安全衛生

局所排気装置の定期自主検査|1年ごとの義務と、記録に残す項目

公開 2026-03-04更新 2026-08-02 執筆 点検板 編集部

有機溶剤や特定化学物質、粉じんを扱う職場には、作業者が有害物を吸い込まないよう局所排気装置(局排)が設置されています。この装置は「動いていれば良い」わけではなく、1年以内ごとの定期自主検査記録の3年保存が法令で義務付けられています。

フードの吸い込みが弱くなっても、見た目では分かりません。だから測定して記録に残す必要があります。この記事では検査項目と要求値、記録に残すべきことを整理します。

局所排気装置定期自主検査表(Excel・無料)1年以内ごとに実施し、記録を3年間保存する必要がある定期自主検査の記録様式。
テンプレートを見る
この記事の内容(6項目)

義務の根拠と対象

局所排気装置の定期自主検査は、労働安全衛生法45条を受けて、扱う物質ごとの規則で定められています。

扱う物質根拠となる規則検査の頻度
有機溶剤有機溶剤中毒予防規則20条1年以内ごとに1回
記録は3年保存
特定化学物質特定化学物質障害予防規則30条
粉じん粉じん障害防止規則17条
鉛・石綿など鉛中毒予防規則・石綿障害予防規則ほか
1年以内定期自主検査の周期
3年記録の保存義務
0.4〜1.0m/s制御風速の要求値
(型式・物質による)
1年超の休止再使用前に点検が必要

対象になるのは局所排気装置だけではありません。プッシュプル型換気装置、除じん装置、排ガス処理装置、排液処理装置も同じく1年以内ごとの検査対象です。設置しているものを漏れなく洗い出してください。

検査する箇所と項目

検査は装置の入口から出口まで、空気の流れに沿って見ていきます。

空気の流れに沿った検査の順序
① フード吸込み気流、損傷・変形・腐食、制御風速
② ダクト内面の摩耗・腐食、粉じんの堆積、接続部の漏れ
③ 除じん装置ろ材の目詰まり・破損、差圧
④ ファン回転方向、異音・振動、ケーシングの摩耗
⑤ 排気口排気の状態、外気の逆流
ダクト内の粉じん堆積が最も多い不具合。風量が落ちる直接の原因になる

制御風速の測定が要

フードの吸い込み能力を数値で確認するのが制御風速の測定です。熱線風速計で測り、要求値を満たしているかを判定します。要求値はフードの型式(囲い式・外付け式)と対象物質によって異なり、おおむね0.4〜1.0m/sの範囲です。

この数値を記録に残すことが最重要です。前回0.55、今回0.42と下がっていれば、ダクトの詰まりかファンの劣化が進行していると分かります。○×だけの記録では、この変化が見えません。

誰が検査するか

法令上、局所排気装置の定期自主検査に資格要件はありません。ただし厚生労働省が定期自主検査指針を公表しており、検査項目・方法・判定基準が示されています。

実務では次の2つに分かれます。

  • 専門業者に委託|風速計・差圧計などの測定器を持ち、指針に沿った検査ができます。ほとんどの事業場がこちら
  • 社内で実施|研修(局所排気装置等定期自主検査者の講習)を受けた者が担当。測定器の準備が必要

いずれの場合も、記録を残して3年保存するのは事業者の義務です。業者に委託していても、報告書を受け取って保管しなければ義務を果たしたことになりません。

局所排気装置定期自主検査表(Excel・無料)1年以内ごとに実施し、記録を3年間保存する必要がある定期自主検査の記録様式。
テンプレートを見る

定期自主検査と「点検」は別

混同しやすいのですが、法令には点検という別の義務もあります。

定期自主検査

1年以内ごと。記録3年保存。制御風速の測定を含む詳細な検査。

点検

初めて使用するとき
分解して改造・修理したとき
に実施。使用再開の前提条件。

装置を移設した、フードを作り替えた、ダクトを引き直した——こうした場合は、次の定期自主検査を待たずに点検が必要です。レイアウト変更のたびに確認する習慣をつけてください。

局所排気装置 定期自主検査 記録表(Excel・無料)

検査箇所・検査項目・検査方法・測定値・要求値・判定・補修内容・措置年月日を1行で記録できます。制御風速などの測定値を数値で残せる設計です。

定期自主検査 記録表を見る

検査で不適合が出たら

制御風速が要求値を下回った場合、直ちに補修その他の措置を講じる必要があります。よくある原因と対処は次のとおりです。

症状よくある原因対処
制御風速の低下ダクト内の粉じん堆積ダクト清掃。堆積しやすい箇所(エルボ・水平部)を重点的に
制御風速の低下除じん装置のろ材目詰まりろ材の清掃・交換。差圧を記録しておくと交換時期が読める
吸い込みのムラフードの位置が発生源から離れたフードを近づける。作業方法の見直し
異音・振動ファンの軸受け劣化、羽根の摩耗整備・部品交換

補修した場合は補修の内容と年月日も記録します。指摘して終わりではなく、直した記録までが1セットです。

局所排気装置は、化学物質のリスクアセスメント(リスクアセスメント管理表)で「工学的対策」として位置づけられる設備です。装置があること自体がリスク低減措置なので、その性能が落ちればリスク評価もやり直しになります。年1回の検査は、そのための定点観測でもあります。

よくある質問

Q. 1年間使わなかった装置はどうすればよいですか?
1年を超えて使用しなかった局所排気装置は、再び使用を開始する際に点検が必要です。定期自主検査とは別の義務なので、休止していた期間があれば必ず実施してください。
Q. 制御風速の要求値はどこで分かりますか?
有機則・特化則などの各規則に、フードの型式(囲い式・外付け式の側方吸引型など)ごとの数値が定められています。装置の届出書類にも設計値が記載されているはずです。
Q. 検査記録の様式は決まっていますか?
法定の統一様式はありません。検査年月日・方法・箇所・結果・実施者・補修内容が記録されていれば自社様式で構いません。厚労省の定期自主検査指針に記録例が示されています。
Q. 検査を実施していないとどうなりますか?
労働基準監督署の臨検で是正勧告の対象になります。加えて、有害物のばく露による健康障害が発生した場合、装置の性能を確認していなかったことが事業者の責任として問われます。
局所排気装置定期自主検査表(Excel・無料)1年以内ごとに実施し、記録を3年間保存する必要がある定期自主検査の記録様式。
テンプレートを見る

本記事は一般的な情報の整理であり、法令への適合を保証するものではありません。個別の義務内容は所管行政庁または専門家にご確認ください。記事の内容は2026-08-02時点の情報です。