コンプレッサーと工作機械の点検|用力設備と加工機で見るところ
コンプレッサーは止まると工場全体が止まる設備です。エア工具、チャック、搬送など、空気圧を使う機器がすべて動かなくなります。それなのに、動いている限り誰も見ないという扱いを受けがちです。
この記事では、コンプレッサーと工作機械の点検項目と、見落とされやすい法定義務(圧力容器の定期自主検査)をまとめます。
この記事の内容(8項目)
コンプレッサーには法定義務がある場合がある
空気圧縮機に付属する空気タンク(エアタンク)が第二種圧力容器に該当する場合、定期自主検査(使用開始後1年以内ごとに1回、記録3年保存)が必要と定められています(ボイラー及び圧力容器安全規則88条)。
| 区分 | 該当の目安 | 義務 |
|---|---|---|
| 第二種圧力容器 | ゲージ圧力0.2MPa以上の気体を保有し、内容積0.04㎥以上、または胴の内径200mm以上かつ長さ1,000mm以上(安衛令1条7号) | 1年以内ごとの定期自主検査 記録3年保存(ボイラー則88条) |
| 小型圧力容器 | 蒸気などで加熱する第一種圧力容器のうち小さいもの(安衛令1条6号)。空気をためるだけのエアタンクは当たらない | 1年以内ごとの定期自主検査、記録3年保存(ボイラー則94条) |
| 上のどれにも当たらない小さいタンク | 圧力か容積が第二種圧力容器の線に届かないもの | 定期自主検査の規定はない。日常の点検は同じように行う |
定期自主検査
容量と圧力で判断
自社のコンプレッサーが該当するか、まず銘板を確認してください。内容積と最高使用圧力が記載されています。該当する場合は、1年に1回の自主検査の記録を3年分そろえておくと、労働基準監督署の調査で記録を求められたときにそのまま示せます。
コンプレッサーの点検項目
ドレン抜きが最重要
圧縮空気には水分が含まれ、タンク内に溜まります。放置すると次が起きます。
- タンク内部の腐食|最悪の場合、破裂事故につながる
- エア工具の故障|水が配管を通って工具に入る
- 塗装不良|エアに水が混じると塗装がはじく
自動ドレン装置があっても、詰まっていることがあるため定期的に手動で確認してください。
点検の5領域
| 領域 | 項目 |
|---|---|
| 運転状態 | 吐出圧力、吐出温度、異音・振動、累積運転時間・ロード率 |
| 潤滑油 | 油面、汚れ・乳化・変色、漏れ、交換時期 |
| ドレン・エア系統 | ドレンの排出、ドレントラップの詰まり、エアフィルタの差圧、配管の漏れ |
| 冷却 | 冷却ファン、冷却フィンのほこり、冷却水(水冷式) |
| 安全装置・電気 | 安全弁の作動、圧力スイッチ、緊急停止、配線・端子 |
エア漏れは電気代に直結します。「シュー」という音がしていたら、それは常時お金が漏れている状態です。定期的に配管を巡回して、継手からの漏れを確認してください。
工作機械の点検項目
工作機械(NC旋盤・マシニングセンタ等)は精度が命です。動くかどうかより、狙った寸法が出るかが問われます。
非常停止・安全扉
異音・異常振動
クーラントの汚れ
フィルタ
制御盤内の清掃
精度確認
切りくずとクーラントの管理
工作機械のトラブルで多いのが、切りくずの堆積とクーラントの劣化です。
- 切りくずの堆積|摺動面に噛み込むと傷になり、精度が落ちます
- クーラントの腐敗|臭気、濃度低下、工具寿命の短縮。濃度を測って記録すると管理できます
- チップコンベア|詰まると自動運転が止まります
制御盤内の環境
ミストや切りくずが制御盤に入ると、基板の故障につながります。盤の扉のパッキン、冷却ファン・エアコンの作動を月次で確認してください。夏場の盤内高温は故障の主要因です。
用力設備は「止まる前提」で備える
コンプレッサーのような用力設備は、止まったときの影響範囲が広いのが特徴です。日常点検に加えて、次の備えをしておいてください。
