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特定自主検査の新基準(2026年1月適用)|何が変わり、事業者は何をすればよいか

公開 2026-08-14更新 2026-10-03 執筆 点検板 編集部
点検板 編集部法令の原文と省庁の資料で確認:2026年10月3日

2026年(令和8年)1月1日から、特定自主検査の実施方法が変わりました。これまで「定期自主検査指針」という推奨の位置づけだったものが、厚生労働大臣の定める基準(告示)になり、これに従って検査を行うことが法律上の義務になっています。

ただし、検査項目が大きく増えたわけではありません。本質は法的な位置づけが上がったことと、検査業者に対する行政措置が明確になったことです。変更点のうち実務に効くのは、むしろ「一部の検査が省略できるようになった」部分です。

この記事では、条文と施行通達に当たって、何が変わり、事業者が何をすればよいのかを整理します。

車両系建設機械 定期自主検査記録表(Excel・無料)建機の月例定期自主検査を、機体をまたいで1枚の台帳に記録する様式。1台1回ぶんの検査に使う「月例検査」シート(装置ごと37項目)も付いています。
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この記事の内容(18項目)
  1. 結論|3行でまとめると
  2. 根拠条文|安衛法45条に3項が新設された
  3. よくある誤解|「自主検査指針が全部なくなった」わけではない
  4. 5つの告示と適用日
  5. なぜ格上げされたのか|検査基準への遵守義務
  6. 旧指針から実際に変わった5点
  7. 1. エレメント類の検査を省略できるようになった
  8. 2. バッテリー電解液の検査に代替手段が認められた
  9. 3. 電動機の充電装置は「本体と一体のもの」に限定された
  10. 4. 履帯の張り具合は製造者の基準値で判定する
  11. 5. カップリングの検査に代替手段が認められた
  12. 事業者が留意すべきこと
  13. 検査を委託していても、事業者の義務は消えない
  14. 検査業者には行政措置が用意された
  15. 廃止された5つの指針
  16. 周期と記録は変わっていない
  17. 5機種それぞれの根拠条文と周期
  18. 高所作業車(告示第313号)
  19. 車両系建設機械(告示第320号)
  20. フォークリフト(告示第321号)
  21. 不整地運搬車(告示第322号)
  22. 動力プレス(告示第323号)
  23. 移動式クレーンは対象外です
  24. 検査業者はどういう制度で登録されているか
  25. 発注側が見ておくとよいこと
  26. 自社の従業員に実施させる場合(事業内検査者)
  27. 事業者がいまやること
  28. この記事の情報源と、確認できていないこと
  29. 出典
  30. 特定自主検査の新基準にかかわる最近の動き(2026年10月時点)
  31. 特定自主検査の新基準に出てくる用語
  32. 特定自主検査の新基準と一緒に押さえておきたいこと
  33. 自社で検査する場合も、新基準に従う
  34. レンタル機は、貸す側の点検と借りる側の検査を分けて考える
  35. 整備記録は、検査記録と同じ綴りに置く
  36. よくある質問

結論|3行でまとめると

2026年1月1日新基準の適用開始日
(5機種で共通)
告示指針から格上げされ
遵守義務のある基準に
5機種高所作業車・車両系建設機械
フォークリフト・不整地運搬車・動力プレス
3年記録の保存義務
(従来から変更なし)
  • 特定自主検査は「厚生労働大臣の定める基準に従って」行うことが義務になりました。労働安全衛生法45条3項が新設されたためです。
  • 従来の定期自主検査指針は、特定自主検査に係るものが廃止されました。5機種すべての指針が2026年1月1日に廃止されています。
  • 検査項目が大幅に増えたわけではありません。旧指針の検査項目・検査方法・判定基準を踏まえた文言整理が中心で、むしろ一部の検査は省略できるようになりました。

