車両系建設機械の定期自主検査|条文の検査事項9項目と、点検表の作り方
車両系建設機械の点検について調べると、検査項目を並べた表は見つかるのに、それが条文のどこに書かれているのかを示している資料は多くありません。項目の出どころが分からないと、社内の点検表に何を残し何を削ってよいかの判断ができません。
この記事では、労働安全衛生規則の条文に当たって、年次・月例・作業開始前の3つを整理します。検査事項は条文に号立てで書かれているので、それをそのまま点検表にするのが最も確実です。記事の下に、条文の号立てをそのまま検査事項にしたExcel様式を置いています。
この記事の内容(9項目)
- 結論|3層と、それぞれの条文
- 対象になる機械|「建設機械」ではなく「車両系建設機械」
- よくある間違い|コンクリートポンプ車は車両系建設機械です
- 注意|「建設業の法定点検」で検索すると別ジャンルに流れます
- 年次の特定自主検査|条文の9項目
- 月例の定期自主検査|4号あるが、実質3項目
- 作業開始前点検はブレーキとクラッチだけ
- それでも点検表に他の項目を載せてよいか
- 作業開始前点検に記録の保存義務はありません
- 記録すべき6項目と3年保存
- 点検表を作るときの5つのコツ
- 1. 検査事項は条文の号立てをそのまま行にする
- 2. 年次・月例・作業開始前をシートで分ける
- 3. 「否」のときの措置欄を必ず残す
- 4. 実施者名と検査業者名を切り替えられるようにする
- 5. 管理台帳に転記できる並びにしておく
- 周期は機械ごとに文言が違う
- よくある質問
結論|3層と、それぞれの条文
車両系建設機械に義務付けられている点検・検査は3層です。周期と根拠条文、記録の要否が層ごとに違います。
| 層 | 周期(条文の文言) | 検査事項 | 誰が | 記録 | 条文 |
|---|---|---|---|---|---|
| 作業開始前点検 | その日の作業を開始する前 | 2つのみ | 運転者等 | 保存義務なし | 安衛則170条 |
| 定期自主検査(月例) | 一月以内ごとに一回 | 4号(うち1つは対象外) | 資格要件なし | 6項目・3年保存 | 安衛則168条 |
| 特定自主検査(年次) | 一年以内ごとに一回 | 9号 | 検査業者または有資格者 | 6項目・3年保存+検査標章 | 安衛則167条 |
対象になる機械|「建設機械」ではなく「車両系建設機械」
対象は労働安全衛生法施行令別表第七に掲げられた機械で、施行令13条3項9号の車両系建設機械にあたるものです。分類は次のとおりです。
| 別表第七の区分 | 主な機械 |
|---|---|
| 第一号 整地・運搬・積込み用機械 | ブルドーザ、トラクターショベル(ホイールローダー)、スクレーパー など |
| 第二号 掘削用機械 | パワーショベル(バックホー・油圧ショベル)、ドラグライン、クラムシェル など |
| 第三号 基礎工事用機械 | くい打機、くい抜機、アースドリル、アースオーガー など |
| 第四号 締固め用機械 | ローラー |
| 第五号 コンクリート打設用機械 | コンクリートポンプ車 |
| 第六号 解体用機械 | ブレーカ、鉄骨切断機、コンクリート圧砕機 など |
よくある間違い|コンクリートポンプ車は車両系建設機械です
コンクリートポンプ車は別表第七 第五号(コンクリート打設用機械)に掲げられており、車両系建設機械として167条以下がそのまま適用されます。専用の点検条文があるわけではありません。これに加えて、輸送管等の脱落及び振れの防止(安衛則171条の2)と、組立て・解体時の作業指揮者の指名(171条の3)というポンプ車固有の規定があります。
注意|「建設業の法定点検」で検索すると別ジャンルに流れます
「建設業 法定点検」で調べると、建築物・ビル設備の法定点検(消防設備・建築設備・貯水槽など)の情報がほとんどです。建設機械の話を探すときは「建設機械」「車両系建設機械」と機械側の語を入れてください。
年次の特定自主検査|条文の9項目
安衛則167条は「一年以内ごとに一回、定期に、次の事項について自主検査を行わなければならない」として、9つの号を挙げています。これが法定の検査事項です。
| 号 | 検査事項(条文のまま) |
|---|---|
| 一 | 圧縮圧力、弁すき間その他原動機の異常の有無 |
| 二 | クラッチ、トランスミッション、プロペラシャフト、デファレンシャルその他動力伝達装置の異常の有無 |
| 三 | 起動輪、遊動輪、上下転輪、履帯、タイヤ、ホイールベアリングその他走行装置の異常の有無 |
| 四 | かじ取り車輪の左右の回転角度、ナックル、ロッド、アームその他操縦装置の異常の有無 |
| 五 | 制動能力、ブレーキドラム、ブレーキシューその他ブレーキの異常の有無 |
| 六 | ブレード、ブーム、リンク機構、バケット、ワイヤロープその他作業装置の異常の有無 |
| 七 | 油圧ポンプ、油圧モーター、シリンダー、安全弁その他油圧装置の異常の有無 |
