建設

地山の掘削の点検|条文が求めているのは「変化」です

公開 2026-09-21 執筆 点検板 編集部

地山の掘削の点検で調べると、出てくるのはほとんどが条文の解説です。何を見ればよいのかは書いてあっても、それを何に書いて残すのかまでは書かれていません。

労働安全衛生規則358条は、明り掘削の作業を行なうときの点検を定めていますが、様式を定めていません。点検者を指名して見させる、としか書いていないからです。この記事では、条文が求めている中身と、記録に残すときの形を整理します。

地山の掘削(明り掘削)点検表(Excel・無料)明り掘削の作業で、その日の作業開始前・大雨の後・中震以上の地震の後・発破の後に行う点検の様式。安衛則358条の点検事項(浮石・き裂・含水・湧水・凍結の状態の変化)を行に落とし、356条・357条の掘削面のこう配の基準を判定基準の列に数値で入れています。点検者の指名欄つき。
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この記事の内容(7項目)

地山の掘削を点検する時期は4つ。うち3つは同じ条文の号

地山の掘削の点検は、安衛則358条が定めています。まず、いつ点検するのかを押さえます。

いつ何を見るか根拠
その日の作業を開始する前浮石及びき裂の有無及び状態/含水、湧水及び凍結の状態の変化358条1号
大雨の後
中震以上の地震の後
発破を行なつた後発破を行なつた箇所及びその周辺の浮石及びき裂の有無及び状態358条2号

ポイントはここです。1号と2号は別の号で、見るものが違います。1号は含水・湧水・凍結まで含みますが、2号は浮石とき裂だけです。発破を行う現場では、1号の点検とは別に2号の点検が要ります。

「中震以上の地震」に数字は書かれていない

条文には震度の数字がありません。一般には震度4以上を指すものとして運用されています。数字が条文に無いので、社内で「震度いくつから点検するか」を決めて周知しておくと、現場が迷いません。決めていないと、揺れたあとに誰も動かないという状態が起きます。

地山の掘削で条文が求めている点検事項は5つ

358条1号が名指ししているのは、次の5つです。

点検事項見方
浮石の有無及び状態手の届く範囲は落とす。落とせないものは真下を立入禁止にする
き裂の有無及び状態日付入りの印を付け、長さと幅を書く
含水の状態の変化掘削面が湿ってきていないか
湧水の状態の変化新しい湧水点、濁り、量の増加
凍結の状態の変化凍結と融解を繰り返した面はゆるむ。融け始めに注意

条文は「状態の変化」と書いています。これが大事なところです。今日の状態が危ないかどうかではなく、前回と比べてどう動いたかを見よ、という書き方になっています。

「き裂あり」だけでは記録になりません

き裂は、あるかどうかよりも広がっているかどうかが判断の材料です。見つけたらその場で日付入りの印を付け、長さと幅を数字で書いてください。次に点検する人が、進行しているかどうかを判断できます。

一般には、掘削に着手する前の状態を写真と図面で残しておき、日々の点検はそこからの差で見ている現場が多くあります。着手前の記録が無いと、「もともとこうだった」のか「今日そうなった」のかが分かりません。

地山の掘削面のこう配の基準は「手掘り」の話です

安衛則356条・357条は、掘削面のこう配を数値で決めています。ここが点検表の判定基準にそのまま使えるところですが、適用される範囲に条件があります。

地山の種類掘削面の高さこう配
岩盤又は堅い粘土からなる地山5m未満90度以下
5m以上75度以下
その他の地山2m未満90度以下
2m以上5m未満75度以下
5m以上60度以下
砂からなる地山35度以下、または掘削面の高さ5m未満
発破等により崩壊しやすい状態になつている地山45度以下、または掘削面の高さ2m未満

ポイントはここです。356条・357条がかかるのは「手掘り」の場合です。条文は手掘りを「パワー・ショベル、トラクター・ショベル等の掘削機械を用いないで行なう掘削の方法」と定義しています。機械掘削にこの表をそのまま当てはめて「90度でよい」と読まないでください。

機械掘削でも法面が崩れれば同じことが起きます。実務では、施工計画で法面の勾配と保護方法を決めておき、点検表の判定基準の欄にはその計画値を書いている現場が多くあります。

小段があるときは、段ごとに判定します

356条1項は、掘削面を「掘削面に奥行きが二メートル以上の水平な段があるときは、当該段により区切られるそれぞれの掘削面をいう」と定義しています。奥行き2m以上の小段があれば、全体の高さではなく、段で区切った各面の高さで判定します。全体で8mでも、途中に2m以上の段があれば、上下それぞれの高さで見ます。

地山の掘削(明り掘削)点検表(Excel・無料)明り掘削の作業で、その日の作業開始前・大雨の後・中震以上の地震の後・発破の後に行う点検の様式。安衛則358条の点検事項(浮石・き裂・含水・湧水・凍結の状態の変化)を行に落とし、356条・357条の掘削面のこう配の基準を判定基準の列に数値で入れています。点検者の指名欄つき。
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地山の掘削の点検記録に、保存期間の定めはありません

ここは正直に書きます。358条には、記録を作れとも、何年保存せよとも書かれていません。

対象記録の定め保存期間
足場あり(点検の結果と点検者の氏名仕事が終了するまで(567条3項)
作業構台あり(点検の結果と措置の内容)仕事が終了するまで(575条の8第3項)
ガス溶接装置の定期自主検査あり(6事項)3年間(317条4項)
地山の掘削無し定めなし
土止め支保工無し定めなし

「法律で3年保存が決まっています」と書いてある資料を見かけますが、地山の掘削についてはそう書かれていません。3年保存が決まっているのは、車両系建設機械などの定期自主検査(安衛則169条ほか)です。制度が別です。

