建設機械・荷役車両

主たる用途以外の使用|ユンボで吊ってよい条件はどこに書いてあるか

公開 2026-08-29更新 2026-10-16 執筆 点検板 編集部
点検板 編集部法令の原文と省庁の資料で確認:2026年10月16日

「ユンボで吊ってよいのか」は現場で最も意見が割れる論点のひとつです。「絶対にダメ」と言う人と「フックが付いていれば問題ない」と言う人が同じ現場にいます。

条文(安衛則164条)を読むと、どちらも半分正しいことが分かります。原則は禁止、ただし条件を満たせば適用されないという構造で、その条件が細かく決まっています。この記事では条文の構造をそのまま解きます。

この判断は、作業の安全対策全体の一部です。条文を作業の順に並べ替えたものは重機作業の安全対策にあります。

重機作業 安全チェックリスト(車両系建設機械)(Excel・無料)重機を使う作業で守ることを、条文(安衛則154〜170条)ごとに並べたチェックリスト。作業前・作業中・終了時・管理の4区分で、判定と是正まで残せます。
テンプレートを見る
この記事の内容(9項目)

原則は禁止

164条1項はこう書いています。

事業者は、車両系建設機械を、パワー・ショベルによる荷のつり上げ、クラムシェルによる労働者の昇降等当該車両系建設機械の主たる用途以外の用途に使用してはならない。

例として条文に挙がっているものなぜ危険か
パワー・ショベルによる荷のつり上げ掘削用に設計された機械で吊る。安定度・つり具・視界の前提が違う
クラムシェルによる労働者の昇降人を乗せる設計ではない。バケットの開閉で落下する

条文は「等」と書いているので、この2つに限りません。その機械の主たる用途から外れる使い方は広く禁止されています。

164条の構造
1項主たる用途以外の使用は禁止
2項次のどちらかに該当すれば1項を適用しない(=できる)
3項2項一号のつり上げを行うときは、7つの措置を講じる
「禁止」だけ、あるいは「フックがあればOK」だけを覚えると、必ずどちらかを外す

適用されない2つの場合(2項)

164条2項は、次のいずれかに該当する場合には1項を適用しないとしています。

第一号|荷のつり上げの作業で、イとロの両方に該当するとき

条件(条文のまま)
イ作業の性質上やむを得ないとき又は安全な作業の遂行上必要なとき
ロアーム、バケット等の作業装置に、次のいずれにも該当するフック、シャックル等の金具その他のつり上げ用の器具を取り付けて使用するとき
 ・負荷させる荷重に応じた十分な強度を有すること
 ・外れ止め装置が使用されていること等により、つり上げた荷が落下するおそれのないこと
 ・作業装置から外れるおそれのないものであること

イとロの両方が必要です。フックが付いているだけでは足りません。「作業の性質上やむを得ない」または「安全な作業の遂行上必要」という必要性が前提になります。

第二号|つり上げ以外の作業で、労働者に危険を及ぼすおそれのないとき

つり上げ以外の用途外使用については、危険を及ぼすおそれがないことが条件です。こちらは器具の要件がありません。

「便利だから吊る」は条件を満たしません

イが求めているのはやむを得ないか安全な作業の遂行上必要かです。クレーンを手配できるのに手間を惜しんで吊る、という場面はここに当たりません。なぜ必要だったのかを説明できる状態にしておいてください。

つり上げを行うときの7つの措置(3項)

2項一号のイ・ロに該当してつり上げ作業を行う場合、164条3項が7つの措置を求めています。

号措置(条文のまま)
一つり上げの作業について一定の合図を定めるとともに、合図を行う者を指名して、その者に合図を行わせること
二平坦な場所で作業を行うこと
三つり上げた荷との接触又は落下により危険が生ずるおそれのある箇所への立入禁止(見やすい箇所に表示等)
四当該車両系建設機械の構造及び材料に応じて定められた最大の荷重を超える荷重を掛けない
五ワイヤロープを玉掛用具に使う場合の要件(下の表)
六つりチェーンを玉掛用具に使う場合の要件
七ワイヤロープ及びつりチェーン以外の玉掛用具は、著しい損傷及び腐食がないものを使用すること

五号のワイヤロープの要件

項目基準
安全係数6以上(クレーン則213条2項に規定する安全係数)
素線切れ一よりの間で、切断している素線(フィラ線を除く)が10パーセント未満
直径の減少公称径の7パーセント以下
キンクしていないもの
形崩れ・腐食著しいものがない

