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ベルトスリング・ワイヤロープの点検|使用前点検と廃棄基準、使用期限の考え方

公開 2026-08-14更新 2026-10-03 執筆 点検板 編集部
点検板 編集部法令の原文と省庁の資料で確認:2026年10月3日

玉掛け用具は、切れた瞬間に吊り荷が落ちます。だからクレーン等安全規則は「その日の作業を開始する前に点検すること」と定め、さらに使ってはいけない状態(廃棄基準)を数値で明示しています。

ところが現場では「なんとなく大丈夫そう」で使い続けられ、点検の記録も残っていないことが少なくありません。この記事では、点検すべき箇所と法令上の廃棄基準、判断に迷わないための具体的な見方、そして記録を続けるための台帳の作り方をまとめます。

玉掛用具(ベルトスリング・ワイヤロープ)点検表(Excel・無料)ベルトスリング・ワイヤロープ・つりチェーン・シャックルを1枚の台帳で点検する様式。クレーン則215〜219条の廃棄基準(素線切れ10%・径の減少7%・チェーンの伸び5%)を判定欄に落とし込み、繊維スリングの使用開始年月から使用期限を追えるようにしています。
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この記事の内容(9項目)

玉掛け用具の点検義務|「その日の作業開始前」

クレーン等安全規則220条1項は、クレーン・移動式クレーン・デリックの玉掛用具について、玉掛けの作業を行うときはその日の作業を開始する前に異常の有無を点検することを事業者に求めています。対象はワイヤロープ、つりチェーン、繊維ロープ、繊維ベルト(ベルトスリング)、フック、シャックル、リングなどの金具です。

毎日作業開始前点検
(クレーン則220条)
10%素線切れの廃棄基準
(1よりの間)
7%直径減少の廃棄基準
(公称径に対して)
5%つりチェーンの
伸びの限度

点検で異常を認めたときは、直ちに補修しなければならないと定められています(同条2項)。補修できない状態で、215〜218条の使用禁止の基準に当たるものは、玉掛用具として使えません。「今日だけ」「この1回だけ」が事故につながる領域なので、判断は数値と条文の言葉で機械的に行うのが確実です。

誰が点検するか

資格要件はありません。実際に玉掛けを行う作業者が、使う前に自分で確認するのが基本です(玉掛けの業務そのものには、つり上げ荷重1t以上のクレーン等で技能講習の修了など、1t未満で特別教育が必要です。安衛令20条16号、クレーン則221条・222条)。ただし判断がぶれないよう、廃棄基準を書いた紙を用具の保管場所に貼っておくことを強くおすすめします。

ワイヤロープの廃棄基準|4つの使用禁止の条件

ワイヤロープは、次のいずれかに該当したら玉掛用具として使用してはいけません(クレーン則215条)。数値で決まっているのは素線切れと直径の減少の2つで、キンクと形くずれ・腐食は状態で判断します。

状態使用禁止になる基準現場での見方
素線切れ1よりの間で、素線(フィラ線を除く)の数の10%以上が切断6×24なら1よりに144本 → 15本以上で廃棄。ただし局部に集中しているものは早めに交換
直径の減少公称径の7%を超えるものφ12mmなら11.16mm未満で廃棄。ノギスで外接円を測る
キンクキンクしたもの(全て)ねじれて折れ曲がった跡。程度によらず廃棄
形くずれ・腐食著しい形くずれ・腐食があるものかご状のふくらみ、素線の飛び出し、赤錆の進行

「1より」とはどこのことか

ストランド(子縄)がロープの周りを1周する長さのことです。条文に長さの定めはなく、ロープの構成で変わります。一般にはロープ直径の6〜7倍程度とされることが多く、φ12mmなら約80mmの範囲を見ることになります。正確な長さは手元のロープのメーカー資料で確かめ、その範囲内で素線切れを数えます。

