ラフテレーンクレーンの点検|車両系建設機械ではありません
ラフテレーンクレーン(ラフター)は建設現場で建機と並んで使われますが、車両系建設機械ではありません。移動式クレーンとして、労働安全衛生規則ではなくクレーン等安全規則が適用されます。
この違いは点検表の中身に直結します。年次の検査に荷重試験が必須という点は、車両系建設機械にはない要求です。逆に「特定自主検査」「検査標章」は移動式クレーンには出てきません。代わりに移動式クレーン検査証と性能検査があります。この記事では境界を整理します。
この記事の内容(5項目)
適用される規則が違います
まず何が違うのかを並べます。根拠になる省令から違うので、用語も体系も別です。
| ラフテレーンクレーン (移動式クレーン) | 車両系建設機械 (バックホー等) | |
|---|---|---|
| 根拠 | クレーン等安全規則 | 労働安全衛生規則 |
| 年次 | 一年以内ごとに一回 荷重試験が必須(76条) | 一年以内ごとに一回 9項目(167条) |
| 月例 | 一月以内ごとに一回 4項目(77条) | 一月以内ごとに一回 実質3項目(168条) |
| 作業開始前 | 巻過防止装置、過負荷警報装置その他の警報装置、ブレーキ、クラッチ及びコントローラーの機能(78条) | ブレーキ及びクラッチの機能の2つ(170条) |
| 公的な検査 | 移動式クレーン検査証/性能検査(つり上げ荷重3t以上) | 特定自主検査/検査標章 |
| 記録 | どちらも3年保存 | |
移動式クレーン
検査証と性能検査がある。「特定自主検査」「検査標章」という制度は無い
車両系建設機械
検査証は無い。年次が特定自主検査で、事業者が検査標章を貼る
持込機械等使用届では欄が変わります
ラフターは検査証番号と有効期限を書きますが、車両系建設機械には検査証がありません。同じ様式でも、機械によって埋める欄が違います。書き方は持込機械等使用届の書き方で扱っています。
年次検査には荷重試験が必要です
クレーン則76条は、年次の自主検査において荷重試験を行わなければならないと定めています。これが車両系建設機械との最も大きな違いです。
事業者は、前二項の自主検査においては、荷重試験を行わなければならない。ただし、当該自主検査を行う日前二月以内に第八十一条第一項の規定に基づく荷重試験を行つた移動式クレーン又は当該自主検査を行う日後二月以内に移動式クレーン検査証の有効期間が満了する移動式クレーンについては、この限りでない。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 荷重試験の方法 | 定格荷重に相当する荷重の荷をつって、つり上げ・旋回・走行等の作動を定格速度により行う(76条4項) |
| 省略できる場合① | 自主検査を行う日前2か月以内に性能検査等の荷重試験を行った場合 |
| 省略できる場合② | 自主検査を行う日後2か月以内に検査証の有効期間が満了する場合 |
荷重試験は場所と荷が要るため、実施には段取りが必要です。性能検査の時期と重ならないように年間のスケジュールを組むと、二重の手間を避けられます。詳しくは検査の年間スケジュールの立て方で扱っています。
月例4項目と作業開始前
クレーン則77条の月例は4項目です。車両系建設機械の月例(実質3項目)とは中身が違います。
| 号 | 検査事項(条文のまま) |
|---|---|
| 一 | 巻過防止装置その他の安全装置、過負荷警報装置その他の警報装置、ブレーキ及びクラッチの異常の有無 |
| 二 | ワイヤロープ及びつりチェーンの損傷の有無 |
| 三 | フック、グラブバケット等のつり具の損傷の有無 |
| 四 | 配線、配電盤及びコントローラーの異常の有無 |
作業開始前の点検(78条)は「巻過防止装置、過負荷警報装置その他の警報装置、ブレーキ、クラッチ及びコントローラーの機能」です。車両系建設機械の2項目に比べて内容が具体的で、安全装置が中心になっています。
アウトリガーは条文に明示されていません
月例・作業開始前の条文にアウトリガーの語はありませんが、実務では張り出し状態・敷板・ジャッキの沈下を必ず確認します。社内項目として欄を設け、法定項目と区別して記録してください。
取り違えが起きやすい場面
