作業構台の点検|毎日見るのは手すりの脱落だけです
作業構台の点検を調べると、足場の点検表が出てきます。項目が似ているので、そのまま流用している現場もあります。
ただ、作業構台は足場ではありません。労働安全衛生規則が別の条文で定めた、別の設備です。点検の周期も、見る項目も、記録の保存も、足場とは条文が違います。この記事では、その線引きと、575条の8が求めている中身を整理します。
この記事の内容(7項目)
作業構台とは何か|足場と混ぜないための定義
まず定義から確認します。安衛則575条の2第1項は、作業構台をこう書いています。
「仮設の支柱及び作業床等により構成され、材料若しくは仮設機材の集積又は建設機械等の設置若しくは移動を目的とする高さが二メートル以上の設備で、建設工事に使用するもの」
| 作業構台 | 足場 | |
|---|---|---|
| 目的 | 材料・仮設機材の集積、建設機械等の設置・移動 | 高所での作業のための作業床 |
| 呼び方の例 | 乗入れ構台、桟橋、荷取り構台 | 枠組足場、単管足場、くさび緊結式足場 |
| 点検 | 安衛則575条の8 | 安衛則567条 |
| 作業主任者 | 条文なし | 高さ5m以上等で選任(安衛令6条15号) |
| 高さの下限 | 2m以上が定義に入っている | 定義に高さの下限なし |
ポイントはここです。作業構台には、作業主任者の選任を定めた条文がありません。足場と同じつもりで「構台にも作業主任者が要る」と説明している資料を見かけますが、条文にはありません。ただし同じ現場に高さ5m以上の足場があれば、そちらで足場の組立て等作業主任者の選任が必要になります。
一般には、構台と足場の両方がある現場では、足場の組立て等作業主任者の資格を持つ人が構台も見ている例が多くあります。資格として要るわけではありませんが、見る目が同じなので理にかなった運用です。
作業構台の点検は、毎日と悪天候後で見るものが違います
ここが575条の8のいちばん大事なところです。1項と2項で、点検事項の数がまったく違います。
| いつ | 点検事項 | 記録 |
|---|---|---|
| その日の作業を開始する前(1項) | 手すり等及び中桟等の取り外し及び脱落の有無だけ | 定めなし |
| 悪天候・中震以上の地震・組立て/一部解体/変更の後(2項) | 7項目(下の表) | 必要(3項) |
つまり、毎日7項目を見る紙は、条文が求めているものより重いということです。毎日全部を見るのが悪いわけではありませんが、7項目を毎朝やらせようとして続かなくなり、結局どちらもやらなくなる現場があります。条文が求めている線を先に押さえて、そのうえで社内で足すかどうかを決めるほうが続きます。
2項の7項目
| 号 | 点検事項 | 判断のよりどころ |
|---|---|---|
| 1号 | 支柱の滑動及び沈下の状態 | 根入れ・根がらみ・敷板等の措置(575条の6第1項1号) |
| 2号 | 支柱、はり等の損傷の有無 | 著しい損傷・変形・腐食のある材料は使わない(575条の2第1項) |
| 3号 | 床材の損傷、取付け及び掛渡しの状態 | 高さ2m以上の作業床の床材間の隙間は3cm以下(575条の6第1項3号) |
| 4号 | 支柱、はり、筋かい等の緊結部・接続部・取付部の緩みの状態 | 緊結金具等で堅固に固定(575条の6第1項2号) |
| 5号 | 緊結材及び緊結金具の損傷及び腐食の状態 | クランプの変形・割れ・ねじ山のつぶれ |
| 6号 | 水平つなぎ、筋かい等の補強材の取付状態及び取り外しの有無 | 組立図どおりに入っているか |
| 7号 | 手すり等及び中桟等の取り外し及び脱落の有無 | 高さ2m以上の作業床の端(575条の6第1項4号) |
作業構台の点検記録は、仕事が終了するまで保存します
575条の8第3項は、2項の点検を行つたときに記録すべきものを2つ挙げています。
| 号 | 記録する事項 |
|---|---|
| 1号 | 当該点検の結果 |
| 2号 | 結果に基づいて補修等の措置を講じた場合にあつては、当該措置の内容 |
保存は「作業構台を使用する作業を行う仕事が終了するまでの間」です。年数ではなく、仕事の単位で決まります。1年で終わる工事なら1年、3年かかるなら3年です。
足場とは、記録する事項が1つ違います
| 作業構台(575条の8第3項) | 足場(567条3項) | |
|---|---|---|
| 点検の結果 | ○ | ○ |
| 点検者の氏名 | 条文に無い | ○(条文が名指し) |
| 措置の内容 | ○ | ○ |
| 点検者の指名 | 条文に無い | ○(1項・2項とも) |
| 保存 | 仕事が終了するまで | 仕事が終了するまで |
足場は2023年10月・2024年4月の改正で、点検者の指名と、記録に点検者の氏名を残すことが加わりました。作業構台には、この改正が入っていません。とはいえ、誰が見たのか分からない記録は後から使えません。氏名の欄は入れておくほうが扱いやすくなります。
作業構台の組立図は、点検の判定基準になります
575条の5は、作業構台を組み立てるときに組立図を作成し、かつ、当該組立図により組み立てなければならないと定めています。組立図には支柱、作業床、はり、大引き等の部材の配置及び寸法が示されている必要があります。
