コンクリートポンプ車の点検|車両系建設機械としての検査と、輸送管の措置
コンクリートポンプ車の点検表を探すと、圧送作業のチェックリストは見つかるのに、法定の定期自主検査の様式が出てこない、ということが起きます。理由はポンプ車の点検が2つの系統に分かれているためです。
1つは車両系建設機械としての定期自主検査(安衛則167〜170条)、もう1つは輸送管の脱落・振れ防止などポンプ車固有の措置(171条の2・171条の3)です。前者は記録の3年保存が必要な法定検査、後者は作業を行うときに講じる措置であって検査ではありません。この記事では2つを分けて整理し、1枚の様式にまとめる形を示します。
この記事の内容(7項目)
結論|2つの系統に分かれている
コンクリートポンプ車に関する義務は、機械そのものの検査と、圧送作業時の措置の2系統です。性質が違うので、記録の要否も違います。
| 系統 | 内容 | 周期 | 記録 | 条文 |
|---|---|---|---|---|
| 車両系建設機械としての検査 | 特定自主検査(年次9項目) 定期自主検査(月例) 作業開始前点検 | 一年以内/一月以内/毎日 | 年次・月例は6項目を3年保存 | 安衛則167〜170条 |
| ポンプ車固有の措置 | 輸送管等の脱落及び振れの防止ほか5つ 組立て・解体時の作業指揮 | 作業を行うとき | 条文上の保存義務なし | 安衛則171条の2 171条の3 |
定期自主検査(167〜169条)
機械の状態を検査して、結果を記録し3年保存する。年次は検査業者または有資格者のみ輸送管等の措置(171条の2)
作業のたびに措置を講じる。条文上の記録保存義務はないが、実務では作業前チェックとして残す市販・配布されている様式は、どちらか一方しか扱っていないことが多いものです。圧送作業のチェックリストだけを持っていて年次・月例の記録が残っていない、という状態が起きやすい構造になっています。
コンクリートポンプ車は車両系建設機械です
コンクリートポンプ車は、労働安全衛生法施行令別表第七 第五号(コンクリート打設用機械)に掲げられています。したがって車両系建設機械として、安衛則167条以下がそのまま適用されます。
| 別表第七の区分 | 主な機械 |
|---|---|
| 第一号 整地・運搬・積込み用機械 | ブルドーザ、トラクターショベル、スクレーパー など |
| 第二号 掘削用機械 | パワーショベル(バックホー)、ドラグライン など |
| 第三号 基礎工事用機械 | くい打機、くい抜機、アースドリル など |
| 第四号 締固め用機械 | ローラー |
| 第五号 コンクリート打設用機械 | コンクリートポンプ車 |
| 第六号 解体用機械 | ブレーカ、鉄骨切断機、コンクリート圧砕機 など |
ポンプ車専用の定期自主検査の条文はありません
「コンクリートポンプ車の定期自主検査」という独立した条文があるわけではなく、車両系建設機械の167条・168条・169条・170条がそのまま適用されるという構造です。ポンプ車固有の規定は、171条の2と171条の3という別の場所に置かれています。
ブーム部分も検査事項に含まれます
年次の検査事項(167条第六号)は「ブレード、ブーム、リンク機構、バケット、ワイヤロープその他作業装置の異常の有無」です。ポンプ車のブームはこの号に含まれます。移動式クレーンとは別系統なので、クレーン等安全規則の年次検査(荷重試験)と混同しないよう注意してください。
年次の特定自主検査|条文の9項目
安衛則167条は「一年以内ごとに一回、定期に、次の事項について自主検査を行わなければならない」として9つの号を挙げています。これが法定の検査事項です。
| 号 | 検査事項(条文のまま) | ポンプ車で主に見る箇所 |
|---|---|---|
| 一 | 圧縮圧力、弁すき間その他原動機の異常の有無 | エンジン |
| 二 | クラッチ、トランスミッション、プロペラシャフト等動力伝達装置 | PTO、駆動系 |
| 三 | 起動輪、遊動輪、履帯、タイヤ、ホイールベアリング等走行装置 | 走行部 |
| 四 | かじ取り車輪の左右の回転角度、ナックル、ロッド、アーム等操縦装置 | 操縦系 |
| 五 | 制動能力、ブレーキドラム、ブレーキシュー等ブレーキ | 制動装置 |
| 六 | ブレード、ブーム、リンク機構、バケット、ワイヤロープ等作業装置 | ブーム、旋回、アウトリガー |