測る道具を用具置き場に置く

直径の減少はノギスがないと判定できません。ノギス1本を玉掛け用具の保管場所に置いておくだけで、点検の質が変わります。公称径ごとの限度値(φ12なら11.16、φ16なら14.88…)を書いた札を一緒に下げておくと、計算不要で判定できます。

ベルトスリング・チェーン・金具の見方

ベルトスリング(繊維ベルト)

クレーン則218条で使用禁止とされているのは、繊維ロープ・繊維ベルトのうちストランドが切断しているものと、著しい損傷又は腐食があるものです。ベルトスリングで「著しい損傷」にあたるかを見るときは、次の3つの箇所を見るのが一般的です。

  • 縫製部|糸が切れていないか。ここが抜けると一気に外れます
  • 縁部(みみ)|角当てを使わずに角物を吊ると、ここから切れます
  • 使用限界表示|中の色付き糸などの表示が露出したら廃棄、とメーカーが定めている製品が多くあります。条文の言葉ではないので、取扱説明書で確かめます

ベルトスリングは表面がきれいでも、紫外線や薬品で強度が落ちます。屋外に出しっぱなしにしないのが寿命を延ばす最大のコツです。

つりチェーン

伸びが製造時の長さの5%を超えるもの、リンクの断面直径の減少が製造時の10%を超えるもの、亀裂があるものは使用禁止です(クレーン則216条)。伸びは新品時の全長を控えておかないと判定できないため、導入時に全長を台帳に記録しておく必要があります。

フック・シャックル・リング

変形しているもの、亀裂があるものは使用禁止です(クレーン則217条)。フックは口の開き(開口部の広がり)を見ます。シャックルはピンのねじ部の変形と、本体の摩耗を確認します。

玉掛け用具 点検台帳(Excel・無料)

用具ごとに規格・使用荷重・購入年月を登録し、素線切れ/径の減少/キンク/腐食/端末金具の状態を点検日ごとに記録できます。判定は「使用可/要注意/使用禁止(廃棄)」から選ぶだけです。

玉掛け用具 点検表を見る

記録を続ける仕組み|色別管理と台帳

毎日の使用前点検には記録の保存義務がありません。そのため「やっているが残っていない」状態になりがちです。実務で機能している方法を2つ紹介します。

①月例の色別管理(現場でよく使われている方法)

月ごとに色を決め、点検に合格した用具にその色のテープやタイラップを巻く方法です。

色別管理の運用イメージ
1月赤
2月青
3月黄
今月緑
※これ以外は使用禁止
翌月白
「今月の色が付いていない用具は使わない」だけのルールなので、誰でも判断できる

色を見れば「今月点検済みか」が一目で分かるため、現場の判断が速くなります。ただし色を巻いた記録が残らないので、次の台帳と併用します。

②用具ごとの台帳

管理番号を打った用具ごとに、点検日と判定を記録します。台帳があると次の3つができるようになります。

  • 廃棄した用具の履歴が残る|「あのスリングいつ捨てたっけ」がなくなる
  • 寿命の傾向が見える|「この現場ではベルトが1年半でダメになる」が分かり、購入計画が立つ
  • 事故時に説明できる|点検していた事実を書面で示せる

台帳の運用は月1回まとめてで十分です。毎日の点検は色別管理で回し、月例で台帳に記録する。この二段構えにすると続けやすくなります。

玉掛用具(ベルトスリング・ワイヤロープ)点検表(Excel・無料)ベルトスリング・ワイヤロープ・つりチェーン・シャックルを1枚の台帳で点検する様式。クレーン則215〜219条の廃棄基準(素線切れ10%・径の減少7%・チェーンの伸び5%)を判定欄に落とし込み、繊維スリングの使用開始年月から使用期限を追えるようにしています。
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廃棄するときの注意

