電気工具・電気溶接機使用届の点検欄に何を書くか|条文の使用前点検から
電気工具・電気溶接機の使用届は、左半分に工具の内容、右半分に点検内容を書く形になっています。工具の欄は銘板を見れば書けますが、点検欄で何を書けばよいのかは様式のどこにも書かれていません。
実はこの点検項目、労働安全衛生規則352条に器具の種別ごとの表として条文に載っています。グラインダーなのか溶接機なのか移動電線なのかで見る場所が違い、条文はそれを書き分けています。この記事では条文の表を出したうえで、届出の点検欄に落とす形を示します。
この記事の内容(5項目)
使用前点検の項目は条文に表で書かれています
安衛則352条は「次の表の上欄に掲げる電気機械器具等を使用するときは、その日の使用を開始する前に」種別に応じた点検事項について点検し、異常を認めたときは直ちに補修または取り換えることを求めています。主要なものを抜き出します。
| 器具の種別 | 点検事項(条文のまま) |
|---|---|
| 溶接棒等のホルダー(331条) | 絶縁防護部分及びホルダー用ケーブルの接続部の損傷の有無 |
| 交流アーク溶接機用自動電撃防止装置(332条) | 作動状態 |
| 感電防止用漏電しや断装置(333条1項) | 作動状態 |
| 接地をした電動機械器具(333条2項) | 接地線の切断、接地極の浮上がり等の異常の有無 |
| 移動電線及び附属する接続器具(337条) | 被覆又は外装の損傷の有無 |
| 検電器具(339条1項3号) | 検電性能 |
| 短絡接地器具(339条1項3号) | 取付金具及び接地導線の損傷の有無 |
| 絶縁用保護具(341〜343条) | ひび、割れ、破れその他の損傷の有無及び乾燥状態 |
「その日の使用を開始する前」=毎日です
使用届を出したときに一度点検すれば済む、というものではありません。条文は使用する日ごとを求めています。届出の点検欄は「この項目を毎日見ます」という宣言であって、そこで点検が完結するわけではない点に注意してください。
記録の保存義務は条文にありません
352条の使用前点検について、記録を残して保存することを定めた条文はありません。ただし実施の証跡がないのは別のリスクです。現場に点検表を貼って日付とサインを残す運用が一般的です。
届出の点検欄に落とす
届出には工具を列挙して、それぞれの点検内容を書きます。条文の表と対応させると次のようになります。
| 持ち込む工具 | 点検欄に書くこと |
|---|---|
| ディスクグラインダー、電気ドリル等 | 移動電線の被覆・外装の損傷の有無/接地または漏電しゃ断装置の作動状態/回転部の防護カバー(社内項目) |
| 交流アーク溶接機 | ホルダーの絶縁防護部分とケーブル接続部の損傷/自動電撃防止装置の作動状態/アースクランプの状態 |
| 投光器・仮設照明 | 移動電線の被覆・外装の損傷/ガードの有無 |
| 電工ドラム(コードリール) | 被覆・外装の損傷/漏電しゃ断装置の作動状態/巻いたまま使っていないか(社内項目) |
| 絶縁用保護具(電気用ゴム手袋等) | ひび・割れ・破れ・乾燥状態/6か月以内ごとの絶縁性能の自主検査の実施日 |
自動電撃防止装置が必要な場面は限定されています
安衛則332条が自動電撃防止装置の使用を求めているのは、導電体に囲まれた著しく狭あいな場所と、墜落により危険を及ぼすおそれのある高さ2メートル以上の場所で鉄骨等の接地物に接触するおそれがあるところです(自動溶接を除く)。現場の作業場所がこれに当たるかを確認したうえで、当たるなら作動状態を毎日確認します。
見落とされやすい6か月ごとの検査
安衛則351条は、絶縁用保護具等について六月以内ごとに一回、定期に、その絶縁性能について自主検査を行うことを求めています。電気用ゴム手袋、絶縁衣、絶縁用防具などが対象です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 周期 | 六月以内ごとに一回(六月を超えて使用しない期間は除く。再開時に実施) |
| 検査内容 | 絶縁性能。見た目の点検とは別物で、耐電圧試験が必要 |
| 異常があったとき | 補修その他必要な措置を講じた後でなければ使用してはならない |
| 記録 | 6項目を3年間保存 |
記録すべき6項目は、車両系建設機械などの定期自主検査と同じ構成です(検査年月日/検査方法/検査箇所/検査の結果/検査を実施した者の氏名/補修等の措置を講じたときはその内容)。
毎日の目視点検では代替できません
352条の使用前点検は「ひび、割れ、破れその他の損傷の有無及び乾燥状態」で、目で見て分かる範囲です。351条が求めているのは絶縁性能そのものなので、外観がきれいでも性能が落ちていれば不合格になります。試験設備を持たない事業場では外部に依頼するのが一般的です。