根拠条文|安衛法45条に3項が新設された

変更の根拠は、令和7年法律第33号による労働安全衛生法45条の改正です。現行の45条は次の構成になっています。

項内容
1項政令で定める機械等について、定期に自主検査を行い、その結果を記録しておく
2項そのうち省令で定めるもの(=特定自主検査)は、有資格者が自ら実施するか、検査業者に実施させる
3項(新設)「特定自主検査は、厚生労働大臣の定める基準に従つて行わなければならない。」
4項厚生労働大臣は、1項の自主検査(特定自主検査を除く)について自主検査指針を公表する
5項公表した指針について、事業者・検査業者・団体に必要な指導等を行うことができる

よくある誤解|「自主検査指針が全部なくなった」わけではない

今回の改正を「定期自主検査指針が廃止された」とだけ紹介している資料がありますが、正確ではありません。45条4項には、いまも自主検査指針を公表する規定が残っています。ただしその対象は「特定自主検査を除く」自主検査です。

つまり構造はこうなりました。

指針と基準の使い分け

特定自主検査(年次・有資格者)

厚生労働大臣の定める基準(告示)に従う義務。安衛法45条3項

それ以外の定期自主検査(月例など)

従来どおり指針が公表される枠組み。安衛法45条4項
廃止されたのは「特定自主検査に係る」定期自主検査指針であって、指針という仕組みそのものではない

条文の原文はe-Gov法令検索(労働安全衛生法)で確認できます。

5つの告示と適用日

対象は特定自主検査の対象機械5種です。機械ごとに個別の告示が制定されました。

機械告示告示日関係する省令
高所作業車令和7年厚生労働省告示第313号令和7年12月18日安衛則194条の23
車両系建設機械同 第320号令和7年12月24日安衛則167条
フォークリフト同 第321号令和7年12月24日安衛則151条の21
不整地運搬車同 第322号令和7年12月24日安衛則151条の53
動力プレス同 第323号令和7年12月24日安衛則134条の3

適用はいずれも令和8年(2026年)1月1日です。施行通達は基発1226第2号(令和7年12月26日)で、告示の趣旨と留意事項がここに示されています。

告示日は高所作業車だけが令和7年12月18日で、他の4機種は同月24日です。日付は違いますが、適用日は5機種とも同じです。

なぜ格上げされたのか|検査基準への遵守義務

厚生労働省の改正法の概要では、この改正を「登録機関や検査業者の適正な業務実施のため、不正への対処や欠格要件を強化し、検査基準への遵守義務を課す」ものと説明しています。施行通達も、新基準の目的を事業者及び検査業者による適正な特定自主検査の徹底としています。

指針は行政指導の位置づけで、従わなくても直接の法令違反にはなりませんでした。基準(告示)になったことで、特定自主検査は基準に従って行わなければならないと定められました(安衛法45条3項)。検査業者については、別に54条の4第2項で「第四十五条第三項の基準に従つて特定自主検査を行わなければならない」と定められています。

なお、罰金を定めた安衛法120条1号が挙げているのは45条1項・2項で、3項は挙げられていません。基準に従わないことへの対応として用意されているのは、主に検査業者に対する行政措置です(次の章)。

旧指針から実際に変わった5点

ここが実務でいちばん知りたいところだと思います。基発1226第2号は、新基準を旧指針の検査項目・検査方法・判定基準を踏まえて文言整理等を行ったものとし、次の5点を除いて検査項目等の趣旨は変わらないとしています。検査項目が増えたのではなく、確認方法の現実的な代替手段が認められたのが特徴です。5点とも対象の機種が決まっているので、自社の機械に関係する点だけ押さえれば足ります。

変更点対象の告示
1. エレメント類の検査の省略高所作業車・車両系建設機械・フォークリフト・不整地運搬車
2. バッテリー電解液の検査の代替高所作業車・車両系建設機械・フォークリフト・不整地運搬車
3. 充電装置の検査対象の見直し高所作業車・フォークリフト
4. 履帯の張り具合の判定車両系建設機械・高所作業車・不整地運搬車
5. カップリングの検査の代替不整地運搬車のみ

