車両系建設機械の作業計画書|調査から周知までを条文でつなぐ
重機を使う現場では作業計画書を出しますが、様式を配っているサイトはあっても「なぜその欄があるのか」を条文で説明した資料がほとんどありません。結果として、前の現場の書類を書き換えただけの計画書が出回ります。
実は作業計画は単独の義務ではなく、調査(154条)→ 計画(155条)→ 現場の措置(156〜160条)という一連の流れの真ん中にあります。この記事では条文をつないで、何をどこまで書けばよいのかを整理します。
アタッチメントを付け替えると、計画に書いた内容のいくつかが変わります。何が変わるのかは重機アタッチメントの種類で3つに分けて整理しました。
この記事の内容(9項目)
- 作業計画の前に「調査と記録」がある
- 調査の記録は作業計画書と別に残す
- 作業計画に示すべき3つの事項
- 周知が必要なのは二号と三号だけです
- 「作業の方法」が最も薄くなりやすい
- 計画と一体で決める4つの措置
- 誘導者は「置けば済む」ではありません
- 運転位置から離れるときの措置
- 作業計画書と点検表は別物です
- 差し戻されにくい書き方
- 1. 前の現場の使い回しにしない
- 2. 機械の種類は別表第七の区分で書く
- 3. 誘導者を置くか、立入禁止にするかを明示する
- 4. 制限速度を空欄にしない
- 5. 周知の記録を残す
- 車両系建設機械の作業計画にかかわる最近の動き(2026年10月時点)
- 車両系建設機械の作業計画に出てくる用語
- 車両系建設機械の作業計画と一緒に押さえておきたいこと
- 作業計画書は誰が書くのか
- 作業計画書は毎日作るのか
- オペレーター付きで借りた機械は、通知することが決まっている
- よくある質問
作業計画の前に「調査と記録」がある
見落とされやすいのですが、作業計画(155条)はその前の条文を受けて書かれています。
安衛則154条(調査及び記録)
事業者は、車両系建設機械を用いて作業を行なうときは、当該車両系建設機械の転落、地山の崩壊等による労働者の危険を防止するため、あらかじめ、当該作業に係る場所について地形、地質の状態等を調査し、その結果を記録しておかなければならない。
そして155条1項は「前条の規定による調査により知り得たところに適応する作業計画を定め」と書いています。つまり、調査していない作業計画は条文の要件を満たしません。
調査の記録は作業計画書と別に残す
154条が求めているのは調査結果の記録で、作業計画そのものではありません。作業計画書の中に「地形・地質」の欄を設けて兼ねるのは実務上よくある形ですが、調査した事実が読み取れる書き方にしてください。「平坦」の2文字だけでは調査の記録として弱くなります。
作業計画に示すべき3つの事項
155条2項が定める記載事項は3つだけです。これ以外は法定事項ではありません。
| 号 | 示すべき事項(条文のまま) | 書くこと | 周知 |
|---|---|---|---|
| 一 | 使用する車両系建設機械の種類及び能力 | 機種区分(別表第七の号)、機体重量、バケット容量、ブーム長 | 対象外 |
| 二 | 車両系建設機械の運行経路 | 搬入から作業位置まで、幅員、勾配、地盤、埋設物・架空線 | 必要 |
| 三 | 車両系建設機械による作業の方法 | 掘削の順序、旋回範囲、積込みの向き、退避の方法 | 必要 |
周知が必要なのは二号と三号だけです
155条3項は「前項第二号及び第三号の事項について関係労働者に周知させなければならない」と書いています。一号(機械の種類及び能力)は周知の対象に入っていません。
とはいえ実務では、機械の能力を知らないまま作業する労働者がいるほうが危険です。法定は二号・三号、社内基準として一号も伝えるという整理にしておくと、朝礼での説明が過不足なく組み立てられます。
「作業の方法」が最も薄くなりやすい
運行経路は図で描けるので残りますが、作業の方法は文章になるため省略されがちです。掘削の順序、旋回の範囲、どちらから積むか、異常時にどう退避するかを具体的に書いてください。ここが空欄に近い計画書は、災害後に「計画がなかった」と評価されかねません。
計画と一体で決める4つの措置
155条の周辺には、作業計画と対で機能する条文が並んでいます。作業計画書の欄がこれに対応していると、現場で実際に使える書類になります。
| 条文 | 内容 | 計画書で書くこと |
|---|---|---|
