ミニショベルの点検表|3トン未満でも特定自主検査は必要です
ミニショベルは機体重量3トン未満なので、運転は特別教育で足ります。技能講習が要らないぶん「小型だから検査も要らない」と受け取られがちですが、特定自主検査の条文に機体重量による除外はありません。
資格が機体重量で分かれるのは就業制限(労働安全衛生法61条)の話で、定期自主検査は別の条文(同45条)です。根拠が違うので、片方で軽くなってももう片方は軽くなりません。この記事では、その分かれ方を条文で示したうえで、ミニショベルの点検表に何を載せるかを整理します。
この記事の内容(8項目)
- 資格は分かれるが、検査は分かれない
- ミニショベルはどの区分か
- アタッチメントを替えると区分が変わることがあります
- 車両系建設機械の技能講習は区分ごとに分かれます
- 点検表に載せる項目
- 年次(特定自主検査)| 167条の9項目
- 月例は実質3項目、作業開始前は2項目
- ミニショベルで実際に問題になること
- 1. 台数が多く、期限がばらける
- 2. レンタルと自社機が混在する
- 3. ゴムクローラの摩耗が記録に残らない
- 4. 「小型だから」で作業開始前が省略される
- ミニショベルの点検にかかわる最近の動き(2026年10月時点)
- ミニショベルの点検に出てくる用語
- ミニショベルの点検と一緒に押さえておきたいこと
- 年次の検査者の資格は大型と共通
- ナンバーを付けた機体と車検の点検
- 検査標章も事業者が貼る
- よくある質問
資格は分かれるが、検査は分かれない
まず、機体重量3トンで何が変わって何が変わらないかを整理します。
| 機体重量3トン未満 (ミニショベル) | 機体重量3トン以上 | 根拠 | |
|---|---|---|---|
| 運転の資格 | 特別教育 | 技能講習 | 安衛則36条9号/安衛令20条12号 |
| 特定自主検査(年次) | どちらも必要(一年以内ごとに一回) | 安衛則167条・169条の2 | |
| 定期自主検査(月例) | どちらも必要(一月以内ごとに一回) | 安衛則168条 | |
| 作業開始前点検 | どちらも必要 | 安衛則170条 | |
| 記録の保存 | 年次・月例どちらも3年 | 安衛則169条 | |
よくある誤解
3トン未満は特別教育で乗れるのだから、検査も簡易でよい条文上の整理
就業制限(安衛法61条)と定期自主検査(同45条)は別の条文。167条に機体重量による除外は無い安衛令20条12号が就業制限としているのは「機体重量が三トン以上の別表第七第一号、第二号、第三号又は第六号に掲げる建設機械」の運転です。3トン未満は安衛則36条9号の特別教育に回ります。一方、安衛則167条は「車両系建設機械については、一年以内ごとに一回」と書いているだけで、重量の条件がありません。
ミニショベルはどの区分か
ミニショベルは、労働安全衛生法施行令別表第七第二号(掘削用機械)にあたります。第二号にはパワー・ショベル、ドラグ・ショベル(一般にバックホーと呼ばれる形)などが並んでおり、大型の油圧ショベルと同じ区分です。
| 別表第七の区分 | 主な機械 | ミニショベル |
|---|---|---|
| 第一号 整地・運搬・積込み用機械 | ブル・ドーザー、トラクター・ショベル | 該当しない |
| 第二号 掘削用機械 | パワー・ショベル、ドラグ・ショベル、ドラグライン、クラムシェル | これ |
| 第三号 基礎工事用機械 | くい打機、アース・オーガー | 該当しない |
| 第四号 締固め用機械 | ローラー | 該当しない |
| 第五号 コンクリート打設用機械 | コンクリートポンプ車 | 該当しない |
| 第六号 解体用機械 | ブレーカ、これに類する機械 | ブレーカを付けたとき |
アタッチメントを替えると区分が変わることがあります
ミニショベルにブレーカを取り付けると、別表第七第六号の解体用機械(ブレーカ)として扱われることになります。運転の資格は、機体重量3トン以上なら車両系建設機械(解体用)の技能講習、3トン未満なら小型車両系建設機械(解体用)の特別教育で、掘削用の教育とは別に定められています(2013年7月1日施行)。アタッチメントを頻繁に替える事業場では、どの区分の教育を受けさせているかを確認しておくと安心です。
