建設機械・荷役車両

不整地運搬車の定期自主検査|周期が「2年」である理由と、点検表の作り方

公開 2026-08-12更新 2026-08-15 執筆 点検板 編集部

不整地運搬車(クローラダンプ、キャリアダンプ)の点検について調べると、多くの資料が「特定自主検査は1年に1回」と書いています。ところが不整地運搬車の条文は「二年を超えない期間ごとに一回」で、他の機械と周期が違います。一覧表の脚注に小さく書かれていることが多く、見落としたまま1年周期で運用している事業場が少なくありません。

周期が違うだけではありません。月例の検査事項は2つしかなく、逆に作業開始前点検は4つあって、車両系建設機械とは配分が逆になっています。この記事では労働安全衛生規則151条の53〜57の条文に当たって、3つの層を整理します。記事の下に、条文の号立てをそのまま検査事項にしたExcel様式を置いています。

不整地運搬車 定期自主検査記録表(Excel・無料)不整地運搬車の作業開始前点検・月例の定期自主検査・2年ごとの特定自主検査を1ファイルで記録できる様式。月例は装置ごとに30項目まで落とし込み、どの行が安衛則151条の54の法定項目かを「根拠」欄で示しています。
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この記事の内容(9項目)

結論|3層と、それぞれの条文

不整地運搬車に義務付けられている点検・検査は3層です。周期・検査事項の数・記録の要否が層ごとに違います。

周期(条文の文言)検査事項誰が記録条文
作業開始前点検その日の作業を開始する前4号運転者等保存義務なし151条の57
定期自主検査(月例)一月を超えない期間ごとに一回2号のみ資格要件なし6項目・3年保存151条の54
特定自主検査二年を超えない期間ごとに一回9号検査業者または有資格者6項目・3年保存+検査標章151条の53/151条の56
不整地運搬車の点検3層
毎日作業開始前点検|制動・操縦、荷役・油圧、履帯・車輪、灯火類の4項目。記録の保存義務なし
毎月定期自主検査|2項目のみ。資格不要。記録6項目を3年保存
2年ごと特定自主検査|9項目。検査業者/有資格者のみ。検査標章+記録3年保存
車両系建設機械と比べると、毎日の項目が多く、毎月の項目が少ない配分になっている

周期・項目数のどちらも他機械の解説がそのまま当てはまりません。フォークリフトや車両系建設機械の記事を参考に点検表を作ると、月例に不要な項目が並び、作業開始前に必要な項目が抜けるという形になりがちです。

不整地運搬車は「車両系建設機械」ではありません

まず分類を確認します。不整地運搬車は労働安全衛生規則151条の2に定める車両系荷役運搬機械等の第五号です。フォークリフトと同じ系統に置かれています。

機械
フォークリフト
ショベルローダー
フォークローダー
ストラドルキャリヤー
不整地運搬車
構内運搬車
貨物自動車

そのため、条文の系統は151条台であって、車両系建設機械の167条以下ではありません。建設現場で建機と並んで使われるため混同されやすいのですが、根拠条文がまったく別です。社内文書に条文を引くときは注意してください。

どの機械が不整地運搬車にあたるか

不整地運搬車は、不整地を走行して荷を運搬する構造の車両です。実務ではクローラダンプ(履帯式)、キャリアダンプ、ホイール式の不整地運搬車が該当します。同じ「ダンプ」でも、公道を走る一般的なダンプトラックは貨物自動車(第七号)で扱いが変わります。

ラフテレーンクレーンやホイールローダーとも違います

名前に「不整地」が付く機械や、不整地で使う機械がすべて不整地運搬車になるわけではありません。ホイールローダー(トラクターショベル)は車両系建設機械の第一号、移動式クレーンはクレーン等安全規則の系統です。荷を積んで運ぶ構造かどうかが分かれ目になります。

特定自主検査が「2年」である根拠

安衛則151条の53は、次のように定めています。

事業者は、不整地運搬車については、二年を超えない期間ごとに一回、定期に、次の事項について自主検査を行わなければならない。ただし、二年を超える期間使用しない不整地運搬車の当該使用しない期間においては、この限りでない。

