建設機械・荷役車両

主たる用途以外の使用|ユンボで吊ってよい条件はどこに書いてあるか

公開 2026-08-29 執筆 点検板 編集部

「ユンボで吊ってよいのか」は現場で最も意見が割れる論点のひとつです。「絶対にダメ」と言う人と「フックが付いていれば問題ない」と言う人が同じ現場にいます。

条文(安衛則164条)を読むと、どちらも半分正しいことが分かります。原則は禁止、ただし条件を満たせば適用されないという構造で、その条件が細かく決まっています。この記事では条文の構造をそのまま解きます。

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この記事の内容(6項目)

原則は禁止

164条1項はこう書いています。

事業者は、車両系建設機械を、パワー・ショベルによる荷のつり上げクラムシェルによる労働者の昇降等当該車両系建設機械の主たる用途以外の用途に使用してはならない。

例として条文に挙がっているものなぜ危険か
パワー・ショベルによる荷のつり上げ掘削用に設計された機械で吊る。安定度・つり具・視界の前提が違う
クラムシェルによる労働者の昇降人を乗せる設計ではない。バケットの開閉で落下する

条文は「等」と書いているので、この2つに限りません。その機械の主たる用途から外れる使い方は広く禁止されています。

164条の構造
1項主たる用途以外の使用は禁止
2項次のどちらかに該当すれば1項を適用しない(=できる)
3項2項一号のつり上げを行うときは、7つの措置を講じる
「禁止」だけ、あるいは「フックがあればOK」だけを覚えると、必ずどちらかを外す

適用されない2つの場合(2項)

164条2項は、次のいずれかに該当する場合には1項を適用しないとしています。

第一号|荷のつり上げの作業で、イとロの両方に該当するとき

条件(条文のまま)
作業の性質上やむを得ないとき又は安全な作業の遂行上必要なとき
アーム、バケット等の作業装置に、次のいずれにも該当するフック、シャックル等の金具その他のつり上げ用の器具を取り付けて使用するとき
 ・負荷させる荷重に応じた十分な強度を有すること
 ・外れ止め装置が使用されていること等により、つり上げた荷が落下するおそれのないこと
 ・作業装置から外れるおそれのないものであること

イとロの両方が必要です。フックが付いているだけでは足りません。「作業の性質上やむを得ない」または「安全な作業の遂行上必要」という必要性が前提になります。

第二号|つり上げ以外の作業で、労働者に危険を及ぼすおそれのないとき

つり上げ以外の用途外使用については、危険を及ぼすおそれがないことが条件です。こちらは器具の要件がありません。

「便利だから吊る」は条件を満たしません

イが求めているのはやむを得ない安全な作業の遂行上必要かです。クレーンを手配できるのに手間を惜しんで吊る、という場面はここに当たりません。なぜ必要だったのかを説明できる状態にしておいてください。

つり上げを行うときの7つの措置(3項)

2項一号のイ・ロに該当してつり上げ作業を行う場合、164条3項が7つの措置を求めています。

措置(条文のまま)
つり上げの作業について一定の合図を定めるとともに、合図を行う者を指名して、その者に合図を行わせること
平坦な場所で作業を行うこと
つり上げた荷との接触又は落下により危険が生ずるおそれのある箇所への立入禁止(見やすい箇所に表示等)
当該車両系建設機械の構造及び材料に応じて定められた最大の荷重を超える荷重を掛けない
ワイヤロープを玉掛用具に使う場合の要件(下の表)
つりチェーンを玉掛用具に使う場合の要件
ワイヤロープ及びつりチェーン以外の玉掛用具は、著しい損傷及び腐食がないものを使用すること

五号のワイヤロープの要件

項目基準
安全係数6以上(クレーン則213条2項に規定する安全係数)
素線切れ一よりの間で、切断している素線(フィラ線を除く)が10パーセント未満
直径の減少公称径の7パーセント以下
キンクしていないもの
形崩れ・腐食著しいものがない

この基準は玉掛け用具の廃棄基準と同じ考え方です。詳しくは玉掛け用具の点検と廃棄基準で扱っています。

2条件例外に必要(イとロ)
7つつり上げ時の措置
6以上ワイヤロープの安全係数
平坦な場所3項二号
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関連する3つの制限

164条だけでなく、前後の条文も同時にかかります。

条文内容用途外使用での意味
162条 搭乗の制限作業に従事する作業従事者を乗車席以外の箇所に乗せてはならないバケットに人を乗せる行為は、164条の前にここで禁止される
163条 使用の制限構造上定められた安定度、最大使用荷重等を守る吊れる重さは機械の仕様で決まる。164条3項四号と対になる
158条 接触の防止接触の危険がある箇所への立入禁止164条3項三号と重なる。荷の落下範囲まで広げる

バケットに人を乗せるのは、そもそも162条違反です

高所の作業のためにバケットに人を乗せる場面がありますが、162条が乗車席以外への搭乗を禁じています。164条2項二号の「危険を及ぼすおそれのないとき」に該当させようとしても、人が乗る時点で危険がないとは言いにくい構造です。高所作業には高所作業車を使ってください。

