KY活動(危険予知)の書き方|「〜なので〜になる」の型と記入例、形骸化させないコツ
KY活動(危険予知活動)は、その日の作業に潜む危険を作業前に出し合い、対策と行動目標を決める取り組みです。厚生労働省の「職場のあんぜんサイト」は、業務を始める前に職場で危険を話し合い、合意した対策と行動目標・指差し呼称を一人ひとりが実践する方法と説明しています。KY活動を直接定めた条文はなく、法令上の定義もありませんが、建設現場・製造現場では朝礼の定番になっています。
問題は毎日やると内容が固定化すること。「足元注意」「安全帯着用」が毎日書かれ、誰も読まなくなります。この記事では書き方の型と、形骸化を防ぐ具体策をまとめます。
重機が入る現場では、書く中身の当たりの付け方が変わります。機械と人が近づく場面から書く例文は重機のKY 例文と記入例にまとめました。
この記事の内容(9項目)
4ラウンド法|KYの基本の型
KY活動の標準的な進め方が4ラウンド法です。順番に意味があります。
ひそんでいるか
ポイントだ(◎印)
どうする
こうする(行動目標)
朝礼で行うKYは、5〜10分に収める現場が多くあります。長くすると続きません。職場のあんぜんサイトの危険予知訓練の進め方では、一人ひとりが意見を出しやすいように5〜6人のチームを標準としています。
1R|「〜なので〜になる」で書く
危険の書き方には型があります。「〜なので、〜になる」と原因と結果をつなげて書きます。職場のあんぜんサイトでは「〜なので〜して(危険要因)〜になる(事故の型)」の形で発言するとしています。
× 悪い例
「足元注意」「転倒に気をつける」
→ 何がどう危ないか分からない。対策も立てられない
○ 良い例
「床に資材が散乱しているので、脚立が不安定になり転倒する」→ 原因(散乱)と結果(転倒)が明確。対策が決まる
この型で書くと、自動的に対策が見えてきます。「資材が散乱しているので」が原因なら、対策は「設置前に足元を片付ける」です。抽象的な注意喚起は対策に繋がりません。
出し方のコツ
- 作業ステップごとに考える|「脚立の設置」「天井下地の取付け」「資材の運搬」と工程で区切ると出やすくなります
- 今日の条件を入れる|天候、気温、人数、使う道具。ここが毎日変わるので、内容も変わります
- 否定しない|「それは大丈夫だろう」と言うと、次から誰も発言しなくなります
3R・4R|対策と行動目標は別物
混同されやすいのですが、対策と行動目標は違います。
| 3R 対策 | 4R 行動目標 | |
|---|---|---|
| 内容 | 危険をなくすためにやること (複数可) | 今日、全員で必ず守ること (1つに絞る) |
| 例 | 「設置前に足元を片付ける」 「開き止めを確実にかける」 「1人が下で支える」 | 「脚立の天板には乗らない」 |
| 使い方 | 作業手順に組み込む | 指差呼称で唱和し、全員で共有する |
行動目標を3つも4つも立てると覚えられません。職場のあんぜんサイトの進め方では、2Rで危険のポイントを1〜2項目に絞って◎印を付け、4Rで重点実施項目に※印を付けて、チーム行動目標を1項目に決めます。今日いちばん危ない1点に絞る、ということです。
指差呼称につなげる
行動目標が決まったら、指差呼称の内容にします。「脚立ヨシ! 足元ヨシ!」のように短く、実際に指を差して声に出せる形にします。職場のあんぜんサイトで紹介されている1994年の鉄道総合技術研究所の実験では、指差しと呼称を両方行うと、操作の押し間違いが何もしない場合の約6分の1(2.38%から0.38%)になりました。
KY活動記録表(Excel・無料)
4ラウンドの流れに沿った様式です。作業ステップ・予想される危険・重点(◎)・対策・担当を1行で書け、行動目標と指差呼称の欄も用意しています。記入例つき。
KY活動記録表を見る形骸化を防ぐ4つの手
毎日やると必ずマンネリ化します。実務で効果があった対策を挙げます。
