建設機械・荷役車両

レンタル建機の点検義務は誰が負うか|貸す側と借りる側を条文で分ける

公開 2026-08-07更新 2026-08-15 執筆 点検板 編集部

建設機械はレンタルで使う割合が高く、そのたびに「この機械の点検は誰がやるのか」が問題になります。レンタル会社が特定自主検査を済ませているなら自社は何もしなくてよいのか、月をまたぐ長期レンタルの月例検査はどちらの責任か、という質問です。

結論を先に書くと、貸す側と借りる側では、根拠になっている条文がそもそも別です。貸す側は労働安全衛生法33条1項(安衛則666条)、借りる側は45条の「事業者」としての義務と33条2項(安衛則667条)で、片方がやったからもう片方が免除される関係になっていません。この記事では、条文がそれぞれ誰に何を課しているかを分けて整理します。

車両系建設機械 定期自主検査記録表(Excel・無料)建機の月例定期自主検査を、機体をまたいで1枚の台帳に記録する様式。1台1回ぶんの検査に使う「月例検査」シート(装置ごと37項目)も付いています。
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この記事の内容(8項目)

結論|貸与者の義務と、事業者の義務は別々にかかる

レンタル建機をめぐる義務は、大きく3つの条文に分かれています。義務者が違うので、それぞれ独立して発生します。

誰に何をいつ条文
貸す側
(機械等貸与者)
あらかじめ点検し、異常があれば整備する
能力・特性等を記載した書面を交付する
貸与するとき安衛法33条1項
安衛則666条
借りた側
(事業者)
定期自主検査(月例)
特定自主検査(年次)
作業開始前点検
記録の3年保存
使用している間安衛法45条
安衛則167〜170条ほか
借りた側
(操作者が自社の労働者でないとき)
操作者の資格を確認する
作業内容・指揮系統等を通知する
操作させるとき安衛法33条2項
安衛則667条
義務は引き継がれず、並行してかかる

よくある誤解

レンタル会社が特定自主検査を済ませているので、借りた側は点検しなくてよい

条文上の整理

666条は貸す前の義務。使用している間の45条の検査義務は、その機械を用いて事業を行う者にかかる
「済んでいる検査」と「これから期限が来る検査」を分けて考えると混乱しにくい

実務では、年次の特定自主検査をレンタル会社が済ませた状態で貸し出す形が一般的です。ただしそれは貸出時点で有効な検査が付いているという話であって、レンタル期間中に到来する月例の期限や、毎日の作業開始前点検まで肩代わりされるわけではありません。

貸す側の義務は「貸す前」に集中している

安衛則666条は、機械等貸与者が講じなければならない措置を2つ挙げています。

一 当該機械等をあらかじめ点検し、異常を認めたときは、補修その他必要な整備を行なうこと。
二 当該機械等の貸与を受ける事業者に対し、次の事項を記載した書面を交付すること。

二号の「次の事項」は、当該機械等の能力/当該機械等の特性その他その使用上注意すべき事項です。つまり貸す側の義務は、①貸す前に点検して直しておくこと、②性能と注意点を書面で渡すこと、の2点に集約されています。

ここに「貸与中の定期自主検査を行うこと」は書かれていません

666条の文言は「貸与するときは」で始まっており、義務のタイミングは貸出時点です。レンタル期間中に到来する検査についての定めは、この条文には置かれていません。使用中の検査は45条の系統で、その機械を用いて事業を行う者にかかります。

誰が「機械等貸与者」にあたるか

安衛則665条は、機械等貸与者を「令10条各号に掲げる機械等を、相当の対価を得て業として事業を行う者に貸与する者」と定義しています。レンタル会社やリース会社が典型です。逆に、対価を得ずに一時的に貸す場合や、業として行っていない場合は、この条の対象から外れます。

