動力プレスの特定自主検査|建機と同じ制度、違うのは検査事項と資格の経路
特定自主検査の対象機械は5つあります。車両系建設機械・フォークリフト・高所作業車・不整地運搬車、そして動力プレスです。前の4つは建設・荷役の機械ですが、動力プレスだけ製造業の設備です。
制度の骨格は同じで、年次を有資格者または検査業者が実施し、記録6項目を3年保存し、事業者が検査標章を貼るという流れは変わりません。違うのは検査事項の中身と、資格に至る経路です。この記事では条文から整理します。
この記事の内容(5項目)
年次は9項目、シャーは5項目
安衛則134条の3が定める動力プレスの検査事項は9つです。一年以内ごとに一回実施します。
| 号 | 検査事項(条文のまま) |
|---|---|
| 一 | クランクシャフト、フライホイールその他動力伝達装置の異常の有無 |
| 二 | クラッチ、ブレーキその他制御系統の異常の有無 |
| 三 | 一行程一停止機構、急停止機構及び非常停止装置の異常の有無 |
| 四 | スライド、コネクチングロッドその他スライド関係の異常の有無 |
| 五 | 電磁弁、圧力調整弁その他空圧系統の異常の有無 |
| 六 | 電磁弁、油圧ポンプその他油圧系統の異常の有無 |
| 七 | リミットスイッチ、リレーその他電気系統の異常の有無 |
| 八 | ダイクッション及びその附属機器の異常の有無 |
| 九 | スライドによる危険を防止するための機構の異常の有無 |
三号と九号が安全装置にあたります
建機の検査事項は走行・作業装置が中心ですが、動力プレスは一行程一停止機構・急停止機構・非常停止装置(三号)とスライドによる危険を防止するための機構(九号)という安全装置が独立した号として立っています。プレス災害の型に対応した構成です。
シャーは別条文で5項目
動力により駆動されるシャーは、安衛則135条で別に定められています。こちらも一年以内ごとに一回です。
| 号 | 検査事項 |
|---|---|
| 一 | クラッチ及びブレーキの異常の有無 |
| 二 | スライド機構の異常の有無 |
| 三 | 一行程一停止機構、急停止機構及び非常停止装置の異常の有無 |
| 四 | 電磁弁、減圧弁及び圧力計の異常の有無 |
| 五 | 配線及び開閉器の異常の有無 |
シャーの年次は特定自主検査ではありません。特定自主検査とされているのは134条の3の自主検査(=動力プレス)です(135条の3第1項)。同じ職場に両方ある場合、実施できる人が違う点に注意してください。
資格の経路が建機と1つ違う
135条の3第2項が定める資格は、建機側(151条の24第2項)とほぼ同じ構成ですが、1つだけ独自の経路があります。
| 要件 | 建機側にも あるか | |
|---|---|---|
| イ | 大学・高専で工学に関する学科を卒業し、動力プレスの点検・整備2年以上、または設計・工作5年以上 | あり |
| ロ | 高校・中等教育学校で工学に関する学科を卒業し、点検・整備4年以上、または設計・工作7年以上 | あり |
| ハ | 点検・整備7年以上、または設計・工作10年以上 | あり |
| ニ | プレス機械作業主任者技能講習を修了した者で、動力プレスによる作業に10年以上従事した経験を有するもの | なし (建機は「運転の業務10年以上」) |
いずれの経路でも、これに加えて厚生労働大臣が定める研修の修了が必要です。実務経験だけでは足りません。
記録と検査標章
ここは他の4機種と共通です。
| 項目 | 内容 | 条文 |
|---|---|---|
| 記録事項 | 検査年月日/検査方法/検査箇所/検査の結果/検査を実施した者の氏名/補修等の措置を講じたときはその内容の6項目 | 安衛則135条の2 |
| 保存 | 3年間 | 同上 |
| 検査業者に実施させた場合 | 「検査を実施した者の氏名」は「検査業者の名称」に読み替え | 135条の3第3項 |
| 検査標章 | 事業者が、見やすい箇所に、特定自主検査を行った年月を明らかにできる標章を貼り付ける | 135条の3第4項 |
2026年1月からの新基準の対象です
動力プレスも、2026年1月1日から厚生労働大臣の定める基準に従って特定自主検査を行うことが義務になりました(労働安全衛生法45条3項)。適用される告示は令和7年厚生労働省告示第323号です。あわせて従来の動力プレスの定期自主検査指針(安衛則134条の3関係)が廃止されています。詳しくは特定自主検査の新基準で扱っています。
使わない期間の扱いも同じです