| 156条 制限速度 | 最高速度10km/h超の機械は、あらかじめ適正な制限速度を定める | 制限速度(km/h)。運転者はこれを超えてはならない |
| 157条 転落等の防止 | 路肩の崩壊防止、地盤の不同沈下防止、必要な幅員の保持等。路肩・傾斜地では誘導者を配置 | 幅員、地盤対策、誘導者の要否 |
| 158条 接触の防止 | 接触の危険がある箇所に作業従事者が立ち入ることを、見やすい箇所への表示その他の方法で禁止する(2025年4月1日から、対象は一人親方などを含む作業従事者)。ただし誘導者を置くときは不要 | 立入禁止の範囲、表示の方法 |
| 159条 合図 | 誘導者を置くときは一定の合図を定める | 合図の方法、合図者の氏名 |
立入禁止で対応する
158条本文。表示等で禁止する。誘導者を置かなくてよい代わりに、範囲を明確にする必要がある誘導者を置く
158条ただし書。立入禁止に代えられる。ただし159条により合図を定め、誘導者に行わせる義務がセットで付く誘導者は「置けば済む」ではありません
誘導者を配置すると立入禁止を省略できますが、合図を定めて誘導者に行わせる(159条)という別の義務が発生します。合図の方法を決めずに誘導者だけ立てている現場は、条文上は片手落ちです。
運転位置から離れるときの措置
160条は、運転者が運転位置から離れるときに①バケット、ジッパー等の作業装置を地上に下ろす ②原動機を止め、走行ブレーキをかける等の逸走を防止する措置を求めています。これは計画書ではなく日常の遵守事項ですが、作業計画の周知に含めておくと徹底しやすくなります。
作業計画書と点検表は別物です
混同されることがありますが、目的も根拠条文も違います。
| 作業計画書 | 点検表・定期自主検査の記録 | |
|---|---|---|
| 根拠 | 安衛則155条 | 安衛則167〜170条 |
| 対象 | 作業(その現場でどう使うか) | 機械(状態が正常か) |
| タイミング | 作業の前(現場ごと) | 年次・月例・毎日 |
| 記録の保存 | 条文上の保存年数の定めなし | 年次・月例は6項目を3年保存 |
| 様式 | 法定様式なし。元請や業界団体の様式を使うことが多い | 法定様式なし |
作業計画書に保存年数の定めはありません。ただし工事の記録として元請に綴じられるのが通例です。一方、定期自主検査の記録は3年保存が義務で、こちらは自社に残ります。建機の点検記録3年保存で整理しています。
(二号・三号)
差し戻されにくい書き方
1. 前の現場の使い回しにしない
作業計画は「調査により知り得たところに適応する」ものです。地形・地質が違えば計画も違うのが条文の前提です。運行経路の図だけでも現場ごとに描き直してください。
2. 機械の種類は別表第七の区分で書く
「ユンボ」ではなく「ドラグショベル(掘削用機械・第二号)」のように書くと、資格・検査・計画の説明が一貫します。区分は車両系建設機械の定期自主検査の表を参照してください。
3. 誘導者を置くか、立入禁止にするかを明示する
158条は二択です。どちらを選んだかが計画書から読み取れないと、現場の運用も定まりません。誘導者を選んだなら合図の方法まで書きます。
4. 制限速度を空欄にしない
最高速度10km/h以下の機械は対象外ですが、それ以外はあらかじめ定める義務があります。「徐行」ではなく数値で書いてください。
5. 周知の記録を残す
155条3項は周知を義務づけていますが、方法は定めていません。朝礼で説明した日付と参加者を1行残しておくと、周知した事実を示せます。
関連:誘導者・立入禁止・合図、建設機械の移送と積み降ろし、主たる用途以外の使用。条文はe-Gov法令検索(労働安全衛生規則)で確認できます。
車両系建設機械の作業計画にかかわる最近の動き(2026年10月時点)
車両系建設機械の作業計画を定めた155条の文言は変わっていません。変わったのは、計画とセットで決める立入禁止の対象と、元方や機械の貸与者が講じる措置の範囲です。日付順に並べます。
| 日付 | できごと | 根拠 |
|---|---|---|
| 2025年4月1日 | 改正労働安全衛生規則が施行。158条は「作業に従事する作業従事者が立ち入ることについて、禁止する旨を見やすい箇所に表示することその他の方法により禁止」に改められ、一人親方や他社の作業員も対象になった。162条(搭乗の制限)も同じく作業従事者が対象 | 令和6年4月30日公布の改正省令(厚生労働省リーフレット) |
