ブルドーザの点検表|履帯まわりを条文のどこで見るか
ブルドーザの点検表を探すと、メーカーの整備マニュアルか、自治体が公開している裸のExcelが出てきます。どちらも項目は載っているのですが、その項目が条文のどこから来ているのかは書かれていません。出どころが分からないと、自社の点検表から何を削ってよいかの判断ができません。
ブルドーザ(法令の表記は「ブル・ドーザー」)は労働安全衛生法施行令別表第七第一号(整地・運搬・積込み用機械)の1番目に挙がる機械で、車両系建設機械として安衛則167条以下がそのまま適用されます。この記事では、履帯や排土板といったブルドーザ特有の部位を条文のどの号で見るのかを整理します。
この記事の内容(8項目)
3層と、それぞれの条文
ブルドーザに義務付けられている点検・検査は3層です。周期と根拠条文、記録の要否が層ごとに違います。
| 層 | 周期(条文の文言) | 検査事項 | 誰が | 記録 | 条文 |
|---|---|---|---|---|---|
| 作業開始前点検 | その日の作業を開始する前 | 2つのみ | 運転者等 | 保存義務なし | 170条 |
| 定期自主検査(月例) | 一月以内ごとに一回 | 実質3項目 | 資格要件なし | 6項目・3年保存 | 168条 |
| 特定自主検査(年次) | 一年以内ごとに一回 | 9項目 | 検査業者または有資格者 | 6項目・3年保存+検査標章 | 167条・169条・169条の2 |
運転の資格は機体重量で分かれます
機体重量3トン以上は就業制限がかかり、車両系建設機械(整地・運搬・積込み用及び掘削用)運転技能講習が必要です(安衛令20条12号)。3トン未満は特別教育です(安衛則36条9号)。ブルドーザは3トンを超えるものがほとんどなので、実務上は技能講習と考えて差し支えありませんが、小型のミニブルは確認してください。
ただし、これは資格の話です。定期自主検査の条文には機体重量による除外がないので、大きさにかかわらず必要です。詳しくはミニショベルの点検表で整理しています。
履帯・排土板は条文のどこで見るか
ブルドーザ特有の部位が、条文のどの号に対応するのかを対照します。条文には「排土板」という語はありません。第六号の「ブレード」がそれにあたります。
| 号 | 検査事項(条文のまま) | ブルドーザで見る箇所 |
|---|---|---|
| 一 | 圧縮圧力、弁すき間その他原動機の異常の有無 | エンジン |
| 二 | クラッチ、トランスミッション、プロペラシャフト、デファレンシャルその他動力伝達装置 | トルコン、終減速機 |
| 三 | 起動輪、遊動輪、上下転輪、履帯、タイヤ、ホイールベアリングその他走行装置 | スプロケット、アイドラ、上下ローラ、シュー、リンク、履帯の張り |
| 四 | かじ取り車輪の左右の回転角度、ナックル、ロッド、アームその他操縦装置 | 操向レバー・ペダル |
| 五 | 制動能力、ブレーキドラム、ブレーキシューその他ブレーキ | ブレーキ、駐車ブレーキ |
| 六 | ブレード、ブーム、リンク機構、バケット、ワイヤロープその他作業装置 | 排土板、チルト・アングル機構、リッパ |
| 七 | 油圧ポンプ、油圧モーター、シリンダー、安全弁その他油圧装置 | ブレードシリンダー、配管 |
| 八 | 電圧、電流その他電気系統 | バッテリー、始動系 |
| 九 | 車体、操作装置、ヘッドガード、バックストッパー、昇降装置、ロック装置、警報装置、方向指示器、灯火装置及び計器 | ROPS/FOPS、後進警報、灯火 |
月例と作業開始前
月例(安衛則168条)は4つの号がありますが、第四号は特定解体用機械(ブーム及びアームの長さの合計が12メートル以上の解体用機械)だけが対象なので、ブルドーザで見るのは3項目です。
| 号 | 検査事項 | ブルドーザ |
|---|---|---|
| 一 | ブレーキ、クラッチ、操作装置及び作業装置の異常の有無 | 対象 |
| 二 | ワイヤロープ及びチェーンの損傷の有無 | 対象(ワイヤ式のリッパ・ウインチがある場合は特に) |
| 三 | バケット、ジッパー等の損傷の有無 | 対象(リッパのシャンク・ポイント) |
| 四 | 特定解体用機械にあっては、逆止め弁、警報装置等 | 対象外 |
作業開始前点検(170条)は「ブレーキ及びクラッチの機能」の2つだけです。実務では、油脂類の漏れ、履帯の張り、ブレードの取付け、後進警報の作動などを社内基準として加えます。法定項目と社内項目は分けて書いてください。
月例に資格は要りません
月例の定期自主検査に資格要件はなく、事業者の責任で実施します。有資格者または検査業者が必要なのは年次の特定自主検査だけです。ただし月例も記録6項目の3年保存が必要です。
運用でつまずく3つ
1. 現場を移動するので機械の所在が分からなくなる
ブルドーザは現場に置きっぱなしになりがちで、月例の期限が来たときに「今どこにあるか」を探すところから始まります。台帳に保有拠点と現在の現場を別々の列で持たせておくと、期限が来たときの手配が早くなります。詳しくは現場を移動する建機の管理で扱っています。