また666条2項には適用除外があり、機種の選定や貸与後の保守など本来は所有者が行う業務を、借りた側が行う形の貸与(いわゆるファイナンスリースに近い形態)は、1項の適用対象外とされています。同じ「リース」でも、契約の実態によって扱いが変わる点に注意してください。

借りた側は「事業者」として検査義務を負う

安衛法45条1項は、義務者を次のように書いています。

事業者は、ボイラーその他の機械等で、政令で定めるものについて、厚生労働省令で定めるところにより、定期に自主検査を行ない、及びその結果を記録しておかなければならない。

条文は「所有者は」でも「使用者は」でもなく「事業者は」です。労働安全衛生法上の事業者は、その事業を行う者、つまり労働者を使ってその機械を用いた作業をさせている者を指します。機械のみを借りて自社の労働者に運転させているなら、借りた側が事業者です。

3つの層のうち、どこが問題になりやすいか

周期レンタルでの実務迷いやすさ
作業開始前点検その日の作業開始前借りた側が必ず実施する。毎日発生するので貸与者が代行しようがない低い
定期自主検査(月例)一月以内ごと/一月を超えない期間ごとレンタル期間が月をまたぐと期限が来る。ここが最も曖昧になる高い
特定自主検査(年次)一年以内ごと/不整地運搬車は二年貸出時点で有効な検査が付いた状態にしてあるのが通例。標章で確認できる

月例が最も曖昧になる理由

短期レンタルなら期間中に月例の期限が来ないため問題が表面化しません。ところが1か月を超える長期レンタルになると、期間中に期限が到来します。このときレンタル会社は機械を引き上げずに検査できず、借りた側は「レンタル品だから」と手を出さないという空白が生まれがちです。

月例の定期自主検査に資格要件はないので、借りた側が実施すること自体は可能です。誰が実施し、記録をどちらが保管するのかを、契約書か注文書の段階で決めておくのが現実的な対処になります。長期レンタルを前提にした様式が手元にない場合は、車両系建設機械 定期自主検査 記録表を借用機の分だけ切り出して使う形でも足ります。

オペレーター付きで借りたときは扱いが変わる

「機械だけを借りる」のか「機械と運転者をセットで借りる」のかで、誰が事業者にあたるかの判断が変わります。条文が想定している場面も違います。

形態機械を操作するのは点検・検査の実務上の担い手関係する条文
機械のみのレンタル借りた側の労働者借りた側が事業者として実施する安衛法45条
オペレーター付き
(賃貸ではなく請負に近い形)
貸した側の労働者その労働者を使用している側が事業者として実施する安衛法45条/33条2項

安衛則667条は、借りた側について「当該機械等を操作する者がその使用する労働者でないとき」に、①操作者が法令上必要な資格・技能を有することの確認と、②作業の内容/指揮の系統/連絡・合図等の方法/運行の経路・制限速度その他の運行に関する事項の通知を求めています。

つまりオペレーター付きの場合、借りた側は検査の実施者ではなくなる代わりに、資格の確認と現場情報の通知という別の義務を負います。「オペ付きだから自社は何もしなくてよい」ではありません。

実態で判断されるので、契約書の題名だけでは決まりません

誰が事業者にあたるかは、指揮命令の実態で判断されます。契約書が「賃貸借」となっていても、実際には貸した側の労働者が貸した側の指揮で動いているなら、その実態に沿って整理されます。判断に迷う案件では、所轄の労働基準監督署に事実関係を示して確認してください。

車両系建設機械 定期自主検査記録表(Excel・無料)建機の月例定期自主検査を、機体をまたいで1枚の台帳に記録する様式。1台1回ぶんの検査に使う「月例検査」シート(装置ごと37項目)も付いています。
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借りる前に確認する5つ

現場に入ってから慌てないための確認事項です。上の3つは受入時、下の2つは契約時に確認する項目です。

受入から返却までの確認
① 契約時月例は誰が実施するか
② 契約時記録はどちらが保管するか
③ 受入時検査標章の年月
④ 受入時書面(能力・特性)の受領
⑤ 毎日作業開始前点検
③と④は666条に対応する。受け取っていなければその場で請求してよい