| 七 | 油圧ポンプ、油圧モーター、シリンダー、安全弁等油圧装置 | ポンプ本体、油圧回路 |
| 八 | 電圧、電流その他電気系統 | 電装、リモコン |
| 九 | 車体、操作装置、ヘッドガード、ロック装置、警報装置、灯火装置及び計器 | 車体、警報 |
この年次検査が特定自主検査です(安衛則169条の2)。検査業者または所定の研修を修了した事業内検査者しか実施できません。検査後は事業者が検査標章を貼り付けます(169条の2第8項)。
2026年1月1日からは、特定自主検査を厚生労働大臣の定める基準に従って行うことが義務になりました(労働安全衛生法45条3項)。車両系建設機械には令和7年厚生労働省告示第320号が適用されます。詳細は特定自主検査の新基準で扱っています。
月例と作業開始前|ポンプ車で対象外になる号
安衛則168条の月例は4つの号を挙げていますが、第四号には条件が付いています。
| 号 | 検査事項 | ポンプ車での対象 |
|---|---|---|
| 一 | ブレーキ、クラッチ、操作装置及び作業装置の異常の有無 | 対象 |
| 二 | ワイヤロープ及びチェーンの損傷の有無 | 対象 |
| 三 | バケット、ジッパー等の損傷の有無 | 対象 |
| 四 | 特定解体用機械にあっては、逆止め弁、警報装置等の異常の有無 | 対象外(解体用機械限定) |
第四号は「第百七十一条の四の特定解体用機械にあっては」という条件付きです。コンクリートポンプ車は解体用機械ではないため対象外で、実質3項目になります。
作業開始前点検はブレーキとクラッチだけ
安衛則170条が定める作業開始前の点検事項は「ブレーキ及びクラッチの機能」の2つだけです。ポンプ車の圧送作業に必要な確認は、この条文ではなく171条の2の措置として別に定められています。
実務では、輸送管の接続、支持金具、アウトリガーの張り出し、洗浄用具などを社内基準として作業開始前に確認します。法定項目と社内項目を区別できるようにしておくことをおすすめします。監督署の臨検で「どれが法定か」を説明できる状態になります。
作業開始前点検に記録の保存義務はありません
記録を定めた169条は「前二条の自主検査を行つたときは」と書かれており、前二条=167条(年次)と168条(月例)です。170条の作業開始前は「点検」であって「自主検査」ではないため、記録条文の対象に入っていません。
ポンプ車固有の措置|171条の2の5つ
安衛則171条の2は、コンクリートポンプ車を用いて作業を行うときに講じる措置を5つ挙げています。圧送作業の事故はここに集中しているため、作業前チェックとして様式に落とす価値があります。
④の圧力開放が最も重要です
条文は、輸送管等が閉そくした場合に接続部を切り離そうとするときは、あらかじめ内部の圧力を減少させるため空気圧縮機のバルブ又はコックを開放すること等、コンクリート等の吹出しを防止する措置を講じることを求めています。閉そくの復旧作業は日常の手順から外れた場面で行われるため、手順を決めておかないと省略されやすい部分です。
組立て・解体には作業指揮者が必要です
安衛則171条の3により、輸送管等の組立て又は解体を行うときは、作業の方法・手順等を定めて労働者に周知させ、かつ作業を指揮する者を指名して、その直接の指揮の下に作業を行わせることが求められています。指名を記録に残しておくと、体制を説明しやすくなります。
これらは「措置」であって「検査」ではないため、条文上の記録保存義務はありません。ただし実施したことを示す手段として、コンクリートポンプ車 定期自主検査記録表では作業前チェックの欄を分けて設けてあります。
様式を1枚にまとめるときの考え方
コンクリートポンプ車の記録は、性質の違うものが混ざりやすい領域です。次の4つをシートで分けるのが扱いやすい形です。
(第四号は対象外)
1. 法定検査と作業前チェックを分ける
年次・月例は3年保存の対象、171条の2の措置は条文上は保存義務なしです。同じ欄に並べると、どこまでを3年残すのかが分からなくなります。
2. 業界の推奨様式との関係を決めておく
圧送業界には団体が示す推奨様式があり、それを使っている事業場も多いはずです。どちらが正しいという話ではなく、法定の6記録項目を満たしているかどうかで判断してください。満たしているなら既存の様式を続けて構いません。足りない欄だけを足すのが現実的です。
3. 記録の6項目を必ず持たせる