この年次にあたる検査が特定自主検査です(151条の56第1項)。検査業者または所定の資格を有する者しか実施できません。フォークリフトの「一年を超えない期間ごと」(151条の21)と並べると、不整地運搬車だけが2年になっていることが分かります。

条文の9項目

検査事項(条文のまま)
圧縮圧力、弁すき間その他原動機の異常の有無
クラッチ、トランスミッション、ファイナルドライブその他動力伝達装置の異常の有無
起動輪、遊動輪、上下転輪、履帯、タイヤ、ホイールベアリングその他走行装置の異常の有無
ロッド、アームその他操縦装置の異常の有無
制動能力、ブレーキドラム、ブレーキシューその他制動装置の異常の有無
荷台、テールゲートその他荷役装置の異常の有無
油圧ポンプ、油圧モーター、シリンダー、安全弁その他油圧装置の異常の有無
電圧、電流その他電気系統の異常の有無
車体、警報装置、方向指示器、灯火装置及び計器の異常の有無

車両系建設機械の167条と近い構成ですが、第六号が荷を運ぶ機械としての荷役装置になっている点が違います。第四号も「かじ取り車輪の左右の回転角度」を含まず、ロッド・アーム等に絞られています。

使わない期間があるときの扱い

ただし書により、2年を超える期間使用しない不整地運搬車は、その使用しない期間については検査が不要です。ただし151条の53第2項で、使用を再び開始する際に9項目の自主検査を行うことが求められています。長期の遊休機を再稼働させるときは、期限の起算ではなく再開時検査として実施してください。

月例は2項目しかありません

安衛則151条の54が定める月例の検査事項は、2つだけです。

検査事項(条文のまま)
制動装置、クラッチ及び操縦装置の異常の有無
荷役装置及び油圧装置の異常の有無

車両系建設機械の月例(168条)は3項目、フォークリフトの月例(151条の22)も3項目です。不整地運搬車だけが2項目で、ワイヤロープ及びチェーンの損傷の有無にあたる号が置かれていません。荷役の方式が違うためと考えられます。

周期の文言は「一月を超えない期間ごとに一回」です。車両系建設機械の「一月以内ごとに一回」とは書き方が違いますが、実務上の運用は同じ月次です。ただし社内規程や記録に条文を引くときは、自社の機械の条文どおりに書いてください。

使わない月があるときの扱い

月例にも同じただし書があり、1か月を超える期間使用しない場合はその期間の検査が不要で、使用再開時に2項目の自主検査を行うこととされています(151条の54第2項)。現場が止まっている間の期限を無理に消化する必要はありません。

資格要件はありません

月例の定期自主検査に資格要件はなく、事業者の責任で実施します。有資格者または検査業者が必要なのは、2年ごとの特定自主検査だけです。ただし月例も記録6項目の3年保存が必要な点は同じです。不整地運搬車 定期自主検査記録表は、月例の2項目と作業開始前の4項目を同じファイルで扱える形にしてあります。

不整地運搬車 定期自主検査記録表(Excel・無料)不整地運搬車の作業開始前点検・月例の定期自主検査・2年ごとの特定自主検査を1ファイルで記録できる様式。月例は装置ごとに30項目まで落とし込み、どの行が安衛則151条の54の法定項目かを「根拠」欄で示しています。
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作業開始前点検は4項目

安衛則151条の57が定める作業開始前の点検事項は4つです。

点検事項(条文のまま)
制動装置及び操縦装置の機能
荷役装置及び油圧装置の機能
履帯又は車輪の異常の有無
前照灯、尾灯、方向指示器及び警報装置の機能

車両系建設機械の作業開始前点検(170条)がブレーキ及びクラッチの機能の2つだけであることと比べると、不整地運搬車は倍の項目数です。走行と荷役を兼ねる機械なので、毎日の確認が厚めに設計されています。

記録の保存義務はありません

記録を定めた151条の55は「前二条の自主検査を行つたときは」と書かれています。前二条=151条の53(特定自主検査)と151条の54(月例)です。151条の57の作業開始前は「点検」であって「自主検査」ではないため、記録条文の対象に入っていません。