134条の3にもただし書があり、一年を超える期間使用しない動力プレスはその期間の検査が不要です。ただし使用を再び開始する際に9項目の自主検査を行う必要があります(同条2項)。
記録表を作るときの4点
1. 動力プレスとシャーで様式を分ける
検査事項の数(9と5)も、特定自主検査に当たるかどうかも違います。1枚に混ぜると、誰が実施できるのかが説明できなくなります。
2. 安全装置の号を独立させる
三号(一行程一停止機構・急停止機構・非常停止装置)と九号(スライドによる危険を防止するための機構)は、災害に直結する項目です。他の機械要素と同じ扱いで1行にまとめず、装置ごとに行を分けると実施が確実になります。
3. 「否」のときの措置欄を必ず残す
記録の6番目は「補修等の措置を講じたときは、その内容」です。結果が「否」なのに措置欄が空、というのが最も多い不備です。
4. 作業主任者の選任と混ぜない
プレス機械作業主任者は作業の指揮等を行う役割で、特定自主検査の実施者とは別の制度です。技能講習修了が資格経路のニに出てくるため混同されがちですが、作業主任者だから検査できる、ではありません。研修の修了と実務経験10年が別途必要です。
関連:特定自主検査と定期自主検査の違い、事業内検査者になるには、点検記録の3年保存。条文はe-Gov法令検索(労働安全衛生規則)で確認できます。
よくある質問
- Q. 動力プレスの特定自主検査は何項目ですか
- 9項目です(安衛則134条の3)。動力伝達装置、制御系統、一行程一停止機構等の安全装置、スライド関係、空圧系統、油圧系統、電気系統、ダイクッション、スライドによる危険を防止するための機構です。一年以内ごとに一回実施します。
- Q. シャーも特定自主検査ですか
- 違います。特定自主検査とされているのは134条の3の自主検査、つまり動力プレスです(135条の3第1項)。シャーの年次検査は135条に定められた定期自主検査で、検査事項も5項目と異なります。
- Q. 誰が実施できますか
- 登録検査業者、または安衛則135条の3第2項の資格を有し、かつ厚生労働大臣が定める研修を修了した者です。学歴と実務年数の組み合わせのほか、プレス機械作業主任者技能講習を修了し動力プレスによる作業に10年以上従事した経験を有する経路もあります。
- Q. プレス機械作業主任者なら検査できますか
- それだけではできません。技能講習の修了に加えて、動力プレスによる作業に10年以上従事した経験と、厚生労働大臣が定める研修の修了が必要です。作業主任者は作業の指揮等を行う制度で、検査の実施者とは別です。
- Q. 建機の事業内検査者の資格で動力プレスも見られますか
- 見られません。特定自主検査の資格は機種ごとに別々に定められています。動力プレスは135条の3、フォークリフトは151条の24、車両系建設機械は169条の2で区分ごとに準用される形です。
- Q. 記録は何を残しますか
- 検査年月日、検査方法、検査箇所、検査の結果、検査を実施した者の氏名、補修等の措置を講じたときはその内容の6項目を3年間保存します。検査業者に実施させた場合、氏名欄は「検査業者の名称」に読み替えられます。
- Q. 検査標章は誰が貼りますか
- 事業者です(安衛則135条の3第4項)。見やすい箇所に、特定自主検査を行った年月を明らかにできる標章を貼り付けます。検査業者ではありません。
- Q. 2026年1月の新基準は動力プレスも対象ですか
- 対象です。労働安全衛生法45条3項により、厚生労働大臣の定める基準に従って行うことが義務になりました。動力プレスには令和7年厚生労働省告示第323号が適用され、従来の動力プレスの定期自主検査指針は廃止されています。
- Q. 長期間使わないプレスも検査が必要ですか
- 安衛則134条の3のただし書により、一年を超える期間使用しない動力プレスはその期間の検査が不要です。ただし使用を再び開始する際に、9項目の自主検査を行う必要があります。
- Q. 動力プレスとシャーの記録表は分けるべきですか
- 分けることをおすすめします。検査事項の数が9と5で違い、特定自主検査に当たるかどうかも違うため、1枚に混ぜると誰が実施できるのかが説明できなくなります。
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本記事は一般的な情報の整理であり、法令への適合を保証するものではありません。個別の義務内容は所管行政庁または専門家にご確認ください。記事の内容は2026-09-12時点の情報です。