土止め支保工の点検|「7日をこえない期間ごと」の数え方
土止め支保工の点検は、労働安全衛生規則373条に周期も項目も書かれています。「7日以内」ではなく「7日をこえない期間ごと」という書き方です。
そして点検事項は3つだけです。それ以外に現場で見ている項目は、条文の外にあります。この記事では、どこまでが条文で、どこからが実務の運用かを分けて整理します。混ぜると、記録の扱いを間違えます。
この記事の内容(7項目)
土止め支保工を点検する時期は3つ。「7日をこえない」の意味
安衛則373条は、土止め支保工を設けたときの点検の時期を3つ挙げています。
| 時期 | 条文の書き方 |
|---|---|
| 定期 | その後七日をこえない期間ごと |
| 地震の後 | 中震以上の地震の後 |
| 大雨等の後 | 大雨等により地山が急激に軟弱化するおそれのある事態が生じた後 |
ポイントはここです。「7日をこえない」なので、前回から8日目に行うと条文を満たしません。「毎週◯曜日」と決めると、祝日や雨で1回飛ばしたときに9日空きます。前回の点検日を記録に書いておいて、そこから数える運用にしてください。
中震は震度4以上を指します。震度3で揺れを感じた程度なら定期の周期のままですが、震度4を観測したら期間内でも臨時に点検します。震度は現場の所在地で見るので、事務所と現場が離れている場合は現場側の観測値で判断してください。
大雨は「◯mm以上」という数字が条文にありません。書いてあるのは「地山が急激に軟弱化するおそれのある事態」です。一般には、日雨量や時間雨量で社内の基準を決めておき、それを超えたら臨時点検とする運用が取られています。その数字は社内の基準であって、法定の値ではありません。
土止め支保工で条文が求めている点検事項は3つだけ
| 号 | 点検事項 | 書き方の注意 |
|---|---|---|
| 1号 | 部材の損傷、変形、腐食、変位及び脱落の有無及び状態 | 「状態」まで求めている。有無だけでは足りない |
| 2号 | 切りばりの緊圧の度合 | 効いているかどうか、の度合い |
| 3号 | 部材の接続部、取付け部及び交さ部の状態 | ボルト・溶接・火打ちの取合い |
1号がいちばん取り違えられます。条文は「有無及び状態」と書いています。「異常なし」で終わらせるのではなく、曲がりやへこみ、さび、ずれがどの程度でどこにあるかまで残す形が条文の求めているところです。
切りばりの緊圧は、数字で残せる
2号の「緊圧の度合」は、プレロードをかけている現場なら設定値と現在値を書けます。盤圧計が付いていればその値、無ければ腹起こしとの密着、くさびやジャッキの効きを見ます。数値で残しておくと、前回との差で緩みが見えます。
異常を認めたときの措置も条文にあります。「直ちに、補強し、又は補修しなければならない」です。次の点検まで待つ書き方にはなっていません。その場で直せないものは、作業を中止して元請に報告する運用にしておいてください。
土止め支保工の点検記録は、条文に保存の定めがない
ここは正直に書きます。安衛則373条に、点検の記録や保存年限の定めはありません。「点検し、異常を認めたときは、直ちに、補強し、又は補修しなければならない」で条文は終わっています。
条文にあるもの
点検の時期(3つ)点検事項(3項目)
異常時の措置(直ちに補強・補修)
条文に無いもの
記録の様式記録の保存年限
点検者の資格要件
「点検した結果は必ず保管する必要がある」と書かれた解説を見かけますが、これは実務上の推奨であって、373条の義務ではありません。足場(567条3項)や建設機械(169条)のように記録と保存を明記した条文とは、書き方が違います。
とはいえ、残しておく意味はあります。7日をこえない期間ごとに点検していたことは、記録がなければ後から示せません。元請への提出物として運用している現場が多く、少なくとも土止めを設置している間は保管する形が一般的です。社内規程に書くときは「実務の運用」として書いてください。
土止め支保工を点検するのは誰か|作業主任者に寄る理由
373条は事業者の義務として書かれていて、点検者の資格要件はありません。ただ実務では、地山の掘削及び土止め支保工作業主任者が行っている現場が多くあります。
土止め支保工
安衛則374条
器具・工具の点検
図によらず組まない
切りばりまたは腹起こしの取付け・取りはずしの作業には作業主任者の選任が必要で(安衛令6条10号)、その職務のなかに材料や器具・工具の点検が入っています(安衛則375条)。支保工の構造を分かっている人でないと「状態」を書けないので、自然にそこへ寄ります。
あわせて、土止め支保工は組立図によらなければ組み立ててはならないとされています(安衛則371条)。点検で図面と現物が違っていた場合は、その場で判断せず設計に戻してください。
条文の外で見ているもの|社内追加として分ける
現場では、373条の3項目以外にも見ているものがあります。これらは点検表の中で「社内追加」として分けておくと、どれが条文かが後から分かります。
- 支保工周辺の地表面の亀裂・陥没|前回からの変化を書く。亀裂は長さと幅を測る
- 矢板・土留め壁のすき間からの漏水・土砂の流出|土砂を伴う出水は直ちに報告
