存が定められています(自動車点検基準第4条第2項)。車検証入れに入っている冊子タイプが一般的で、ディーラー・整備工場が点検のたびに記入してくれます。
記録簿は、メーカー保証の請求時・売却時・事故時に「点検をしていた証拠」として機能します。紛失すると再発行はできず整備履歴が空白になるため、車検証とセットで車内保管を徹底してください。社用車では、車両ごとの記録簿の有無と直近の点検日を台帳で管理しておくと、車両入替時にも慌てません。
社用車の法定点検管理|「満了日が見えない」問題
社用車を複数台持つ会社で法定点検が漏れる最大の理由は、車検と違って書類上に「期限」が見えないことです。車検満了日は車検証と検査標章に明記されますが、12ヶ月点検は「前回実施日から1年」を自分で数えるしかありません。
管理のコツはシンプルで、車両台帳に「12ヶ月点検の実施日」列を作り、そこから次回期限を自動計算させることです。車検・自賠責・任意保険・リース満了と同じ表に並べれば、月1回の確認で全期限をカバーできます。
車検・12ヶ月点検・保険を1枚の台帳で
車両ごとに各期限を並べ、12ヶ月点検は実施日から次回期限を自動計算。直近の期限と残日数が自動表示され、60日を切ると赤くなる無料Excelです。
車検・保険 期限管理表(Excel・無料)を見るあわせて、運転者が行う日常点検(自動車点検基準の別表第2。ブレーキ、タイヤ、バッテリ、原動機、灯火装置、ウォッシャとワイパー、運行で異状があった箇所)の記録も整えておくと、点検体系として一貫します。様式は社用車日常点検表を無料配布しています。
まとめ|2つの制度の付き合い方
最後に要点をまとめます。
- 車検は「公道を走る資格」の検査、法定点検は「故障を防ぐ」ための点検。別制度で両方必要。
- 24ヶ月点検は車検と同時に済むことが多いが、12ヶ月点検は車検のない年に別途やって来る。
- 自家用乗用車の法定点検に罰則はないが、保証・査定・事故時の説明で実質的な不利益がある。
- 記録簿は自家用乗用車で2年保存(3か月・6か月点検の車は1年)。車検証とセットで保管。
- 社用車は「12ヶ月点検の実施日」を台帳管理し、次回期限を自動計算させるのが確実。
個人の車なら、車検を受けた整備工場・ディーラーの点検パック(車検と12ヶ月点検のセット契約)に入ってしまうのが最も漏れない方法です。会社の車両は台帳での一元管理を整えてください。
法定点検と車検の違いにかかわる最近の動き(2026年10月時点)
法定点検と車検の違いそのものは、制度が始まってから変わっていません。変わってきたのは車検の受け方と中身です。2023年からの動きを日付順に並べます。
| 時期 | 出来事 | 根拠・出典 |
|---|---|---|
| 2023年1月4日 | 自動車検査証(車検証)がICカードの電子車検証になった。有効期間などの記載はICチップに記録され、検査標章(車検ステッカー)の台紙も新しくなった | 道路運送車両法第58条第2項、国土交通省 電子車検証特設サイト |
| 2024年10月1日 | 車検に「電子装置の検査」(OBD検査)が加わった。対象は2021年10月1日以降のフルモデルチェンジ車(輸入車は2025年10月1日開始、2022年10月1日以降の車) | 国土交通省「OBD検査とは?」 |
| 2025年4月1日 | 車検証の有効期間が満了する日の2か月前から受検しても、残りの有効期間が失われないようになった(それまでは1か月前から) | 道路運送車両法施行規則の改正、国土交通省 報道発表 |
法定点検と車検の違いで見ると、OBD検査は車検の側の検査項目が増えた話で、使用者が行う法定点検の周期や項目数は変わっていません。12ヶ月点検の管理はこれまでどおり必要です。
出典:電子車検証特設サイト(国土交通省)、OBD検査とは?(国土交通省)、車検を受けられる期間が延びます(国土交通省)、点検整備の種類(国土交通省)、道路運送車両法(e-Gov法令検索)
確認日は2026年10月3日です。車検の手続きは管轄の運輸支局(軽自動車は軽自動車検査協会)に、点検の内容は整備工場やディーラーにご確認ください。
法定点検と車検の違いに出てくる用語
法定点検と車検の違いを調べると、似た言葉がいくつも出てきます。法令で決まっている言葉は、条文と一緒に並べます。
| 用語 | 意味 | 出典 |
|---|---|---|
| 継続検査 | 車検証の有効期間が切れたあとも使うときに受ける検査。一般に「車検」と呼ばれる | 道路運送車両法第62条 |