- 司会を持ち回りにする|職長が毎回仕切ると、参加者は聞くだけになります。若手に司会をさせると、当事者として考えるようになります
- 「今日の条件」を最初に共有する|天候・気温・人数・新規入場者の有無。条件が違えば危険も違います。ここを言語化すると内容が変わります
- 前日のヒヤリハットを冒頭で共有する|実際に起きかけたことは説得力があります。KYの題材として最良です
- 新規入場者がいる日は必ず作業手順から|慣れた人には自明でも、初日の人はその現場の危険をまだ知りません。1Rでその人に先に話してもらうと、知らないことが見えます
書いたものをどうするか
KY記録の保存を定めた法令はありません。保存する期間を社内で決めておくと、捨ててよいかで迷いません。工事なら工期中と引渡し後しばらく、工場なら1年など、振り返りに使う期間を目安にします。事故が起きた際に「その日どんな危険を想定していたか」が分かり、対策の妥当性を検証できます。
また、KYで繰り返し出る危険は作業手順書やリスクアセスメントに格上げすべきサインです。毎日「足場が不安定」と書いているなら、それはKYで対処する話ではなく、設備・手順の問題です(リスクアセスメントの記事)。
始業前点検との組み合わせ
KY活動と機械の始業前点検は別のものですが、朝のルーティンとしてセットにすると両方が定着します。
アルコールチェック
異常があれば使わない
行動目標を決める
作業開始
機械の点検様式は機械始業前点検表、車両なら社用車日常点検表があります。アルコールチェックが必要な事業所は記録簿の書き方もあわせてご覧ください。
KY活動のあとに全員で読み上げる一言や、作業所に掲示する宣言の例文は安全宣言の例文にまとめています。
KY活動にかかわる最近の動き(2026年10月時点)
KY活動そのものを定めた法令は改正されていません。ただ、KY活動で話し合う中身や、輪に入る人の範囲にかかわる改正と統計が、ここ数年で続いています。
| 時期 | 出来事 | 根拠 |
|---|---|---|
| 2025年6月1日 | 熱中症のおそれがある作業で、自覚症状や異変に気づいたときの報告体制と、悪化を防ぐ手順を定めて周知することが義務になった | 労働安全衛生規則612条の2 |
| 2026年4月1日 | 改正労働安全衛生法の主な部分が施行。注文者・元方などの措置の対象が、一人親方などの「作業従事者」に広がった | 令和7年法律第33号(2025年5月14日公布) |
| 2026年5月27日 | 令和7年の労働災害の確定値が公表。全産業の死亡は700人(過去最少)、建設業214人。事故の型では墜落・転落186人、はさまれ・巻き込まれ117人。休業4日以上は135,333人 | 厚生労働省「令和7年 労働災害発生状況」 |
| 2026年10月1日 | 化学物質の個人ばく露測定に関する改正が施行 | 令和7年法律第33号 |
ポイントは、KY活動の輪に一人親方や別の会社の人が入る場面が増えることです。「作業従事者」という言葉が規則に入ってきたので、朝のKYも、同じ場所で働く人全員を入れる前提で組むとよくなります。
出典:改正労働安全衛生法の概要(厚生労働省)/令和7年 労働災害発生状況(厚生労働省)/労働安全衛生規則(e-Gov法令検索)
確認日は2026年10月3日です。自社の現場で何が求められるかは、所轄の労働基準監督署で確かめてください。
KY活動に出てくる用語
KY活動は法令の言葉ではないので、用語も現場や団体ごとに少しずつ違います。ここでは厚生労働省の職場のあんぜんサイトの説明に合わせます。
| 用語 | 意味 | 出典 |
|---|---|---|
| KY活動 | 業務を始める前に危険を話し合い、合意した対策と行動目標・指差し呼称を実践する方法。法令上の定義はない | 職場のあんぜんサイト「4S活動、KY活動」 |