判定が「使用禁止」になった用具で、実務上いちばん危険なのは捨てずに置いておくことです。「あとで捨てよう」と用具置き場に戻すと、必ず誰かが使います。

  • その場で切断する|ワイヤロープは切る、ベルトスリングはハサミを入れる。使えない状態にしてから廃棄場所へ
  • 廃棄日を台帳に記入する|「いつ・なぜ捨てたか」を残す
  • 予備を切らさない|代替品がないと「今日だけ」が発生します。よく使うサイズは常に予備を1本持つ

クレーン本体の点検(作業開始前・月例・年次)については特定自主検査と定期自主検査の違いで解説しています。玉掛け用具とクレーン本体は別の点検なので、両方の記録が必要です。用具や機体が増えて期限を追えなくなってきたら、期限管理の記事もあわせてご覧ください。

ベルトスリング・ワイヤロープの点検表にかかわる最近の動き(2026年10月時点)

ベルトスリング・ワイヤロープの点検表に書く項目のもとになるクレーン則213〜220条(安全係数・使用禁止の基準・作業開始前の点検)は、この数年で本文が変わっていません。動いているのは、玉掛けの作業場所での立入禁止と、教育の対象です。

日付何が変わったか根拠
2023年〜2026年10月クレーン則213〜220条の本文に改正なし。2027年4月施行予定の版でも同じ。点検表の判定基準(10%・7%・5%など)はそのまま使えるe-Gov法令検索の改正履歴で各版を比較
2025年4月1日つり荷の下への立入禁止(クレーンは29条、移動式クレーンは74条の2)の対象が「労働者」から「その作業場で作業に従事する者」に広がり、表示その他の方法で禁止する形になった令和6年厚生労働省令第80号、令和6年4月30日基発0430第4号
2025年5月14日改正労働安全衛生法が公布された(令和7年法律第33号)厚生労働省「改正法の概要」
2026年4月1日同じ条文の言葉が「作業従事者」に改められた令和8年厚生労働省令第3号
2026年5月27日令和7年の労働災害の確定値が公表された。死亡者は全産業で700人(過去最少)、建設業214人厚生労働省「令和7年の労働災害発生状況」
2027年4月1日(施行予定)作業従事役員等が、労働者と同じ場所でつり上げ荷重1t未満の玉掛けの業務に就くときは、特別教育を受けることになる(改正後のクレーン則222条2項)クレーン等安全規則222条(e-Gov法令検索の未施行の改正)

出典:e-Gov法令検索(クレーン等安全規則)/基発0430第4号/厚生労働省「労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律の概要」/厚生労働省「令和7年の労働災害発生状況」

確認日は2026年10月3日です。自社の用具や作業にあてはめるときは、所轄の労働基準監督署に確認してください。

ベルトスリング・ワイヤロープの点検表に出てくる用語

ベルトスリング・ワイヤロープの点検表には、条文の言葉と現場の言葉が混ざります。条文で定義があるものと、ないものを分けておきます。

用語意味出典
玉掛用具クレーン等の玉掛けに使うワイヤロープ、つりチェーン、繊維ロープ、繊維ベルト、フック、シャックル、リング等の金具クレーン則220条1項
安全係数切断荷重の値を、その用具にかかる荷重の最大の値で割った値。ワイヤロープは6以上、フック・シャックルは5以上、つりチェーンは4か5以上クレーン則213条・213条の2・214条
1より法令上の定義はない。ストランドがロープの周りを1周する長さを指すクレーン則215条1号(語のみ)
素線・フィラ線法令上の定義はない。素線切れを数えるときはフィラ線(すき間を埋める細い線)を除くクレーン則215条1号
公称径法令上の定義はない。ロープの呼びの直径。直径の減少はこれに対して7%を超えるかで見るクレーン則215条2号
キンク法令上の定義はない。ロープがねじれて折れ曲がった状態クレーン則215条3号
ストランド法令上の定義はない。何本かの素線をより合わせた子縄。繊維ロープ・繊維ベルトは切断で使用禁止クレーン則218条1号
使用荷重・使用限界表示法令上の定義はない。メーカーが製品に表示する目安各製品の取扱説明書