車両系建設機械の技能講習は区分ごとに分かれます
「車両系建設機械の技能講習を持っているから何でも乗れる」わけではありません。整地・運搬・積込み用及び掘削用/基礎工事用/解体用で分かれています。持込機械等使用届の資格欄でも、この区分の対応が見られます。
点検表に載せる項目
条文の号立てをそのまま検査事項にするのが最も確実です。ミニショベル固有の言い換えは備考に書きます。
年次(特定自主検査)| 167条の9項目
| 号 | 検査事項(条文のまま) | ミニショベルで見る箇所 |
|---|---|---|
| 一 | 圧縮圧力、弁すき間その他原動機の異常の有無 | エンジン |
| 二 | クラッチ、トランスミッション、プロペラシャフト、デファレンシャルその他動力伝達装置 | 走行モーター、減速機 |
| 三 | 起動輪、遊動輪、上下転輪、履帯、タイヤ、ホイールベアリングその他走行装置 | ゴムクローラの切れ・張り |
| 四 | かじ取り車輪の左右の回転角度、ナックル、ロッド、アームその他操縦装置 | 操作レバー、パイロット系 |
| 五 | 制動能力、ブレーキドラム、ブレーキシューその他ブレーキ | 走行・旋回ブレーキ |
| 六 | ブレード、ブーム、リンク機構、バケット、ワイヤロープその他作業装置 | ブーム、アーム、バケット爪、排土板 |
| 七 | 油圧ポンプ、油圧モーター、シリンダー、安全弁その他油圧装置 | シリンダーの漏れ、ホース |
| 八 | 電圧、電流その他電気系統 | バッテリー、配線 |
| 九 | 車体、操作装置、ヘッドガード、バックストッパー、昇降装置、ロック装置、警報装置、方向指示器、灯火装置及び計器 | キャノピー/キャブ、警報ブザー |
年次の検査そのものは検査業者か有資格者が、2026年1月1日から適用された車両系建設機械特定自主検査基準(令和7年厚生労働省告示第320号)に沿って行います。自社の点検表では、この9項目は「検査を受けた日・検査者・標章の貼付」を残す欄として持っておくと扱いやすくなります。
月例は実質3項目、作業開始前は2項目
月例(168条)は①ブレーキ、クラッチ、操作装置及び作業装置②ワイヤロープ及びチェーンの損傷③バケット、ジッパー等の損傷の3つです。第四号は特定解体用機械(ブーム及びアームの長さの合計が12メートル以上の解体用機械)限定なのでミニショベルは対象外です。作業開始前(170条)はブレーキ及びクラッチの機能の2つだけです。
ミニショベルで実際に問題になること
1. 台数が多く、期限がばらける
ミニショベルは1台あたりが小さいぶん保有台数が増えがちです。5台10台と増えると、購入時期の違いで年次の期限がばらけ、どれが今月なのかが分からなくなるのが典型的な詰まり方です。台帳側で機種区分と前回実施日を持ち、次回期限を計算する形にしておくと見通しが立ちます。
2. レンタルと自社機が混在する
繁忙期だけレンタルで補うことが多く、自社機と借用機が現場に並びます。借用機の月例を誰がやるかはレンタル建機の点検義務は誰が負うかで整理しています。台帳に保有区分の列を足しておくと混ざりません。
3. ゴムクローラの摩耗が記録に残らない
条文の第三号は「履帯」を含みます。ゴムクローラの切れ・芯金の露出・張り具合は、検査事項としてそのまま該当します。交換の判断材料になるので、良否だけでなく残り溝や状態を書ける欄を作ると、後から更新の計画が立てられます。
4. 「小型だから」で作業開始前が省略される
法定の作業開始前点検は2項目だけですが、実施しなくてよいわけではありません。項目が少ないぶん、現場に掲示して確実に回すほうが向いています。
関連:大型機も含めた検査事項は車両系建設機械の定期自主検査、油圧ショベル全般は油圧ショベル(ユンボ)点検表の作り方で扱っています。条文はe-Gov法令検索(労働安全衛生規則)で確認できます。
ミニショベルの点検にかかわる最近の動き(2026年10月時点)