ただし、実施したことを示す手段が何もないのは別のリスクです。法令上の義務ではないことを理解したうえで、社内管理として残すかどうかを決めてください。毎日の記録を残す場合は、法定項目と社内項目を区別できる形にしておくと、説明が必要になったときに困りません。

道路運送車両法の点検との重複は免除されます

実務で見落とされやすい規定です。安衛則151条の56第3項は次のように定めています。

事業者は、運行の用に供する不整地運搬車(道路運送車両法第四十八条第一項の適用を受けるものに限る。)について、同項の規定に基づいて点検を行つた場合には、当該点検を行つた部分については第百五十一条の五十三の自主検査を行うことを要しない。

公道を走る車両として道路運送車両法の定期点検を受けている場合、その点検を行った部分については特定自主検査が重ねて必要にはなりません。二重に検査費用を払っている事業場は、対象部分を突き合わせてみる価値があります。

2年特定自主検査の周期
(1年ではない)
9項目特定自主検査の検査事項
2項目月例の検査事項
3年記録の保存義務

免除されるのは「点検を行った部分」だけです

条文は「当該点検を行つた部分については」と限定しています。特定自主検査そのものが不要になるわけではありません。道路運送車両法の点検項目に含まれない荷役装置などは、引き続き151条の53の対象です。免除の範囲は、点検記録簿と検査記録表を並べて確認してください。

検査業者に実施させたときの記録

151条の56第4項により、特定自主検査を検査業者に実施させた場合、記録の「検査を実施した者の氏名」は「検査業者の名称」に読み替えられます。また同条5項により、検査標章を機械の見やすい箇所に貼り付けるのは事業者です。検査業者ではありません。

点検表を作るときの4つのコツ

1. 「2年」を台帳の周期欄にそのまま入れる

他機械と混ぜて管理していると、一括で1年周期に設定されてしまいます。機種区分の欄を持たせ、機種によって周期が変わる形にしておくと事故が起きません。2年周期は期限が遠い分、忘れた場合の空白も長くなります。

2. 月例に余計な項目を足さない

条文が定める月例は2項目です。他機械の様式を流用すると、ワイヤロープの項目など不整地運搬車に条文上存在しない行が混ざります。法定項目と社内項目を分けて、どこまでが条文かを示せる形にしてください。

3. 作業開始前の4項目を現場に貼れる大きさにする

毎日実施する4項目は、記録簿の中に埋めるより現場に掲示したほうが実施率が上がります。制動・操縦/荷役・油圧/履帯・車輪/灯火類の4つなので、A4に大きく印刷できます。

4. 台帳に転記できる並びにしておく

台数が増えると、1台ごとのファイルを開いて期限を確認する運用が続かなくなります。ヘッダーを対象名・管理番号・機種区分・保有拠点・周期・前回実施日・担当の並びにしておくと、そのまま台帳に転記できます。配布しているExcel様式はこの並びで統一してあります。

2026年1月からの新基準と、条文の確認先

2026年1月1日から、特定自主検査は厚生労働大臣の定める基準に従って行うことが義務になりました(労働安全衛生法45条3項)。不整地運搬車については令和7年厚生労働省告示第322号が適用されます。

機械告示
高所作業車令和7年厚生労働省告示第313号
車両系建設機械同 第320号
フォークリフト同 第321号
不整地運搬車同 第322号
動力プレス同 第323号

従来の定期自主検査指針が廃止され、遵守義務のある告示に格上げされた形です。検査項目が大幅に増えたわけではありませんが、法的な位置づけが変わっています。詳細は特定自主検査の新基準(2026年1月適用)で扱っています。

条文の原文はe-Gov法令検索(労働安全衛生規則)で確認できます。周期や検査事項の解釈で判断に迷う場合は、所轄の労働基準監督署に確認してください。

関連:車両系建設機械の検査事項は車両系建設機械の定期自主検査、レンタル機の扱いはレンタル建機の点検義務は誰が負うか、外注費用の考え方は特定自主検査の費用は何で決まるかで扱っています。

