電気設備

水中ポンプの点検|法定検査はありません。電気だけが条文です

公開 2026-10-01 執筆 点検板 編集部

「水中ポンプの点検表」で調べると、出てくるのは河川ポンプ設備の標準要領や、汎用の設備点検表です。前者は河川管理施設の大型ポンプが対象で、現場の釜場に沈めている0.75kWのポンプの話ではありません。

建設現場の仮設排水に使う水中ポンプには、法令で定められた定期自主検査はありません。ただし「何もしなくていい」わけでもなく、電気については、その日の使用を開始する前に見ることが条文で決まっています。この記事では、そこだけを整理します。

水中ポンプ 点検表(Excel・無料)建設現場の仮設排水に使う水中ポンプの始業前点検と月例の状態確認を1枚にまとめた様式。法定の定期自主検査はありません。水で湿潤した場所で使う可搬式なので、安衛則333条の漏電しゃ断装置と352条の使用前点検が中心になります。発電機・仮設分電盤とセットで使えます。
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この記事の内容(7項目)

水中ポンプに法定の定期自主検査はありません

まず線引きから確認します。

河川ポンプ設備現場の水中ポンプ(仮設排水)
置き場所排水機場・樋門などの河川管理施設釜場・ピット・掘削底
点検の根拠国交省「河川ポンプ設備点検・整備標準要領(案)」法定の定期自主検査は無し
実務でかかるもの上記+施設管理者の規程安衛則333条・337条・352条(電気)
規模数十〜数百kW0.4〜2.2kW程度が多い

水中ポンプは、労働安全衛生法施行令の別表第七(建設機械)にも、令15条の定期自主検査の対象にも入っていません。ここを取り違えたまま「ポンプは年1回の法定点検がある」と社内に説明すると、必要のない費用が乗ります。

一般には、レンタル会社が出庫のたびに絶縁を測って整備し、現場では始業前の目視と作動確認だけを行う運用が多くあります。自社保有の機体を長く回している場合は、これに月1回の絶縁抵抗の測定を足しておくと、漏電の前に気づけます。

水中ポンプは、漏電しゃ断装置の対象にそのまま当たります

安衛則333条1項は、感電防止用漏電しや断装置の接続を求める対象を2つ挙げています。

対象条文の書き方
①対地電圧150ボルトを超える移動式若しくは可搬式のもの
②水等導電性の高い液体によつて湿潤している場所その他鉄板上・鉄骨上・定盤上等の導電性の高い場所において使用する移動式若しくは可搬式のもの

ポイントはここです。水中ポンプは②にそのまま当たります。水に沈めて使うので、対地電圧が100Vであっても対象です。「100Vだから漏電しゃ断装置は要らない」という理解は、①だけを見た読み方です。

接続することが困難なときは、同条2項の方法で金属製外わく等を接地します。ただし現場の水中ポンプで「接続が困難」という状況はほとんどありません。分電盤側に漏電しゃ断器が入っていることを、始業前に確かめてください。

テストボタンを押して、実際に落ちるまで見ます

安衛則352条が求めているのは「感電防止用漏電しや断装置」の作動状態です。装置が付いているかどうかではありません。テストボタンを押して落ちるかまで見ます。落ちない回路では、その日は使いません。

仮設分電盤側の点検については仮設分電盤の点検で扱っています。ポンプ単体で見ても、盤が落ちなければ意味がありません。盤とポンプはセットで見てください。

水中ポンプの点検で、条文が決めている3つ

安衛則352条の表(電気機械器具等の使用前点検等)に載っている項目です。その日の使用を開始する前に見ることになっています。

見るもの点検事項根拠
感電防止用漏電しや断装置作動状態安衛則352条・333条1項
接地をした電動機械器具接地線の切断、接地極の浮上がり等の異常の有無安衛則352条・333条2項
移動電線と接続器具被覆又は外装の損傷の有無安衛則352条・337条

ポイントはここです。352条は「異常を認めたときは、直ちに、補修し、又は取り換えなければならない」と書いています。「今日は使うから、明日直す」ができない条文の書き方です。ケーブルの被覆に破れを見つけたら、その場で交換するか、そのポンプを止めます。

水中ポンプの移動電線は、水の中と外を行き来します

水中ポンプのケーブルは、水に浸かった状態で床を這い、重機や車両の通り道を横切ります。この経路が損傷の原因になります。

  • 踏まれる位置を通っていないか(保護管・スロープを入れる)
  • 鋭利な角・鉄筋の切り口の上を通っていないか
  • 接続部が水に浸かっていないか(接続部は水面より上に出す)
  • プラグ・コネクタに水の侵入、変色、焼けの跡がないか

接続部の浸水は、条文に名指しはありませんが、現場でいちばん多い漏電の原因です。点検表の欄に入れておいてください。

水中ポンプ 点検表(Excel・無料)建設現場の仮設排水に使う水中ポンプの始業前点検と月例の状態確認を1枚にまとめた様式。法定の定期自主検査はありません。水で湿潤した場所で使う可搬式なので、安衛則333条の漏電しゃ断装置と352条の使用前点検が中心になります。発電機・仮設分電盤とセットで使えます。
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水中ポンプをケーブルで吊らないでください

条文の話ではありませんが、水中ポンプの故障で最も多い原因なので書いておきます。

引き上げるときにケーブルを引っ張ると、本体のケーブル引込部(グランド)に力がかかります。そこがゆるむと、内部に水が入ります。モーターまで水が回れば、絶縁が落ちて漏電します。

