定期自主検査とは|対象になる機械・設備を、政令から開いて並べる
定期自主検査は、労働安全衛生法45条1項が定めている検査です。「うちに関係あるのか」でつまずく制度でもあります。対象が法律の本文ではなく政令に書かれていて、しかもその政令が他の条を参照する形になっているためです。
フォークリフトや建設機械の話として語られることが多いのですが、実際の対象はもっと広く、ボイラー・クレーン・局所排気装置・化学設備・乾燥設備・絶縁用保護具まで入ります。工場や現場に何かしら該当する設備があるのが普通です。
この記事では、定期自主検査の対象になる機械・設備を政令から開いて一覧にし、どこからが特定自主検査になるのか、周期と記録の保存はどう決まるのかを整理します。条文はすべて e-Gov法令検索で本文を確認したものです。
この記事の内容(9項目)
定期自主検査とは|法45条1項。対象は政令で決まる
定期自主検査の根拠は、労働安全衛生法45条1項です。条文は短く、次のように書かれています。
事業者は、ボイラーその他の機械等で、政令で定めるものについて、厚生労働省令で定めるところにより、定期に自主検査を行ない、及びその結果を記録しておかなければならない。
読み取れることが3つあります。①対象は政令(労働安全衛生法施行令)で決まる、②周期と検査事項は省令(労働安全衛生規則・クレーン等安全規則など)で決まる、③記録が義務。この3階層を行き来しないと、自社の設備に何が必要かは出てきません。
「自主」検査だが、任意ではない
名前に「自主」とありますが、実施するかどうかを事業者が選べるという意味ではありません。行政が検査に来るのではなく事業者自身が行う、という意味の自主です。行わなければ法令違反になります。
定期自主検査の対象|令15条1項の11号を開いて並べる
対象は労働安全衛生法施行令15条1項に11号あります。1号だけが他の条を参照する形で、残りは直接書かれています。まず1号を開くとこうなります。
| 1号が参照する条 | 機械等 |
|---|---|
| 令12条1項各号(特定機械等) | ボイラー/第一種圧力容器/つり上げ荷重3トン以上のクレーン(スタッカー式は1トン以上)/3トン以上の移動式クレーン/2トン以上のデリック/積載荷重1トン以上のエレベーター/ガイドレールの高さ18メートル以上の建設用リフト/ゴンドラ |
| 令13条3項5号・6号 | 活線作業用装置/活線作業用器具 |
| 令13条3項8号・9号 | フォークリフト/令別表第七の建設機械(動力を用い、不特定の場所に自走できるもの) |
| 令13条3項14号〜19号 | つり上げ荷重0.5トン以上3トン未満のクレーン/0.5トン以上3トン未満の移動式クレーン/0.5トン以上2トン未満のデリック/積載荷重0.25トン以上1トン未満のエレベーター/ガイドレール10メートル以上18メートル未満の建設用リフト/積載荷重0.25トン以上の簡易リフト |
| 令13条3項30号〜34号 | ショベルローダー/フォークローダー/ストラドルキャリヤー/不整地運搬車/作業床の高さ2メートル以上の高所作業車 |
| 令14条2号〜4号 | 第二種圧力容器/小型ボイラー/小型圧力容器 |
| 令14条の2 10号・11号 | 絶縁用保護具/絶縁用防具(直流750V・交流300Vを超える充電電路に用いるもの) |
2号から11号は、政令に直接書かれています。ここに工場の設備がまとまって入っています。
| 号 | 機械等 |
|---|---|
| 二 | 動力により駆動されるプレス機械 |
| 三 | 動力により駆動されるシャー |
| 四 | 動力により駆動される遠心機械 |
| 五 | 化学設備(配管を除く)及びその附属設備 |
| 六 | アセチレン溶接装置及びガス集合溶接装置 |
| 七 | 乾燥設備及びその附属設備 |
| 八 | 動力車・巻上げ装置で、軌条により人又は荷を運搬するもの |
| 九 | 局所排気装置、プッシュプル型換気装置、除じん装置、排ガス処理装置、排液処理装置(省令で定めるもの) |
