ホイールローダーの点検表|ショベルローダーとは条文が別です
ホイールローダーの点検表を作るとき、最初に確認すべきことがあります。その機械はトラクターショベルか、ショベルローダーかです。名前が似ていて現場では区別なく呼ばれますが、労働安全衛生規則ではまったく別の条文に置かれています。
周期の文言も、検査事項の数も、必要な資格も違います。取り違えたまま点検表を作ると、条文にない項目が並び、条文にある項目が抜けます。この記事では、まず見分け方を示したうえで、トラクターショベル(=車両系建設機械)としての点検表を整理します。
この記事の内容(5項目)
トラクターショベルとショベルローダーは別物です
まず条文上の位置づけを並べます。ここが分かれ目です。
| トラクターショベル (一般にホイールローダー) | ショベルローダー | |
|---|---|---|
| 分類 | 車両系建設機械 安衛令別表第七 第一号 | 車両系荷役運搬機械等 安衛則151条の2 第二号 |
| 年次 | 一年以内ごとに一回 9項目(167条) | 一年を超えない期間ごとに一回 5項目(151条の31) |
| 月例 | 一月以内ごとに一回 実質3項目(168条) | 一月を超えない期間ごとに一回 3項目・ヘッドガードが入る(151条の32) |
| 作業開始前 | ブレーキ及びクラッチの機能(170条) | 制動装置・操縦装置ほか |
| 運転の資格 | 機体重量3t以上は車両系建設機械(整地等)技能講習 | 最大荷重1t以上はショベルローダー等運転技能講習 |
| 記録 | どちらも6項目を3年保存 | |
トラクターショベル
土砂の掘削・積込みを目的とする建設機械。建設現場で使う一般的なホイールローダーショベルローダー
荷の荷役・運搬を目的とする機械。工場・倉庫・砕石場などで使われる迷ったときの確認方法
メーカーのカタログや銘板に、就業制限の区分(車両系建設機械/ショベルローダー等)が書かれていることが多くあります。運転者が持っている技能講習修了証の名称からも逆算できます。判断がつかない場合は所轄の労働基準監督署に確認してください。資格と検査の両方に影響するため、推測で決めない部分です。
トラクターショベルの年次9項目
以下は車両系建設機械としてのトラクターショベルの話です。安衛則167条の9項目を、ホイールローダーで見る箇所に対応させます。
| 号 | 検査事項(条文のまま) | 見る箇所 |
|---|---|---|
| 一 | 圧縮圧力、弁すき間その他原動機の異常の有無 | エンジン |
| 二 | クラッチ、トランスミッション、プロペラシャフト、デファレンシャルその他動力伝達装置 | トルコン、前後アクスル |
| 三 | 起動輪、遊動輪、上下転輪、履帯、タイヤ、ホイールベアリングその他走行装置 | タイヤの摩耗・空気圧、ハブ |
| 四 | かじ取り車輪の左右の回転角度、ナックル、ロッド、アームその他操縦装置 | アーティキュレート(車体屈折)部、ステアリングシリンダー |
| 五 | 制動能力、ブレーキドラム、ブレーキシューその他ブレーキ | サービス/パーキングブレーキ |
| 六 | ブレード、ブーム、リンク機構、バケット、ワイヤロープその他作業装置 | リフトアーム、ベルクランク、バケット刃先・ツース |
| 七 | 油圧ポンプ、油圧モーター、シリンダー、安全弁その他油圧装置 | リフト/チルトシリンダー、配管 |
| 八 | 電圧、電流その他電気系統 | バッテリー、配線 |
| 九 | 車体、操作装置、ヘッドガード、バックストッパー、昇降装置、ロック装置、警報装置、方向指示器、灯火装置及び計器 | ROPS/FOPS、車体屈折ロック、後進警報 |
アーティキュレート部は第四号で見ます
ホイールローダーの多くは車体中央で屈折します。この部分の遊びやピンの摩耗は第四号の操縦装置に含めて記録するのが自然です。整備時に車体屈折ロックを掛けるかどうかは、第九号の「ロック装置」に対応します。
月例と作業開始前、記録
月例(168条)は第四号が特定解体用機械限定なので、実質3項目です。
| 号 | 検査事項 | ホイールローダー |
|---|---|---|
| 一 | ブレーキ、クラッチ、操作装置及び作業装置の異常の有無 | 対象 |
| 二 | ワイヤロープ及びチェーンの損傷の有無 | 対象(該当部があれば) |
| 三 | バケット、ジッパー等の損傷の有無 | 対象(刃先・ツース・エッジ) |
| 四 | 特定解体用機械にあっては、逆止め弁、警報装置等 | 対象外 |
