建設機械・荷役車両

車両系建設機械の作業計画書|調査から周知までを条文でつなぐ

公開 2026-09-02 執筆 点検板 編集部

重機を使う現場では作業計画書を出しますが、様式を配っているサイトはあっても「なぜその欄があるのか」を条文で説明した資料がほとんどありません。結果として、前の現場の書類を書き換えただけの計画書が出回ります。

実は作業計画は単独の義務ではなく、調査(154条)→ 計画(155条)→ 現場の措置(156〜160条)という一連の流れの真ん中にあります。この記事では条文をつないで、何をどこまで書けばよいのかを整理します。

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この記事の内容(6項目)

作業計画の前に「調査と記録」がある

見落とされやすいのですが、作業計画(155条)はその前の条文を受けて書かれています。

安衛則154条(調査及び記録)
事業者は、車両系建設機械を用いて作業を行なうときは、当該車両系建設機械の転落、地山の崩壊等による労働者の危険を防止するため、あらかじめ、当該作業に係る場所について地形、地質の状態等を調査し、その結果を記録しておかなければならない。

そして155条1項は「前条の規定による調査により知り得たところに適応する作業計画を定め」と書いています。つまり、調査していない作業計画は条文の要件を満たしません。

3つはひと続きの手続き
① 調査(154条)地形・地質の状態等。結果を記録する
② 作業計画(155条)調査結果に適応する計画を定める
③ 周知(155条3項)運行経路と作業の方法を関係労働者へ
①の記録を残していない事業場が多い。作業計画書の裏付けがない状態になる

調査の記録は作業計画書と別に残す

154条が求めているのは調査結果の記録で、作業計画そのものではありません。作業計画書の中に「地形・地質」の欄を設けて兼ねるのは実務上よくある形ですが、調査した事実が読み取れる書き方にしてください。「平坦」の2文字だけでは調査の記録として弱くなります。

作業計画に示すべき3つの事項

155条2項が定める記載事項は3つだけです。これ以外は法定事項ではありません。

示すべき事項(条文のまま)書くこと周知
使用する車両系建設機械の種類及び能力機種区分(別表第七の号)、機体重量、バケット容量、ブーム長対象外
車両系建設機械の運行経路搬入から作業位置まで、幅員、勾配、地盤、埋設物・架空線必要
車両系建設機械による作業の方法掘削の順序、旋回範囲、積込みの向き、退避の方法必要

周知が必要なのは二号と三号だけです

155条3項は「前項第二号及び第三号の事項について関係労働者に周知させなければならない」と書いています。一号(機械の種類及び能力)は周知の対象に入っていません。

とはいえ実務では、機械の能力を知らないまま作業する労働者がいるほうが危険です。法定は二号・三号、社内基準として一号も伝えるという整理にしておくと、朝礼での説明が過不足なく組み立てられます。

「作業の方法」が最も薄くなりやすい

運行経路は図で描けるので残りますが、作業の方法は文章になるため省略されがちです。掘削の順序、旋回の範囲、どちらから積むか、異常時にどう退避するかを具体的に書いてください。ここが空欄に近い計画書は、災害後に「計画がなかった」と評価されかねません。

計画と一体で決める4つの措置

155条の周辺には、作業計画と対で機能する条文が並んでいます。作業計画書の欄がこれに対応していると、現場で実際に使える書類になります。

条文内容計画書で書くこと
156条 制限速度最高速度10km/h超の機械は、あらかじめ適正な制限速度を定める制限速度(km/h)。運転者はこれを超えてはならない
157条 転落等の防止路肩の崩壊防止、地盤の不同沈下防止、必要な幅員の保持等。路肩・傾斜地では誘導者を配置幅員、地盤対策、誘導者の要否
158条 接触の防止接触の危険がある箇所への立入禁止を見やすい箇所に表示等ただし誘導者を置くときは不要立入禁止の範囲、表示の方法
159条 合図誘導者を置くときは一定の合図を定める合図の方法、合図者の氏名

立入禁止で対応する

158条本文。表示等で禁止する。誘導者を置かなくてよい代わりに、範囲を明確にする必要がある

誘導者を置く

158条ただし書。立入禁止に代えられる。ただし159条により合図を定め、誘導者に行わせる義務がセットで付く

誘導者は「置けば済む」ではありません

誘導者を配置すると立入禁止を省略できますが、合図を定めて誘導者に行わせる(159条)という別の義務が発生します。合図の方法を決めずに誘導者だけ立てている現場は、条文上は片手落ちです。

運転位置から離れるときの措置

160条は、運転者が運転位置から離れるときに①バケット、ジッパー等の作業装置を地上に下ろす ②原動機を止め、走行ブレーキをかける等の逸走を防止する措置を求めています。これは計画書ではなく日常の遵守事項ですが、作業計画の周知に含めておくと徹底しやすくなります。