2. 移送のときの措置を点検と混ぜてしまう
トレーラで運ぶときの措置(安衛則161条)は、点検・検査とは別の規定です。平たんで堅固な場所で積み卸す、十分な長さ・幅・強度の道板を使うなど「積卸しの措置」であって検査事項ではありません。点検表に混ぜると、どれが法定の検査事項か分からなくなります。
3. 下部走行体の摩耗が良否だけで終わる
スプロケット・アイドラ・ローラ・シューは、交換すると費用が大きく、更新の計画に直結します。良否だけの記録にすると、後から「いつから減っていたか」が追えません。摩耗量や測定値を書ける欄にしておくと、記録が予算計画の材料になります。
関連:機械全般の検査事項は車両系建設機械の定期自主検査、ホイール式はホイールローダーの点検表で扱っています。条文はe-Gov法令検索(労働安全衛生規則)で確認できます。
同じ整地用の機械でも、モーターグレーダーやスクレーパーはブレードや排土板の見方が変わります。モーターグレーダー・スクレーパーの点検表で整理しています。
ブルドーザの点検表にかかわる最近の動き(2026年10月時点)
ブルドーザの点検表のもとになる条文(安衛則167条〜170条)は変わっていません。変わったのは、年次の特定自主検査の「やり方の基準」と、現場で一緒に働く一人親方などへの措置の範囲です。日付順に並べます。
| 時期 | できごと | 根拠 |
|---|---|---|
| 2025年5月14日 | 改正労働安全衛生法(令和7年法律第33号)が公布される | 改正法の概要(厚生労働省) |
| 2025年12月24日 | 車両系建設機械特定自主検査基準(令和7年厚生労働省告示第320号)が告示される。履帯の張り具合は製造者が定める検査方法に基づいて判定するとされている | 基発1226第2号 |
| 2026年1月1日 | 特定自主検査は告示の基準に従って行うことになり、旧「車両系建設機械の定期自主検査指針」は廃止 | 基発1226第2号 |
| 2026年4月1日 | 注文者・元方事業者などの措置の対象が、一人親方などを含む作業従事者に広がる。建設機械を貸す事業者の措置も、個人事業者などに貸す場合が対象に入る。接触の防止(安衛則158条)の立入禁止も「作業従事者」が対象 | 改正安衛法/安衛令10条3号/安衛則158条 |
| 2026年5月27日 | 令和7年の労働災害の確定値が公表。建設業の死亡者は214人、全産業のはさまれ・巻き込まれによる死亡は117人 | 厚生労働省 |
ポイントはここです。履帯の張りは、告示の基準でも「製造者が定める検査方法」で判定する形になっています。点検表の第三号の欄に、取扱説明書の測り方と基準値を書き写しておくと、検査業者に頼む年次と社内の月例で同じ物差しを使えます。
出典:高所作業車特定自主検査基準等の制定等について(基発1226第2号)、厚生労働省 労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律の概要、厚生労働省 令和7年の労働災害発生状況、e-Gov法令検索(労働安全衛生規則)。確認日は2026年10月3日です。個別の扱いは所轄の労働基準監督署にご確認ください。
ブルドーザの点検表に出てくる用語
ブルドーザの点検表では、メーカーの部品名と条文の言葉が食い違います。点検表の項目名をそろえるときの参考にしてください。
| 用語 | 意味 | 出典 |
|---|---|---|
| ブル・ドーザー | 法令での表記。「ブルドーザ」「ブルドーザー」と書いても同じ機械を指す | 安衛令別表第七第一号1 |
| 整地・運搬・積込み用機械 | 別表第七第一号の区分。ブル・ドーザー、モーター・グレーダー、トラクター・ショベル、ずり積機、スクレーパー、スクレープ・ドーザーなど | 安衛令別表第七第一号 |
| 車両系建設機械 | 別表第七に掲げる建設機械で、動力を用い、かつ、不特定の場所に自走できるもの | 安衛則94条の2第2号 |
| 排土板 | 土を押す板。条文では167条6号の「ブレード」にあたる | 法令上の定義はない |
| リッパ | 車体後部の爪で、硬い地盤を起こす装置。作業装置として扱う | 法令上の定義はない |
| ヘッドガード | 岩石の落下などから運転者を守る屋根。落石のおそれがある場所では備える義務がある | 安衛則153条 |
| 特定自主検査 | 167条の年次の自主検査。有資格者か検査業者が行う | 安衛則169条の2第1項 |
| 検査標章 | 特定自主検査を行った年月が分かるステッカー。事業者が機体に貼る | 安衛則169条の2第8項 |
ブルドーザの点検表と一緒に押さえておきたいこと
ブルドーザの点検表は、条文の9項目を写せばひとまず形になります。そのうえで、上位の解説ではあまり触れられていない点を3つ挙げます。
年次の検査者の資格は油圧ショベルと共通