1. 検査標章の年月を見る

特定自主検査を行った年月を明らかにできる検査標章を、機械の見やすい箇所に貼り付けることが求められています。標章の年月から、次の年次の期限がレンタル期間中に来るかどうかを逆算できます。期間中に来るなら、そこで誰が手配するのかを事前に決めておきます。

2. 書面を受け取る

666条二号の書面(能力・特性その他使用上注意すべき事項)は、貸与者の義務として交付されるものです。受け取っていなければ請求してください。定格や作業範囲が分からないまま使うのは、点検以前の問題になります。

3. 月例の担い手を書面で決める

口頭の申し合わせだと、期限が来たときにどちらも動きません。「レンタル期間が1か月を超える場合の月例検査は借主が実施し、記録の写しを返却時に貸主へ渡す」といった形で、注文書か覚書に一行残しておくと運用が止まりません。

4. 作業開始前点検の様式を用意しておく

レンタル機は台数も機種も入れ替わるため、機械ごとにファイルを作る運用が続きません。管理番号と機種区分の欄を持った1つの様式に、借用機も同じ形で記録するのが扱いやすい形です。

5. 返却時に記録をどうするか決める

記録の3年保存義務は事業者にかかります。借用期間中に自社が実施した検査の記録は、機械を返しても自社に残すのが原則です。返却と同時に記録も渡してしまうと、あとで示せなくなります。

記録の保存は「機械」ではなく「事業者」に紐づく

記録を定めた条文(車両系建設機械なら安衛則169条)は、記録すべき6項目と3年間の保存を事業者に課しています。機械の所有権とは切り離された義務です。

2つ貸す側の義務
(点検・整備/書面交付)
6項目記録すべき事項
3年記録の保存期間
事業者保存義務を負う者
(所有者ではない)

検査を検査業者に実施させた場合、記録の「検査を実施した者の氏名」は「検査業者の名称」に読み替えられます。レンタル会社が手配した検査業者が実施したときも同じで、記録の主体が変わるだけで、保存の義務者は事業者のままです。

返却済みの機械の記録が、いちばん失われやすい

自社所有の機械は台帳に残るので記録も残ります。一方、借用機は返却した時点で管理対象から消え、記録だけがどこにも属さなくなります。台帳に「保有区分(自社/レンタル)」の列を持たせて、返却済みでも行が残る形にしておくと、3年保存が自然に成立します。

配布しているExcel様式は、対象名・管理番号・機種区分・保有拠点・周期・前回実施日・担当の並びで統一してあります。ここに保有区分を1列足すだけで、借用機を同じ台帳に載せられます。

関連する条文と、機械ごとの周期

周期は機械の種類ごとに条文の文言が違います。レンタルで複数機種を扱うときは、機種ごとに確認してください。

機械年次(特定自主検査)月例条文
車両系建設機械一年以内ごとに一回一月以内ごとに一回安衛則167条/168条
高所作業車一年以内ごとに一回
(作業床2m以上)
一月以内ごとに一回安衛則194条の23/194条の24
フォークリフト一年を超えない期間ごとに一回一月を超えない期間ごとに一回安衛則151条の21/151条の22
不整地運搬車二年を超えない期間ごとに一回一月を超えない期間ごとに一回安衛則151条の53/151条の54

条文の原文はe-Gov法令検索(労働安全衛生規則)、労働安全衛生法は同(労働安全衛生法)で確認できます。

関連:機械ごとの検査事項は車両系建設機械の定期自主検査、2026年1月から適用された新基準は特定自主検査の新基準、外注したときの金額の考え方は特定自主検査の費用は何で決まるかで扱っています。

