解体用機械の点検|「特定解体用機械」だけ月例の項目が1つ増えます
車両系建設機械の月例の検査事項(安衛則168条)は4つの号がありますが、そのうち第四号だけ「第百七十一条の四の特定解体用機械にあつては」という条件が付いています。ほとんどの機械では対象外になる号です。
ところが実務で使われている点検表の多くが、この第四号を全機種に載せています。条文にない項目を毎月点検させていることになり、逆に本当に対象になる機械で何を見るのかが薄れます。この記事では、特定解体用機械の定義を条文から示したうえで、解体用機械の点検表を整理します。
この記事の内容(5項目)
特定解体用機械の定義
定義は安衛則171条の4に置かれています。条見出しは「使用の禁止」で、点検の条文ではありません。
事業者は、路肩、傾斜地等であつて、ブーム及びアームの長さの合計が十二メートル以上である解体用機械(以下この条において「特定解体用機械」という。)の転倒又は転落により労働者に危険が生ずるおそれのある場所においては、特定解体用機械を用いて作業を行つてはならない。ただし、当該場所において、地形、地質の状態等に応じた当該危険を防止するための措置を講じたときは、この限りでない。
| 判定 | 基準 |
|---|---|
| 対象になる | 解体用機械で、ブーム及びアームの長さの合計が12メートル以上 |
| 対象にならない | 解体用機械だがブーム+アームが12メートル未満/そもそも解体用機械でない |
「解体用機械」であることが前提です
長さ12メートル以上でも、掘削用機械(別表第七第二号)であれば特定解体用機械にはあたりません。まず解体用機械(第六号)かどうか、次に長さ、という2段階で判定します。
| 機械 | 根拠 | 用途 |
|---|---|---|
| ブレーカ | 安衛令別表第七 第六号1(条文に直接記載) | コンクリートの破砕 |
| 鉄骨切断機 | 同 第六号2「1に掲げる機械に類するものとして厚生労働省令で定める機械」 → 安衛則151条の175第2項が3つを列挙 | 鉄骨の切断 |
| コンクリート圧砕機(ニブラ) | コンクリート構造物の圧砕 | |
| 解体用つかみ機 | 解体物のつかみ・仕分け |
施行令の別表に直接書かれているのはブレーカだけです。残る3つは別表第七第六号2の委任を受けて、安衛則151条の175第2項が定めています。条文を引くときはこの2段構えに注意してください。
アタッチメントを替えると区分が変わります
ベースマシンが同じでも、バケットを付ければ掘削用機械、ブレーカを付ければ解体用機械として扱われます。運転に必要な技能講習の区分も変わります(車両系建設機械(解体用)運転技能講習)。アタッチメントを頻繁に替える事業場では、資格・点検表・持込機械等使用届の区分を揃えてください。
月例に1項目が加わる
安衛則168条の月例は次の4号です。第四号だけ条件付きです。
| 号 | 検査事項(条文のまま) | 一般の建機 | 特定解体用機械 |
|---|---|---|---|
| 一 | ブレーキ、クラッチ、操作装置及び作業装置の異常の有無 | ○ | ○ |
| 二 | ワイヤロープ及びチェーンの損傷の有無 | ○ | ○ |
| 三 | バケット、ジッパー等の損傷の有無 | ○ | ○ |
| 四 | 第百七十一条の四の特定解体用機械にあつては、逆止め弁、警報装置等の異常の有無 | × | ○ |
逆止め弁と警報装置は何のためか
ブームが長い機械は、油圧が抜けたときにブームが自重で落下する危険が大きくなります。逆止め弁はそれを防ぐための装置です。警報装置は、機体が不安定な姿勢になったことを知らせるものが該当します。ブームが長いことに伴う危険への対策という位置づけなので、長さが基準になっているわけです。
年次・作業開始前と、解体特有の注意
年次(167条)は他の車両系建設機械と同じ9項目です。解体用機械では第六号と第七号の重みが大きくなります。
| 号 | 検査事項 | 解体用機械で見る箇所 |
|---|---|---|
| 六 | ブレード、ブーム、リンク機構、バケット、ワイヤロープその他作業装置 | ブーム・アームの溶接部、アタッチメント取付ピン、圧砕刃・カッター刃 |
| 七 | 油圧ポンプ、油圧モーター、シリンダー、安全弁その他油圧装置 | アタッチメント用の増設回路、ホースの摩耗、逆止め弁 |
| 九 | 車体、操作装置、ヘッドガード、…警報装置、方向指示器、灯火装置及び計器 | ヘッドガード・フロントガード(飛来落下対策) |
作業開始前点検(170条)は「ブレーキ及びクラッチの機能」の2つです。実務では、アタッチメントの取付ピンとロック、油圧ホースの損傷、ガラス・ガードの破損、粉じん対策の散水設備などを社内基準として加えます。
点検とは別に、使用そのものが禁止される場所があります