| 2025年5月14日 | 労働安全衛生法等の改正法が公布 | 令和7年法律第33号 |
| 2026年1月1日 | 車両系建設機械の特定自主検査基準の適用が始まり、旧来の定期自主検査指針は廃止 | 令和7年厚生労働省告示第320号、基発1226第2号 |
| 2026年4月1日 | 改正法の主な部分が施行。注文者・元方事業者・機械の貸与者などが講じる措置の対象が、一人親方などを含む作業従事者に広がった | 令和7年法律第33号 |
| 2026年5月27日 | 令和7年の労働災害の確定値を公表。全産業の死亡者は700人で過去最少、うち建設業は214人。事故の型では、はさまれ・巻き込まれによる死亡が117人 | 厚生労働省「令和7年の労働災害発生状況」 |
作業計画書で効いてくるのは2025年4月の改正です。立入禁止の範囲を周知する相手に、一人親方や他社の作業員、資材の搬入業者も入るので、周知の記録にも自社以外の人が残る形にしておくと説明がしやすくなります。
出典:厚生労働省「建設業の一人親方等に仕事を発注する事業者のみなさまへ」、厚生労働省「改正法の概要」、厚生労働省「特定自主検査基準等の制定等について」、厚生労働省「令和7年の労働災害発生状況」、e-Gov法令検索(労働安全衛生規則)
確認日は2026年10月3日です。現場ごとの扱いは、所轄の労働基準監督署で確かめてください。
車両系建設機械の作業計画に出てくる用語
車両系建設機械の作業計画書の欄名は、条文の言葉から来ているものと、様式ごとの言葉が混ざっています。条文にあるものを中心に並べました。
| 用語 | 意味 | 出典 |
|---|---|---|
| 車両系建設機械 | 令別表第七に掲げる建設機械で、動力を用い、かつ、不特定の場所に自走できるもの | 労働安全衛生法施行令別表第七、登録省令19条の22第3項 |
| 作業計画 | 154条の調査で知り得たところに適応するよう、あらかじめ定める計画。3つの事項を示す | 安衛則155条 |
| 調査及び記録 | 作業場所の地形・地質の状態等を調べ、その結果を記録すること | 安衛則154条 |
| 種類及び能力 | 作業計画の第一号。区分は令別表第七の号で書くと一貫する。能力の中身に法令上の定義はない | 安衛則155条2項1号 |
| 運行経路・作業の方法 | 作業計画の第二号・第三号。関係労働者への周知が必要。法令上の定義はない | 安衛則155条2項・3項 |
| 関係労働者 | 周知の相手。法令上の定義はない | 安衛則155条3項 |
| 制限速度 | 地形・地質の状態等に応じて事業者があらかじめ定める速度。最高速度が毎時10キロメートル以下の機械は除く | 安衛則156条 |
| 作業従事者 | その作業場で作業に従事する者。労働者に限らず一人親方なども含む | 安衛則158条・162条(2025年4月1日施行の改正) |
| 特定元方事業者 | 建設業など特定事業を行う元方事業者。関係請負人の作業計画が全体の計画に合うよう指導する | 労働安全衛生法15条1項、安衛則638条の4 |
計画書の欄名を条文の言葉にそろえておくと、差し戻しのときに「どの条文の、どの号が足りないか」で話ができるようになります。
車両系建設機械の作業計画と一緒に押さえておきたいこと
車両系建設機械の作業計画は、155条の3事項を書けば形になります。そのうえで、現場からよく出る疑問を条文で確かめておきます。
作業計画書は誰が書くのか
155条で作業計画を定めるのは、車両系建設機械を用いて作業を行う事業者です。下請が機械を持ち込んで作業するなら、作業計画を定めるのはその下請になります。元請が特定元方事業者にあたる場合は、工程と主要な機械の配置の計画を作り(安衛則638条の3)、関係請負人が定める作業計画がその計画に合うよう指導することとされています(安衛則638条の4第1号)。指導の対象は、コンクリート打設用機械を除き機体重量3トン以上の機械を使う作業です。
作業計画書は毎日作るのか
条文は「あらかじめ…作業計画を定め、かつ、当該作業計画により作業を行なわなければならない」と書いており、毎日作り直す定めはありません。ただし、運行経路や作業の方法が変われば、前の計画のままでは「当該作業計画により」作業できなくなります。計画は工事や作業の区切りごとに定め、変わった日に改める。毎日の朝礼では二号・三号を周知し直すという分け方にしておくと、書類が増えすぎません。
オペレーター付きで借りた機械は、通知することが決まっている