特定自主検査を自社で行う場合、検査者の資格は機械の区分ごとに定められています。安衛則169条の2第2項は、別表第七第一号・第二号・第六号の機械について同じ資格の定めを準用しています。ブルドーザと油圧ショベル、解体用機械は、同じ区分の検査者が見られることになります。一方、ローラー(第四号)や基礎工事用(第三号)は別の項で定められているので、同じ人が見られるとは限りません。
落石のある現場ではヘッドガード
岩石の落下などのおそれがある場所でブル・ドーザーを使うときは、堅固なヘッドガードを備えることが定められています(安衛則153条)。造成や採石の現場に回すときは、第九号の欄でヘッドガードの有無と取付けの状態を確かめておくと、現場の条件が変わったときにも説明がつきます。
運転位置を離れるときの措置
運転者が運転位置から離れるときは、ブレードなどの作業装置を地上に下ろし、原動機を止めて走行ブレーキをかけるなど、逸走を防ぐ措置をとらせることが定められています(安衛則160条)。作業開始前点検のブレーキの確認と合わせて、駐車ブレーキの効きを日々見ておくと、この措置が実際に効く状態を保てます。
よくある質問
- Q. ブルドーザは別表第七のどの区分ですか
- 第一号(整地・運搬・積込み用機械)です。トラクターショベル(ホイールローダー)やスクレーパーと同じ区分になります。車両系建設機械として安衛則167条以下がそのまま適用されます。
- Q. 排土板は条文のどこで見ますか
- 安衛則167条第六号の「ブレード、ブーム、リンク機構、バケット、ワイヤロープその他作業装置の異常の有無」です。条文に「排土板」という語はなく、「ブレード」がそれにあたります。チルト・アングル機構やリッパも同じ号に含めて記録します。
- Q. 履帯の点検はどの号ですか
- 第三号の「起動輪、遊動輪、上下転輪、履帯、タイヤ、ホイールベアリングその他走行装置の異常の有無」です。スプロケット、アイドラ、上下ローラ、シュー、リンク、履帯の張りがすべてこの号に含まれます。
- Q. ブルドーザの運転にはどんな資格が要りますか
- 機体重量3トン以上は車両系建設機械(整地・運搬・積込み用及び掘削用)運転技能講習が必要です(安衛令20条12号)。3トン未満は特別教育です(安衛則36条9号)。ブルドーザは3トンを超えるものがほとんどです。
- Q. 月例の検査項目は何項目ですか
- 実質3項目です。安衛則168条は4つの号を挙げていますが、第四号は特定解体用機械に限られるためブルドーザは対象外になります。ワイヤ式のリッパやウインチがある場合、第二号のワイヤロープの損傷は重要な項目になります。
- Q. 作業開始前点検は何を見ますか
- 法定の点検事項は安衛則170条の「ブレーキ及びクラッチの機能」の2つだけです。実務では油脂類の漏れ、履帯の張り、ブレードの取付け、後進警報の作動なども確認しますが、それらは社内基準です。
- Q. トレーラで運ぶときの措置は点検表に書きますか
- 分けることをおすすめします。移送時の措置(道板の使用、盛土の使用、転倒防止など)は点検・検査とは別の規定で、検査事項ではありません。点検表に混ぜると、どれが法定の検査事項か説明できなくなります。
- Q. 月例は社内で実施してもよいですか
- できます。月例の定期自主検査に資格要件はなく、事業者の責任で実施します。有資格者または検査業者が必要なのは年次の特定自主検査だけです。ただし月例も記録6項目の3年保存が必要です。
- Q. 下部走行体の記録はどう残すとよいですか
- 良否だけでなく、摩耗量や測定値を書ける欄を設けてください。スプロケット・アイドラ・ローラ・シューは交換費用が大きく、更新の計画に直結します。数値で残しておくと、記録がそのまま予算計画の材料になります。
- Q. 湿地ブルも同じ扱いですか
- 同じです。湿地仕様であっても別表第七第一号の整地・運搬・積込み用機械であることに変わりはなく、適用される条文も同じです。幅の広いシューは泥が詰まりやすいので、第三号の走行装置は泥を落としてから見ると割れや摩耗を見落としにくくなります。
- Q. 2026年から年次の検査は変わりましたか
- 2026年1月1日から、特定自主検査は厚生労働大臣の定める基準に従って行うことになりました。車両系建設機械は車両系建設機械特定自主検査基準(令和7年厚生労働省告示第320号)が基準です。検査事項の9項目(安衛則167条)は変わっていません。
- Q. ブルドーザにヘッドガードは必要ですか
- 岩石の落下などのおそれがある場所で使うときは、堅固なヘッドガードを備えることが定められています(安衛則153条)。この条文はブル・ドーザーを名指ししています。年次の第九号でヘッドガードの状態を見ておくと、現場が変わったときにも説明できます。
この記事で紹介した無料テンプレート
あわせて読みたい記事
本記事は一般的な情報の整理であり、法令への適合を保証するものではありません。個別の義務内容は所管行政庁または専門家にご確認ください。記事の内容は2026-10-03時点の情報です。