動力プレスの告示は、この5点のどれにも挙げられていません。動力プレスに関係するのは、後で触れる判定の留意事項(共通事項)です。

1. エレメント類の検査を省略できるようになった

原動機の潤滑装置のエレメント、燃料フィルターエレメント、油圧装置のフィルターについて、製造者が定める方法により定期的に交換されていることを確認した場合は、汚れ等の検査を省略することができるとされました。交換履歴が残っていることが前提になるので、整備記録の管理がそのまま検査の効率化につながります。なお通達は、交換されている場合でも必要に応じて目視等で確認して差し支えないとしています。

2. バッテリー電解液の検査に代替手段が認められた

液量や電解液の比重を確認できない構造のバッテリーについては、従来の検査に代えてインジケーターの表示確認または電圧測定でバッテリーの状態を確認できるようになりました。

3. 電動機の充電装置は「本体と一体のもの」に限定された

高所作業車とフォークリフトの電動機の充電装置は、検査対象機械の本体と一体となっているものに限って特定自主検査の対象とされました。通達は、本体と一体でない充電装置についても、本体の特定自主検査に合わせて実施することが望ましいとしています。

4. 履帯の張り具合は製造者の基準値で判定する

履帯(クローラベルト)の張り具合は、製造者が定める検査方法に基づき、製造者が定める基準値の範囲にあるかを確認するものとされました。やむを得ず確認できない場合は、旧指針に定める検査方法や同種の機械の検査方法など、適切に判定できる方法によるとされています。

5. カップリングの検査に代替手段が認められた

不整地運搬車の動力伝達装置のカップリングについて、点検口のないカバーが用いられているなど、露出させたり目視したりすることが困難な構造の場合は、作動中に異音等がないことを確認する方法によることができるとされました。

注意 ここに挙げたのは施行通達に示された主な変更点です。告示の逐条本文(各PDF)まで読み込んだ内容ではありません。自社の機械について個別の項目がどう扱われるかは、告示本文と検査業者に確認してください。

事業者が留意すべきこと

通達では、判定にあたっての留意事項も示されています。

  • 判定基準の「適正」等の評価は、製造者が定める基準値の範囲等を確認して判定する。やむを得ず基準値が確認できない場合は、同種の車体や機械の基準値など、適切に判定できる基準値によるとされています。感覚的な良否判断ではなく、拠り所を持って判定することが求められます。
  • 駐車ブレーキの検査で20%の勾配を確保することが困難な場合も、適切な方法で制動力を確認すれば実施できる。現場に試験用の勾配がないことを理由に検査ができない、という状態を避けるための整理です。

検査を委託していても、事業者の義務は消えない

特定自主検査を検査業者に実施させた場合でも、次の3つは事業者側の義務のままです。ここは新基準でも変わっていません。

義務内容条文
記録の作成記録の「検査を実施した者の氏名」は「検査業者の名称」になる安衛則151条の56第4項/169条の2第7項/194条の26第4項
記録の3年保存検査業者ではなく事業者が保存する安衛則151条の55/169条/194条の25
検査標章の貼付「事業者は…見やすい箇所に…はり付けなければならない」安衛則151条の56第5項/169条の2第8項/194条の26第5項

「業者に出したから大丈夫」と考えていると、記録が社内に残っていない状態になりがちです。検査を発注するときに、記録の様式を受け取る手順まで決めておくことをおすすめします。

検査業者には行政措置が用意された

新基準に従わない検査業者に対して、厚生労働大臣または都道府県労働局長は次の措置を取ることができます。

  • 改善命令(安衛法54条の6)
  • 登録の取消し(同54条の7第2項)
  • 6月を超えない範囲内で期間を定めた業務の全部または一部の停止命令(同54条の7第2項)

根拠は、検査業者に基準に従った検査を求める54条の4第2項です。54条の7第2項は、54条の4に違反したときや、54条の6の改善命令に違反したときに、登録の取消しや業務停止を命じることができると定めています。

