基礎工事用機械の点検|資格が3つに分かれる唯一の区分
基礎工事用機械は、車両系建設機械のなかで資格の条文が3つに分かれている唯一の区分です。機体重量による分かれ方に加えて、「自走できるかどうか」と「運転者席で操作するかどうか」でも分かれます。
一方、定期自主検査は他の車両系建設機械と同じ条文(安衛則167条以下)がそのまま適用されます。資格は複雑、検査は共通という構造です。この記事では資格の分かれ方を条文で整理したうえで、点検表の中身を示します。
この記事の内容(5項目)
対象になる機械
基礎工事用機械は労働安全衛生法施行令別表第七第三号です。杭を打つ・抜く・穴を掘る機械が含まれます。
| 機械 | 主な用途 |
|---|---|
| くい打機 | 既製杭の打設 |
| くい抜機 | 杭・矢板の引抜き |
| アースドリル | 場所打ち杭の掘削 |
| リバースサーキュレーションドリル | 大口径の場所打ち杭 |
| アースオーガー | オーガー掘削 |
| ペーパードレーンマシン | 地盤改良 |
| オールケーシング掘削機 | ケーシングによる掘削 |
クレーン機能を併せ持つ機械に注意
ベースマシンがクローラクレーンで、そこにアタッチメントを取り付けて基礎工事用機械として使うことがあります。つり上げの作業を行うならクレーン等安全規則の適用も検討が必要です。どちらの規則がかかるかは作業の実態で決まるため、判断に迷う場合は所轄の労働基準監督署に確認してください。
資格が3つに分かれます
基礎工事用機械では、次の3つの特別教育に加えて、機体重量3トン以上の運転について就業制限(技能講習)がかかります。
| 条文 | 対象になる業務 | 必要なもの |
|---|---|---|
| 安衛令20条12号 | 機体重量3トン以上の第三号の機械で、動力を用い、かつ不特定の場所に自走できるものの運転 | 技能講習(基礎工事用) |
| 安衛則36条9号 | 機体重量3トン未満の同様の機械の運転 | 特別教育 |
| 安衛則36条9の2 | 第三号の機械で、自走できるもの以外のものの運転 | 特別教育 |
| 安衛則36条9の3 | 第三号の機械(自走できるもの)の作業装置の操作(車体上の運転者席における操作を除く) | 特別教育 |
車体上の運転者席で操作する
運転にあたる。機体重量と自走の可否で技能講習か特別教育かが決まる運転者席以外から作業装置を操作する
地上のリモコン等での操作。36条9の3の特別教育が必要自走できない機械にも資格が要ります
36条9の2は「自走できるもの以外のもの」を対象にしています。据置き型やクレーンに吊って設置する型の機械でも、運転には特別教育が必要です。自走しないから対象外、という理解は誤りです。
定期自主検査は他の建機と同じ
基礎工事用機械も車両系建設機械なので、安衛則167条以下がそのまま適用されます。年次9項目、月例は実質3項目、作業開始前は2項目、記録は6項目を3年保存です。
| 号 | 検査事項(条文のまま) | 基礎工事用機械で見る箇所 |
|---|---|---|
| 一〜五 | 原動機/動力伝達装置/走行装置/操縦装置/ブレーキ | ベースマシン側 |
| 六 | ブレード、ブーム、リンク機構、バケット、ワイヤロープその他作業装置 | リーダ、ロープ、シーブ、オーガースクリュー、ケーシング |
| 七 | 油圧ポンプ、油圧モーター、シリンダー、安全弁その他油圧装置 | 油圧回路、ホース |
| 八 | 電圧、電流その他電気系統 | 制御盤、配線 |
| 九 | 車体、操作装置、…ロック装置、警報装置、方向指示器、灯火装置及び計器 | 転倒防止装置、深度計、警報 |
ワイヤロープの点検が特に重い
基礎工事用機械はワイヤロープに依存する機械が多く、年次の第六号と月例の第二号(ワイヤロープ及びチェーンの損傷の有無)の両方に該当します。素線切れ・直径の減少・キンク・腐食を、良否だけでなく状態として残せる欄にしてください。
玉掛け用具として使うワイヤロープには別の規定があります。玉掛け用具の点検と廃棄基準で扱っています。
運用でつまずく3点
