解体用機械の点検|「特定解体用機械」だけ月例の項目が1つ増えます
車両系建設機械の月例の検査事項(安衛則168条)は4つの号がありますが、そのうち第四号だけ「第百七十一条の四の特定解体用機械にあつては」という条件が付いています。ほとんどの機械では対象外になる号です。
実務で使われている点検表は、この第四号を全機種共通の行として載せている形がよく見られます。共通の様式はそのまま使えますが、第四号の行に「どの機械が対象か」を書き足すと、本当に対象になる機械で何を見るのかがはっきりします。この記事では、特定解体用機械の定義を条文から示したうえで、解体用機械の点検表を整理します。
この記事の内容(8項目)
- 特定解体用機械の定義
- 「解体用機械」であることが前提です
- アタッチメントを替えると区分が変わります
- 月例に1項目が加わる
- 逆止め弁と警報装置は何のためか
- 年次・作業開始前と、解体特有の注意
- 点検とは別に、使用そのものが禁止される場所があります
- 点検表をどう作り分けるか
- 1. 第四号の行に条件を明記する
- 2. ブーム+アームの長さを台帳に持つ
- 3. アタッチメント履歴を残す
- 4. 運転資格は解体用の技能講習か確認する
- 解体用機械の点検にかかわる最近の動き(2026年10月時点)
- 解体用機械の点検に出てくる用語
- 解体用機械の点検と一緒に押さえておきたいこと
- 年次の特定自主検査は、資格者か検査業者が行う
- アタッチメントの付け替えは架台の上で
- ブームの下で点検するときは安全支柱を使う
- 立入禁止と悪天候時の中止も解体用機械の決まり
- よくある質問
特定解体用機械の定義
定義は安衛則171条の4に置かれています。条見出しは「使用の禁止」で、点検の条文ではありません。
事業者は、路肩、傾斜地等であつて、ブーム及びアームの長さの合計が十二メートル以上である解体用機械(以下この条において「特定解体用機械」という。)の転倒又は転落により労働者に危険が生ずるおそれのある場所においては、特定解体用機械を用いて作業を行つてはならない。ただし、当該場所において、地形、地質の状態等に応じた当該危険を防止するための措置を講じたときは、この限りでない。
| 判定 | 基準 |
|---|---|
| 対象になる | 解体用機械で、ブーム及びアームの長さの合計が12メートル以上 |
| 対象にならない | 解体用機械だがブーム+アームが12メートル未満/そもそも解体用機械でない |
「解体用機械」であることが前提です
解体用機械は「令別表第七第六号に掲げる機械で、動力を用い、かつ、不特定の場所に自走できるもの」と定義されています(安衛則151条の175第1項)。長さ12メートル以上でも、掘削用機械(別表第七第二号)であれば特定解体用機械にはあたりません。まず解体用機械(第六号)かどうか、次に長さ、という2段階で判定します。
| 機械 | 根拠 | 用途 |
|---|---|---|
| ブレーカ | 安衛令別表第七 第六号1(条文に直接記載) | コンクリートの破砕 |
| 鉄骨切断機 | 同 第六号2「1に掲げる機械に類するものとして厚生労働省令で定める機械」 → 安衛則151条の175第2項が3つを列挙 | 鉄骨の切断 |
| コンクリート圧砕機(ニブラ) | コンクリート構造物の圧砕 | |
| 解体用つかみ機 | 解体物のつかみ・仕分け |
施行令の別表に直接書かれているのはブレーカだけです。残る3つは別表第七第六号2の委任を受けて、安衛則151条の175第2項が定めています。条文を引くときはこの2段構えに注意してください。
アタッチメントを替えると区分が変わります
ベースマシンが同じでも、バケットを付ければ掘削用機械、ブレーカを付ければ解体用機械として扱われます。運転に必要な技能講習の区分も変わります(車両系建設機械(解体用)運転技能講習)。アタッチメントを頻繁に替える事業場では、資格・点検表・持込機械等使用届の区分を揃えてください。
月例に1項目が加わる
安衛則168条の月例は次の4号です。第四号だけ条件付きです。
| 号 | 検査事項(条文のまま) | 一般の建機 | 特定解体用機械 |
|---|---|---|---|
| 一 | ブレーキ、クラッチ、操作装置及び作業装置の異常の有無 | ○ | ○ |
| 二 | ワイヤロープ及びチェーンの損傷の有無 | ○ | ○ |