よくある質問

Q. 不整地運搬車の特定自主検査は1年ごとですか
いいえ、二年を超えない期間ごとに一回です(安衛則151条の53)。フォークリフトや車両系建設機械が1年周期であるため混同されやすいのですが、不整地運搬車だけ周期が違います。月例の定期自主検査は他機械と同じく一月を超えない期間ごとです。
Q. 不整地運搬車は車両系建設機械に含まれますか
含まれません。不整地運搬車は安衛則151条の2の車両系荷役運搬機械等の第五号で、フォークリフトと同じ系統です。根拠条文は151条の53〜57であり、車両系建設機械の167条以下ではありません。建設現場で建機と並んで使われるため混同されやすい点です。
Q. クローラダンプは不整地運搬車ですか
不整地を走行して荷を運搬する構造であれば該当します。クローラダンプやキャリアダンプが典型です。一方、公道を走る一般的なダンプトラックは貨物自動車(151条の2第七号)として扱いが変わります。判断に迷う場合は所轄の労働基準監督署に確認してください。
Q. 月例の検査項目は何項目ですか
2項目です。安衛則151条の54が定めるのは、一号「制動装置、クラッチ及び操縦装置の異常の有無」と二号「荷役装置及び油圧装置の異常の有無」だけです。車両系建設機械やフォークリフトの月例は3項目なので、他機械の様式を流用すると条文にない行が混ざります。
Q. 作業開始前点検は何を見ればよいですか
安衛則151条の57が4項目を定めています。制動装置及び操縦装置の機能、荷役装置及び油圧装置の機能、履帯又は車輪の異常の有無、前照灯・尾灯・方向指示器及び警報装置の機能です。車両系建設機械の作業開始前点検が2項目であるのに対し、不整地運搬車は倍の項目数になっています。
Q. 作業開始前点検の記録は保存が必要ですか
法令上の保存義務はありません。記録を定めた151条の55は「前二条の自主検査」=151条の53(特定自主検査)と151条の54(月例)を指しており、作業開始前は「点検」であって「自主検査」ではないためです。社内管理として残すかどうかは事業者の判断です。
Q. 車検を受けていれば特定自主検査は不要ですか
不要になるのは「点検を行った部分」だけです。安衛則151条の56第3項は、道路運送車両法48条1項の適用を受ける不整地運搬車について、同項に基づく点検を行った部分は151条の53の自主検査を要しないとしています。荷役装置など点検項目に含まれない部分は引き続き対象です。
Q. 長期間使っていない機械も検査が必要ですか
2年を超える期間使用しない場合、その使用しない期間については特定自主検査が不要です(151条の53ただし書)。ただし使用を再び開始する際に9項目の自主検査を行う必要があります。月例にも同様のただし書があり、1か月を超えて使用しない場合は再開時に2項目を実施します。
Q. 検査標章は誰が貼りますか
事業者です。安衛則151条の56第5項により、自主検査を行ったときは当該不整地運搬車の見やすい箇所に、特定自主検査を行った年月を明らかにできる検査標章を貼り付けなければならないとされています。検査業者に実施させた場合でも、貼付の義務者は事業者です。
Q. 2026年1月から何が変わりましたか
特定自主検査を厚生労働大臣の定める基準に従って行うことが義務になりました(労働安全衛生法45条3項)。不整地運搬車には令和7年厚生労働省告示第322号が適用されます。従来の定期自主検査指針が廃止され、遵守義務のある告示に格上げされた形です。
不整地運搬車 定期自主検査記録表(Excel・無料)不整地運搬車の作業開始前点検・月例の定期自主検査・2年ごとの特定自主検査を1ファイルで記録できる様式。月例は装置ごとに30項目まで落とし込み、どの行が安衛則151条の54の法定項目かを「根拠」欄で示しています。
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本記事は一般的な情報の整理であり、法令への適合を保証するものではありません。個別の義務内容は所管行政庁または専門家にご確認ください。記事の内容は2026-08-15時点の情報です。