171条の4は本来使用の禁止の条文です。路肩・傾斜地等で転倒・転落のおそれがある場所では、特定解体用機械を用いた作業自体が禁止されます(危険防止の措置を講じた場合を除く)。点検表とは別に、作業計画の段階で確認する事項です。
点検表をどう作り分けるか
1. 第四号の行に条件を明記する
全機種共通の様式を使うなら、第四号の行に「特定解体用機械(ブーム+アーム12m以上)のみ」と条件を書いてください。対象外の機械では「対象外」と記入します。空欄にすると、実施漏れなのか対象外なのかが区別できません。
2. ブーム+アームの長さを台帳に持つ
判定に使う数値なので、機械の台帳に長さを持たせておくと毎回調べ直さずに済みます。機種区分の列と一緒に持つと、点検表の作り分けが自動化できます。
3. アタッチメント履歴を残す
ベースマシンが同じでもアタッチメントで区分が変わるため、いつどのアタッチメントを付けていたかを残しておくと、資格や検査の説明ができます。備考欄に1行書くだけでも違います。
4. 運転資格は解体用の技能講習か確認する
機体重量3トン以上の解体用機械は就業制限の対象で、車両系建設機械(解体用)運転技能講習が必要です。整地・掘削用の技能講習では足りません。
関連:車両系建設機械の定期自主検査、ミニショベルの点検表。条文はe-Gov法令検索(労働安全衛生規則)で確認できます。
よくある質問
- Q. 特定解体用機械とは何ですか
- ブーム及びアームの長さの合計が12メートル以上である解体用機械です(安衛則171条の4)。この条文は本来「使用の禁止」を定めたもので、路肩・傾斜地等で転倒・転落のおそれがある場所での使用を制限しています。月例の検査事項の第四号は、この定義を借りています。
- Q. 月例の第四号はどの機械に適用されますか
- 特定解体用機械だけです。安衛則168条第四号は「第百七十一条の四の特定解体用機械にあつては、逆止め弁、警報装置等の異常の有無」と条件付きで書かれています。一般的なバックホーやブルドーザ、ローラーは対象外で、月例は実質3項目になります。
- Q. ブーム+アームが12メートル未満の解体機はどうなりますか
- 特定解体用機械には当たらないため、月例の第四号は対象外です。年次9項目、月例3項目、作業開始前2項目という一般の車両系建設機械と同じ扱いになります。
- Q. 掘削用機械でも12メートル以上なら対象ですか
- 当たりません。まず解体用機械(安衛令別表第七第六号)であることが前提で、そのうえで長さの条件を見ます。掘削用機械(第二号)であれば長さにかかわらず特定解体用機械にはなりません。
- Q. アタッチメントを替えると扱いが変わりますか
- 変わります。ベースマシンが同じでも、バケットを付ければ掘削用機械、ブレーカや圧砕機を付ければ解体用機械として扱われます。運転に必要な技能講習の区分も変わるため、資格・点検表・持込機械等使用届の区分を揃えてください。
- Q. 逆止め弁は何のための装置ですか
- ブームが長い機械では、油圧が抜けたときにブームが自重で落下する危険が大きくなります。逆止め弁はそれを防ぐための装置です。長さが基準になっているのは、ブームが長いことに伴う危険への対策という位置づけだからです。
- Q. 解体用機械の運転にはどんな資格が要りますか
- 機体重量3トン以上であれば車両系建設機械(解体用)運転技能講習が必要です(安衛令20条12号)。整地・運搬・積込み用及び掘削用の技能講習では足りません。3トン未満は特別教育です。
- Q. 点検表で対象外の項目はどう書きますか
- 空欄ではなく「対象外」と記入してください。空欄にすると、実施漏れなのか対象外なのかが区別できません。第四号の行には「特定解体用機械(ブーム+アーム12m以上)のみ」と条件を明記しておくと確実です。
- Q. 年次検査で特に見るべき箇所はどこですか
- 第六号の作業装置(ブーム・アームの溶接部、アタッチメント取付ピン、圧砕刃やカッター刃)と、第七号の油圧装置(アタッチメント用の増設回路、ホースの摩耗、逆止め弁)です。飛来落下に備えるヘッドガード・フロントガードは第九号に含まれます。
- Q. 傾斜地では使えないのですか
- 路肩、傾斜地等で特定解体用機械の転倒または転落により労働者に危険が生ずるおそれのある場所では、作業を行ってはならないとされています。ただし、地形・地質の状態等に応じた危険防止の措置を講じたときはこの限りではありません。作業計画の段階で確認する事項です。
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本記事は一般的な情報の整理であり、法令への適合を保証するものではありません。個別の義務内容は所管行政庁または専門家にご確認ください。記事の内容は2026-08-15時点の情報です。