設備日常点検表の作り方|点検項目の例と1ヶ月1枚のマトリクス様式
設備の日常点検表で最も普及しているのが1ヶ月1枚のマトリクス様式です。縦に点検項目、横に1〜31日を並べ、毎日○×を入れていく形。
この形式が定着しているのには理由があります。1枚で1ヶ月の履歴が見えるため、傾向に気づきやすいのです。この記事では、この様式の設計ポイントをまとめます。
この記事の内容(10項目)
マトリクス様式が優れている理由
1日1枚の様式
その日の記録は詳しく書けるが、1ヶ月分を並べないと傾向が見えない。紙が31枚になる。1ヶ月1枚のマトリクス
横に並ぶので「この項目、先週から×が続いている」が一目で分かる。紙は1枚。異常は連続して現れることが多いものです。「油漏れが3日続いている」「特定の曜日だけ異音がする」。こうしたパターンは、日付が横に並んでいるから見えます。
この程度まで可
項目をグループに分ける
項目が10を超えると、どこを見ているか分からなくなります。グループ見出しを入れると、視線が迷いません。
安全カバー
銘板・表示
異臭・発煙
計器の指示値
給脂
インターロック
配線・アース
工具の定位置
グループ分けすると、点検の順路と一致させられます。機械の周りを回りながら上から順にチェックできる並びにしてください。
設備の日常点検項目の例と、法令で決まっている項目
設備の日常点検項目は、一般には取扱説明書の「始業点検」の欄と、過去に起きた不具合から決めます。ただ、機械の種類によっては、その日の作業を始める前に見る項目が労働安全衛生規則で決まっています。該当する設備は、その項目を必ず点検表に入れます。
| 設備 | その日の作業を始める前に見る項目 | 根拠 |
|---|---|---|
| プレス機械・シャー | クラッチとブレーキの機能、クランクシャフトなどのボルトのゆるみ、一行程一停止機構・急停止機構・非常停止装置の機能、スライドや刃物による危険を防ぐ機構の機能、金型とボルスター(シャーは刃物とテーブル)の状態 | 労働安全衛生規則136条 |
| フォークリフト | 制動装置と操縦装置の機能、荷役装置と油圧装置の機能、車輪の異常、前照灯・後照灯・方向指示器・警報装置の機能 | 同151条の25 |
| 研削といし | その日の作業を始める前に1分間以上、といしを取り替えたときは3分間以上の試運転 | 同118条 |
| 安全装置・覆い・囲いのある機械全般 | 法令で設けた安全装置などが有効な状態で使われるよう、点検と整備をする | 同28条 |
ポイントはここです。法令で決まっている項目は、条文の言葉のまま点検表の行にすると、監督署から点検の状況を聞かれたときに、項目が満たされているかをそのまま示せます。汎用の点検項目(清掃、工具の定位置など)は、その下にグループを分けて足します。
判定記号と、異常時の記録
判定は3種類まで
- ○|異常なし
- ×|異常あり(下段に内容を記入)
- /|稼働なし(休業日・未使用日)
「/」を用意するのが実務のコツです。これがないと、休業日の空欄と記入漏れの空欄が区別できません。監査で「この日は点検していないのか」と聞かれたときに答えられなくなります。
異常時の記録欄は下段に大きく
マトリクスのマスには○×しか書けません。×を付けた日の詳細を書く欄を下部に設けます。書くのは4つです。
- 日付|どの日の×か
- 内容|何が起きたか
- 誰に報告したか|ここが最も重要
- 処置と結果|どうしたか、いつ直ったか
3番目を書かせるのが要点です。「報告した」という事実が残ると、報告を受けた側にも記録が残ることになり、放置されにくくなります。
設備 日常点検表(Excel・無料)
縦に項目(5グループ)・横に31日のマトリクス様式です。判定はドロップダウン、異常時の記録欄は4行分。記入例シートには、異常があった場合の書き方まで入れてあります。
設備 日常点検表を見る点検者と確認者の役割
| 点検者 | 確認者 | |
|---|---|---|
| 誰が | 設備を使う本人 | 職長・保全担当・管理者 |
| 頻度 | 毎日 | 週1回または月末 |
| 見るもの | 設備の状態 | ×の処置が完了しているか |
| サイン | 毎日 | 確認したとき |
確認者が全項目を毎日見る必要はありません。それをやろうとすると確認自体が形骸化します。週1回、×だけを追いかける形にすると、無理なく続きます。
逆に、1ヶ月すべて○の点検表が出てきたら注意してください。設備が絶好調なのではなく、×を付けにくい雰囲気がある可能性があります(点検が続かない理由)。
印刷と保管
- A4横で1枚に収める|31日分が入るサイズ。拡大縮小で調整
- 行の高さを確保|手書きするので18pt以上
- 設備の近くに置く|クリップボードで機械に掛ける
- 月末に回収してファイル|設備ごとにインデックスを付ける
保管期間は、法定の定期自主検査でなければ、社内の目安として1年程度とする例が多く見られます。フォークリフトの作業開始前点検(労働安全衛生規則151条の25)のように、条文に記録の保存期間の定めが無い点検もあります。一方で、定期自主検査の記録は3年間の保存が定められています(同151条の23など)。異常の記録がある月の分は、設備の保全履歴とあわせて長めに保管すると、更新判断の材料になります(保存期間の記事/保全履歴の記事)。
法定対象の設備は別様式で
フォークリフト・車両系建設機械・局所排気装置など、法定の点検義務がある設備は、法令の項目を満たした専用様式を使ってください。汎用の日常点検表に混ぜると、法定項目が満たされているかの確認ができなくなります(設備点検の種類と頻度)。
設備日常点検表にかかわる最近の動き(2026年10月時点)
設備日常点検表の様式そのものを定めた法令はありません。ただ、機械の点検と、機械による災害については、2025年から2026年にかけて動きがありました。日付順に並べます。