よくある質問

Q. レンタルで借りた建機の特定自主検査は誰がやりますか
実務では、貸出時点で有効な特定自主検査が付いた状態でレンタル会社が貸し出す形が一般的です。ただし条文上、使用している間の定期自主検査の義務は安衛法45条により「事業者」=その機械を用いて事業を行う者にかかります。レンタル期間中に年次の期限が来る場合は、どちらが手配するかを契約段階で決めておいてください。
Q. レンタル会社が点検済みなら、借りた側は何もしなくてよいですか
いいえ。安衛則666条は「貸与するときは」あらかじめ点検し整備することを貸与者に課しており、貸出時点の義務です。借りた側には、作業開始前点検(毎日)と、期間中に期限が来る定期自主検査が別途かかります。片方が済んでいることで、もう片方が免除される関係にはなっていません。
Q. 1か月を超えるレンタルの月例検査はどちらが行いますか
条文はどちらかを名指ししていません。使用中の事業者に義務がかかるため借主が実施することになりますが、実務では貸主が引き上げて実施する取り決めもあります。月例の定期自主検査に資格要件はないので借主でも実施できます。注文書か覚書で担い手と記録の受け渡しを決めておくのが確実です。
Q. 作業開始前点検もレンタル会社がやってくれますか
いいえ。作業開始前点検はその日の作業を開始する前に行うもので、機械が現場にある間は毎日発生します。実際に使用する事業者が実施します。車両系建設機械の場合、法定の点検事項は安衛則170条のブレーキ及びクラッチの機能の2つです。
Q. オペレーター付きで借りた場合はどうなりますか
操作するのが貸した側の労働者であれば、その労働者を使用している側が事業者として検査義務を負います。借りた側は安衛則667条により、操作者が必要な資格・技能を有することの確認と、作業の内容・指揮の系統・連絡や合図の方法・運行の経路や制限速度などの通知を行う義務があります。
Q. 機械等貸与者とは誰のことですか
安衛則665条により、労働安全衛生法施行令10条各号に掲げる機械等を、相当の対価を得て業として事業を行う者に貸与する者を指します。レンタル会社・リース会社が典型です。対価を得ずに一時的に貸す場合や、業として行っていない場合はこの定義から外れます。
Q. 貸与者から受け取る書面には何が書かれていますか
安衛則666条二号により、当該機械等の能力と、特性その他その使用上注意すべき事項が記載されます。定格や作業範囲、使用上の注意が該当します。受け取っていない場合は貸与者の義務なので請求して構いません。
Q. ファイナンスリースでも同じ扱いですか
異なる可能性があります。安衛則666条2項は、機種の選定や貸与後の保守など本来は所有者が行うべき業務を借りた側が行う形の貸与について、1項を適用しないと定めています。契約書の題名ではなく実態で判断されるため、迷う場合は所轄の労働基準監督署に確認してください。
Q. 借用機の検査記録は返却時にレンタル会社へ渡すべきですか
記録の3年保存義務は事業者にかかるため、自社が実施した検査の記録は自社に残すのが原則です。写しを渡すのは問題ありませんが、原本ごと渡してしまうと後で示せなくなります。台帳に保有区分の列を持たせ、返却済みの機械も行が残る形にしておくと保存が成立します。
Q. 検査標章は借りた側が貼るのですか
検査標章の貼付は事業者の義務とされています(車両系建設機械は安衛則169条の2第8項、不整地運搬車は151条の56第5項)。レンタル機では貸出前に実施した検査の標章が貼られた状態で届くのが通例です。受入時に標章の年月を確認し、次の期限がレンタル期間中に来ないかを確認してください。
車両系建設機械 定期自主検査記録表(Excel・無料)建機の月例定期自主検査を、機体をまたいで1枚の台帳に記録する様式。1台1回ぶんの検査に使う「月例検査」シート(装置ごと37項目)も付いています。
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本記事は一般的な情報の整理であり、法令への適合を保証するものではありません。個別の義務内容は所管行政庁または専門家にご確認ください。記事の内容は2026-08-15時点の情報です。