ミニショベルの点検の条文(167条〜170条)そのものは変わっていませんが、年次の特定自主検査のやり方は2026年1月から告示の基準に従うことになりました。日付順に並べます。
| 時期 | できごと | 根拠 |
|---|---|---|
| 2023年3月31日 | 車両系建設機械の定期自主検査指針(167条の自主検査に係るもの)が改正される | 基発1226第2号に記載 |
| 2025年5月14日 | 改正労働安全衛生法(令和7年法律第33号)が公布。特定自主検査は厚生労働大臣の定める基準に従って行うこととする45条3項が新設される | 安衛法45条3項 |
| 2025年12月24日 | 車両系建設機械特定自主検査基準(令和7年厚生労働省告示第320号)が告示される | 基発1226第2号 |
| 2026年1月1日 | 告示第320号が適用され、車両系建設機械の定期自主検査指針(167条関係)は廃止。基準に違反した検査業者への措置も可能になる | 基発1226第2号/改正法の概要 |
| 2026年4月1日 | 注文者・元方事業者の措置の対象が一人親方などを含む作業従事者に広がり、建設機械などの貸与者は個人事業者等に貸す場合にも措置が必要になる | 改正安衛法/安衛令10条3号 |
| 2026年5月27日 | 令和7年の労働災害の確定値が公表。建設業の死亡者は214人、全産業のはさまれ・巻き込まれによる死亡は117人 | 厚生労働省 |
ポイントはここです。ミニショベルを一人親方に貸す、一人親方が乗る現場で使う、という場面も2026年4月から法令の措置の対象に入りました。台帳に「誰が使う機体か」の列があると、貸し出しの前に点検の状況を確かめやすくなります。
出典:高所作業車特定自主検査基準等の制定等について(基発1226第2号)、厚生労働省 労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律の概要、厚生労働省 令和7年の労働災害発生状況、e-Gov法令検索(労働安全衛生法施行令)。確認日は2026年10月3日です。個別の扱いは所轄の労働基準監督署にご確認ください。
ミニショベルの点検に出てくる用語
ミニショベルの点検では、メーカーの呼び名と条文の言葉が食い違うことがあります。点検表の項目名をそろえるときの参考にしてください。
| 用語 | 意味 | 出典 |
|---|---|---|
| ミニショベル | 機体重量3トン未満の油圧ショベルを指す呼び名。法令上の定義はない | なし |
| 車両系建設機械 | 別表第七に掲げる建設機械で、動力を用い、かつ、不特定の場所に自走できるもの | 安衛則94条の2第2号(定義)・安衛令別表第七 |
| 機体重量 | 資格の境目になる重さ。条文に計り方の定義は置かれていないので、メーカーの仕様書の値で確認する | 安衛令20条12号・安衛則36条9号 |
| 特別教育 | 事業者が行う安全衛生教育。3トン未満の運転に必要 | 安衛法59条3項・安衛則36条9号 |
| 技能講習 | 登録教習機関が行う講習。3トン以上の運転に必要 | 安衛法61条・安衛令20条12号 |
| 特定自主検査 | 167条の年次の自主検査。有資格者か検査業者が行う | 安衛則169条の2第1項 |
| 特定解体用機械 | ブーム及びアームの長さの合計が12メートル以上の解体用機械 | 安衛則171条の4 |
| 履帯 | クローラのこと。ゴムクローラもここに入る | 安衛則167条3号 |
ミニショベルの点検と一緒に押さえておきたいこと
ミニショベルの点検表は、条文の項目を写せばひとまず形になります。そのうえで、上位の解説ではあまり触れられていない点を3つ挙げます。
年次の検査者の資格は大型と共通
特定自主検査を自社で行う場合、検査者の資格は機械の区分ごとに定められています。安衛則169条の2第2項は、別表第七第一号・第二号・第六号の機械について同じ資格の定めを準用しており、ミニショベルも大型の油圧ショベルも、同じ区分の検査者が見ることになります。小型だから別の研修が要る、ということはありません。
ナンバーを付けた機体と車検の点検