| 八 | 電圧、電流その他電気系統の異常の有無 |
| 九 | 車体、操作装置、ヘッドガード、バックストッパー、昇降装置、ロック装置、警報装置、方向指示器、灯火装置及び計器の異常の有無 |
この年次検査が特定自主検査です(安衛則169条の2)。検査業者または所定の研修を修了した事業内検査者しか実施できません。検査後は事業者が検査標章を貼り付けます(169条の2第8項)。
2026年1月1日から、特定自主検査は厚生労働大臣の定める基準(令和7年厚生労働省告示第320号)に従って行うことが義務になりました。検査項目が大幅に増えたわけではありませんが、法的な位置づけが上がっています。
月例の定期自主検査|4号あるが、実質3項目
安衛則168条は「一月以内ごとに一回、定期に、次の事項について」として4つの号を挙げています。ただし第四号には条件が付いています。
| 号 | 検査事項(条文のまま) | 対象 |
|---|---|---|
| 一 | ブレーキ、クラッチ、操作装置及び作業装置の異常の有無 | すべて |
| 二 | ワイヤロープ及びチェーンの損傷の有無 | すべて |
| 三 | バケット、ジッパー等の損傷の有無 | すべて |
| 四 | 第百七十一条の四の特定解体用機械にあっては、逆止め弁、警報装置等の異常の有無 | 特定解体用機械のみ |
つまり、一般的なバックホーやブルドーザでは第四号は対象外で、実質3項目です。点検表に第四号を載せている場合は、自社の機械が特定解体用機械にあたるかを確認してください。
月例の定期自主検査に資格要件はありません。事業者の責任で実施します。実務では整備担当者や職長が行い、判断に迷う項目を整備業者に依頼する形が一般的です。
作業開始前点検はブレーキとクラッチだけ
安衛則170条の条文はこれだけです。
事業者は、車両系建設機械を用いて作業を行なうときは、その日の作業を開始する前に、ブレーキ及びクラツチの機能について点検を行なわなければならない。
号立てはなく、法定の点検事項はこの2つだけです。他の機械と比べると極端に少なく感じますが、条文はそうなっています。
それでも点検表に他の項目を載せてよいか
問題ありません。実務では、燃料・油脂類の量、アタッチメントの取付け状態、周囲の障害物、警報装置の作動などを社内基準として加えるのが一般的です。ただし、法定項目と社内項目を区別できるようにしておくことをおすすめします。監督署の臨検で「どれが法定か」を説明できる状態になります。
作業開始前点検に記録の保存義務はありません
記録を定めた安衛則169条は「前二条の自主検査を行つたときは、次の事項を記録し、これを三年間保存しなければならない」と書かれています。前二条=167条(年次)と168条(月例)です。170条の作業開始前は「点検」であって「自主検査」ではないため、記録条文の対象に入っていません。
とはいえ、実際に点検したことを示す手段がないのは別のリスクです。法令上の義務ではないことを理解したうえで、社内管理として残すかどうかを決めてください。
記録すべき6項目と3年保存
安衛則169条が定める記録事項は6つです。年次・月例の両方に共通します。
| 記録事項 | 書き方のポイント |
|---|---|
| 検査年月日 | 実施日。次回期限の起算になる |
| 検査方法 | 目視・作動確認・測定など |
| 検査箇所 | 条文の号立てをそのまま行にしておくと漏れない |
| 検査の結果 | 良/否。否の場合は次の欄が必要になる |
| 検査を実施した者の氏名 | 検査業者に実施させた場合は「検査業者の名称」(169条の2第7項) |
| 補修等の措置を講じたときは、その内容 | 結果が「否」なのにここが空欄なのが最も多い記入もれ |
(第四号は特定解体用機械のみ)
点検表を作るときの5つのコツ
1. 検査事項は条文の号立てをそのまま行にする
言い換えたり要約したりすると、監督署や元請けに示したときに「どの号に対応するのか」が説明できなくなります。条文の文言をそのまま行にして、社内の補足は備考欄に書くのが確実です。
2. 年次・月例・作業開始前をシートで分ける
周期も検査事項も記録の要否も違うので、1枚に混ぜると運用が破綻します。1台につき1ファイル、その中でシートを分けるのが扱いやすい形です。
3. 「否」のときの措置欄を必ず残す
記録事項の6番目が「補修等の措置を講じたときは、その内容」です。結果が「否」なのに措置欄が空のまま保存されている記録は、実務でよく見かける不備です。
4. 実施者名と検査業者名を切り替えられるようにする
特定自主検査を検査業者に実施させた場合、記録の「検査を実施した者の氏名」は「検査業者の名称」になります。欄のラベルを固定してしまうと、業者委託のときに書けなくなります。
5. 管理台帳に転記できる並びにしておく
台数が増えると、1台ごとのファイルを開いて期限を確認する運用が続かなくなります。ヘッダーを対象名・管理番号・機種・保有拠点・周期・前回実施日・担当の並びにしておくと、そのまま台帳に転記できます。配布しているExcel様式はこの並びで統一してあります。