この基準は玉掛け用具の廃棄基準と同じ考え方です。詳しくは玉掛け用具の点検と廃棄基準で扱っています。

2条件例外に必要(イとロ)
7つつり上げ時の措置
6以上ワイヤロープの安全係数
平坦な場所3項二号

関連する3つの制限

164条だけでなく、前後の条文も同時にかかります。

条文内容用途外使用での意味
162条 搭乗の制限作業に従事する作業従事者を乗車席以外の箇所に乗せてはならないバケットに人を乗せる行為は、164条の前にここで禁止される
163条 使用の制限構造上定められた安定度、最大使用荷重等を守る吊れる重さは機械の仕様で決まる。164条3項四号と対になる
158条 接触の防止接触の危険がある箇所への立入禁止164条3項三号と重なる。荷の落下範囲まで広げる

バケットに人を乗せるのは、そもそも162条違反です

高所の作業のためにバケットに人を乗せる場面がありますが、162条が乗車席以外への搭乗を禁じています。164条2項二号の「危険を及ぼすおそれのないとき」に該当させようとしても、人が乗る時点で危険がないとは言いにくい構造です。高所作業には高所作業車を使ってください。

クレーン機能付きの油圧ショベルは扱いが変わります

メーカーがクレーン仕様として設計・表示している機械(定格荷重表や過負荷制限装置を備え、移動式クレーンの表示があるもの)は、クレーンモードで使うときは移動式クレーンとして扱われます。クレーン等安全規則がかかり、運転には小型移動式クレーン運転技能講習(つり上げ荷重1トン未満なら特別教育でも可)が必要とされています(石川労働局「車両系建設機械による危険防止対策」)。同じ資料は、つり上げはクレーンモードで対応できるので、例外としての用途外使用は避けるべきだとしています。自社の機械がどちらかは、銘板と取扱説明書で確認してください。判断に迷う場合は所轄の労働基準監督署に確認をおすすめします。

重機作業 安全チェックリスト(車両系建設機械)(Excel・無料)重機を使う作業で守ることを、条文(安衛則154〜170条)ごとに並べたチェックリスト。作業前・作業中・終了時・管理の4区分で、判定と是正まで残せます。
テンプレートを見る

現場で決めておくこと

1. 「やむを得ない場面」を先に決めておく

その場の判断で吊ると、必要性の説明ができません。どういう場面なら該当するのかを社内基準として書いておくと、現場が迷いません。例えば「クレーンが進入できない狭隘部で、掘削と一体の作業として行う場合」のように具体化します。

2. つり上げ用器具を機械に紐づける

ロが求めているのは強度・外れ止め・脱落防止の3点です。フックを溶接で取り付けること自体は禁止されていませんが、通達(平成4年10月1日 基発第542号)は、JISの溶接技術検定に基づく認定を受けた者かボイラー溶接士が行うこと、掘削で傷みにくくバケットに偏った荷重がかからない位置に付けることを求めています。メーカー純正か、取付けの根拠を説明できる器具を使い、どの機械にどの器具が付いているかを台帳に持たせると、点検のときに迷いません。

3. 合図者を指名する

3項一号は「合図を定める」だけでなく「合図を行う者を指名して、その者に合図を行わせる」ところまで求めています。氏名を記録に残してください。

4. 点検表とは別の欄にする

164条は使用時の措置であって検査ではありません。作業前チェックとして別に持つのが扱いやすい形です。そのうえで、先の通達は定期自主検査(年次・月次)の項目に「つり上げ用の器具の異常の有無」を加えることも求めています。定期自主検査の記録(3年保存、安衛則169条)にこの1行が入っているかを確かめておくと、もっと確実になります。

関連:車両系建設機械の作業計画書、誘導者・立入禁止・合図、玉掛け用具の点検と廃棄基準。条文はe-Gov法令検索(労働安全衛生規則)で確認できます。

主たる用途以外の使用にかかわる最近の動き(2026年10月時点)

主たる用途以外の使用を定めた164条の中身は、ここ数年で変わっていません。変わったのは、その周りの検査と、守る相手の範囲です。日付順に並べます。

日付できごと主たる用途以外の使用との関係
2025年5月14日改正労働安全衛生法(令和7年法律第33号)が公布個人事業者を含む作業従事者の保護、検査基準の遵守義務などが決まった
2025年12月24日車両系建設機械などの特定自主検査基準が告示され、通達(基発1226第2号)で示された年次の特定自主検査は新しい基準で行う。旧「定期自主検査指針」は2026年1月1日に廃止
2026年1月1日検査業者などに検査基準の遵守義務が施行つり上げ用の器具を付けた機械も、この基準で年次検査を受ける
2026年4月1日改正法の主な部分が施行。注文者・元方・機械の貸与者が講じる措置の対象が、一人親方などを含む作業従事者に広がった現行の164条3項も「作業従事者」とつり上げた荷との接触を防ぐ形で書かれている(2026年10月3日にe-Govで確認)
2026年5月27日令和7年(2025年)の労働災害の確定値を公表全産業の死亡700人、うち建設業214人。はさまれ・巻き込まれの死亡は117人