- 余分な載荷重|資材・残土・重機を法肩と壁の近くに置いていないか
- 点検用の通路と墜落防止設備|切りばりの上を歩かずに点検できるか
- 計測管理の値|切りばり軸力・壁体変位・地下水位。1次管理値を超えたら報告
混ぜてしまうと、監督署に聞かれたときに「どれが条文の項目ですか」に答えられません。紙の上で区分を分けるだけで、この問題は消えます。
掘削面の点検は、別の条文
明り掘削を伴う現場では、地山の点検が別にかかります(安衛則358条)。点検者を指名して、その日の作業を開始する前、大雨の後、中震以上の地震の後に、浮石及びき裂の有無及び状態、含水・湧水・凍結の状態の変化を点検させます。発破を行った後の点検も同条2号にあります。
周期が土止め支保工(7日をこえない期間ごと)とずれるので、同じ紙で回すと片方の周期が崩れます。掘削面は毎日、土止めは7日以内、と分けて運用してください。掘削に使う機械の点検は油圧ショベルの点検、基礎工事用機械は基礎工事用機械の点検にまとめています。
計測管理と点検を、同じ紙で回さない
土止め支保工には、点検(373条)とは別に計測管理があります。切りばり軸力、壁体変位、地下水位、周辺地盤の沈下。施工計画書で管理値を決めて、頻度を決めて測るものです。
点検(安衛則373条)
目視・触診が中心7日をこえない期間ごと+臨時
法定。項目は3つ
異常があれば直ちに補強・補修
計測管理
数値の測定施工計画書で決めた頻度
法定ではない(設計・発注者の要求)
管理値を超えたら対策を検討
この2つは目的が違います。点検は「今日入れるか」、計測管理は「このまま掘り進めていいか」を判断するためのものです。同じ紙で回すと、片方の周期に引っ張られます。
一般には、計測管理は日次または週次で別の帳票に取り、点検表には「1次管理値を超えていないか」の1行だけを置く形が扱いやすくなります。点検の場で数値を確認して、超えていたら元請へ報告する導線になります。
変化を見るために、前回値を紙に残す
373条1号が「有無及び状態」を求めているのは、前回からの変化を見るためと読めます。「亀裂あり」だけでは、広がっているのか止まっているのかが分かりません。
- 亀裂|長さと幅を測って書く。前回値を隣に書いておく
- 変位|どの部材がどの方向に何mmずれたか
- 漏水|量と濁り。土砂を伴う出水は直ちに報告
- 切りばりの緊圧|設定値と現在値。盤圧計があれば数値で
点検表を「1回1枚」で印刷して使うと、前回値を書き写す手間が出ます。前回の点検日と前回値の欄を上部に作っておくと、その場で比較できます。
掘削の深さで、別の届出がかかることがある
掘削の高さまたは深さが10メートル以上の地山の掘削の作業を行う仕事は、法88条3項の届出(工事開始の日の14日前まで)の対象です。土止め支保工の点検の話とは別ですが、着工前に確認しておく部分です。該当するかどうかは所轄の労働基準監督署にご確認ください。
よくある質問
- Q. 土止め支保工の点検頻度はどれくらいですか
- 安衛則373条が「その後七日をこえない期間ごと」と定めています。「1週間ごと」ではなく「7日をこえない」なので、前回から8日目に行うと条文を満たしません。加えて、中震以上の地震の後と、大雨等により地山が急激に軟弱化するおそれのある事態が生じた後にも点検が必要です。
- Q. 中震以上とは震度いくつですか
- 震度4以上を指します。震度3で揺れを感じた程度であれば定期の周期のままですが、震度4を観測したら期間内でも臨時に点検します。震度は現場の所在地の観測値で判断してください。
- Q. 大雨は何mmから点検するのですか
- 条文に数値はありません。書かれているのは「大雨等により地山が急激に軟弱化するおそれのある事態が生じた後」です。実務では日雨量や時間雨量で社内基準を決めている現場が多くありますが、その数字は社内の基準であって法定の値ではありません。
- Q. 点検の記録は何年保存しますか
- 安衛則373条に、記録や保存年限の定めはありません。足場(567条3項)や建設機械(169条)のように記録を明記した条文とは書き方が違います。ただし7日をこえない期間ごとに点検していたことは記録がないと示せないため、少なくとも土止めを設置している間は保管する運用が一般的です。
- Q. 点検事項は何項目ですか
- 3つです。①部材の損傷、変形、腐食、変位及び脱落の有無及び状態 ②切りばりの緊圧の度合 ③部材の接続部、取付け部及び交さ部の状態。それ以外に現場で見ている項目は条文の外なので、点検表では区分を分けておくと後から説明できます。
- Q. 掘削面の点検と同じ紙で回せますか
- おすすめしません。明り掘削の地山の点検は、その日の作業を開始する前・大雨の後・中震以上の地震の後です(安衛則358条)。土止め支保工の7日をこえない期間ごととは周期が違うため、同じ紙にすると片方の周期が崩れます。掘削面は毎日、土止めは7日以内、と分けてください。
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本記事は一般的な情報の整理であり、法令への適合を保証するものではありません。個別の義務内容は所管行政庁または専門家にご確認ください。記事の内容は2026-09-17時点の情報です。