安衛則169条が定める記録事項は、検査年月日/検査方法/検査箇所/検査の結果/検査を実施した者の氏名/補修等の措置を講じたときはその内容の6つです。結果が「否」なのに措置欄が空というのが最も多い不備です。
4. 台帳に転記できる並びにしておく
ポンプ車は台数が少なくても、他の建機やトラックと合わせると管理対象が数十点になります。ヘッダーを対象名・管理番号・機種区分・保有拠点・周期・前回実施日・担当の並びにしておくと、そのまま台帳に転記できます。配布しているExcel様式はこの並びで統一してあります。
条文の原文はe-Gov法令検索(労働安全衛生規則)で確認できます。
関連:車両系建設機械としての検査事項は車両系建設機械の定期自主検査、レンタル機の扱いはレンタル建機の点検義務は誰が負うか、外注費用の考え方は特定自主検査の費用は何で決まるかで扱っています。
よくある質問
- Q. コンクリートポンプ車は特定自主検査の対象ですか
- 対象です。労働安全衛生法施行令別表第七 第五号(コンクリート打設用機械)に掲げられており、車両系建設機械として安衛則167条以下が適用されます。年次の特定自主検査は一年以内ごとに一回、検査業者または有資格者が実施し、事業者が検査標章を貼り付けます。
- Q. ポンプ車専用の定期自主検査の条文はありますか
- ありません。車両系建設機械の167条(年次9項目)・168条(月例)・169条(記録6項目3年保存)・170条(作業開始前)がそのまま適用されます。ポンプ車固有の規定は171条の2(輸送管等の脱落及び振れの防止等)と171条の3(作業指揮)で、これらは検査ではなく作業時の措置です。
- Q. 月例の検査項目は何項目ですか
- 実質3項目です。安衛則168条は4つの号を挙げていますが、第四号は「第百七十一条の四の特定解体用機械にあっては」という条件付きで、コンクリートポンプ車は解体用機械ではないため対象外になります。
- Q. 作業開始前点検は何を見ればよいですか
- 法定の点検事項は安衛則170条の「ブレーキ及びクラッチの機能」の2つだけです。圧送作業に必要な確認は171条の2の措置として別に定められています。実務では輸送管の接続やアウトリガーの張り出しなども確認しますが、それらは社内基準です。
- Q. 輸送管の点検記録は保存が必要ですか
- 171条の2は「作業を行うときは、次の措置を講じなければならない」という措置の規定であり、条文上の記録保存義務はありません。3年保存が必要なのは167条(年次)と168条(月例)の自主検査の記録です。ただし実施を示す手段として作業前チェックを残す運用は有効です。
- Q. 輸送管が閉そくしたときの手順に決まりはありますか
- あります。安衛則171条の2第四号により、接続部を切り離そうとするときは、あらかじめ輸送管等の内部の圧力を減少させるため空気圧縮機のバルブ又はコックを開放すること等、コンクリート等の吹出しを防止する措置を講じなければなりません。
- Q. 洗浄ボールを使うときの決まりはありますか
- 安衛則171条の2第五号により、洗浄ボールを用いて輸送管等の内部を洗浄する作業を行うときは、洗浄ボールの飛出しによる労働者の危険を防止するための器具を、当該輸送管等の先端部に取り付けなければなりません。
- Q. 輸送管の組立て・解体に資格は必要ですか
- 条文が求めているのは資格ではなく体制です。安衛則171条の3により、作業の方法・手順等を定めて労働者に周知させ、かつ作業を指揮する者を指名して、その直接の指揮の下に作業を行わせる必要があります。指名した事実を記録に残しておくと説明しやすくなります。
- Q. ブームの検査は移動式クレーンと同じですか
- 違います。コンクリートポンプ車は車両系建設機械なので、ブームは167条第六号の「ブレード、ブーム、リンク機構、バケット、ワイヤロープその他作業装置の異常の有無」に含まれます。移動式クレーンのようにクレーン等安全規則に基づく荷重試験を伴う年次検査ではありません。
- Q. 業界団体の推奨様式を使っていますが、そのままで問題ありませんか
- 安衛則169条が定める記録6項目(検査年月日・検査方法・検査箇所・検査の結果・検査を実施した者の氏名・補修等の措置の内容)を満たしていれば問題ありません。法定の様式は定められていないため、足りない欄だけを追加する形で構いません。
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