車両系荷役運搬機械の作業計画|建設機械とは条文が違います
フォークリフトにも作業計画の義務があります。ところが建設機械の作業計画(安衛則155条)の解説をそのまま当てはめている資料が多く、条文が別物であることが見落とされています。
違いは3つ。記載事項が2つしかないこと、作業指揮者を定める義務があること、そして接触防止の対象に「荷」が入っていることです。特に作業指揮者は建設機械側にない条文で、ここが抜けている現場が多いところです。
この記事の内容(9項目)
- 対象になる機械
- 道路上の走行は対象外です
- 貨物自動車も対象という点に注意
- 建設機械(155条)との違い
- 記載事項は2つだけです
- 作業指揮者を定める(151条の4)
- 「運転者=作業指揮者」にしない
- 作業計画書に指揮者の氏名欄を作る
- 周辺の3条文
- 「荷」に接触する危険まで見る
- 実務での組み方
- 1. 建設機械と様式を分ける
- 2. 構内の定常作業は「基本計画+変更点」で回す
- 3. 点検表とセットで現場に置く
- 4. 貨物自動車を忘れない
- 車両系荷役運搬機械の作業計画にかかわる最近の動き(2026年10月時点)
- 車両系荷役運搬機械の作業計画に出てくる用語
- 車両系荷役運搬機械の作業計画と一緒に押さえておきたいこと
- 作業計画書の保存期間は、条文に定めがない
- 新しい義務ではない。条文は2023年以降変わっていない
- 運転の資格は最大荷重1tで分かれる
- よくある質問
対象になる機械
車両系荷役運搬機械等は安衛則151条の2で定義されています。フォークリフトだけではありません。
| 号 | 機械 |
|---|---|
| 一 | フォークリフト |
| 二 | ショベルローダー |
| 三 | フォークローダー |
| 四 | ストラドルキャリヤー |
| 五 | 不整地運搬車 |
| 六 | 構内運搬車 |
| 七 | 貨物自動車 |
道路上の走行は対象外です
151条の3は括弧書きで「不整地運搬車又は貨物自動車を用いて行う道路上の走行の作業を除く」としています。トラックが公道を走ることまで作業計画に入れる必要はありません。荷役の作業と構内の走行が対象です。
貨物自動車も対象という点に注意
「車両系荷役運搬機械」と聞くとフォークリフトを思い浮かべますが、普通のトラックも第七号で対象です。荷台での荷役作業がある以上、構内での作業計画は必要になります。
建設機械(155条)との違い
並べると構造の差がはっきりします。
| 車両系荷役運搬機械等 (151条の3) | 車両系建設機械 (155条) | |
|---|---|---|
| 適応させる対象 | 場所の広さ及び地形/機械の種類及び能力/荷の種類及び形状等 | 154条の調査により知り得たところ |
| 事前調査の条文 | なし(1項に「場所の広さ及び地形」が組み込まれている) | 154条で調査と記録を別に義務づけ |
| 記載事項 | 2つ(運行経路/作業の方法) | 3つ(種類及び能力/運行経路/作業の方法) |
| 周知の範囲 | 記載事項のすべて | 第二号・第三号のみ |
| 作業指揮者 | 定める義務あり(151条の4) | 条文なし |
| 接触防止の対象 | 機械又はその荷(151条の7) | 機械のみ(158条) |
車両系建設機械
作業計画を定めて周知する。作業指揮者を定める条文は無い車両系荷役運搬機械等
作業計画に加えて、作業の指揮者を定め、作業計画に基づき指揮させる(151条の4)記載事項は2つだけです
151条の3第2項は「当該車両系荷役運搬機械等の運行経路及び当該車両系荷役運搬機械等による作業の方法が示されているものでなければならない」と定めています。建設機械の一号(種類及び能力)にあたる項目がありません。
ただし1項で「機械の種類及び能力」に適応する計画を求めているので、能力を踏まえて計画を作ること自体は前提です。書面に必ず書くべき事項が2つ、という違いです。
作業指揮者を定める(151条の4)
条文はこれだけです。短いのに実務への影響が大きい規定です。