| 三 | バケット、ジッパー等の損傷の有無 | ○ | ○ |
| 四 | 第百七十一条の四の特定解体用機械にあつては、逆止め弁、警報装置等の異常の有無 | × | ○ |
逆止め弁と警報装置は何のためか
どちらも、特定解体用機械が備えていなければならない装置として車両系建設機械構造規格に定められています。厚生労働省の通達(基発0412第14号、2013年4月12日)では、次のように説明されています。
- 逆止め弁(構造規格14条)|油圧ホースの破損や接続部からの油漏れで油圧が異常に下がったときに、ブーム及びアームが急激に降下・収縮するのを防ぐ
- 警報装置(構造規格13条の2)|安定を確保するために決めた作業範囲を超えてブーム又はアームが操作されたときに、作動を自動で止める装置、または運転者に注意を促す警音を発する装置
ブームが長い機械は重心が高く転倒しやすいため、前方安定度(転倒支点での安定モーメントが転倒モーメントの何倍か)も1.5倍以上と定められています(構造規格4条)。ブームが長いことに伴う危険への対策という位置づけなので、長さが基準になっているわけです。月例では、この2つの装置が正しく働くかを確かめます。
年次・作業開始前と、解体特有の注意
年次(167条)は他の車両系建設機械と同じ9項目です。解体用機械では第六号と第七号の重みが大きくなります。
| 号 | 検査事項 | 解体用機械で見る箇所 |
|---|---|---|
| 六 | ブレード、ブーム、リンク機構、バケット、ワイヤロープその他作業装置 | ブーム・アームの溶接部、アタッチメント取付ピン、圧砕刃・カッター刃 |
| 七 | 油圧ポンプ、油圧モーター、シリンダー、安全弁その他油圧装置 | アタッチメント用の増設回路、ホースの摩耗、逆止め弁 |
| 九 | 車体、操作装置、ヘッドガード、…警報装置、方向指示器、灯火装置及び計器 | ヘッドガード・フロントガード(飛来落下対策) |
作業開始前点検(170条)は「ブレーキ及びクラッチの機能」の2つです。実務では、アタッチメントの取付ピンとロック、油圧ホースの損傷、ガラス・ガードの破損、粉じん対策の散水設備などを社内基準として加えます。
点検とは別に、使用そのものが禁止される場所があります
171条の4は本来使用の禁止の条文です。路肩・傾斜地等で転倒・転落のおそれがある場所では、特定解体用機械を用いた作業自体が禁止されます(危険防止の措置を講じた場合を除く)。点検表とは別に、作業計画の段階で確認する事項です。
点検表をどう作り分けるか
1. 第四号の行に条件を明記する
全機種共通の様式を使うなら、第四号の行に「特定解体用機械(ブーム+アーム12m以上)のみ」と条件を書いてください。対象外の機械では「対象外」と記入します。空欄にすると、実施漏れなのか対象外なのかが区別できません。
2. ブーム+アームの長さを台帳に持つ
判定に使う数値なので、機械の台帳に長さを持たせておくと毎回調べ直さずに済みます。機種区分の列と一緒に持つと、点検表の作り分けが自動化できます。
3. アタッチメント履歴を残す
ベースマシンが同じでもアタッチメントで区分が変わるため、いつどのアタッチメントを付けていたかを残しておくと、資格や検査の説明ができます。備考欄に1行書くだけでも違います。
4. 運転資格は解体用の技能講習か確認する
機体重量3トン以上の解体用機械は就業制限の対象で、車両系建設機械(解体用)運転技能講習が必要です。整地・掘削用の技能講習では足りません。
関連:車両系建設機械の定期自主検査、ミニショベルの点検表。条文はe-Gov法令検索(労働安全衛生規則)で確認できます。
解体用機械の点検にかかわる最近の動き(2026年10月時点)
解体用機械の点検は、2026年に入って根拠となる基準が新しくなりました。点検表の項目そのもの(安衛則167条・168条・170条)は変わっていませんが、年次の特定自主検査のやり方を定めた文書と、機械を貸す側の責任の範囲が変わっています。
| 時期 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 2025年5月14日 | 改正労働安全衛生法(令和7年法律第33号)が公布 | 厚生労働省 改正法の概要 |
| 2025年12月26日 | 特定自主検査基準の制定に伴う通達。車両系建設機械(解体用機械を含む)・フォークリフト・高所作業車などが対象 | 基発1226第2号 |