発注する側として押さえておきたいのは、委託先が業務停止になると自社の検査計画が止まるという点です。特定自主検査は周期を守ることが義務なので、委託先が1社しかない場合は、代替先を把握しておく価値があります。

廃止された5つの指針

新基準の適用に合わせて、特定自主検査に係る定期自主検査指針が廃止されました。手元に古い指針の写しがある場合は、参照先を新基準に差し替えてください。

廃止された指針関係する省令
動力プレス指針安衛則134条の3関係
フォークリフト指針安衛則151条の21関係
不整地運搬車指針安衛則151条の53関係
車両系建設機械指針安衛則167条関係
高所作業車指針安衛則194条の23関係

旧指針は、動力プレスが平成24年3月30日付けの自主検査指針公示第1号、他の4機種が令和5年3月31日付けの公示(第21号・第23号・第24号・第25号)です。いずれも令和8年1月1日に廃止されています(基発1226第2号)。社内の点検要領やマニュアルが旧指針を引用している場合は、この機会に見直しておくのが安全です。

周期と記録は変わっていない

新基準の話とは別に、周期と記録の義務は従来どおりです。ここを新基準の変更と混同しないでください。条文の文言は機械ごとに書き分けられています。

機械特定自主検査定期自主検査(月例)記録条文
車両系建設機械一年以内ごとに一回一月以内ごとに一回6項目・3年保存安衛則167条/168条/169条
高所作業車一年以内ごとに一回一月以内ごとに一回6項目・3年保存安衛則194条の23/24/25
フォークリフト一年を超えない期間ごとに一回一月を超えない期間ごとに一回6項目・3年保存安衛則151条の21/22/23
不整地運搬車二年を超えない期間ごとに一回一月を超えない期間ごとに一回6項目・3年保存安衛則151条の53/54/55

記録すべき6項目は、検査年月日/検査方法/検査箇所/検査の結果/検査を実施した者の氏名/補修等の措置を講じたときはその内容、です。

不整地運搬車だけ周期が2年である点に、あらためて注意してください。1年周期で検査を発注していると、必要のない検査を毎年受けていることになります。

車両系建設機械 定期自主検査記録表(Excel・無料)建機の月例定期自主検査を、機体をまたいで1枚の台帳に記録する様式。1台1回ぶんの検査に使う「月例検査」シート(装置ごと37項目)も付いています。
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5機種それぞれの根拠条文と周期

新基準は機種ごとに別々の告示です。自社の機械がどの告示に対応するかを確認しておいてください。周期と検査事項を定めているのは、告示ではなく省令(安衛則)の側です。

高所作業車(告示第313号)

安衛則194条の23が「一年以内ごとに一回」として9つの号を挙げ、これが特定自主検査にあたります(194条の26)。対象は作業床の高さが2メートル以上のものです。月例は194条の24(一月以内ごとに一回、3号)、記録は194条の25で6項目・3年保存、作業開始前点検は194条の27です。

車両系建設機械(告示第320号)

安衛則167条が「一年以内ごとに一回」として9つの号を挙げ、これが特定自主検査です(169条の2)。資格の区分は施行令別表第七の区分ごとに分かれている点が特徴で、たとえばコンクリートポンプ車は第五号の区分にあたります(169条の2第5項)。委託先がその区分に対応しているかを確認してください。月例は168条、記録は169条、作業開始前点検は170条(ブレーキ及びクラッチの機能の2つのみ)です。

フォークリフト(告示第321号)

安衛則151条の21が「一年を超えない期間ごとに一回」として9つの号を挙げ、これが特定自主検査です(151条の24)。月例は151条の22、記録は151条の23、作業開始前点検は151条の25(4号)です。フォークリフトだけ条文の言い方が「超えない期間」で、車両系建設機械・高所作業車の「以内」とは書き分けられています。

不整地運搬車(告示第322号)