やり方起きること
ケーブルで吊る引込部がゆるむ → 浸水 → 絶縁低下 → 漏電
吊りロープ・チェーンで吊る引込部に力がかからない

点検表には「吊り具(ロープ・チェーン)に損傷がなく、引き上げられる状態か」の欄を入れておいてください。吊り具が無いポンプは、結局ケーブルで吊られます。

空運転も、同じくらい多い原因です

水位が下がって吸込口が空気を吸うと、冷却が効かなくなります。メカニカルシールとモーターを傷めます。

フロートスイッチを使っている場合は、設定水位で正しく入切するかを点検の欄に入れてください。フロートが土砂やごみに引っかかって動かないことがあります。手動運転の現場では、離れるときに止める運用を決めておいてください。

水中ポンプは、月1回の絶縁抵抗で異常の前に気づけます

法定の定期検査はありませんが、数値で残せるものを月1回だけ測っておくと、前月との差で判断できます。

測るもの器具見方
絶縁抵抗絶縁抵抗計(メガー)数値そのものより前月からの低下傾向
接地抵抗接地抵抗計アース棒の打込みが浅いと上がる
メカニカルシール部のオイル目視乳化していれば水が入っている
稼働時間アワーメーター/記録消耗部品の交換時期の目安

絶縁抵抗に、仮設の水中ポンプ向けの一律の数値は法令にありません。参考として、電気設備に関する技術基準では、使用電圧300V以下で対地電圧150V以下の低圧電路の絶縁抵抗は0.1MΩ以上とされています。

ポイントは、合否より傾向です。先月8MΩあったものが今月2MΩなら、基準は満たしていても中で何かが起きています。測定値を数字で残すからこそ、比べられます。「良」だけの記録では比べられません。

メカニカルシール部のオイルが乳化していたら

白く濁っていれば、シールから水が入っています。そのまま回すとモーターまで水が回ります。使用を止めて、レンタル会社かメーカーに出してください。自社保有機なら、シールの交換時期です。

水中ポンプの点検表は、発電機・分電盤とセットにすると回ります

現場の電気は一続きです。発電機から分電盤、そこから水中ポンプと電動工具へ。どこか1か所を点検しても、途中が切れていれば止まります。

現場の電源・排水は1本の線でつながっている
① 発電機または受電
→
② 仮設分電盤漏電しゃ断器
→
③ 水中ポンプ釜場・ピット
→
④ 排水先沈砂・ろ過

点検事項(安衛則352条)が共通なので、3枚を同じ形にしておくと現場が迷いません。可搬式発電機点検表、仮設分電盤 使用前点検表、水中ポンプ点検表の3枚です。

排水先は、現場の許可条件で決まります

汲み上げた水をどこに出すかは、現場ごとの許可条件によります。水質汚濁防止法や自治体の条例がかかる場合があります。濁水をそのまま道路側溝に流すと、苦情と指導の原因になります。

点検表には「排水先が決められた場所で、濁水の処理(沈砂・ろ過)を通っているか」の欄を入れておいてください。ポンプが正常でも、出し先が違えば止められます。

掘削の現場では、地山の掘削の点検で湧水の状態の変化を見ることになっています。湧水が増えたときは、ポンプの能力だけでなく地山の状態を疑ってください。発電機の点検は可搬式発電機の点検で扱っています。条文はe-Gov法令検索(労働安全衛生規則)で読めます。

よくある質問

Q. 水中ポンプに法定の点検はありますか
定期自主検査はありません。ただし電気については、その日の使用を開始する前の点検が安衛則352条で決まっています。漏電しゃ断装置の作動状態、接地線の切断・接地極の浮上がり等の異常の有無、移動電線及び接続器具の被覆・外装の損傷の有無の3つです。
Q. 100Vのポンプでも漏電しゃ断装置は要りますか
要ります。安衛則333条1項は「対地電圧150ボルトを超えるもの」に加えて、「水等導電性の高い液体によつて湿潤している場所……において使用する移動式若しくは可搬式のもの」も対象としています。水中ポンプは後者にそのまま当たるので、電圧にかかわらず対象です。
Q. ケーブルで吊ってもよいですか
よくありません。本体のケーブル引込部(グランド)に力がかかり、そこから水が入ります。浸水すると絶縁が落ちて漏電します。吊りロープ・チェーンで吊ってください。
Q. 絶縁抵抗はどのくらい必要ですか
仮設の水中ポンプ向けの一律の数値は法令にありません。参考として、電気設備に関する技術基準では、使用電圧300V以下で対地電圧150V以下の低圧電路の絶縁抵抗は0.1MΩ以上とされています。実務では数値そのものより、前月からの低下傾向を見るほうが有効です。
Q. メカニカルシール部のオイルが白く濁っていました
シールから水が入っています。そのまま回すとモーターまで水が回ります。使用を止めて、レンタル会社かメーカーに出してください。自社保有機ならシールの交換時期です。
Q. 河川ポンプ設備の標準要領は使えますか
対象が別です。国土交通省の「河川ポンプ設備点検・整備標準要領(案)」は排水機場などの河川管理施設のポンプ設備が対象で、数十kW以上の大型設備を想定しています。現場の仮設排水に使う小型の水中ポンプには、そのままは当てはまりません。
水中ポンプ 点検表(Excel・無料)建設現場の仮設排水に使う水中ポンプの始業前点検と月例の状態確認を1枚にまとめた様式。法定の定期自主検査はありません。水で湿潤した場所で使う可搬式なので、安衛則333条の漏電しゃ断装置と352条の使用前点検が中心になります。発電機・仮設分電盤とセットで使えます。
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本記事は一般的な情報の整理であり、法令への適合を保証するものではありません。個別の義務内容は所管行政庁または専門家にご確認ください。記事の内容は2026-10-01時点の情報です。