1. 「特定自主検査」と言ってしまう
移動式クレーンの年次検査は特定自主検査ではありません。検査業者に依頼する点は似ていますが制度が別です。書類に「特定自主検査」と書くと、車両系建設機械の話と混ざります。
2. 検査標章を探してしまう
移動式クレーンには検査標章の制度がありません。有効性は移動式クレーン検査証で確認します。つり上げ荷重3トン以上のものが対象で、検査証には有効期間があり、性能検査を受けて更新します。
3. 0.5トン以上3トン未満の扱い
つり上げ荷重0.5トン以上3トン未満の移動式クレーンには定期自主検査の義務はありますが、検査証と性能検査はありません。「検査証が無いから検査も不要」という誤解が起きやすい範囲です。
4. 玉掛け用具を同じ点検表に入れる
ワイヤロープやスリングなどの玉掛け用具は、クレーン本体とは別の規定です。玉掛け用具に定期自主検査の条文はなく、作業開始前の点検が定められています。混ぜると周期も記録要件も合わなくなります。玉掛け用具の点検と廃棄基準で扱っています。
関連:クレーン点検表の作り方、車両系建設機械の定期自主検査。条文はe-Gov法令検索(クレーン等安全規則)で確認できます。
よくある質問
- Q. ラフテレーンクレーンは車両系建設機械ですか
- 違います。移動式クレーンとしてクレーン等安全規則が適用されます。車両系建設機械の安衛則167条以下ではなく、クレーン則76条(年次)・77条(月例)・78条(作業開始前)が根拠になります。
- Q. 年次検査に荷重試験は必須ですか
- 必須です(クレーン則76条3項)。定格荷重に相当する荷重の荷をつって、つり上げ・旋回・走行等の作動を定格速度により行います。ただし自主検査を行う日の前2か月以内に性能検査等の荷重試験を行った場合や、後2か月以内に検査証の有効期間が満了する場合は省略できます。
- Q. ラフターに特定自主検査はありますか
- ありません。特定自主検査は車両系建設機械・フォークリフト・高所作業車・不整地運搬車・動力プレスの制度です。移動式クレーンには移動式クレーン検査証と性能検査という別の仕組みがあります。
- Q. 検査標章はどこに貼りますか
- 移動式クレーンには検査標章の制度がありません。有効性は移動式クレーン検査証で確認します。検査標章は車両系建設機械などの特定自主検査の制度です。
- Q. 月例の検査項目は何項目ですか
- 4項目です(クレーン則77条)。巻過防止装置その他の安全装置・過負荷警報装置その他の警報装置・ブレーキ及びクラッチ、ワイヤロープ及びつりチェーンの損傷、フックやグラブバケット等のつり具の損傷、配線・配電盤及びコントローラーの異常です。
- Q. 作業開始前は何を点検しますか
- 巻過防止装置、過負荷警報装置その他の警報装置、ブレーキ、クラッチ及びコントローラーの機能です(クレーン則78条)。車両系建設機械の2項目に比べて安全装置が中心の内容になっています。
- Q. アウトリガーの点検は法定項目ですか
- 月例・作業開始前の条文にアウトリガーの語はありません。実務では張り出し状態、敷板、ジャッキの沈下を必ず確認しますが、社内項目として法定項目と区別して記録してください。
- Q. つり上げ荷重3トン未満でも検査は必要ですか
- 0.5トン以上3トン未満の移動式クレーンには定期自主検査の義務がありますが、検査証と性能検査はありません。「検査証が無いから検査も不要」という誤解が起きやすい範囲なので注意してください。
- Q. 玉掛け用具は同じ点検表に入れてよいですか
- 分けることをおすすめします。玉掛け用具には定期自主検査の条文がなく、作業開始前の点検が定められています。周期も記録の要件も違うため、混ぜると管理が合わなくなります。
- Q. 記録はどれくらい保存しますか
- 3年間です。移動式クレーンの定期自主検査についても記録と保存が求められます。車両系建設機械と保存期間は同じですが、根拠になる条文はクレーン等安全規則側になります。
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本記事は一般的な情報の整理であり、法令への適合を保証するものではありません。個別の義務内容は所管行政庁または専門家にご確認ください。記事の内容は2026-08-20時点の情報です。