- 予備機または代替手段|レンタルコンプレッサーの手配先を控えておく
- 消耗品の在庫|エアフィルタ、オイル、Vベルトは常備
- 保全履歴の蓄積|故障の頻度が増えたら更新時期(保全履歴の記事)
- 停止時の連絡フロー|誰に連絡し、どう対応するかを紙にしておく
点検の頻度設計は設備点検の種類と頻度、月次点検で数値を残す方法は月次点検の記事にまとめています。
コンプレッサーの点検にかかわる最近の動き(2026年10月時点)
コンプレッサーの点検そのものを定めたボイラー則88条は、ここ数年変わっていません。動いているのは、同じ工場にあるボイラーやプレス、機械の安全の決まりの側です。確かめられた出来事を日付順に並べます。
| 日付 | 出来事 | コンプレッサー・工作機械の点検への影響 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 2025年5月14日 | 改正労働安全衛生法(令和7年法律第33号)公布 | 機械等による労働災害の防止、個人事業者等の対策などを含む改正 | 厚生労働省 改正法の概要 |
| 2025年12月24日 | 動力プレス・フォークリフトなどの特定自主検査基準を告示 | 工場に動力プレスがあれば、年次の特定自主検査は2026年1月1日からこの基準に従って行う。エアタンクの定期自主検査はこの対象ではない | 厚生労働省 基発1226第2号 |
| 2026年1月1日 | 特定自主検査の基準の適用と、検査業者の基準遵守義務の施行 | それまでの特定自主検査の「定期自主検査指針」は廃止 | 厚生労働省 基発1226第2号 |
| 2026年4月1日 | 改正法の主な部分が施行 | ボイラー・クレーン等の製造許可の一部(設計審査)や製造時等検査を、民間の登録機関が行える範囲が広がった。第二種圧力容器は製造時等検査ではなく個別検定の対象(安衛令14条2号) | 厚生労働省 改正法の概要、e-Gov法令検索 |
| 2026年5月27日 | 令和7年(2025年)の労働災害の確定値を公表 | 全産業の死亡者は700人で過去最少。はさまれ・巻き込まれによる死亡は117人 | 厚生労働省 労働災害発生状況 |
ポイントはここです。エアタンクの点検の決まりは変わっていないので、今の点検表はそのまま使えます。工作機械やプレスと同じ表で管理している工場は、プレスの年次の欄だけを新しい基準と照らし合わせておくと安心です。
出典:厚生労働省 労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律案の概要/厚生労働省 高所作業車特定自主検査基準等の制定等について(基発1226第2号)/厚生労働省 令和7年の労働災害発生状況/e-Gov法令検索 ボイラー及び圧力容器安全規則/e-Gov法令検索 労働安全衛生法施行令
確認日は2026年10月3日です。自社のエアタンクが第二種圧力容器に当たるかは、メーカーか所轄の労働基準監督署に確認してください。
コンプレッサーの点検に出てくる用語
コンプレッサーの点検で、銘板・取扱説明書・条文に出てくる言葉を、根拠と一緒に並べます。
| 用語 | 意味 | 出典 |
|---|---|---|
| 第二種圧力容器 | ゲージ圧力0.2MPa以上の気体を保有する容器で、内容積0.04㎥以上、または胴の内径200mm以上かつ長さ1,000mm以上のもの | 安衛令1条7号 |
| 第一種圧力容器 | 蒸気などで固体や液体を加熱する容器など、内部の圧力が大気圧を超えるもの | 安衛令1条5号 |
| 小型圧力容器 | 第一種圧力容器のうち、圧力と容積が一定以下のもの | 安衛令1条6号 |
| 最高使用圧力 | その容器の構造上、使うことができる最高のゲージ圧力 | ボイラー則1条6号 |