機械をオペレーター付きで借り、操作する人が自社の労働者でないときは、借りた事業者が、操作する人の資格を確かめ、作業の内容、指揮の系統、連絡・合図の方法、運行の経路・制限速度などを通知することとされています(安衛則667条)。作業計画の二号・三号や156条・159条で決めた内容と重なるので、作業計画書をそのまま通知の資料に使うと手間が減ります。貸す側も、あらかじめ点検し、能力や使用上の注意を書面で渡すこととされています(安衛則666条)。
資格の確かめ方は重機オペレーターの資格で扱っています。
よくある質問
- Q. 車両系建設機械の作業計画は法律上の義務ですか
- 義務です。労働安全衛生規則155条1項が「あらかじめ、前条の規定による調査により知り得たところに適応する作業計画を定め、かつ、当該作業計画により作業を行なわなければならない」と定めています。
- Q. 作業計画に何を書けばよいですか
- 法定の記載事項は3つです。使用する車両系建設機械の種類及び能力、車両系建設機械の運行経路、車両系建設機械による作業の方法(安衛則155条2項)。これ以外の欄は各様式が実務上設けているものです。
- Q. 作業計画を作る前にやることはありますか
- あります。安衛則154条により、あらかじめ作業に係る場所について地形、地質の状態等を調査し、その結果を記録しておく必要があります。155条は「前条の規定による調査により知り得たところに適応する」計画を求めているので、調査が前提です。
- Q. 作業計画は誰に周知しますか
- 関係労働者です。ただし周知の対象は155条2項の第二号(運行経路)と第三号(作業の方法)に限られています(155条3項)。第一号の機械の種類及び能力は条文上の周知対象ではありませんが、実務では伝えたほうが安全です。
- Q. 制限速度は必ず定めるのですか
- 最高速度が毎時10キロメートル以下の機械を除き、あらかじめ定める義務があります(安衛則156条)。作業場所の地形、地質の状態等に応じた適正な速度を数値で定めてください。運転者はこれを超えて運転してはなりません。
- Q. 誘導者を置けば立入禁止は不要ですか
- 安衛則158条ただし書により、誘導者を配置してその者に誘導させるときは立入禁止の措置は不要です。ただし159条により、誘導者を置くときは一定の合図を定めて誘導者に行わせる義務が発生します。合図を決めずに誘導者だけ立てるのは条文上不十分です。
- Q. 路肩や傾斜地で作業するときは何が必要ですか
- 転倒・転落により労働者に危険が生ずるおそれのあるときは、誘導者を配置してその者に誘導させなければなりません(安衛則157条2項)。あわせて同条1項により、路肩の崩壊防止、地盤の不同沈下防止、必要な幅員の保持等の措置も必要です。
- Q. 作業計画書と点検表は同じものですか
- 別物です。作業計画書は「その現場で機械をどう使うか」を定めるもので根拠は155条、点検表は「機械の状態が正常か」を確認するもので根拠は167〜170条です。作業計画書に保存年数の定めはありませんが、定期自主検査の記録は3年保存が義務です。
- Q. 車両系建設機械の作業計画書は誰が書きますか
- 安衛則155条で作業計画を定めるのは、車両系建設機械を用いて作業を行う事業者です。下請が機械を使うなら下請が定めます。元請が特定元方事業者の場合は、機体重量3トン以上(コンクリート打設用機械は重量を問わない)の機械を使う作業について、関係請負人の作業計画が全体の計画に合うよう指導することとされています(安衛則638条の4)。
- Q. 作業計画書は毎日作る必要がありますか
- 条文に毎日作り直す定めはありません。ただし運行経路や作業の方法が変われば、その計画のままでは作業できないので改める必要があります。毎日の朝礼では、周知が必要な二号(運行経路)と三号(作業の方法)を伝え直す運用が一般的です。
- Q. 作業計画書は何年保存しますか
- 条文上、保存年数の定めはありません。実務では工事の記録として元請に提出され、工事書類として保管されるのが通例です。定期自主検査の記録(3年保存)とは扱いが異なります。
- Q. 前の現場の作業計画書を流用してもよいですか
- 避けてください。作業計画は「調査により知り得たところに適応する」ものと条文が定めており、地形・地質が違えば計画も変わるのが前提です。少なくとも運行経路と作業の方法は現場ごとに作り直す必要があります。
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