安衛則151条の53が「二年を超えない期間ごとに一回」として9つの号を挙げ、これが特定自主検査です(151条の56)。5機種のうち唯一、周期が2年です。月例は151条の54、記録は151条の55、作業開始前点検は151条の57(4号)です。151条の56は特定自主検査の条文なので、作業開始前点検の根拠として引かないよう注意してください。

動力プレス(告示第323号)

安衛則134条の3が「一年以内ごとに一回」として検査事項を定め、これが特定自主検査です(135条の3)。検査事項はクランクシャフト・フライホイールその他動力伝達装置、クラッチ・ブレーキその他制御系統、一行程一停止機構・急停止機構及び非常停止装置、スライド関係、空圧系統、油圧系統などで、他の4機種とは体系が異なります。建設機械の感覚で読み替えないでください。記録は135条の2(6項目・3年保存)、作業開始前点検は136条です。

移動式クレーンは対象外です

特定自主検査の対象は労働安全衛生法施行令15条2項に列挙されており、移動式クレーンは含まれていません。したがって今回の5つの告示の対象外で、検査者の法定資格要件も検査標章の貼付義務もありません。移動式クレーンの年次自主検査はクレーン等安全規則76条によるもので、そもそも検査項目の号立てがありません。

検査業者はどういう制度で登録されているか

「検査業者」は自称ではなく、法律上の登録制度です。労働安全衛生法54条の3は、検査業者になろうとする者は厚生労働省または都道府県労働局に備える検査業者名簿に登録を受けなければならないと定めています。

同条2項は、登録を受けられない者として次のような場合を挙げています。

  • 45条1項・2項の規定またはこれらに基づく命令に違反し、罰金以上の刑に処せられ、執行を終わった日等から2年を経過しない者
  • 54条の7第2項により登録を取り消され、その取消しの日から2年を経過しない者
  • 法人で、業務を行う役員のうちに上のいずれかに該当する者がいるもの

今回の改正で、検査業者が守るべきことに「基準に従って検査を行うこと」が加わりました(54条の4第2項)。新基準に従わない検査業者には、改善命令・登録の取消し・6月を超えない範囲内での業務停止命令があり得ます。

発注側が見ておくとよいこと

  • 登録番号を確認する。見積書や記録に登録番号が入っているかを見れば足ります。
  • 機種の区分に対応しているか確認する。車両系建設機械は施行令別表第七の区分ごとに資格が分かれます。
  • 代替先を1社は把握しておく。委託先が業務停止になると自社の検査計画が止まります。特定自主検査は周期を守ることが義務なので、止まると困るのは発注側です。

自社の従業員に実施させる場合(事業内検査者)

検査業者に委託せず、自社の従業員が特定自主検査を行うこともできます。この場合の資格要件は安衛則151条の24第2項に定められており、高所作業車・不整地運搬車・車両系建設機械はこの条を準用して機種名を読み替えます。動力プレスは135条の3第2項に同趣旨の規定があります。

要件は「厚生労働大臣が定める研修を修了した者」で、かつ次のいずれかに該当する者です。

学歴等必要な実務経験
大学・高専で工学に関する学科を卒業点検整備2年以上 または 設計工作5年以上
高校・中等教育学校で工学に関する学科を卒業点検整備4年以上 または 設計工作7年以上
学歴の要件によらない場合点検整備7年以上 または 設計工作10年以上
運転業務による場合運転の業務10年以上(動力プレスは、プレス機械作業主任者技能講習を修了し、動力プレスによる作業10年以上)

このほか「その他厚生労働大臣が定める者」も資格を有する者とされています(151条の24第2項第2号)。車両系建設機械は、施行令別表第七の第1号・第2号・第6号、第3号、第4号、第5号の区分ごとに準用の規定が分かれています(169条の2第2項〜第5項)。

新基準の下では、自社実施であっても基準に従う責任は事業者にあります。事業内検査者を置いている場合は、新基準の内容を本人と共有しておいてください。研修費と人の時間がかかるため、台数が少ないうちは委託の方が現実的です。