差し戻されやすい書き方
1. 点検欄が「異常なし」だけ
何を見て異常なしと判断したのかが分かりません。条文の表にある点検事項をそのまま項目として並べ、それぞれに判定を付ける形にしてください。条文の文言をそのまま使うのが最も説明しやすい形です。
2. 工具をまとめて1行で書いている
「電動工具一式」では、どの器具にどの点検事項が対応するのかが示せません。器具の種別ごとに行を分けます。種別が違えば条文上の点検事項も違います。
3. 絶縁用保護具の検査日が空欄
電気用ゴム手袋を持ち込むのに6か月ごとの検査の実施日が書かれていないケースは多いものです。購入したまま一度も検査していない、という状態が実際にあります。
4. 自動電撃防止装置の要否を判断していない
「溶接機だから付ける」でも実務上は問題ありませんが、届出の説明としては作業場所が332条の条件に当たるかを押さえておくと、元請からの質問に答えられます。
5. 点検者が無記名
使用前点検には記録の保存義務がありませんが、届出の点検欄は元請が見る書類です。誰が確認したのかを書いてください。
関連:大型機械の届出は持込機械等使用届の書き方、安全書類全体の整理は安全書類のうち点検に関わる書類で扱っています。条文はe-Gov法令検索(労働安全衛生規則)で確認できます。
よくある質問
- Q. 電気工具の点検項目はどこに書かれていますか
- 労働安全衛生規則352条に、器具の種別ごとの表として条文に載っています。溶接棒等のホルダー、交流アーク溶接機用自動電撃防止装置、感電防止用漏電しゃ断装置、接地をした電動機械器具、移動電線、絶縁用保護具などが列挙され、それぞれ点検事項が定められています。
- Q. 使用前点検はどのくらいの頻度で行いますか
- 「その日の使用を開始する前」です。つまり使用する日ごとに毎回行います。使用届を出すときに一度点検すれば済むものではありません。
- Q. 使用前点検の記録は保存が必要ですか
- 352条には記録の保存を定めた条文がありません。ただし実施の証跡がないのは別のリスクなので、現場に点検表を貼って日付と点検者名を残す運用が一般的です。一方、351条の絶縁用保護具等の定期自主検査には記録6項目の3年保存義務があります。
- Q. 電気用ゴム手袋の検査はどのくらいの周期ですか
- 六月以内ごとに一回、絶縁性能について自主検査を行います(安衛則351条)。六月を超えて使用しない期間は不要ですが、使用を再開する際に実施する必要があります。異常を認めたときは、補修その他必要な措置を講じた後でなければ使用できません。
- Q. 毎日の目視点検で6か月ごとの検査の代わりになりますか
- なりません。352条の使用前点検は「ひび、割れ、破れその他の損傷の有無及び乾燥状態」で外観の確認です。351条が求めているのは絶縁性能そのもので、耐電圧試験が必要になります。外観がきれいでも性能が落ちていることがあります。
- Q. 自動電撃防止装置はいつでも必要ですか
- 安衛則332条が求めているのは、導電体に囲まれた場所で著しく狭あいなところ、または墜落により危険を及ぼすおそれのある高さ2メートル以上の場所で鉄骨等の導電性の高い接地物に接触するおそれがあるところで交流アーク溶接等(自動溶接を除く)を行うときです。作業場所がこれに当たるかを確認してください。
- Q. 漏電しゃ断装置が付けられない場合はどうしますか
- 安衛則333条2項により、電動機械器具の金属製外わくや電動機の金属製外被等の金属部分を接地して使用します。接地極への接続方法、接地線と電路の混用防止、接地極を十分に地中に埋設することなどが条文に定められています。
- Q. 届出の点検欄は「異常なし」だけでよいですか
- 弱い書き方です。何を見て異常なしと判断したのかが示せません。条文の表にある点検事項をそのまま項目として並べ、それぞれに判定を付ける形にすると、元請にも監督署にも説明しやすくなります。
- Q. 電動工具をまとめて1行で書いてもよいですか
- 器具の種別ごとに行を分けてください。種別が違えば条文上の点検事項も違うため、「電動工具一式」ではどの点検事項に対応しているのかが示せません。
- Q. 移動電線の点検では何を見ますか
- 被覆又は外装の損傷の有無です(安衛則352条)。附属する接続器具も同じ点検事項の対象になります。電工ドラムは巻いたまま使うと発熱するため、社内基準として確認項目に加えている現場が多くあります。
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本記事は一般的な情報の整理であり、法令への適合を保証するものではありません。個別の義務内容は所管行政庁または専門家にご確認ください。記事の内容は2026-09-20時点の情報です。