ここが実務で効いてきます。点検の「異常あり/なし」を判断するには、正しい状態が分かっている必要があります。組立図が判定基準そのものになります。
| 点検で見るところ | 何と比べるか |
|---|---|
| 水平つなぎ・筋かいの取付状態 | 組立図の配置(抜けている段はないか) |
| 支柱の間隔・大引きの寸法 | 組立図の寸法 |
| 床材の隙間 | 安衛則575条の6第1項3号(3cm以下) |
| 積載している資材の量 | 定めた最大積載荷重(575条の4) |
最大積載荷重は、定めるだけでなく周知します
575条の4は2項構成です。1項が「構造及び材料に応じて、作業床の最大積載荷重を定め、かつ、これを超えて積載してはならない」、2項が「前項の最大積載荷重を労働者に周知させなければならない」。
定めただけで書類の中にしまってある現場があります。周知は条文の義務です。見やすい箇所に表示して、現場の人が数値を言える状態にしてください。重機を乗り入れる構台では、進入できる機種と総重量まで書いておくと確実です。
作業構台の組立て・解体は、悪天候で中止します
575条の7は、作業構台の組立て・解体・変更の作業について4つを定めています。
| 号 | やること |
|---|---|
| 1号 | 組立て、解体又は変更の時期、範囲及び順序を、作業に従事する労働者に周知させる |
| 2号 | 作業を行う区域内への、関係者以外の立入りを禁止し、見やすい箇所に表示する |
| 3号 | 強風、大雨、大雪等の悪天候のため危険が予想されるときは、作業を中止する |
| 4号 | 材料、器具、工具等を上げ下ろしするときは、つり綱、つり袋等を使用させる |
ポイントは3号です。条文に風速の数字はありません。「悪天候のため、作業の実施について危険が予想されるとき」という書き方です。数字が無いぶん、現場で判断が割れます。
一般には、社内で「瞬間風速○m/s を超えたら中止」「暴風警報が出たら中止」のように数値で決めておき、朝礼で共有している現場が多くあります。決めていないと、止める判断をした人が損をする空気になります。止める基準を先に決めておくのは、現場の人を守る意味もあります。
組立て・変更の後は、2項の点検が必要です
575条の8第2項は、悪天候・地震だけでなく「作業構台の組立て、一部解体若しくは変更の後」も挙げています。段を1つ足しただけ、床材を数枚入れ替えただけでも「変更」です。作業を開始する前に7項目を点検して、記録してください。
作業構台の点検表は、区分を選べる形にすると短くなります
1項(毎日)と2項(悪天候後)で見るものが違うので、点検表も分けられる形にしておくと現場が迷いません。
点検表に入れておくと効くものを3つ挙げます。
- 判定基準の列。「床材間の隙間3cm以下」「手すり等85cm以上」のように、数値を欄に書いておきます。人によって判断が変わらなくなります
- 是正と再確認の欄。「直ちに補修」が条文の書き方なので、いつ誰が直して、いつ誰が確かめたのかまで残します
- 重機の乗り入れ条件。構台特有の項目です。進入できる機種・総重量・通行位置を書いておくと、日々の判断が早くなります
作業構台の上に足場を組む現場では、足場点検チェックリストの作り方もあわせて確認してください。台風の前後にやることは台風前後の現場点検で扱っています。掘削と一体で構台を組む現場は地山の掘削の点検も同時に動きます。条文はe-Gov法令検索(労働安全衛生規則)で読めます。
よくある質問
- Q. 作業構台は毎日7項目を点検するのですか
- 違います。その日の作業を開始する前の点検事項は「作業を行う箇所に設けた手すり等及び中桟等の取り外し及び脱落の有無」だけです(安衛則575条の8第1項)。7項目(2項)を見るのは、悪天候・中震以上の地震・組立て・一部解体・変更の後です。
- Q. 作業構台の点検記録は何年保存しますか
- 年数ではありません。「作業構台を使用する作業を行う仕事が終了するまでの間」です(575条の8第3項)。1年で終わる工事なら1年、3年かかるなら3年です。
- Q. 高さ2m未満の構台も対象ですか
- 575条の2の作業構台の定義が「高さが二メートル以上の設備」なので、2m未満のものはこれらの条文の対象外です。ただし墜落や崩壊の危険は別にあるので、社内の様式として点検を残しておくことをおすすめします。
- Q. 作業構台に作業主任者は必要ですか
- 作業構台そのものには、作業主任者の選任を定めた条文がありません。ただし同じ現場につり足場・張出し足場または高さ5m以上の足場があれば、足場の組立て等作業主任者の選任が必要です(安衛令6条15号)。
- Q. 床材の隙間は何cmまでですか
- 高さ2メートル以上の作業床の床材間の隙間は3センチメートル以下です(安衛則575条の6第1項3号)。足場の作業床(563条1項2号ロ)も同じく3センチメートル以下です。
- Q. 組立図は毎回作りますか
- 作業構台を組み立てるときは、組立図を作成し、その組立図により組み立てなければなりません(575条の5第1項)。組立図には支柱、作業床、はり、大引き等の部材の配置及び寸法が示されている必要があります。
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本記事は一般的な情報の整理であり、法令への適合を保証するものではありません。個別の義務内容は所管行政庁または専門家にご確認ください。記事の内容は2026-09-23時点の情報です。