事業者がいまやること

新基準への対応として、実際に必要な作業は多くありません。順に確認してください。

  • 委託先が新基準に対応しているかを確認する。見積りや発注のときに一言聞いておけば足ります。
  • 社内マニュアルが旧指針を引用していないか確認する。引用している場合は参照先を新基準に差し替えます。
  • 整備記録(エレメント類の交換履歴)を残す。製造者の定める方法で定期交換されていることが確認できれば、該当する検査を省略できます。整備記録が検査の効率化に直結します。
  • 過去3年分の検査記録がそろっているか確認する。新基準とは別の話ですが、求められたときに出せない状態が実務では最も困ります。
  • 事業内検査者を置いている場合は、新基準の内容を共有する。自社実施の場合、基準に従う責任は事業者にあります。

記録の様式が手元にない場合は、条文の号立てをそのまま検査事項にした無料のExcel様式を配布しています。共通の並び(対象名・管理番号・機種・保有拠点・周期・前回実施日・担当)で統一してあるので、機械が増えても同じ形で管理できます。

この記事の情報源と、確認できていないこと

このサイトでは、条文に当たって書くことを方針にしています。この記事の根拠と、確認できていない範囲を明示しておきます。

項目確認の状況
安衛法45条3項の新設確認済み。e-Gov法令検索で現行条文を確認
45条4項に指針の規定が残っていること確認済み。同上
告示番号・告示日・適用日確認済み。厚生労働省および労働局の公表資料
旧指針からの変更点5つと対象機種確認済み。基発1226第2号(令和7年12月26日)。2026年10月3日に本文を読み直し、対象機種を通達どおりに直しました
行政措置・登録の欠格要件確認済み。安衛法54条の3・54条の4・54条の6・54条の7(e-Gov法令検索、2026年10月3日)
廃止された5指針確認済み。同通達
告示の逐条本文未確認。各告示のPDF本文までは読み込んでいません。個別の検査項目の詳細は告示本文と検査業者にご確認ください

出典

関連:費用の考え方は特定自主検査の費用は何で決まるか、機種別の検査事項は車両系建設機械の定期自主検査で詳しく整理しています。告示第322号が適用される不整地運搬車は周期が2年で、他の機種と扱いが異なります。

特定自主検査の新基準にかかわる最近の動き(2026年10月時点)

特定自主検査の新基準は、2023年の旧指針の改正から始まり、2025年の法改正、2026年1月の適用へと続いています。確かめられたものだけを日付順に並べます。

時期できごと根拠
2023年3月31日フォークリフト・不整地運搬車・車両系建設機械・高所作業車の定期自主検査指針が公示される(自主検査指針公示第21号・第23号・第24号・第25号)基発1226第2号に記載
2025年5月14日改正労働安全衛生法(令和7年法律第33号)が公布。特定自主検査は厚生労働大臣の定める基準に従って行うこととする45条3項、検査業者に基準どおりの検査を求める54条の4第2項が設けられる改正法の概要/安衛法45条・54条の4
2025年12月18日高所作業車特定自主検査基準(令和7年厚生労働省告示第313号)が告示される基発1226第2号
2025年12月24日車両系建設機械(第320号)・フォークリフト(第321号)・不整地運搬車(第322号)・動力プレス(第323号)の特定自主検査基準が告示される基発1226第2号
2025年12月26日施行通達「高所作業車特定自主検査基準等の制定等について」(基発1226第2号)が出される厚生労働省 法令等データベース
2026年1月1日5つの告示が適用。特定自主検査に係る旧指針5つが廃止される基発1226第2号
2026年4月1日改正法の主な部分が施行。フォークリフト・車両系建設機械・不整地運搬車・高所作業車などの機械等貸与者の措置は、「事業を行う者」に貸与する場合が対象になる改正法の概要/安衛法33条・安衛令10条
2026年5月27日令和7年の労働災害の確定値が公表。全産業の死亡者は700人で過去最少、うち建設業は214人。はさまれ・巻き込まれによる死亡は117人厚生労働省