クレーン機能付きの油圧ショベルは扱いが変わります

メーカーがクレーン仕様として設計・表示している機械(つり上げ荷重が定格として設定されているもの)は、つり上げが主たる用途の一部になります。この場合はクレーン等安全規則の適用も検討が必要です。自社の機械がどちらかは、銘板と取扱説明書で確認してください。判断に迷う場合は所轄の労働基準監督署に確認をおすすめします。

現場で決めておくこと

1. 「やむを得ない場面」を先に決めておく

その場の判断で吊ると、必要性の説明ができません。どういう場面なら該当するのかを社内基準として書いておくと、現場が迷いません。例えば「クレーンが進入できない狭隘部で、掘削と一体の作業として行う場合」のように具体化します。

2. つり上げ用器具を機械に紐づける

ロが求めているのは強度・外れ止め・脱落防止の3点です。後付けのフックを溶接するような対応は、強度の根拠を示せません。メーカー純正または強度計算のある器具を使い、どの機械にどの器具が付いているかを台帳に持たせてください。

3. 合図者を指名する

3項一号は「合図を定める」だけでなく「合図を行う者を指名して、その者に合図を行わせる」ところまで求めています。氏名を記録に残してください。

4. 点検表とは別の欄にする

164条は使用時の措置であって検査ではありません。定期自主検査の記録(3年保存)と混ぜないでください。作業前チェックとして別に持つのが扱いやすい形です。

関連:車両系建設機械の作業計画書誘導者・立入禁止・合図玉掛け用具の点検と廃棄基準。条文はe-Gov法令検索(労働安全衛生規則)で確認できます。

よくある質問

Q. ユンボで荷を吊ってもよいですか
原則は禁止です(安衛則164条1項)。ただし2項第一号により、作業の性質上やむを得ないときまたは安全な作業の遂行上必要なときで、かつ所定の要件を満たすつり上げ用器具を取り付けて使用するときは、1項が適用されません。両方の条件が必要です。
Q. フックが付いていれば吊ってよいのですか
足りません。164条2項第一号はイ(やむを得ない、または安全な作業の遂行上必要)とロ(要件を満たすつり上げ用器具)の両方を求めています。器具だけでは条件を満たしません。
Q. つり上げ用器具の要件は何ですか
3つです。負荷させる荷重に応じた十分な強度を有すること、外れ止め装置が使用されていること等により荷が落下するおそれのないこと、作業装置から外れるおそれのないものであることです(164条2項第一号ロ)。
Q. つり上げるときに必要な措置は何ですか
7つです。合図を定めて合図を行う者を指名する、平坦な場所で作業する、危険箇所への立入禁止、最大荷重を超えない、ワイヤロープの要件、つりチェーンの要件、その他の玉掛用具は著しい損傷・腐食がないものを使う(164条3項)。
Q. ワイヤロープの基準はどうなっていますか
安全係数6以上、一よりの間の素線切れが10パーセント未満、直径の減少が公称径の7パーセント以下、キンクしていない、著しい形崩れ及び腐食がないことです(164条3項第五号)。
Q. バケットに人を乗せてもよいですか
いけません。安衛則162条が、作業に従事する作業従事者を乗車席以外の箇所に乗せてはならないと定めています。164条の例外を検討する以前に、162条で禁止されます。高所作業には高所作業車を使ってください。
Q. クレーン仕様の油圧ショベルはどうなりますか
メーカーがクレーン仕様として設計し、つり上げ荷重が定格として設定されている機械は、つり上げが主たる用途の一部になります。この場合はクレーン等安全規則の適用も検討が必要です。銘板と取扱説明書で確認し、迷う場合は所轄の労働基準監督署にご確認ください。
Q. 「やむを得ないとき」とは具体的にどんな場面ですか
条文は具体例を挙げていません。クレーンが進入できない狭隘部で掘削と一体の作業として行う場合などが想定されますが、判断は個別です。手間を惜しんでクレーンを手配しない、という理由は該当しないと考えられます。社内基準として場面を具体化しておくことをおすすめします。
Q. つり上げ以外の用途外使用はどうですか
164条2項第二号により、つり上げ以外の作業で労働者に危険を及ぼすおそれのないときは1項が適用されません。つり上げの場合と違って器具の要件はありませんが、「危険を及ぼすおそれのないとき」という判断が必要です。
Q. 合図は誰が行いますか
指名した者です。164条3項第一号は「一定の合図を定めるとともに、合図を行う者を指名して、その者に合図を行わせること」と定めています。合図の方法を決めるだけでなく、行う人を指名するところまでが要求です。
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本記事は一般的な情報の整理であり、法令への適合を保証するものではありません。個別の義務内容は所管行政庁または専門家にご確認ください。記事の内容は2026-08-29時点の情報です。