| 自動車検査証 | 検査に通った車に交付される証明。2023年1月からICカード | 道路運送車両法第58条 |
| 検査標章 | 車検の有効期間が満了する時期を示すステッカー。表示しないと運行できない | 道路運送車両法第66条 |
| 定期点検整備 | 使用者が3か月・6か月・1年ごとに行う点検。一般に「法定点検」と呼ばれる | 道路運送車両法第48条 |
| 日常点検整備 | 走行距離や運行の状態から判断した適切な時期に、使用者が目視などで行う点検 | 道路運送車両法第47条の2 |
| 点検整備記録簿 | 点検の年月日・結果・整備の概要などを書く記録。車に備え置く | 道路運送車両法第49条、自動車点検基準第4条 |
| 指定整備工場 | 検査の設備と自動車検査員を持ち、車検の検査まで行える工場(指定自動車整備事業) | 道路運送車両法第94条の2 |
| ダイヤルステッカー | 点検をした工場が貼る、次の点検時期を示す丸いステッカー | 法令上の定義はない。「点検整備済ステッカー」とも呼ばれる |
法定点検と車検の違いでポイントになるのは、検査標章は法令で表示が義務付けられたもの、ダイヤルステッカーは法令上の定めがないものという点です。ダイヤルステッカーが無くても違反にはなりませんが、点検時期の目印として使えます。
法定点検と車検の違いと一緒に押さえておきたいこと
法定点検と車検の違いを解説した記事は多くありますが、次の3つはあまり触れられていません。入力候補にも出てくる疑問です。
法定点検は車検と一緒に受けられる
車検の年は、24ヶ月点検を車検と同じ時に頼むのが一般的です。整備工場やディーラーに車検を頼むと、24ヶ月点検と必要な整備をしてから検査を受ける流れになり、結果は点検整備記録簿に書かれます。自分で運輸支局へ持ち込む「ユーザー車検」の場合は、検査に通っても24ヶ月点検をしたことにはならないので、点検は別に済ませて記録簿に記入しておく必要があります。
車検切れでの運行には罰則がある
法定点検をしないことに罰則はありませんが、車検切れの車を走らせるのは道路運送車両法第58条第1項の違反で、6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金とされています(第108条)。多くの場合、自賠責保険も同時に切れているため、自動車損害賠償保障法第5条の違反として1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金の対象にもなります(第86条の3)。社用車の台帳では、車検と自賠責の満了日を並べて見るのが確実です。
バイクにも法定点検がある
道路運送車両法第48条の定期点検は、小型特殊自動車を除くすべての自動車が対象で、二輪車も含まれます。自家用の二輪車は1年ごとの点検です(自動車点検基準の別表第7)。250ccを超える二輪車は車検もあり、初回3年、以後2年ごとです(第61条)。250cc以下のバイクは車検が無くても、法定点検の対象である点が見落とされがちです。
よくある質問
- Q. 法定点検はどこで受けられますか?
- ディーラー、認証・指定整備工場、カー用品店の整備部門などで受けられます。ユーザー自身が実施することも制度上可能ですが、分解を伴う項目があるため、実務では整備工場への依頼が一般的です。
- Q. 12ヶ月点検の費用はいくらぐらいですか?
- 依頼先ごとに点検料が決まっていて、車種によっても変わります。点検で交換部品(オイル・パッド等)が見つかると、別途整備費用がかかります。複数の依頼先で見積もりを取って比べると安心です。
- Q. 車検と12ヶ月点検を同じ時期にまとめられますか?
- 車検の年は24ヶ月点検(車検整備)が実施されるため、その年の12ヶ月点検は不要です。車検のない年の同じ月に12ヶ月点検を入れると、毎年同じ月に点検が来る形になり管理が楽です。
- Q. 法定点検のステッカー(ダイヤルステッカー)とは何ですか?
- 12ヶ月点検を実施した整備工場が貼る丸いステッカーで、次回の点検時期を示します。車検の検査標章(四角)とは別物です。ステッカーの年月が過ぎていたら、点検時期が来ているサインです。
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本記事は一般的な情報の整理であり、法令への適合を保証するものではありません。個別の義務内容は所管行政庁または専門家にご確認ください。記事の内容は2026-10-03時点の情報です。