| 危険予知訓練(KYT) | 作業や職場にひそむ危険要因を発見し解決する能力を高める手法。K(危険)Y(予知)T(トレーニング) | 職場のあんぜんサイト「危険予知訓練(KYT)」 |
| KYT基礎4ラウンド法 | 1R どんな危険がひそんでいるか、2R これが危険のポイント、3R あなたならどうする、4R 私達はこうする、の4段で進める標準の手法 | 同上 |
| 危険のポイント(◎印) | 2Rで、対策が急がれるもの・重大事故になりうるものを1〜2項目に絞ったもの | 同上 |
| チーム行動目標 | 4Rで、重点実施項目(※印)を実践するために全員の合意で決める1項目の目標 | 同上 |
| 指差呼称 | 対象を指で差し、声に出して確認する行為 | 職場のあんぜんサイト「指差呼称」 |
| リスクアセスメント | 危険性又は有害性等の調査と、その結果に基づく措置。製造業・建設業などで努力義務 | 労働安全衛生法28条の2、労働安全衛生規則24条の11 |
KY活動と一緒に押さえておきたいこと
KY活動の書き方が固まったら、次は書いたものをどう使うかです。記入例と、ほかの仕組みとのつなぎ方を挙げます。
記入例:脚立を使う天井の作業
| ラウンド | 書く内容の例 |
|---|---|
| 1R | 床に資材が散らかっているので、脚立の脚が浮いて、脚立ごと倒れる 天井を見上げたまま降りるので、最後の段を踏み外して転ぶ |
| 2R(◎) | 床に資材が散らかっているので、脚立の脚が浮いて、脚立ごと倒れる |
| 3R | 脚立を立てる前に半径1mを片付ける/開き止めを確かめる/降りるときは足元を見る |
| 4R(行動目標) | 脚立を立てるときは、足元を片付けてから開き止めを確かめよう |
| 指差呼称 | 「足元ヨシ! 開き止めヨシ!」 |
繰り返し出る危険はリスクアセスメントに回す
KY活動は、その日の危険を作業する人が見つける仕組みです。一方、作業方法や手順を新しくしたり変えたりしたときには、危険性又は有害性等の調査を行うものとされています(労働安全衛生規則24条の11)。毎日同じ危険が書かれるなら、KYで済ませずに手順や設備を見直す合図です。
KYの進め方は職長教育の中身とつながっている
職長などへの安全衛生教育では、危険性又は有害性等の調査の方法と、その結果に基づく措置を4時間以上教えることになっています(労働安全衛生規則40条)。KY活動の司会を任せる人には、この教育を受けているかを確かめておくと、2Rの絞り込みがぶれにくくなります。
よくある質問
- Q. KY活動は法令で義務ですか?
- KY活動を直接定めた条文はなく、法令上の定義もありません。近い仕組みとしては、事業者が危険性又は有害性等を調査して措置を講じる努力義務(リスクアセスメント。労働安全衛生法28条の2)があります。現場では、元請けの安全衛生計画や社内の決まりで実施を求められて行うことが多くあります。
- Q. 1人作業でもKYは必要ですか?
- 1人KY(セルフKY)という形で実施します。作業前に自分で危険を書き出し、行動目標を決めます。話し合いはできませんが、書くことで意識が変わります。
- Q. 毎日同じ作業でも内容を変えるべきですか?
- 作業が同じでも、天候・体調・人員・資材の置き場所は毎日違います。「今日の条件」を最初に共有すると、自然と内容が変わります。
- Q. KY記録の保存期間は?
- 法定の保存義務はありません。社内で期間を決めておくと迷いません。事故時の検証資料になるほか、繰り返し出る危険を分析する材料にもなるので、少なくとも見直しに使う期間は残しておきます。
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本記事は一般的な情報の整理であり、法令への適合を保証するものではありません。個別の義務内容は所管行政庁または専門家にご確認ください。記事の内容は2026-10-03時点の情報です。