| 十 | 特定化学設備及びその附属設備 |
| 十一 | ガンマ線照射装置(透過写真の撮影に用いるもの) |
製造業では、建機を1台も持っていなくてもプレス・局所排気装置・乾燥設備・絶縁用保護具のどれかで該当することがほとんどです。定期自主検査は建機の制度だと思っていると、ここが抜けます。
どこからが特定自主検査か|令15条2項の5つだけ
定期自主検査のうち、資格を持つ人しか実施できないものが特定自主検査です。範囲は令15条2項で決まり、1項よりずっと狭くなります。
| 機械 | 定期自主検査(1項) | 特定自主検査(2項) |
|---|---|---|
| フォークリフト | ○ | ○ |
| 令別表第七の建設機械 | ○ | ○ |
| 不整地運搬車 | ○ | ○ |
| 高所作業車(作業床2m以上) | ○ | ○ |
| 動力プレス機械 | ○ | ○ |
| シャー | ○ | × |
| ショベルローダー・フォークローダー | ○ | × |
| クレーン・移動式クレーン・エレベーター | ○ | × |
| 局所排気装置・化学設備・乾燥設備 | ○ | × |
間違えやすいのがシャーです。令15条2項が引いているのは1項の「二号」(プレス機械)だけで、シャーは1項三号にあります。年に1回の定期自主検査(安衛則135条・5項目)は必要ですが、資格の要件はありません。
ショベルローダー・フォークローダーも同じ形です。フォークリフトと似た機械ですが、令13条3項30号・31号なので令15条2項に入らず、特定自主検査ではありません。特定自主検査の側の全体像は特定自主検査とはにまとめています。
定期自主検査の周期|規則の側で、機械ごとに決まる
周期は政令ではなく規則で決まります。機械ごとに条文が別々にあるので、一律の周期はありません。代表的なものを並べると次のようになります。
| 機械・設備 | 年次 | 月例 | 条文 |
|---|---|---|---|
| 車両系建設機械 | 一年以内ごとに一回 | 一月以内ごとに一回 | 安衛則167条/168条 |
| フォークリフト | 一年を超えない期間ごとに一回 | 一月を超えない期間ごとに一回 | 安衛則151条の21/151条の22 |
| 不整地運搬車 | 二年を超えない期間ごとに一回 | 一月を超えない期間ごとに一回 | 安衛則151条の53/151条の54 |
| クレーン | 一年以内ごとに一回(荷重試験を伴う) | 一月以内ごとに一回 | クレーン則34条/35条 |
| 動力プレス | 一年以内ごとに一回 | 条文がない | 安衛則134条の3 |
| 局所排気装置 | 一年以内ごとに一回 | — | 安衛則ほか(特化則・有機則等) |
| ゴンドラ・建設用リフト | 条文がない | 一月以内ごとに一回 | ゴンドラ則21条/クレーン則192条 |
形が3通りあります。年次と月例が両方あるもの、年次だけのもの、月例だけのもの。ゴンドラと建設用リフトに年次の定期自主検査が無いのは、検査証と性能検査の側で有効性を確認する仕組みになっているためです。
使わない期間があるときの扱いは共通している
年次の条文には、ほぼ共通のただし書きが付いています。
ただし、一年をこえる期間使用しない…当該使用しない期間においては、この限りでない。
2 事業者は、前項ただし書の…については、その使用を再び開始する際に、自主検査を行なわなければならない。
休んでいた期間のぶん期限が延びるのではなく、使い始めるときに受けるという作りです。長期保管していた設備を動かす前に検査を入れることになります。
定期自主検査の記録|「行って、記録する」までが1つの義務
法45条1項は「自主検査を行ない、及びその結果を記録しておかなければならない」と書いています。検査をしたが記録が無い状態は、条文の求めを半分しか満たしていません。