1. 地上から操作する要員の教育が抜ける
36条9の3の特別教育は、運転者ではなく作業装置を操作する者が対象です。地上でリモコンを持つ要員に教育を行っていないケースがあります。教育の記録は3年保存です(安衛則38条)。
2. リーダの組立て・解体を点検表と混ぜる
組立て・解体の作業手順や作業指揮の規定は、点検・検査とは別の話です。点検表に混ぜると、法定の検査事項がどれか説明できなくなります。作業計画側の書類として分けてください。
3. 現場に据えたままで月例が飛ぶ
基礎工事用機械は現場に長期間据え置かれることが多く、月例の期限が現場の途中で来ます。「動かしていないから」と飛ばすと欠測になります。使用している限り周期は進むため、現場に据えたまま実施する段取りを決めておいてください。
関連:車両系建設機械の定期自主検査、クレーン点検表の作り方、現場を移動する建機の管理。条文はe-Gov法令検索(労働安全衛生規則)で確認できます。
よくある質問
- Q. 基礎工事用機械は別表第七のどの区分ですか
- 第三号です。くい打機、くい抜機、アースドリル、リバースサーキュレーションドリル、アースオーガー、ペーパードレーンマシン、オールケーシング掘削機などが含まれます。
- Q. 基礎工事用機械の資格はどう分かれますか
- 4通りあります。機体重量3トン以上で自走できるものの運転は技能講習(安衛令20条12号)、3トン未満は特別教育(安衛則36条9号)、自走できるもの以外のものの運転は特別教育(同36条9の2)、作業装置の操作で運転者席以外からのものは特別教育(同36条9の3)です。
- Q. 自走できない機械なら資格は不要ですか
- 必要です。安衛則36条9の2が「自走できるもの以外のもの」の運転を特別教育の対象としています。自走しないから対象外という理解は誤りです。
- Q. 地上からリモコンで操作する場合も資格が要りますか
- 要ります。安衛則36条9の3が「作業装置の操作(車体上の運転者席における操作を除く)」を特別教育の対象としています。運転者ではなく操作する者が対象なので、地上の要員への教育が抜けやすい部分です。
- Q. 定期自主検査は他の建機と違いますか
- 同じです。基礎工事用機械も車両系建設機械なので、安衛則167条(年次9項目)、168条(月例)、169条(記録6項目・3年保存)、170条(作業開始前)がそのまま適用されます。
- Q. ワイヤロープはどの号で見ますか
- 年次は第六号の「ブレード、ブーム、リンク機構、バケット、ワイヤロープその他作業装置の異常の有無」、月例は第二号の「ワイヤロープ及びチェーンの損傷の有無」です。素線切れ、直径の減少、キンク、腐食を状態として残せる欄にしてください。
- Q. クレーンとしても使う場合はどうなりますか
- つり上げの作業を行うならクレーン等安全規則の適用も検討が必要です。どちらの規則がかかるかは作業の実態で決まるため、判断に迷う場合は所轄の労働基準監督署に確認してください。
- Q. 現場に据え置いている間も月例は必要ですか
- 使用している限り必要です。動かしていない日があっても周期は進みます。基礎工事用機械は現場に長期間据え置かれることが多いため、現場に据えたまま実施する段取りを決めておいてください。
- Q. リーダの組立て手順は点検表に書きますか
- 分けることをおすすめします。組立て・解体の作業手順や作業指揮の規定は点検・検査とは別の話で、作業計画側の書類にあたります。点検表に混ぜると法定の検査事項がどれか説明できなくなります。
- Q. 特別教育の記録は必要ですか
- 必要です。特別教育を行ったときは記録を作成し、3年間保存します(安衛則38条)。資格の種類が多いぶん、誰にどの教育を行ったかを一覧で持っておくと確認が早く済みます。
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本記事は一般的な情報の整理であり、法令への適合を保証するものではありません。個別の義務内容は所管行政庁または専門家にご確認ください。記事の内容は2026-08-15時点の情報です。