ポイントは、つり上げの可否の線引きは変わらず、守る相手が広がったことです。立入禁止の範囲には、自社の労働者だけでなく、同じ場所で働く一人親方や他社の作業員も入ると考えて表示しておくと安全です。

出典:厚生労働省「労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律案の概要」、厚生労働省 特定自主検査基準の制定等について(基発1226第2号)、厚生労働省 令和7年の労働災害発生状況、e-Gov法令検索(労働安全衛生規則)。確認日は2026年10月3日です。個別の作業が例外に当たるかは、所轄の労働基準監督署で確認してください。

主たる用途以外の使用に出てくる用語

主たる用途以外の使用の条文は、ふだんの現場の言葉と少しずれた語を使います。読み違えやすいものを並べます。

用語意味出典
主たる用途法令上の定義はない。条文は「パワー・ショベルによる荷のつり上げ」「クラムシェルによる労働者の昇降」を主たる用途以外の例に挙げている安衛則164条1項
車両系建設機械別表第七に掲げる建設機械で、動力を用い、かつ、不特定の場所に自走できるもの労働安全衛生法施行令10条三号ほか
つり上げ用の器具アーム、バケット等の作業装置に取り付けるフック、シャックル等の金具など。強度・落下防止・脱落防止の3要件がある安衛則164条2項一号ロ
外れ止め装置つり上げた荷が器具から外れて落ちないようにする装置。164条には形の定めはない安衛則164条2項一号ロ(2)
安全係数ワイヤロープの切断荷重を、かかる荷重の最大値で割った値。164条ではクレーン則の定義を借りているクレーン則213条2項、安衛則164条3項五号イ
標準荷重法令上の定義はない。通達がJIS A 8403の「標準荷重」を指して、つり荷の上限の目安にしている基発第542号(平成4年10月1日)
合図を行う者事業者が指名し、つり上げの合図をさせる人。決めるだけでなく指名まで必要安衛則164条3項一号

主たる用途以外の使用と一緒に押さえておきたいこと

主たる用途以外の使用は、164条の条文だけを読むと抜けやすい論点があります。上位の解説記事にあまり出てこないものを3つ挙げます。

フォークリフトの「主たる用途以外の使用の制限」は条件が1つだけ

主たる用途以外の使用の制限は、フォークリフトなどの車両系荷役運搬機械にもあります(安衛則151条の14)。こちらは「荷のつり上げ、労働者の昇降等」を禁じたうえで、例外は「労働者に危険を及ぼすおそれのないとき」の1つだけです。車両系建設機械のようなイ・ロの条件や7つの措置の定めはありません。同じ現場で両方を使う場合は、機械ごとに条文を分けて社内基準を書いておくと混ざりません。

通達が上乗せしている措置(1トン未満・低速・玉掛け者・点検)

164条3項の7つの措置に加えて、通達(平成4年10月1日 基発第542号)は次のことを講じるよう指導するとしています。

項目通達の内容
つり上げる重さつり荷とつり具の重量の合計が標準荷重以下で、かつ1トン未満
運転エンジンの回転を低速にし、作業速度の切換装置があれば低速にする。ドラグ・ショベルの旋回速度は移動式クレーンの3〜4倍とされている
玉掛けワイヤロープを掛け外しするのは、玉掛け技能講習または玉掛けの特別教育を修了した者。控えロープで荷の振れを止める
点検その日の作業前に、つり上げ用の器具の異常の有無を点検。定期自主検査の項目にも加えて記録を残す

通達の本文は福井市が掲載している通達集(車両系建設機械を用いて行う荷のつり上げの作業時等における安全の確保について)で読めます。

ユンボの吊り作業に要る資格と、土止め支保工の扱い

ユンボで吊るときの運転は、車両系建設機械(整地・運搬・積込み用及び掘削用)運転技能講習の修了者が行います(機体重量3トン未満は特別教育でも可)。玉掛けは上の通達のとおりです。また同じ通達は、掘削に使った機械で土止め支保工の部材を打ち込む・引き抜く作業について、金具の要件や立入禁止、作業指揮者の指名などを満たすときは、164条2項二号の「労働者に危険を及ぼすおそれのないとき」に当たるものとして扱ってよいとしています。つり上げとは別の例外として整理されているので、作業計画書でも分けて書いておくとよくなります。土止め支保工そのものを点検する周期と項目は土止め支保工の点検で扱っています。