周期は機械ごとに文言が違う
建設機械を複数の種類で保有している場合、周期の文言が機械ごとに書き分けられている点に注意してください。同じ「月例」でも条文の言い方が違います。
| 機械 | 年次/特定自主検査 | 月例 | 条文 |
|---|---|---|---|
| 車両系建設機械 | 一年以内ごとに一回 | 一月以内ごとに一回 | 安衛則167条/168条 |
| 高所作業車 | 一年以内ごとに一回 | 一月以内ごとに一回 | 安衛則194条の23/194条の24 |
| フォークリフト | 一年を超えない期間ごとに一回 | 一月を超えない期間ごとに一回 | 安衛則151条の21/151条の22 |
| 不整地運搬車 | 二年を超えない期間ごとに一回 | 一月を超えない期間ごとに一回 | 安衛則151条の53/151条の54 |
フォークリフトの解説をそのまま建設機械に当てはめている資料が少なくありません。実務上の運用はほぼ同じですが、記録や社内文書に条文を引くときは、自社の機械の条文を確認してください。
条文の原文はe-Gov法令検索(労働安全衛生規則)で確認できます。
関連:2026年1月の新基準は特定自主検査の新基準、費用の考え方は特定自主検査の費用は何で決まるかで扱っています。
機種別では、周期が2年で条文の系統も別の不整地運搬車の定期自主検査、輸送管の措置が別条文になっているコンクリートポンプ車の点検を用意しています。借りた機械の扱いはレンタル建機の点検義務は誰が負うかで整理しました。
よくある質問
- Q. バックホーの点検表には何を書けばよいですか
- 年次は安衛則167条の9項目、月例は168条の1〜3号、作業開始前は170条のブレーキ及びクラッチの機能です。条文の号立てをそのまま行にするのが確実です。年次・月例の記録は6項目を3年間保存します。
- Q. 作業開始前点検はブレーキとクラッチだけでよいのですか
- 条文(安衛則170条)が定めているのはその2つだけです。実務では燃料・油脂類やアタッチメントの状態なども確認しますが、それらは社内基準です。法定項目と社内項目を区別できる形にしておくと、説明が必要になったときに困りません。
- Q. 作業開始前点検の記録は残さないといけませんか
- 法令上の保存義務はありません。記録を定めた169条は「前二条の自主検査」=167条(年次)と168条(月例)を指しており、作業開始前は「点検」であって「自主検査」ではないためです。社内管理として残すかどうかは事業者の判断です。
- Q. 月例検査は社内で行ってもよいですか
- できます。月例の定期自主検査に資格要件はなく、事業者の責任で実施します。有資格者または検査業者が必要なのは年次の特定自主検査だけです。ただし月例も記録の3年保存が必要です。
- Q. 月例の第四号は必ず点検が必要ですか
- 第四号は「第百七十一条の四の特定解体用機械にあっては」という条件付きで、逆止め弁・警報装置等が対象です。一般的なバックホーやブルドーザは対象外なので、実質3項目になります。
- Q. コンクリートポンプ車も車両系建設機械ですか
- はい。労働安全衛生法施行令別表第七 第五号(コンクリート打設用機械)に掲げられ、167条以下がそのまま適用されます。加えて輸送管等の脱落及び振れの防止(171条の2)と、組立て・解体時の作業指揮者の指名(171条の3)というポンプ車固有の規定があります。
- Q. 特定自主検査は誰が実施できますか
- 登録検査業者、または所定の研修を修了した事業内検査者です。事業内検査者の要件は安衛則151条の24第2項に定められており、学歴と実務年数の組み合わせ、または運転業務10年以上などです。
- Q. 2026年1月から何が変わりましたか
- 特定自主検査を「厚生労働大臣の定める基準に従って」行うことが義務になりました(労働安全衛生法45条3項)。車両系建設機械は令和7年厚生労働省告示第320号が適用されます。検査項目が大幅に増えたわけではなく、法的な位置づけが上がったことが本質です。
- Q. 検査記録は誰が保存するのですか
- 事業者です。検査業者に実施させた場合でも保存義務は事業者にあります。記録の「検査を実施した者の氏名」欄は「検査業者の名称」になります(169条の2第7項)。検査標章を貼り付けるのも事業者の義務です(169条の2第8項)。
- Q. 点検表は決まった様式がありますか
- 法定の様式はありません。条文が定めているのは検査事項と記録すべき6項目で、書式は自由です。ただし条文の号立てをそのまま検査事項にしておくと、漏れがなく説明もしやすくなります。
この記事で紹介した無料テンプレート
あわせて読みたい記事
本記事は一般的な情報の整理であり、法令への適合を保証するものではありません。個別の義務内容は所管行政庁または専門家にご確認ください。記事の内容は2026-08-14時点の情報です。