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作業計画書と点検表は別物です

混同されることがありますが、目的も根拠条文も違います。

作業計画書点検表・定期自主検査の記録
根拠安衛則155条安衛則167〜170条
対象作業(その現場でどう使うか)機械(状態が正常か)
タイミング作業の前(現場ごと)年次・月例・毎日
記録の保存条文上の保存年数の定めなし年次・月例は6項目を3年保存
様式法定様式なし。全建統一様式が多い法定様式なし

作業計画書に保存年数の定めはありません。ただし工事の記録として元請に綴じられるのが通例です。一方、定期自主検査の記録は3年保存が義務で、こちらは自社に残ります。建機の点検記録3年保存で整理しています。

3事項作業計画の法定記載
2つ周知が必要な事項
(二号・三号)
10km/h制限速度を定める基準
調査が先154条→155条の順

差し戻されにくい書き方

1. 前の現場の使い回しにしない

作業計画は「調査により知り得たところに適応する」ものです。地形・地質が違えば計画も違うのが条文の前提です。運行経路の図だけでも現場ごとに描き直してください。

2. 機械の種類は別表第七の区分で書く

「ユンボ」ではなく「ドラグショベル(掘削用機械・第二号)」のように書くと、資格・検査・計画の説明が一貫します。区分は車両系建設機械の定期自主検査の表を参照してください。

3. 誘導者を置くか、立入禁止にするかを明示する

158条は二択です。どちらを選んだかが計画書から読み取れないと、現場の運用も定まりません。誘導者を選んだなら合図の方法まで書きます。

4. 制限速度を空欄にしない

最高速度10km/h以下の機械は対象外ですが、それ以外はあらかじめ定める義務があります。「徐行」ではなく数値で書いてください。

5. 周知の記録を残す

155条3項は周知を義務づけていますが、方法は定めていません。朝礼で説明した日付と参加者を1行残しておくと、周知した事実を示せます。

関連:誘導者・立入禁止・合図建設機械の移送と積み降ろし主たる用途以外の使用。条文はe-Gov法令検索(労働安全衛生規則)で確認できます。

よくある質問

Q. 車両系建設機械の作業計画は法律上の義務ですか
義務です。労働安全衛生規則155条1項が「あらかじめ、前条の規定による調査により知り得たところに適応する作業計画を定め、かつ、当該作業計画により作業を行なわなければならない」と定めています。
Q. 作業計画に何を書けばよいですか
法定の記載事項は3つです。使用する車両系建設機械の種類及び能力、車両系建設機械の運行経路、車両系建設機械による作業の方法(安衛則155条2項)。これ以外の欄は各様式が実務上設けているものです。
Q. 作業計画を作る前にやることはありますか
あります。安衛則154条により、あらかじめ作業に係る場所について地形、地質の状態等を調査し、その結果を記録しておく必要があります。155条は「前条の規定による調査により知り得たところに適応する」計画を求めているので、調査が前提です。
Q. 作業計画は誰に周知しますか
関係労働者です。ただし周知の対象は155条2項の第二号(運行経路)と第三号(作業の方法)に限られています(155条3項)。第一号の機械の種類及び能力は条文上の周知対象ではありませんが、実務では伝えたほうが安全です。
Q. 制限速度は必ず定めるのですか
最高速度が毎時10キロメートル以下の機械を除き、あらかじめ定める義務があります(安衛則156条)。作業場所の地形、地質の状態等に応じた適正な速度を数値で定めてください。運転者はこれを超えて運転してはなりません。
Q. 誘導者を置けば立入禁止は不要ですか
安衛則158条ただし書により、誘導者を配置してその者に誘導させるときは立入禁止の措置は不要です。ただし159条により、誘導者を置くときは一定の合図を定めて誘導者に行わせる義務が発生します。合図を決めずに誘導者だけ立てるのは条文上不十分です。
Q. 路肩や傾斜地で作業するときは何が必要ですか
転倒・転落により労働者に危険が生ずるおそれのあるときは、誘導者を配置してその者に誘導させなければなりません(安衛則157条2項)。あわせて同条1項により、路肩の崩壊防止、地盤の不同沈下防止、必要な幅員の保持等の措置も必要です。
Q. 作業計画書と点検表は同じものですか
別物です。作業計画書は「その現場で機械をどう使うか」を定めるもので根拠は155条、点検表は「機械の状態が正常か」を確認するもので根拠は167〜170条です。作業計画書に保存年数の定めはありませんが、定期自主検査の記録は3年保存が義務です。
Q. 作業計画書は何年保存しますか
条文上、保存年数の定めはありません。実務では工事の記録として元請に提出され、工事書類として保管されるのが通例です。定期自主検査の記録(3年保存)とは扱いが異なります。
Q. 前の現場の作業計画書を流用してもよいですか
避けてください。作業計画は「調査により知り得たところに適応する」ものと条文が定めており、地形・地質が違えば計画も変わるのが前提です。少なくとも運行経路と作業の方法は現場ごとに作り直す必要があります。
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本記事は一般的な情報の整理であり、法令への適合を保証するものではありません。個別の義務内容は所管行政庁または専門家にご確認ください。記事の内容は2026-09-02時点の情報です。