設備月次点検の作り方|数値を残して故障の予兆をつかむ
日常点検が「今日使えるか」を見るのに対し、月次点検は「この先も使えるか」を見ます。目的が違うので、項目も記録の仕方も変わります。
最大の違いは数値を残すこと。○×だけの月次点検表は、日常点検の焼き直しにしかなりません。この記事で月次点検の設計をまとめます。
この記事の内容(8項目)
月次点検で見る5領域
| 領域 | 主な項目 | 数値で残すもの |
|---|---|---|
| 駆動・伝動 | 給脂、ベルト・チェーンの張り、カップリング、軸受け | 軸受け温度、振動 |
| 締結・構造 | 基礎ボルト、フレーム、防振ゴム | 目視と増し締めで確認(数値は必要に応じて締付けトルク) |
| 電気 | 配線・端子、制御盤内の粉じん、表示灯 | 電流値、絶縁抵抗 |
| 安全装置 | 非常停止、インターロック、リミッタ、警報 | 作動圧力・作動温度 |
| 流体・潤滑 | 油量、油の汚れ、漏れ、フィルタ | 圧力、差圧、油量 |
変化を捉える
測定箇所をそろえる
作動確認する
安全装置の作動確認は月次で必ず行ってください。非常停止ボタンやインターロックは、普段使わないため壊れていても気づきません。いざというときに効かない事態を防ぐには、定期的に押して確かめるしかありません。
なぜ数値で残すのか
○×だけの記録
「電流値:○(正常)」3ヶ月続けても「正常」しか残らない。
故障の直前まで何も見えない。
数値の記録
「電流値:12.1A → 12.8A → 13.5A」上昇傾向が見える。
壊れる前に手が打てる。
軸受けの劣化
潤滑不足
内部漏れ
測定値は同じ条件で測ることが前提です。負荷の状態、運転時間、測定箇所を揃えないと比較になりません。点検表に「測定条件」の欄を設けておくと、条件が変わったときに気づけます。
日常・年次との役割分担
| 日常点検 | 月次点検 | 年次点検 | |
|---|---|---|---|
| 目的 | 今日使えるか | この先も使えるか | 法定義務/分解整備 |
| 誰が | 使う本人 | 保全担当 | 有資格者・専門業者 |
| 記録 | ○×中心 | 数値中心 | 詳細な検査記録 |
| 時間(目安) | 1〜2分 | 15〜30分 | 半日〜 |
月次点検は設備を止めて行う項目が含まれます(給脂、締結部の増し締め、安全装置の作動確認)。生産計画に組み込んでおかないと「今日は忙しいから来週」が続き、結局やらなくなります。月の何日にやるかを固定してください。
法定の定期自主検査と混同しない
「月次点検」という言葉は、社内の自主的な点検と、法定の定期自主検査の両方に使われます。この2つは別物です。
- 社内の月次点検|自社で項目・頻度を決める。法令の定めがない設備なら、記録の保存期間も自社で決める
- 法定の定期自主検査(月例)|フォークリフト(安衛則151条の22)、車両系建設機械(同168条)、クレーン(クレーン則35条)など。1月以内ごとに1回、項目が法定で、記録は3年保存(安衛則151条の23・169条、クレーン則38条)
法定対象の機械については、法令の項目を満たした専用の様式を使ってください(特定自主検査の記事)。社内の月次点検表に混ぜると、法定項目が満たされているかの確認ができなくなります。
記録を保全履歴につなげる
月次点検で見つけた異常と、その処置は設備の保全履歴に蓄積してください。「いつ何を交換したか」が残ると、次の交換時期が読めるようになります(保全履歴の記事)。
点検体系全体の設計は設備点検の種類と頻度にまとめています。
設備の月次点検にかかわる最近の動き(2026年10月時点)
設備の月次点検そのものを決めた法令の改正はありませんが、月次点検と並べて持つ法定の検査の側と、機械による災害の統計に動きがあります。確かめられたものだけを日付順に並べます。
| 日付 | 動き | 月次点検での関係 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 2025-05-14 | 改正労働安全衛生法(令和7年法律第33号)の公布 | 機械等による労働災害の防止として、登録機関や検査業者への規律の強化を含む | 厚生労働省 改正法の概要 |
| 2025-12-24 | 車両系建設機械などの特定自主検査基準の告示(2026-01-01適用。従来の「定期自主検査指針」は廃止) | 法定の年次検査の基準。社内の月次点検表とは別の様式で持つ | 厚生労働省 告示 |
| 2026-01-01 | 改正法のうち、登録機関や検査業者に検査基準を守る義務を課す部分の施行 | 外部に頼む法定検査の記録を、月次点検の記録と並べて保管しておくと照合しやすい | 厚生労働省 改正法の概要 |
| 2026-04-01 | 改正法の主な施行。注文者などが講ずべき措置として、個人事業者などを含む作業従事者が混在する作業での災害防止が強化された | 月次点検を外部の保全業者や一人親方に頼む場合の段取りに関係する | 厚生労働省 改正法の概要 |
| 2026-05-27 | 令和7年(2025年)の労働災害の確定値の公表。死亡者は全産業で700人(過去最少)、事故の型別では、はさまれ・巻き込まれが117人、休業4日以上の死傷者は135,333人 | はさまれ・巻き込まれは設備の点検・給油・調整の場面でも起きる型。止めて行う点検の手順と合わせて見直す材料になる | 厚生労働省 労働災害発生状況 |