| 2026年1月1日 | 特定自主検査基準の適用開始。従来の「車両系建設機械の定期自主検査指針」は廃止。同じ日に、検査業者などに検査基準を守る義務を課す改正法の規定も施行 | 同上、改正法の概要(4の②) |
| 2026年4月1日 | 改正法の主な施行日。注文者などが講じる措置が、一人親方などの個人事業者を含む「作業従事者」の混在作業を前提にした形に強化される | 改正労働安全衛生法(令和7年法律第33号) |
| 2026年5月27日 | 令和7年(2025年)の労働災害の確定値を公表。死亡者は全産業700人(過去最少)、うち建設業214人。全産業の「はさまれ・巻き込まれ」による死亡は117人 | 厚生労働省 労働災害発生状況 |
ポイントはここです。年次検査を業者に頼んでいる場合、検査業者は2026年1月から新しい基準に沿って検査することになります。2026年以降の検査記録を受け取ったら、項目の並びが前年と違っていないかを一度見比べておくと、社内の点検表とのずれに早く気づけます。
出典:厚生労働省「労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律案の概要」/厚生労働省「高所作業車特定自主検査基準等の制定等について」/厚生労働省「令和7年の労働災害発生状況」/e-Gov 労働安全衛生規則
確認日は2026年10月3日です。個別の機械が対象になるかどうかは、所轄の労働基準監督署で確かめられます。
解体用機械の点検に出てくる用語
解体用機械の点検表や検査記録に出てくる言葉を、意味と出典つきでまとめます。
| 用語 | 意味 | 出典 |
|---|---|---|
| 解体用機械 | 令別表第七第六号に掲げる機械で、動力を用い、かつ、不特定の場所に自走できるもの | 安衛則151条の175第1項 |
| ブレーカ | 施行令の別表に直接名前が書かれている解体用機械。構造についての法令上の定義はない | 安衛令別表第七第六号1 |
| 鉄骨切断機・コンクリート圧砕機・解体用つかみ機 | ブレーカに類する解体用機械として省令が挙げる3つ | 安衛則151条の175第2項 |
| 特定解体用機械 | ブーム及びアームの長さの合計が12メートル以上である解体用機械 | 安衛則171条の4 |
| 逆止め弁 | 油圧の異常な低下によるブーム及びアームの急激な降下等を防ぐ弁。特定解体用機械に備えが求められる | 車両系建設機械構造規格14条、基発0412第14号 |
| 作業範囲 | 安定を確保する観点から定めた、ブーム及びアームを動かすことができる範囲 | 基発0412第14号(構造規格13条の2の解釈) |
| 前方安定度 | ブーム及びアームが向いている側の転倒支点で、安定モーメントが転倒モーメントの何倍あるか。特定解体用機械は1.5倍以上 | 車両系建設機械構造規格4条 |
| 特定自主検査 | 年次の定期自主検査(安衛則167条)を、資格を持つ労働者または登録を受けた検査業者が行うもの | 労働安全衛生法45条2項、安衛則169条の2 |
| 検査標章 | 特定自主検査を行った年月が分かるように機械の見やすい箇所に貼るもの | 安衛則169条の2第8項 |
| アタッチメント | ベースマシンの先に付け替える作業装置。法令上の定義はないが、付け替えの作業には架台の使用が定められている | 安衛則166条の2 |
解体用機械の点検と一緒に押さえておきたいこと
解体用機械の点検表を整えたら、次の4点も合わせて確かめておくと、検査・作業の両方で説明しやすくなります。いずれも条文に書かれていることです。
年次の特定自主検査は、資格者か検査業者が行う
解体用機械の年次検査(安衛則167条)は特定自主検査にあたり、自社で行う場合は一定の実務経験があり厚生労働大臣が定める研修を修了した者などが行うと定められています(安衛則169条の2第2項で151条の24第2項を準用)。業者に頼む場合は登録を受けた検査業者です。検査を終えたら検査標章を貼り(同条第8項)、記録を3年間保存します(169条)。
アタッチメントの付け替えは架台の上で
解体用機械はアタッチメントを替えて使うことが多い機械です。装着・取り外しの作業では、アタッチメントの倒壊などを防ぐため架台を使わせることが事業者に求められています(安衛則166条の2)。月例点検のついでに、架台の置き場所と傷みも見ておくと安心です。