保存年限と記録事項は、機械ごとの規則に置かれています。建機・フォークリフト・高所作業車・不整地運搬車・動力プレスは6事項・3年で共通です。
| 対象 | 記録の条文 | 保存 |
|---|---|---|
| 車両系建設機械 | 安衛則169条(6事項) | 3年 |
| フォークリフト | 安衛則151条の23(6事項) | 3年 |
| 高所作業車 | 安衛則194条の25(6事項) | 3年 |
| 不整地運搬車 | 安衛則151条の55(6事項) | 3年 |
| 動力プレス・シャー | 安衛則135条の2(6事項) | 3年 |
| クレーン等 | クレーン則38条 | 3年(作業開始前点検を除く) |
| 局所排気装置 | 各規則 | 3年 |
6事項は、検査年月日/検査方法/検査箇所/検査の結果/検査を実施した者の氏名/補修等の措置を講じたときはその内容です。作業開始前点検には保存義務の規定がありません。この線引きは法令をまたいで共通していて、詳しくは点検記録は何年保存すればよいのかで整理しています。
自主検査指針は、いまも生きている(特定自主検査を除く側)
ここは2026年に変わったところです。法45条には3項と4項があり、「基準」と「指針」が分かれています。
| 項 | 対象 | 書きぶり | 拘束力 |
|---|---|---|---|
| 45条3項 | 特定自主検査 | 厚生労働大臣の定める基準に従つて行わなければならない | ある |
| 45条4項 | 特定自主検査を除く定期自主検査 | 厚生労働大臣は自主検査指針を公表するものとする | 目安 |
つまり2026年1月に告示(基準)へ移ったのは特定自主検査の側だけで、それ以外の定期自主検査には、いまも自主検査指針があります。移動式クレーンの定期自主検査指針、天井クレーンの自主検査指針、ゴンドラの定期自主検査指針などが現行です。
実務では、この違いが様式づくりに効いてきます。指針の側は「目安なので参考にする」、基準の側は「そこから外れた様式は成り立たない」。当サイトの様式でも扱いを分けていて、根拠の対応表は特定自主検査の新基準(2026年1月適用)にまとめてあります。
定期自主検査の様式を自社で作るときの考え方
定期自主検査に法定の様式番号はありません。決まっているのは検査事項と記録事項で、紙の形は自由です。そのうえで、自社で作ってよい範囲には線があります。
| 自社の様式で作れるか | 理由 | |
|---|---|---|
| 作業開始前点検 | 作れる | 条文の項目が少なく、記録の保存義務もない |
| 定期自主検査(月例) | 作れる | 検査事項が条文に書かれている |
| 定期自主検査(年次・指針がある機械) | 作れる | 指針は目安。ただし指針があるならそれに沿うほうが現場で通りやすい |
| 特定自主検査(年次) | 作らないほうがよい | 検査項目・判定基準が告示の別表で決まっている |
作り方のコツは1つです。条文の号立てをそのまま行にする。言い換えたり要約したりすると、監督署や元請に示したときに「どの号に対応するのか」が説明できなくなります。社内で足した項目は、備考欄か「根拠」欄で分けて示すと削っていい行がひと目で分かります。
当サイトの様式もこの形で作っています。車両系建設機械 定期自主検査記録表は月例の検査事項を装置ごとに落としたうえで、どの行が安衛則168条の法定項目かを列で示しています。局所排気装置定期自主検査表も同じ考え方です。
抜けやすいのは機械ではなく設備
定期自主検査で抜けが見つかるのは、たいてい建機やフォークリフトではありません。担当がはっきりしない設備のほうです。
| 設備 | なぜ抜けるか |
|---|---|
| 局所排気装置・プッシュプル型換気装置 | 設備担当と衛生管理者のどちらの持ち物か曖昧になりやすい |
| 乾燥設備 | 「炉」「オーブン」と呼ばれていて、定期自主検査の対象という認識が薄い |
| 絶縁用保護具・絶縁用防具 | 消耗品として扱われ、機械の台帳に載らない |