事業者は、車両系荷役運搬機械等を用いて作業を行うときは、当該作業の指揮者を定め、その者に前条第一項の作業計画に基づき作業の指揮を行わせなければならない。
| 論点 | 条文の書きぶり |
|---|---|
| 資格 | 資格要件の定めなし。技能講習や特別教育を求めていない |
| 何をするか | 作業計画に基づき作業の指揮を行う |
| 選任の届出 | 不要。社内で定めればよい |
| 兼任 | 条文上の制限なし。ただし指揮できる立場である必要がある |
「運転者=作業指揮者」にしない
条文は禁じていませんが、運転席にいる人が全体を指揮するのは実際には困難です。荷の状態と周囲の作業者の両方を見られる位置に指揮者を置くのが趣旨に沿います。
作業計画書に指揮者の氏名欄を作る
151条の4は「作業計画に基づき」指揮させることを求めています。計画書に指揮者名の欄があると、計画と指揮が紐づいた形になります。欄が無い様式を使っている場合は追記してください。
周辺の3条文
151条の5〜7の3つは、建設機械の156〜158条とほぼ同じ構造です。ただし接触防止だけ対象が広くなっています。
| 条文 | 内容 | 建設機械側との差 |
|---|---|---|
| 151条の5 制限速度 | 最高速度10km/h超の機械は、あらかじめ適正な制限速度を定める | 同じ |
| 151条の6 転落等の防止 | 必要な幅員の保持、地盤の不同沈下防止、路肩の崩壊防止等。路肩・傾斜地では誘導者 | ほぼ同じ |
| 151条の7 接触の防止 | 運転中の機械又はその荷に接触する危険がある箇所に、作業に従事する者(一人親方なども含む)が立ち入ることを、表示その他の方法で禁止する。誘導者を置くときは不要 | 「荷」が明記されている |
「荷」に接触する危険まで見る
フォークリフトはフォーク上の荷が張り出します。機械の外形だけでなく、荷を含めた範囲で立入禁止を設定してください。条文が「又はその荷に接触することにより」と書いているのは、この張り出しを想定しているためです。
実務での組み方
1. 建設機械と様式を分ける
記載事項も周知範囲も作業指揮者の要否も違うので、1枚の様式で兼ねると必ずどちらかが欠けます。フォークリフト用は指揮者欄を持たせた別様式にしてください。
2. 構内の定常作業は「基本計画+変更点」で回す
倉庫や資材センターのように毎日同じ場所で荷役する場合、毎日ゼロから作る必要はありません。基本の作業計画を1本作り、荷の種類や動線が変わったときだけ差分を記録する形が現実的です。条文は1項で「荷の種類及び形状等に適応する」ことを求めているので、荷が変われば見直しが要ります。
3. 点検表とセットで現場に置く
作業計画(151条の3)と作業開始前点検(フォークリフトは151条の25)は別の義務です。計画は作業のやり方、点検は機械の状態で、どちらも毎日の運用に関わります。フォークリフトの点検はフォークリフト点検表の作り方、不整地運搬車は不整地運搬車の定期自主検査で扱っています。
4. 貨物自動車を忘れない
第七号の貨物自動車も対象です。構内でトラックの荷台から荷を降ろす作業がある事業場は、その作業も計画の範囲に入ります。
関連:建設機械側は車両系建設機械の作業計画書、誘導と立入禁止は誘導者・立入禁止・合図で扱っています。条文はe-Gov法令検索(労働安全衛生規則)で確認できます。
車両系荷役運搬機械の作業計画にかかわる最近の動き(2026年10月時点)
車両系荷役運搬機械の作業計画(151条の3)と作業指揮者(151条の4)の条文そのものは、2023年以降変わっていません。変わったのは、立入禁止の対象と、トラックの荷役まわりの決まり、教育の対象です。
| 日付 | 何が変わったか | 根拠 |
|---|---|---|
| 2023年10月1日 | 最大積載量2t以上の貨物自動車での荷の積み卸しで、昇降設備の設置(151条の67)が義務になった(それまでは5t以上)。保護帽の着用(151条の74)も、2t以上5t未満で荷台の側面が開くものなどに広がった | 労働安全衛生規則151条の67・151条の74 |