作業開始前点検(170条)は「ブレーキ及びクラッチの機能」の2つです。実務では、タイヤの空気圧と傷、バケット刃先の欠け、油脂類の漏れ、後進警報、車体屈折部の異音などを社内基準として加えます。
記録すべき6項目
検査年月日/検査方法/検査箇所/検査の結果/検査を実施した者の氏名/補修等の措置を講じたときはその内容の6つです(安衛則169条)。結果が「否」なのに措置欄が空というのが最も多い不備です。
運用で気をつける3点
1. 資格の区分と点検表の区分を揃える
運転者がショベルローダー等運転技能講習の修了者なのに、点検表が車両系建設機械の様式になっている、という食い違いが起こります。資格・点検表・持込機械等使用届の3つで区分を揃えてください。使用届の書き方は持込機械等使用届の書き方で扱っています。
2. タイヤの記録を残す
ホイール式は下部走行体の代わりにタイヤが費用の大きな要素になります。第三号に「タイヤ」が明記されているので、残り溝やカット傷を数値で残すと、そのまま交換計画の材料になります。
3. 除雪や構内作業で使うときも同じ扱い
冬季の除雪や工場構内での積込みに使う場合でも、機械の分類は変わりません。使う場所ではなく機械の種類で条文が決まります。建設現場に出していない期間も、使用している限り周期は進みます。
関連:車両系建設機械の定期自主検査、フォークリフト点検表の作り方、ブルドーザの点検表。条文はe-Gov法令検索(労働安全衛生規則)で確認できます。
よくある質問
- Q. ホイールローダーとショベルローダーは同じですか
- 違います。一般に建設現場で使うホイールローダーはトラクターショベルで、安衛令別表第七第一号の車両系建設機械です。ショベルローダーは安衛則151条の2第二号の車両系荷役運搬機械等で、適用条文も周期も検査事項も資格も別になります。
- Q. どちらか分からないときはどう確認しますか
- メーカーのカタログや銘板に就業制限の区分が書かれていることが多くあります。運転者の技能講習修了証の名称からも逆算できます。資格と検査の両方に影響するため、判断がつかない場合は所轄の労働基準監督署に確認してください。
- Q. トラクターショベルの年次検査は何項目ですか
- 9項目です(安衛則167条)。一年以内ごとに一回、検査業者または有資格者が実施します。一方ショベルローダー等は5項目で、周期の文言も「一年を超えない期間ごとに一回」と異なります(151条の31)。
- Q. 車体屈折部の点検はどの号ですか
- 第四号の「かじ取り車輪の左右の回転角度、ナックル、ロッド、アームその他操縦装置の異常の有無」に含めて記録するのが自然です。整備時の車体屈折ロックは第九号の「ロック装置」に対応します。
- Q. タイヤは検査事項に入りますか
- 入ります。第三号に「タイヤ、ホイールベアリング」が明記されています。ホイール式は下部走行体の代わりにタイヤが費用の大きな要素になるため、残り溝やカット傷を数値で残すと交換計画の材料になります。
- Q. 月例の検査項目は何項目ですか
- 実質3項目です。安衛則168条の第四号は特定解体用機械に限られるため、ホイールローダーは対象外になります。第三号のバケットの損傷は、刃先・ツース・エッジの状態として記録します。
- Q. 運転にはどんな資格が要りますか
- トラクターショベルとして機体重量3トン以上であれば、車両系建設機械(整地・運搬・積込み用及び掘削用)運転技能講習が必要です。ショベルローダーの場合は最大荷重1トン以上でショベルローダー等運転技能講習となり、別の資格です。
- Q. 除雪に使う場合も定期自主検査は必要ですか
- 必要です。使う場所や用途ではなく機械の種類で条文が決まります。建設現場に出していない期間でも、使用している限り周期は進みます。
- Q. 作業開始前点検は何を見ますか
- 法定の点検事項は安衛則170条の「ブレーキ及びクラッチの機能」の2つです。実務ではタイヤの空気圧と傷、バケット刃先の欠け、油脂類の漏れ、後進警報、車体屈折部の異音などを社内基準として加えます。
- Q. 記録に必要な項目は何ですか
- 検査年月日、検査方法、検査箇所、検査の結果、検査を実施した者の氏名、補修等の措置を講じたときはその内容の6つです(安衛則169条)。3年間保存します。結果が「否」なのに措置欄が空欄というのが最も多い不備です。
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本記事は一般的な情報の整理であり、法令への適合を保証するものではありません。個別の義務内容は所管行政庁または専門家にご確認ください。記事の内容は2026-08-15時点の情報です。