道路運送車両法48条1項の適用を受ける車両系建設機械は、同項の点検を行った部分については167条の自主検査を行わなくてよいとされています(安衛則169条の2第6項)。免除されるのは点検をした部分だけで、ブームやバケットなどの作業装置は特定自主検査で見る必要があります。トラックで運ぶだけの機体なら、この扱いは関係しません。
検査標章も事業者が貼る
特定自主検査を行ったら、機体の見やすい箇所に検査標章をはり付けるのは事業者の義務です(安衛則169条の2第8項)。ミニショベルは機体が小さく、標章が泥で隠れやすいので、貼る位置を社内で決めておくと受入のときに確かめやすくなります。標章の見方は検査標章の見方と貼り方で扱っています。
よくある質問
- Q. 3トン未満のミニショベルにも特定自主検査は必要ですか
- 必要です。安衛則167条は「車両系建設機械については、一年以内ごとに一回」と定めており、機体重量による除外規定はありません。機体重量3トンで分かれるのは運転の資格(就業制限)であって、定期自主検査ではありません。
- Q. ミニショベルの運転にはどんな資格が要りますか
- 機体重量3トン未満であれば特別教育です(安衛則36条9号)。3トン以上になると就業制限がかかり、車両系建設機械(整地・運搬・積込み用及び掘削用)運転技能講習が必要です(安衛令20条12号)。
- Q. ミニショベルは別表第七のどの区分ですか
- 第二号(掘削用機械)にあたります。第二号にはパワー・ショベル、ドラグ・ショベルなどが並んでおり、大型の油圧ショベルと同じ区分です。したがって適用される条文も同じく安衛則167条以下になります。
- Q. ブレーカを付けると扱いが変わりますか
- 別表第七第六号の解体用機械(ブレーカ)として扱われます。運転には、3トン以上なら車両系建設機械(解体用)の技能講習、3トン未満なら小型車両系建設機械(解体用)の特別教育が必要で、掘削用とは別です。アタッチメントを頻繁に替える場合は、どの区分の教育を受けさせているかを確認してください。
- Q. 月例の検査項目は何項目ですか
- 実質3項目です。安衛則168条は4つの号を挙げていますが、第四号は特定解体用機械(ブーム及びアームの長さの合計が12メートル以上である解体用機械)に限られるため、ミニショベルは対象外になります。
- Q. 作業開始前点検は何を見ますか
- 法定の点検事項は安衛則170条の「ブレーキ及びクラッチの機能」の2つだけです。実務では燃料・油脂類、ゴムクローラの状態、アタッチメントの取付けなども確認しますが、それらは社内基準です。法定項目と区別できる形にしておくと説明しやすくなります。
- Q. ゴムクローラの摩耗は検査事項に入りますか
- 入ります。安衛則167条第三号に「履帯」が含まれています。良否だけでなく残り溝や芯金の露出などの状態を書ける欄を設けておくと、交換時期の判断材料として使えます。
- Q. 記録はどれくらい保存しますか
- 年次と月例の記録は3年間です(安衛則169条)。記録すべきは検査年月日、検査方法、検査箇所、検査の結果、検査を実施した者の氏名、補修等の措置を講じたときはその内容の6項目です。作業開始前点検に保存義務はありません。
- Q. 2026年から年次の検査は変わりましたか
- 2026年1月1日から、特定自主検査は厚生労働大臣の定める基準に従って行うことが義務になりました(安衛法45条3項)。車両系建設機械は令和7年厚生労働省告示第320号が基準です。検査事項の9項目(167条)は変わっていません。
- Q. 台数が多くて期限の管理ができません
- 台帳側に機種区分と前回実施日を持たせ、次回期限を計算する形にしてください。ミニショベルは台数が増えやすく、購入時期の違いで年次の期限がばらけます。機械ごとにファイルを開いて確認する運用は台数が増えると続きません。
- Q. 特定自主検査は誰が実施できますか
- 登録を受けた検査業者、または所定の資格を持つ事業内検査者です(安衛法45条2項・安衛則169条の2第2項)。機体重量が3トン未満であっても、この点は変わりません。検査後は事業者が検査標章を貼り付けます(安衛則169条の2第8項)。
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