| 2024年2月1日 | 貨物自動車のテールゲートリフターを使って荷を積み卸す操作の業務が、特別教育の対象になった | 労働安全衛生規則36条5号の4 |
| 2025年4月1日 | 接触の防止(151条の7)の対象が「労働者」から「その作業場で作業に従事する者」に広がり、表示その他の方法で立入りを禁止する形になった | 令和6年厚生労働省令第80号、令和6年4月30日基発0430第4号 |
| 2025年5月14日 | 改正労働安全衛生法が公布された(令和7年法律第33号) | 厚生労働省「改正法の概要」 |
| 2026年4月1日 | 151条の7の言葉が「作業従事者」に改められた。同日、機械等貸与者の措置の対象にフォークリフト・ショベルローダー・フォークローダーが加わった | 令和8年厚生労働省令第3号、労働安全衛生法施行令10条 |
| 2026年5月27日 | 令和7年の労働災害の確定値が公表された。死亡者は全産業で700人(過去最少)、うち「はさまれ・巻き込まれ」は117人 | 厚生労働省「令和7年の労働災害発生状況」 |
| 2027年4月1日(施行予定) | 作業従事役員等が、労働者と同じ場所で特別教育の対象業務(最大荷重1t未満のフォークリフトの運転など)に就くときは、特別教育を受けることになる | 労働安全衛生法59条4項(e-Gov法令検索の未施行の改正) |
出典:e-Gov法令検索(労働安全衛生規則)/e-Gov法令検索(労働安全衛生法)/e-Gov法令検索(労働安全衛生法施行令)/基発0430第4号/厚生労働省「労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律の概要」/厚生労働省「令和7年の労働災害発生状況」
確認日は2026年10月3日です。自社の作業にあてはめるときは、所轄の労働基準監督署に確認してください。
車両系荷役運搬機械の作業計画に出てくる用語
車両系荷役運搬機械の作業計画の条文には、日常の言い方と少し違う言葉が出てきます。条文で定義があるものとないものを分けておきます。
| 用語 | 意味 | 出典 |
|---|---|---|
| 車両系荷役運搬機械等 | フォークリフト、ショベルローダー、フォークローダー、ストラドルキャリヤー、不整地運搬車、構内運搬車、貨物自動車の7つ | 安衛則151条の2 |
| 構内運搬車 | 専ら荷を運搬する構造の自動車で、長さ4.7m以下・幅1.7m以下・高さ2.0m以下、最高速度が毎時15km以下のもの(不整地運搬車を除く) | 安衛則151条の2第6号 |
| 貨物自動車 | 専ら荷を運搬する構造の自動車で、不整地運搬車と構内運搬車にあたらないもの | 安衛則151条の2第7号 |
| 作業計画 | 場所の広さ・地形、機械の種類・能力、荷の種類・形状等に適応させ、運行経路と作業の方法を示したもの | 安衛則151条の3 |
| 作業指揮者 | 法令上の定義はない。151条の4は「当該作業の指揮者」を定め、作業計画に基づき指揮させることだけを求めている | 安衛則151条の4 |
| 制限速度 | 最高速度が毎時10km超の機械について、場所の地形・地盤の状態等に応じて事業者があらかじめ定める速度 | 安衛則151条の5 |
| 誘導者 | 法令上の定義はない。路肩・傾斜地での転落防止や、接触の防止のために機械を誘導する人 | 安衛則151条の6第2項・151条の7 |
| 関係労働者 | 法令上の定義はない。作業計画の周知を受ける、その作業にかかわる労働者 | 安衛則151条の3第3項 |
車両系荷役運搬機械の作業計画と一緒に押さえておきたいこと
車両系荷役運搬機械の作業計画を調べる人からは、「いつから義務なのか」「どれくらい保存するのか」という質問が多く出ます。あわせて運転の資格も整理しておくと、計画書を作るときに迷いません。
作業計画書の保存期間は、条文に定めがない
151条の3は、作業計画を定めること、それにより作業を行うこと、関係労働者に周知することを求めていますが、記録や保存期間の定めは置かれていません。定期自主検査の記録(フォークリフトは151条の23で3年)とは扱いが違います。ただ、事故が起きたときに計画どおりだったかを示す材料になるので、使っている間は現場に置き、改訂したら古い版も一定期間残しておく運用にしておくと安心です。期間を決めるときは、点検記録の3年にそろえると管理が1本になります。