点検板 編集部がまとめました様式を無料で配り、使い方と法令の決まりを記事にまとめています。法令の数字は e-Gov の原文で確かめてから載せています。

よくある質問

Q. ユンボで荷を吊ってもよいですか
原則は禁止です(安衛則164条1項)。ただし2項第一号により、作業の性質上やむを得ないときまたは安全な作業の遂行上必要なときで、かつ所定の要件を満たすつり上げ用器具を取り付けて使用するときは、1項が適用されません。両方の条件が必要です。
Q. フックが付いていれば吊ってよいのですか
足りません。164条2項第一号はイ(やむを得ない、または安全な作業の遂行上必要)とロ(要件を満たすつり上げ用器具)の両方を求めています。器具だけでは条件を満たしません。
Q. つり上げ用器具の要件は何ですか
3つです。負荷させる荷重に応じた十分な強度を有すること、外れ止め装置が使用されていること等により荷が落下するおそれのないこと、作業装置から外れるおそれのないものであることです(164条2項第一号ロ)。
Q. つり上げるときに必要な措置は何ですか
7つです。合図を定めて合図を行う者を指名する、平坦な場所で作業する、危険箇所への立入禁止、最大荷重を超えない、ワイヤロープの要件、つりチェーンの要件、その他の玉掛用具は著しい損傷・腐食がないものを使う(164条3項)。
Q. ワイヤロープの基準はどうなっていますか
安全係数6以上、一よりの間の素線切れが10パーセント未満、直径の減少が公称径の7パーセント以下、キンクしていない、著しい形崩れ及び腐食がないことです(164条3項第五号)。
Q. バケットに人を乗せてもよいですか
いけません。安衛則162条が、作業に従事する作業従事者を乗車席以外の箇所に乗せてはならないと定めています。164条の例外を検討する以前に、162条で禁止されます。高所作業には高所作業車を使ってください。
Q. クレーン仕様の油圧ショベルはどうなりますか
クレーン機能付きの機械をクレーンモードで使うときは移動式クレーンとして扱われ、クレーン等安全規則がかかります。運転には小型移動式クレーン運転技能講習(つり上げ荷重1トン未満は特別教育でも可)が必要とされています(石川労働局の資料)。銘板と取扱説明書で確認し、迷う場合は所轄の労働基準監督署にご確認ください。
Q. 「やむを得ないとき」とは具体的にどんな場面ですか
条文は具体例を挙げていません。石川労働局の資料は、作業場所が狭く、移動式クレーンを搬入すると作業場所が錯綜して危険が増すと考えられる場合を例に挙げています。手間を惜しんでクレーンを手配しない、という理由は該当しないと考えられます。社内基準として場面を具体化しておくことをおすすめします。
Q. ユンボの吊り作業に資格は要りますか
機械の運転には車両系建設機械(整地・運搬・積込み用及び掘削用)運転技能講習(機体重量3トン未満は特別教育でも可)が必要です。玉掛けについては、通達(平成4年10月1日 基発第542号)が、玉掛け用ワイヤロープを掛け外しする作業は玉掛け技能講習または玉掛けの特別教育を修了した者が行うよう求めています。
Q. ユンボで吊れる重さに上限はありますか
164条3項四号で、機械の構造と材料に応じて定められた最大の荷重を超えてはならないとされています。加えて通達(基発第542号)は、つり荷とつり具の重量の合計が標準荷重以下で、かつ1トン未満でなければ作業を行わないよう求めています。
Q. つり上げ以外の用途外使用はどうですか
164条2項第二号により、つり上げ以外の作業で労働者に危険を及ぼすおそれのないときは1項が適用されません。つり上げの場合と違って器具の要件はありませんが、「危険を及ぼすおそれのないとき」という判断が必要です。
Q. 合図は誰が行いますか
指名した者です。164条3項第一号は「一定の合図を定めるとともに、合図を行う者を指名して、その者に合図を行わせること」と定めています。合図の方法を決めるだけでなく、行う人を指名するところまでが要求です。
重機作業 安全チェックリスト(車両系建設機械)(Excel・無料)重機を使う作業で守ることを、条文(安衛則154〜170条)ごとに並べたチェックリスト。作業前・作業中・終了時・管理の4区分で、判定と是正まで残せます。
テンプレートを見る

本記事は一般的な情報の整理であり、法令への適合を保証するものではありません。個別の義務内容は所管行政庁または専門家にご確認ください。記事の内容は2026-10-16時点の情報です。