ポイントはここです。2026年1月からは、検査の中身(項目・方法・判定基準)が告示で決まり、それに従わない検査業者は行政措置の対象になりました。発注する側としては、次回の検査のときに、記録表が新しい告示に沿った形になっているかを一度見ておくと安心です。

出典:高所作業車特定自主検査基準等の制定等について(基発1226第2号)、厚生労働省 労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律の概要、厚生労働省 令和7年の労働災害発生状況、e-Gov法令検索(労働安全衛生法)。確認日は2026年10月3日です。自社の機械への当てはめは、所轄の労働基準監督署または都道府県労働局にご確認ください。

特定自主検査の新基準に出てくる用語

特定自主検査の新基準では、「基準」「指針」「告示」「通達」といった似た言葉が並びます。それぞれの意味と出どころを表にしておきます。

用語意味出典
特定自主検査定期自主検査のうち、有資格者か検査業者が行わなければならないもの。5機種の年次(不整地運搬車は2年)の検査安衛法45条2項/安衛則135条の3・151条の24・151条の56・169条の2・194条の26
厚生労働大臣の定める基準(特定自主検査基準)特定自主検査の検査項目・検査方法・判定基準を定めたもの。機種ごとに告示された安衛法45条3項/令和7年厚生労働省告示第313号・第320〜323号
自主検査指針定期自主検査の適切な実施のために厚生労働大臣が公表するもの。2026年からは特定自主検査を除く自主検査が対象安衛法45条4項
旧指針2026年1月1日に廃止された、特定自主検査に係る5つの定期自主検査指針。法令上の用語ではなく、通達での呼び方基発1226第2号
新基準5つの特定自主検査基準をまとめた呼び方。法令上の定義はない(通達での呼び方)基発1226第2号
検査業者登録を受け、他人の求めに応じて特定自主検査を行う者安衛法45条2項・54条の3
事業内検査者自社で特定自主検査を行う有資格の労働者の呼び名。法令上の定義はない(条文は「その使用する労働者で…資格を有するもの」)安衛法45条2項
検査標章特定自主検査を行った年月が分かる標章。事業者が機械の見やすい箇所に貼る安衛則135条の3第4項・151条の24第5項ほか
施行通達(基発)厚生労働省労働基準局長から都道府県労働局長あてに出される通知。基発1226第2号は新基準の趣旨と細部事項を示したもの。法令上の定義はない基発1226第2号

特定自主検査の新基準と一緒に押さえておきたいこと

特定自主検査の新基準は、多くの解説が「指針から告示へ」という点を中心に扱っています。そのうえで、事業者の側で見落としやすい点を3つ挙げます。

自社で検査する場合も、新基準に従う

45条3項の主語は「特定自主検査は」で、検査業者に限っていません。事業内検査者が自社の機械を検査する場合も、告示の基準に従って行うことになります。検査業者向けには54条の4第2項が別にありますが、自社実施が外れるわけではありません。事業内検査者を置いている事業場は、旧指針で作った社内の検査表を、告示の項目と突き合わせておくと確実です。

レンタル機は、貸す側の点検と借りる側の検査を分けて考える

フォークリフト・車両系建設機械・不整地運搬車・作業床の高さ2メートル以上の高所作業車は、機械等貸与者が措置を講じる対象の機械です(安衛法33条・安衛令10条)。貸与者は、貸与の前に点検し、異常があれば補修などの整備を行うとされています(安衛則666条)。ただしこれは特定自主検査そのものではありません。レンタル期間中に特定自主検査の期限が来る場合に誰が手配するかは、契約の段階で決めておくと迷いません。考え方はレンタル建機の点検義務は誰が負うかで整理しています。

整備記録は、検査記録と同じ綴りに置く

エレメント類の検査を省略できるのは、製造者が定める方法で定期的に交換されていることを確認できた場合です(基発1226第2号)。つまり、交換の記録が検査の時点で検査者に示せる形になっていることが前提です。特定自主検査の記録(3年保存)と同じ綴りやフォルダに整備記録を置いておくと、検査業者に渡すときも、監督署に説明するときも一度で済みます。