新しい義務ではない。条文は2023年以降変わっていない
「作業計画書の義務はいつから」という質問がありますが、151条の3と151条の4は近年新しく加わった義務ではありません。e-Gov法令検索の改正履歴で見る限り、2023年4月以降の版で151条の3〜151条の6の本文は変わっていません。最近の改正で変わったのは、上の表のとおり立入禁止の対象(151条の7)などです。
運転の資格は最大荷重1tで分かれる
フォークリフトの運転(道路上の走行を除く)は、最大荷重1t以上なら技能講習の修了などが必要な就業制限業務(安衛令20条11号)、1t未満なら特別教育(安衛則36条5号)です。作業計画に運転者を書く欄を作るなら、機械の最大荷重と運転者の資格を並べて書いておくと、資格の取り違えを防げます。トラックのテールゲートリフターを使う積み卸しは、別に特別教育が必要です(同条5号の4)。
よくある質問
- Q. フォークリフトにも作業計画は必要ですか
- 必要です。安衛則151条の3により、車両系荷役運搬機械等を用いて作業を行うときは、あらかじめ作業計画を定め、その計画により作業を行わなければなりません。フォークリフトは同151条の2第一号の車両系荷役運搬機械等です。
- Q. 車両系建設機械の作業計画と同じですか
- 違います。記載事項が3つではなく2つ(運行経路と作業の方法)、周知の範囲が記載事項の全部、そして作業指揮者を定める義務(151条の4)がある点が異なります。接触防止の対象にも「荷」が含まれています。
- Q. 作業計画に何を書けばよいですか
- 運行経路と作業の方法の2つです(安衛則151条の3第2項)。ただし1項が「場所の広さ及び地形、機械の種類及び能力、荷の種類及び形状等に適応する」計画を求めているので、これらを踏まえて作る必要があります。
- Q. 作業指揮者に資格は必要ですか
- 条文上、資格要件は定められていません。技能講習や特別教育を求める規定もありません。ただし作業計画に基づき作業の指揮を行える立場である必要があります。
- Q. 運転者が作業指揮者を兼ねてもよいですか
- 条文は禁じていませんが、運転席から全体を指揮するのは実際には困難です。荷の状態と周囲の作業者の両方を見られる位置に指揮者を置くのが条文の趣旨に沿います。
- Q. トラックも対象になりますか
- なります。貨物自動車は安衛則151条の2第七号の車両系荷役運搬機械等です。ただし151条の3は「不整地運搬車又は貨物自動車を用いて行う道路上の走行の作業を除く」としているため、公道の走行は対象外で、構内の荷役作業が対象になります。
- Q. 毎日同じ場所で荷役する場合も毎回作りますか
- 基本の作業計画を1本作り、荷の種類や動線が変わったときに見直す形が現実的です。条文が「荷の種類及び形状等に適応する」ことを求めているため、荷が変われば計画の見直しが必要になります。
- Q. 周知はどこまで必要ですか
- 記載事項のすべてです。安衛則151条の3第3項は「前項の規定により示される事項について関係労働者に周知させなければならない」としており、運行経路と作業の方法の両方が対象です。車両系建設機械では第一号が周知の対象外である点と異なります。
- Q. 立入禁止の範囲はどう決めますか
- 機械だけでなく荷を含めた範囲で設定してください。安衛則151条の7は「運転中の車両系荷役運搬機械等又はその荷に接触することにより危険が生ずるおそれのある箇所」としており、フォーク上の荷の張り出しが想定されています。
- Q. 誘導者を置けば立入禁止は不要ですか
- 安衛則151条の7ただし書により、誘導者を配置してその者に誘導させるときは立入禁止の措置は不要です。ただし転落等の防止(151条の6第2項)で路肩・傾斜地に誘導者が必要な場面もあり、目的が異なる点に注意してください。
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