とはいえ、記録を残さない理由にはなりません。点検したことを示せるのは記録だけで、災害が起きたあとに「毎日見ていました」と口で言っても通りません。一般には、工事の記録として完成後1年から5年としている会社が多くあります。社内規程で期間を決めて、様式の隅に書いておくと迷いません。

地山の掘削を点検するのは誰か|点検者は指名します

358条は「点検者を指名して」と書いています。事業者が誰かを決める、という書き方です。

条文に資格の要件はありません。ただし、掘削面の高さが2m以上になる地山の掘削の作業では、地山の掘削作業主任者の選任そのものが必要です(安衛令6条9号)。作業主任者は技能講習の修了者から選任し、氏名と職務を作業場の見やすい箇所に掲示します(安衛則18条)。

地山の掘削作業主任者点検者
根拠安衛則359条・360条安衛則358条
要件技能講習の修了者条文に要件なし(事業者が指名)
いつ必要か掘削面の高さ2m以上明り掘削の作業を行なうとき
やること作業の方法の決定と指揮/器具・工具の点検と不良品の取除き/保護帽・墜落制止用器具の使用状況の監視浮石・き裂・含水・湧水・凍結の点検

実務では、作業主任者が点検者を兼ねている現場が多くあります。それで構いませんが、兼ねているなら兼ねていると様式に書いておくほうが、後から確認しやすくなります。

地山の掘削の点検と、土止め支保工の点検は別の条文です

掘削の現場では、地山の点検と土止め支保工の点検の両方が動きます。この2つは条文が別で、周期も違います。混ぜて1枚にすると、どちらかが抜けます。

地山の掘削土止め支保工
根拠安衛則358条安衛則373条
いつその日の作業を開始する前/大雨の後/中震以上の地震の後/発破の後7日をこえない期間ごと/中震以上の地震の後/大雨等により地山が急激に軟弱化するおそれのある事態が生じた後
見るもの浮石・き裂・含水・湧水・凍結部材の損傷・変形・腐食・変位・脱落/切りばりの緊圧の度合/部材の接続部・取付部・交さ部の状態
記録定めなし定めなし

頻度がまったく違うことに注意してください。地山は毎日、土止めは7日をこえない期間ごとです。土止め支保工については土止め支保工の点検で詳しく扱っています。

掘削面の高さと深さで、別の義務も動きます

掘削の現場では、点検以外にも条文がいくつも重なります。まとめておきます。

条件必要になるもの根拠
崩壊・土石の落下のおそれがあるときあらかじめ土止め支保工・防護網・立入禁止等361条
埋設物・ブロック塀・擁壁に近接するとき補強・移設等の措置が済むまで作業を行なわない362条1項
ガス導管が露出したときつり防護・受け防護等、または移設362条2項
運搬機械等が後進して接近/転落のおそれ誘導者を配置し、誘導させる365条
深さまたは高さが1.5mをこえる箇所昇降設備526条
掘削面の高さ2m以上地山の掘削作業主任者安衛令6条9号

掘削に使う機械そのものの点検は、油圧ショベル(ユンボ・バックホウ)点検表で別に残します。作業構台を組んで重機を乗り入れる現場では、作業構台の点検もあわせて確認してください。条文はe-Gov法令検索(労働安全衛生規則)で読めます。

よくある質問

Q. 地山の掘削の点検は毎日必要ですか
明り掘削の作業を行なうときは、その日の作業を開始する前に点検します(安衛則358条1号)。加えて、大雨の後と中震以上の地震の後にも点検が必要です。発破を行った現場では、発破の後の点検が2号で別に定められています。
Q. 点検者に資格は要りますか
358条は「点検者を指名して」と書いているだけで、資格の要件はありません。ただし掘削面の高さが2m以上の作業では、地山の掘削作業主任者の選任そのものが必要です(安衛令6条9号)。実務では作業主任者が点検者を兼ねている現場が多くあります。
Q. 点検の記録は何年保存しますか
安衛則358条には記録の保存を定めた項がありません。保存の期間は社内で決めてください。工事の記録として完成後1年から5年としている会社が多くあります。3年保存が決まっているのは、車両系建設機械などの定期自主検査(169条ほか)で、制度が別です。
Q. 掘削面のこう配の基準は機械掘削でも同じですか
違います。356条・357条は「手掘り」(パワー・ショベル、トラクター・ショベル等の掘削機械を用いないで行なう掘削)の場合の基準です。機械掘削の法面の勾配と保護方法は、施工計画で別に検討してください。
Q. 「中震以上の地震」はどの震度ですか
条文に震度の数字はありません。一般には震度4以上を指すものとして運用されています。数字が条文に無いので、社内で基準を決めて周知しておくと、揺れたあとに現場が迷いません。
Q. 土止め支保工の点検表と一緒に使えますか
別の様式にすることをおすすめします。条文が別で、周期も違うためです。地山は358条で作業開始前・大雨の後・中震以上の地震の後、土止め支保工は373条で7日をこえない期間ごと・中震以上の地震の後・大雨等で地山が急激に軟弱化するおそれのある事態が生じた後です。
地山の掘削(明り掘削)点検表(Excel・無料)明り掘削の作業で、その日の作業開始前・大雨の後・中震以上の地震の後・発破の後に行う点検の様式。安衛則358条の点検事項(浮石・き裂・含水・湧水・凍結の状態の変化)を行に落とし、356条・357条の掘削面のこう配の基準を判定基準の列に数値で入れています。点検者の指名欄つき。
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本記事は一般的な情報の整理であり、法令への適合を保証するものではありません。個別の義務内容は所管行政庁または専門家にご確認ください。記事の内容は2026-09-21時点の情報です。