点検板 編集部がまとめました様式を無料で配り、使い方と法令の決まりを記事にまとめています。法令の数字は e-Gov の原文で確かめてから載せています。

よくある質問

Q. 特定自主検査の新基準はいつから適用ですか
令和8年(2026年)1月1日からです。対象5機種すべて同じ日から適用されます。告示日は高所作業車が令和7年12月18日、他の4機種が同年12月24日です。
Q. 何が変わったのですか
最も大きいのは法的な位置づけです。従来は「定期自主検査指針」という推奨の位置づけでしたが、労働安全衛生法45条3項が新設され、厚生労働大臣の定める基準(告示)に従って検査を行うことが義務になりました。検査項目が大幅に増えたわけではありません。
Q. 検査項目は増えましたか
大幅には増えていません。新基準は旧指針の検査項目・検査方法・判定基準を踏まえて文言整理を行ったものです。むしろ、エレメント類の検査省略やバッテリー電解液検査の代替手段など、現実的な確認方法が認められた部分があります。
Q. 定期自主検査指針は全部なくなったのですか
いいえ。廃止されたのは特定自主検査に係る5つの指針です。労働安全衛生法45条4項には、特定自主検査を除く自主検査について指針を公表する規定がいまも残っています。
Q. 対象になる機械は何ですか
高所作業車、車両系建設機械、フォークリフト、不整地運搬車、動力プレスの5種です。移動式クレーンは特定自主検査の対象外なので、この告示の対象にも含まれません。
Q. 事業者は何をすればよいですか
委託先が新基準に対応しているかの確認、社内マニュアルが旧指針を引用していないかの確認、整備記録(エレメント類の交換履歴)の保存、過去3年分の検査記録の点検、の4点が中心です。
Q. エレメントの検査は本当に省略できるのですか
製造者の定める方法で定期交換されていることが確認できる場合に省略できるとされています(基発1226第2号)。交換履歴が残っていることが前提なので、整備記録を残しておくことが条件になります。
Q. 新基準に従わないとどうなりますか
検査業者に対しては、改善命令、登録の取消し、6月を超えない範囲内での業務停止命令が用意されています。事業者側は、特定自主検査を基準に従って実施させる義務を負います。
Q. 記録の保存年数は変わりましたか
変わっていません。従来どおり3年間です。記録すべき6項目(検査年月日/検査方法/検査箇所/検査の結果/検査を実施した者の氏名/補修等の措置を講じたときはその内容)も変更ありません。
Q. 検査を業者に頼んだ場合、記録は業者が保存してくれますか
いいえ。記録を3年間保存する義務は事業者にあります。また記録の「検査を実施した者の氏名」欄は「検査業者の名称」になります。検査標章を貼り付けるのも事業者の義務です。
Q. 不整地運搬車も毎年検査が必要ですか
いいえ。不整地運搬車の特定自主検査は「二年を超えない期間ごとに一回」です(安衛則151条の53)。新基準の適用とは関係なく、従来からこの周期です。
Q. この記事は告示本文を読んで書かれていますか
告示の逐条本文(各PDF)までは読み込んでいません。条文は e-Gov法令検索、変更点は施行通達(基発1226第2号)、告示番号と適用日は厚生労働省および労働局の公表資料で確認しています。個別の検査項目の詳細は告示本文と検査業者にご確認ください。
車両系建設機械 定期自主検査記録表(Excel・無料)建機の月例定期自主検査を、機体をまたいで1枚の台帳に記録する様式。1台1回ぶんの検査に使う「月例検査」シート(装置ごと37項目)も付いています。
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本記事は一般的な情報の整理であり、法令への適合を保証するものではありません。個別の義務内容は所管行政庁または専門家にご確認ください。記事の内容は2026-10-03時点の情報です。