| 時期 | 出来事 | 設備日常点検表とのかかわり |
|---|---|---|
| 2025年5月14日 | 改正労働安全衛生法(令和7年法律第33号)が公布。注文者・元方事業者・機械の貸与者などが講じる措置の対象が、一人親方などの作業従事者にも広がった(主な施行は2026年4月1日) | 構内の協力会社や一人親方が同じ設備を使う場合、点検した人・使った人を点検表で分けて残す意味が大きくなる |
| 2025年12月24日 | 車両系建設機械などの特定自主検査基準が告示され、2026年1月1日から適用。特定自主検査は基準に従って行うことが求められるようになった(法45条3項)。旧「定期自主検査指針」は廃止 | 日常点検は特定自主検査の代わりにならない。年次の検査と、日々の点検表を分けて管理する |
| 2026年5月27日 | 厚生労働省が令和7年の労働災害発生状況(確定値)を公表。全産業の死亡者は700人で過去最少。事故の型では、はさまれ・巻き込まれによる死亡が117人 | はさまれ・巻き込まれは機械の周りで起きやすい災害。非常停止や安全カバーの行を点検表から外さない |
設備日常点検表を見直すときは、法令の項目が入っているか、だれが点検したかが分かるかの2点を、こうした制度の変わり目に合わせて確かめると手戻りが少なくなります。
出典:労働安全衛生法等の一部を改正する法律の概要(厚生労働省)、特定自主検査基準の告示(厚生労働省 法令等データベース)、令和7年の労働災害発生状況(厚生労働省)、労働安全衛生規則(e-Gov法令検索)
確認日は2026年10月3日です。自社の設備に当てはまる点検の義務は、所轄の労働基準監督署にご確認ください。
設備日常点検表に出てくる用語
設備日常点検表では、法令の言葉と現場の言葉が混ざって使われます。定義の出どころとあわせて並べます。
| 用語 | 意味 | 出典 |
|---|---|---|
| 日常点検 | 設備を使う日に、使う人が状態を確かめる点検 | 法令上の定義はない。条文では「その日の作業を開始する前に」行う点検として個別に定められている |
| 作業開始前点検 | その日の作業を始める前に、決められた項目を点検すること | 労働安全衛生規則136条、151条の25 など設備ごとの条文 |
| 定期自主検査 | 一定の機械について、1年以内ごと・1か月以内ごとなどに事業者が自ら行う検査 | 労働安全衛生法45条1項 |
| 特定自主検査 | 定期自主検査のうち、資格を持つ人または登録を受けた検査業者が行うもの | 労働安全衛生法45条2項 |
| 安全装置等 | 法令に基づいて設けた安全装置、覆い、囲いなど | 労働安全衛生規則28条 |
| 点検表・チェックリスト | 点検の項目と結果を記録する用紙 | 法令上の定義はない |
設備日常点検表で特に混ざりやすいのが、日常点検と定期自主検査です。日常点検は毎日の使う前の確認、定期自主検査は期間を決めた検査で、記録の保存の定めも違います。
設備日常点検表と一緒に押さえておきたいこと
設備日常点検表の解説では、様式の形が中心になりがちです。実務では、点検のやり方そのものに法令の定めがあるものと、点検した人の範囲も決めておくと、安全と記録の両方がそろいます。3つ挙げます。
給油や清掃をともなう点検は、機械を止めてから
労働安全衛生規則107条では、機械の掃除・給油・検査・修理・調整で労働者に危険を及ぼすおそれがあるときは、運転を止めることと、止めたときは起動装置に錠を掛ける・表示板を付けるなどして、ほかの人が動かせないようにすることが定められています。給脂や清掃の行の横に「停止・表示」の確認欄を足すと、点検表がそのまま手順の確認になります。
非常停止とインターロックの行は、外さない
同じ規則の28条では、法令に基づいて設けた安全装置や覆いが有効な状態で使われるよう、点検と整備をすることが求められています。項目を減らすときも、安全装置の行は最後まで残します。点検が形だけになる原因と項目の減らし方は点検が続かない理由にまとめています。
協力会社や一人親方が使う設備は、点検した人の会社名まで書く
改正労働安全衛生法(令和7年法律第33号)では、注文者や機械の貸与者などが講じる措置の対象が、自社の労働者以外の作業従事者にも広がっています(主な施行は2026年4月1日)。構内で協力会社や一人親方が同じ設備を使う場合は、点検者の欄に氏名と会社名を書く形にすると、だれが確かめた状態でだれが使ったのかが残ります。措置の範囲は所轄の労働基準監督署にご確認ください。
よくある質問
- Q. 1枚に何項目まで入れられますか?
- A4横で18項目程度までが実用的な上限です。ただし毎日見る項目は5〜8個に絞ることをおすすめします。それ以上は月次点検に回してください。
- Q. 同じ設備が複数台ある場合は?
- 1台1枚が原則です。設備番号を明記し、どの機械の記録かが分かるようにしてください。異常が特定の機械に偏っているかを見るためにも、分けたほうが有用です。
- Q. 交代勤務で点検者が変わる場合は?
- 各シフトの開始時に点検し、点検者名の行を交代分だけ用意します。前のシフトの記録を見てから作業を始める運用にすると、引き継ぎにもなります。
- Q. Excelに直接入力する運用でもよいですか?
- 可能ですが、現場にPCがない場合は続きません。印刷して手書き→月末にファイル、が最も定着しやすい形です。
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本記事は一般的な情報の整理であり、法令への適合を保証するものではありません。個別の義務内容は所管行政庁または専門家にご確認ください。記事の内容は2026-10-03時点の情報です。