ベルトスリング・ワイヤロープの点検表と一緒に押さえておきたいこと

ベルトスリング・ワイヤロープの点検表は、使用禁止の基準を見るだけでも回ります。そのうえで次の3つを押さえておくと、選ぶ段階と現場のルールづくりで迷いにくくなります。

点検色は法令で決まっていない

「玉掛け 点検色」で調べる人が多いのですが、月ごと・年ごとの点検色を定めた条文はありません。色は会社や元請、業界団体が決めて運用しているものです。現場に入るときは、元請の色のルールに合わせ、自社の色の表を点検表と同じ場所に貼っておくと迷いません。

選ぶときは安全係数と使用荷重を見る

クレーン則は、ワイヤロープの安全係数を6以上(213条)、フック・シャックルを5以上(214条)、つりチェーンを条件により4以上か5以上(213条の2)と定めています。点検で異常が無くても、つり荷の重さに対して能力が足りない用具は使えません。点検表に用具ごとの使用荷重の欄を作っておくと、取り違えを防げます。

両端の金具とアイの作り方も条文で決まっている

エンドレスでないワイヤロープとつりチェーンは、両端にフック・シャックル・リング又はアイが必要です(219条1項)。アイはアイスプライスか圧縮どめ、又は同等以上の強さの方法で作り、アイスプライスは全ストランドを3回以上編み込むなどの決まりがあります(同条2項)。自作のアイや端末の加工が混ざっている現場では、点検表に「端末の状態」の欄を足しておくと確認が漏れません。

点検板 編集部がまとめました様式を無料で配り、使い方と法令の決まりを記事にまとめています。法令の数字は e-Gov の原文で確かめてから載せています。

よくある質問

Q. 玉掛け用具の点検記録に保存義務はありますか?
使用前点検(クレーン則220条)の記録には法令上の保存義務がありません。ただし実施の証明と寿命管理のため、月例で台帳に記録することを強くおすすめします。クレーン本体の定期自主検査(月例・年次)の記録は3年保存が義務です(クレーン則38条。作業開始前点検は除かれています)。
Q. 素線切れが基準未満なら使い続けてよいですか?
法令上の使用禁止基準には達していませんが、素線切れは進行します。基準の半分(5%程度)に達した時点で交換の手配を始めるのが実務の安全側の運用です。特に切れが1箇所に集中している場合は早めに交換してください。
Q. ベルトスリングの寿命は何年ですか?
法定の使用期限はありません。使用頻度・角物の吊り・屋外保管の有無で大きく変わり、1年もたない場合もあります。保管条件ごとの使用期間の目安を示しているメーカーもありますが、これは法令の基準ではなくメーカーの推奨です。手元の製品の取扱説明書を確認したうえで、最終的にはクレーン則218条の基準(ストランドの切断、著しい損傷又は腐食)と、メーカーの廃棄基準(縫製部のほつれ・使用限界表示の露出など)で判断してください。
Q. レンタルの玉掛け用具でも点検は必要ですか?
必要です。使用前点検はその日に使う事業者の義務です。借りた当日、最初に使う前に必ず確認してください。異常があればそのまま返却し、レンタル会社に連絡します。
玉掛用具(ベルトスリング・ワイヤロープ)点検表(Excel・無料)ベルトスリング・ワイヤロープ・つりチェーン・シャックルを1枚の台帳で点検する様式。クレーン則215〜219条の廃棄基準(素線切れ10%・径の減少7%・チェーンの伸び5%)を判定欄に落とし込み、繊維スリングの使用開始年月から使用期限を追えるようにしています。
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本記事は一般的な情報の整理であり、法令への適合を保証するものではありません。個別の義務内容は所管行政庁または専門家にご確認ください。記事の内容は2026-10-03時点の情報です。