出典:労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律案の概要(厚生労働省)、特定自主検査基準の告示(厚生労働省 法令等データベース)、令和7年の労働災害発生状況(厚生労働省)、労働安全衛生規則(e-Gov法令検索)。確認日は2026年10月3日です。自社の設備が法定の検査の対象かどうかは、所轄の労働基準監督署で確認してください。
設備の月次点検に出てくる用語
設備の月次点検の話では、法令の言葉と社内の言葉が混ざります。どちらの言葉かを分けておくと、記録の扱いを間違えません。
| 用語 | 意味 | 出典 |
|---|---|---|
| 月次点検 | 毎月行う点検の一般的な呼び方。法令上の定義はない | 法令上の定義はない |
| 定期自主検査(月例) | 法令で対象・項目・周期が決まっている自主検査のうち、1月以内ごとに1回行うもの | 労働安全衛生法45条1項、安衛則151条の22・168条、クレーン則35条 |
| 特定自主検査 | 定期自主検査のうち、資格を持つ者か検査業者が行うもの(車両系建設機械・フォークリフトの年次、動力プレスの年次など) | 労働安全衛生法45条2項、安衛則135条の3・169条の2 |
| 予防保全 | 壊れる前に点検・交換して故障を防ぐ保全の考え方。法令上の定義はない | 法令上の定義はない |
| 絶縁抵抗 | 電線どうしや電線と大地の間の電気の漏れにくさ。低圧の電路は使用電圧の区分ごとに下限の値が決まっている | 電気設備に関する技術基準を定める省令58条 |
| 保安規程 | 事業用電気工作物を設置する者が、工事・維持・運用の保安のために定めて届け出る規程 | 電気事業法42条 |
| 運転停止と起動装置の施錠 | 機械の掃除・給油・検査・修理・調整で危険があるときは運転を止め、起動装置に錠や表示板を付けること | 安衛則107条 |
設備の月次点検と一緒に押さえておきたいこと
設備の月次点検は、点検表の項目を決めたあと、止め方・電気設備との分け方・測った値の比べ方で差がつきます。上位の記事であまり触れられていない3つを挙げます。
止めて行う項目は、起動装置に錠と表示板
設備の月次点検には、給脂・増し締め・内部の確認など止めて行う項目が入ります。機械の掃除・給油・検査・修理・調整で労働者に危険が及ぶおそれがあるときは機械の運転を止め、起動装置に錠を掛ける・表示板を付けるなどで、ほかの人が動かせないようにすると定められています(安衛則107条)。点検表の冒頭に「停止・施錠・表示」の確認欄を1行置くと、点検の手順と安全の手順が1枚でつながります。
電気設備の「月次点検」とは分けて綴じる
「月次点検」で検索すると、電気設備の点検の話が多く出てきます。高圧で受電する工場などの電気設備は事業用電気工作物にあたり、保安規程を定めて届け出ること(電気事業法42条)と、保安の監督をする主任技術者を選任すること(同43条)が求められています。こちらの点検は保安規程に沿って主任技術者や委託先が行うもので、この記事の機械設備の月次点検とは根拠が違います。記録も別の綴りにしておくと、立入りや監査のときに出しやすくなります。
絶縁抵抗は「下限」と「前回の値」の両方と比べる
設備の月次点検で絶縁抵抗を測るなら、低圧の電路には下限の値があります。使用電圧が300V以下で対地電圧150V以下は0.1MΩ、それ以外の300V以下は0.2MΩ、300Vを超えるものは0.4MΩ以上とされています(電気設備に関する技術基準を定める省令58条)。ただし下限を上回っていても、前回より大きく下がっていれば劣化が進んでいる合図です。基準値の欄と前回値の欄を並べておくと、数値で残す月次点検の良さがそのまま出ます。
よくある質問
- Q. 月次点検はいつ実施するのがよいですか?
- 毎月同じ日(第1営業日、5日など)に固定するのがおすすめです。設備を止める必要がある場合は、生産計画に組み込んで事前に調整してください。
- Q. 測定器がない場合はどうすればよいですか?
- クランプメーター(電流)、放射温度計(温度)、差圧計があれば大半の項目に対応できます。いずれも高価なものではないため、投資する価値があります。
- Q. 測定値の正常範囲はどう決めますか?
- メーカーの仕様書に記載があればそれに従います。ない場合は、設備が正常な時期の実測値を数回とって基準値とし、そこからの変化率で判断してください。
- Q. 月次点検の記録はどのくらい保管しますか?
- 社内の月次点検に法定の保存義務はありませんが、傾向の分析には最低でも1〜2年分が必要です。設備を廃棄するまで保管すると、更新の判断材料になります。
- Q. 月次点検は法律で義務になっていますか?
- 設備によります。フォークリフト、車両系建設機械、クレーンなどは、1月以内ごとに1回の定期自主検査が法令で定められています(安衛則151条の22・168条、クレーン則35条)。法令の対象でない設備の月次点検は、自社で項目と頻度を決める点検です。対象かどうかは所轄の労働基準監督署で確認できます。
- Q. 月例点検と月次点検は違うものですか?
- 言葉としてはどちらも「毎月の点検」で、法令上の定義はありません。法令の条文では「一月以内ごとに一回、定期に」行う自主検査として出てきます。社内では、法定の検査を「月例点検」、自社で決めた点検を「月次点検」と呼び分けておくと、記録の扱いを混同しにくくなります。
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本記事は一般的な情報の整理であり、法令への適合を保証するものではありません。個別の義務内容は所管行政庁または専門家にご確認ください。記事の内容は2026-10-03時点の情報です。