付け替えの作業そのものは、作業を指揮する者を定めて手順を決めさせることになっています(安衛則165条)。手順書の作り方はアタッチメント交換の作業手順書にまとめています。
ブームの下で点検するときは安全支柱を使う
ブームやアームを上げてその下で点検・修理をするときは、不意の降下を防ぐため安全支柱や安全ブロックを使わせることが定められています(安衛則166条)。逆止め弁を点検する場面はまさにこれにあたります。
立入禁止と悪天候時の中止も解体用機械の決まり
解体用機械で作業するときは、物体の飛来などのおそれがある箇所への運転者以外の立入禁止と、強風・大雨・大雪などの悪天候で危険が予想されるときの作業中止が定められています(安衛則171条の6)。運転室のない解体用機械は、飛来の危険を防ぐ措置をとらない限り使えません(171条の5)。作業開始前点検の用紙に、立入禁止の表示と天候の確認欄を1行ずつ足しておくと、毎朝の確認がそろいます。
よくある質問
- Q. 特定解体用機械とは何ですか
- ブーム及びアームの長さの合計が12メートル以上である解体用機械です(安衛則171条の4)。この条文は本来「使用の禁止」を定めたもので、路肩・傾斜地等で転倒・転落のおそれがある場所での使用を制限しています。月例の検査事項の第四号は、この定義を借りています。
- Q. 月例の第四号はどの機械に適用されますか
- 特定解体用機械だけです。安衛則168条第四号は「第百七十一条の四の特定解体用機械にあつては、逆止め弁、警報装置等の異常の有無」と条件付きで書かれています。一般的なバックホーやブルドーザ、ローラーは対象外で、月例は実質3項目になります。
- Q. ブーム+アームが12メートル未満の解体機はどうなりますか
- 特定解体用機械には当たらないため、月例の第四号は対象外です。年次9項目、月例3項目、作業開始前2項目という一般の車両系建設機械と同じ扱いになります。
- Q. 掘削用機械でも12メートル以上なら対象ですか
- 当たりません。まず解体用機械(安衛令別表第七第六号)であることが前提で、そのうえで長さの条件を見ます。掘削用機械(第二号)であれば長さにかかわらず特定解体用機械にはなりません。
- Q. アタッチメントを替えると扱いが変わりますか
- 変わります。ベースマシンが同じでも、バケットを付ければ掘削用機械、ブレーカや圧砕機を付ければ解体用機械として扱われます。運転に必要な技能講習の区分も変わるため、資格・点検表・持込機械等使用届の区分を揃えてください。
- Q. 逆止め弁は何のための装置ですか
- 油圧ホースの破損や接続部からの油漏れで油圧が異常に下がったときに、ブーム及びアームが急激に降下・収縮するのを防ぐ装置です。特定解体用機械は車両系建設機械構造規格14条で備えることが求められています(基発0412第14号)。ブームが長く重心が高い機械ほど、この危険が大きくなります。
- Q. 解体用機械の運転にはどんな資格が要りますか
- 機体重量3トン以上であれば車両系建設機械(解体用)運転技能講習が必要です(安衛令20条12号)。整地・運搬・積込み用及び掘削用の技能講習では足りません。3トン未満は特別教育です。
- Q. 点検表で対象外の項目はどう書きますか
- 空欄ではなく「対象外」と記入してください。空欄にすると、実施漏れなのか対象外なのかが区別できません。第四号の行には「特定解体用機械(ブーム+アーム12m以上)のみ」と条件を明記しておくと確実です。
- Q. 年次検査で特に見るべき箇所はどこですか
- 第六号の作業装置(ブーム・アームの溶接部、アタッチメント取付ピン、圧砕刃やカッター刃)と、第七号の油圧装置(アタッチメント用の増設回路、ホースの摩耗、逆止め弁)です。飛来落下に備えるヘッドガード・フロントガードは第九号に含まれます。
- Q. 傾斜地では使えないのですか
- 路肩、傾斜地等で特定解体用機械の転倒または転落により労働者に危険が生ずるおそれのある場所では、作業を行ってはならないとされています。ただし、地形・地質の状態等に応じた危険防止の措置を講じたときはこの限りではありません。作業計画の段階で確認する事項です。
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