| 簡易リフト | 「荷物用エレベーター」と呼ばれ、リフトだと認識されていない |
| アセチレン溶接装置・ガス集合溶接装置 | 使用頻度が低く、台帳から外れている |
対策はシンプルです。機械の台帳ではなく、令15条1項の11号を上から順に自社に当てはめる。「該当なし」も含めて1回書き出せば、その後は期限管理の問題になります。期限だけを並べる様式は点検期限管理表、法定点検を1枚の年間表にまとめる様式は法定点検年間スケジュール表に置いています。
よくある質問
- Q. 定期自主検査とは何ですか
- 労働安全衛生法45条1項に基づいて、事業者が自ら定期に行う検査です。対象は労働安全衛生法施行令15条1項で定められ、周期と検査事項は労働安全衛生規則やクレーン等安全規則などの省令で決まります。結果を記録しておくことまでが条文の求めです。
- Q. 「自主」検査なので、やるかどうかは事業者が決められますか
- 決められません。行政が検査に来るのではなく事業者自身が行う、という意味の自主です。対象の機械等について行わなければ法令違反になります。
- Q. 定期自主検査の対象になる設備を教えてください
- 施行令15条1項に11号あります。ボイラー・圧力容器・クレーン・移動式クレーン・デリック・エレベーター・建設用リフト・簡易リフト・ゴンドラ・フォークリフト・建設機械・ショベルローダー・不整地運搬車・高所作業車・活線作業用装置・絶縁用保護具に加えて、動力プレス・シャー・遠心機械・化学設備・アセチレン溶接装置・乾燥設備・局所排気装置・特定化学設備・ガンマ線照射装置などが入ります。
- Q. 定期自主検査と特定自主検査はどう違いますか
- 特定自主検査は定期自主検査の一部です。施行令15条2項が指定した5つ(フォークリフト、令別表第七の建設機械、不整地運搬車、作業床2メートル以上の高所作業車、動力プレス機械)については、資格を持つ者か登録検査業者しか実施できません。それ以外の定期自主検査に資格の要件はありません。
- Q. シャーは特定自主検査の対象ですか
- 対象ではありません。施行令15条2項が引くのは1項2号(プレス機械)だけで、シャーは1項3号です。年に1回の定期自主検査(安衛則135条)は必要ですが、資格の要件はありません。
- Q. 定期自主検査の周期は一律ですか
- 一律ではありません。機械ごとに省令で決まっていて、年次と月例が両方あるもの、年次だけのもの、月例だけのものがあります。不整地運搬車の年次だけは2年です。
- Q. ゴンドラや建設用リフトに年次の定期自主検査がないのはなぜですか
- 検査証と性能検査の側で有効性を確認する仕組みになっているためです。月例の定期自主検査と作業開始前点検はあります。
- Q. 定期自主検査の記録は何年保存しますか
- 多くは3年です。車両系建設機械(安衛則169条)、フォークリフト(151条の23)、高所作業車(194条の25)、不整地運搬車(151条の55)、動力プレス・シャー(135条の2)、クレーン等(クレーン則38条)がいずれも3年です。作業開始前点検には保存義務の規定がありません。
- Q. 自主検査指針は廃止されたのですか
- 特定自主検査の側は2026年1月から告示(基準)に移りました。特定自主検査を除く定期自主検査については、いまも法45条4項の自主検査指針があります。移動式クレーン、天井クレーン、ゴンドラなどが現行です。
- Q. 定期自主検査に決まった様式はありますか
- 法定の様式番号はありません。決まっているのは検査事項と記録事項で、紙の形は自由です。ただし特定自主検査(年次)の検査項目と判定基準は告示で決まっているため、そこは自社で組み立てるものではありません。
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本記事は一般的な情報の整理であり、法令への適合を保証するものではありません。個別の義務内容は所管行政庁または専門家にご確認ください。記事の内容は2026-08-27時点の情報です。