| 安全弁 | 圧力が上がりすぎたときに逃がす弁。第二種圧力容器では最高使用圧力以下で作動するよう調整する | ボイラー則86条 |
| 個別検定 | 第二種圧力容器を製造・輸入した者が、1台ごとに受ける検定 | 安衛法44条、安衛令14条2号、ボイラー則84条 |
| 高圧ガス | 常用の温度で圧力1MPa以上となる圧縮ガスなど | 高圧ガス保安法2条 |
| ドレン | 圧縮空気から出てタンクや配管にたまる水 | 法令上の定義はない |
コンプレッサーの点検と一緒に押さえておきたいこと
コンプレッサーの点検表を作るときに、項目の一覧だけでは見えにくいところを4つ挙げます。
コンプレッサーの点検に資格は要らないが、記録の中身は決まっている
ボイラー則88条には、第二種圧力容器の定期自主検査を誰が行うかの定めがありません。検査する事項は本体の損傷、ふたの締付けボルトの摩耗、管と弁の損傷の3つで、結果を記録して3年間保存すると定められています(同条1項・3項)。異常があれば補修などの措置を講じることも求められています(89条)。点検表にこの3項目の欄と、補修した内容の欄があれば、条文の形はそろいます。
1年以上使わなかったタンクは、使い始める前に検査する
1年を超えて使わない期間は定期の検査が要りませんが、使用を再び開始する際に同じ事項の自主検査を行うと定められています(ボイラー則88条2項)。予備機を倉庫から出して使うときは、ここが抜けやすいところです。
1MPa以上で使うなら高圧ガス保安法も確かめる
常用の温度で圧力が1MPa以上になる圧縮空気は、高圧ガス保安法の「高圧ガス」に当たります(同法2条1号)。その場合は同法の手続きが別に要ることがあり、労働安全衛生法の第二種圧力容器の規格・個別検定の対象からは外れます(安衛令13条1項・14条2号)。一般的な工場用の機種かどうかは銘板の最高使用圧力で分かるので、迷ったら都道府県の高圧ガスの担当窓口に確認してください。
工作機械の清掃や点検は、止めて鍵をかけてから
機械の掃除・給油・検査・修理をするときに危険がある場合は、運転を止め、起動装置に錠を掛けるか表示板を付けて、ほかの人が動かせないようにすると定められています(安衛則107条)。ボール盤など回転する刃物に手が巻き込まれるおそれがあるときは、手袋の使用も禁止です(安衛則111条)。切りくずの清掃を点検表に入れるなら、「停止・施錠を確認」の欄を一緒に置いておくと、点検中の事故を防げます。
よくある質問
- Q. 自社のコンプレッサーが圧力容器に該当するか分かりません
- 銘板に記載された内容積と最高使用圧力で判断します。判断に迷う場合は、メーカーまたは所轄の労働基準監督署に確認してください。
- Q. 定期自主検査は誰が行いますか?
- ボイラー則88条には実施者の資格の定めがありません。本体の損傷、ふたの締付けボルトの摩耗、管と弁の損傷の3つを確かめるため、圧力容器の構造が分かる人が行うのが前提です。実務ではメーカーや専門業者に頼むことも多く、その場合も記録を3年保存するのは事業者です。
- Q. ドレン抜きの頻度は?
- 法令に回数の定めはなく、メーカーの取扱説明書に従うのが基本です。一般には毎日の排出がすすめられています。自動ドレン装置がある場合も、週1回ほど手動で排出して装置の作動を確認しておくと安心です。
- Q. 工作機械の精度確認はどのくらいの頻度で?
- 月1回が目安です。加工品の寸法にばらつきが出始めたときは、頻度を上げて原因を特定してください。テストバーによる主軸振れの確認が基本です。
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本記事は一般的な情報の整理であり、法令への適合を保証するものではありません。個別の義務内容は所管行政庁または専門家にご確認ください。記事の内容は2026-10-03時点の情報です。