安全衛生

重機作業の安全対策|条文を「作業の順」に並べ替える

公開 2026-09-15更新 2026-09-17 執筆 点検板 編集部

重機作業の安全対策は、労働安全衛生規則の154条から170条にまとまっています。ただし条文は番号の順に並んでいて、現場で使う順番とは違います。制限速度の次に転落防止、その次に接触防止と続くので、朝礼で上から読んでも作業の流れになりません。

この記事では、重機作業の安全対策を作業に入る前/作業中/中断・終了するとき/記録と管理の4つに並べ替えて整理します。どの対策がどの条文から来ているかも、あわせて示します。

重機作業 安全チェックリスト(車両系建設機械)(Excel・無料)重機を使う作業で守ることを、条文(安衛則154〜170条)ごとに並べたチェックリスト。作業前・作業中・終了時・管理の4区分で、判定と是正まで残せます。
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この記事の内容(7項目)

重機作業の安全対策は4つの場面に分かれる

重機作業の安全対策を、条文の番号ではなく場面で分けると次の形になります。ポイントは、作業に入る前にやることがいちばん多いことです。

場面ごとに見る条文
① 作業に入る前調査(154)・作業計画(155)・周知(155-3)・作業開始前点検(170)・制限速度(156)
② 作業中転落等の防止(157)・接触の防止(158)・合図(159)・搭乗の制限(162)・主たる用途以外(164)
③ 中断・終了運転位置から離れるとき(160)・修理等(165)・ブーム等の降下(166)・移送(161)
④ 記録と管理年次(167)・月例(168)・記録3年(169)
①が最も条文の数が多い。事故はここが抜けた状態で起きる

一般には、重機の安全対策というと「作業中の見張り」を思い浮かべる現場が多くあります。実際には、作業に入る前の調査と計画がそろっていれば、作業中に見るべきものは絞られます。順番を入れ替えるだけで、朝礼で伝える内容が短くなります。

作業に入る前の重機作業 安全対策

重機作業の安全対策で最初に来るのは、機械の話ではなく場所の調査です。

安衛則154条(調査及び記録)
事業者は、車両系建設機械を用いて作業を行なうときは、当該車両系建設機械の転落、地山の崩壊等による労働者の危険を防止するため、あらかじめ、当該作業に係る場所について地形、地質の状態等を調査し、その結果を記録しておかなければならない。

そして155条が「前条の規定による調査により知り得たところに適応する作業計画を定め」と続きます。調査が先で、計画が後です。この順番が逆になっている現場では、計画書が前の現場の写しになりがちです。

作業計画に示すのは3つだけ

示す事項関係労働者への周知
使用する車両系建設機械の種類及び能力対象外
運行経路必要
作業の方法必要

周知が必要なのは二号と三号です(155条3項)。一号は条文上は周知の対象に入っていませんが、機械の能力を知らないまま作業する人がいるほうが危ないので、法定は二号・三号、社内の決まりとして一号も伝えるという整理にしておくと迷いません。

作業開始前点検は「ブレーキ及びクラッチ」

170条が名指しで求めているのは、ブレーキとクラッチの機能です。実務ではこれだけでは足りないので、エンジン・油圧・走行装置・作業装置まで見る現場がほとんどです。条文が求める最低限と、自社で決めた項目を分けて書いておくと、点検表が形だけにならずに済みます。

制限速度(156条)は、最高速度が10km/hを超える機械について定めます。場内で「歩行速度」と決めている現場が多く、数字にすると5km/h前後になります。

作業中の重機作業 安全対策は「人と機械を分ける」

作業中の重機作業 安全対策は、突き詰めると人と機械を同じ場所に置かないことに集約されます。条文もその形になっています。

安衛則158条(接触の防止)
事業者は、車両系建設機械を用いて作業を行なうときは、運転中の車両系建設機械に接触することにより労働者に危険が生ずるおそれのある箇所に、労働者を立ち入らせてはならない。ただし、誘導者を配置し、その者に当該車両系建設機械を誘導させるときは、この限りでない。

立入禁止か、誘導者か。どちらかは必ず要る

ここは二択です。立入禁止にするか、誘導者を置くか。両方とも無い状態で機械を動かすと、条文に合いません。実際の災害では「コーンが倒れていた」「誘導員が別の作業に呼ばれていた」という形で、どちらも無くなっている時間帯に起きています。

誘導者を置いたときは、合図の方法を定めて、運転者はその合図に従います(159条)。合図の方法を決めずに誘導員だけ置くのが、いちばん多い抜けです。

そのほか、作業中に条文があるもの

条文内容現場で起きがちなこと
157条路肩・傾斜地等での転落・転倒の防止。必要なら誘導者雨のあとに法肩が緩んでいるのに、前日と同じ位置で作業する
162条乗車席以外の場所に人を乗せないバケットや車体に人が乗って移動する
164条主たる用途以外の使用の制限(つり上げ等)ショベルで資材をつる。例外の条件を満たしていない
166条ブーム・アーム等を上げたまま、その下に入らない「すぐ終わる」と言って下にもぐる

164条は「絶対に禁止」ではなく、条件を満たせば認められる形の条文です。つってよい条件がどこに書いてあるかを知っているかどうかで、現場の判断が変わります。詳しくは主たる用途以外の使用で整理しています。

重機作業 安全チェックリスト(車両系建設機械)(Excel・無料)重機を使う作業で守ることを、条文(安衛則154〜170条)ごとに並べたチェックリスト。作業前・作業中・終了時・管理の4区分で、判定と是正まで残せます。
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中断・終了するときの重機作業 安全対策

作業が終わるときの対策は、条文が具体的です。

安衛則160条(運転位置から離れる場合の措置)
事業者は、車両系建設機械の運転者が運転位置から離れるときは、当該運転者に次の措置を講じさせなければならない。
一 バケット、ジッパー等の作業装置を地上に下ろすこと。
二 原動機を止め、かつ、走行ブレーキをかける等の車両系建設機械の逸走を防止する措置を講ずること。

「離れるとき」には、昼休みも、給油も、少し話をしに行くだけも含まれます。時間の長さで分かれていません。

アタッチメントの交換には作業指揮者が要る

見落とされやすいのが165条です。修理だけでなく、アタッチメントの装着・取り外しの作業も対象で、作業を指揮する者を定めて、その人に手順を決めさせ、直接指揮させることが求められています。バケットとブレーカを付け替える作業も、これに当たります。

あわせて166条で、ブーム等を上げたままその下で作業するときは、安全支柱・安全ブロック等を使うことになっています。「押さえていてもらう」は措置になりません。

記録が残っていないと、対策をしていないことになる

重機作業の安全対策は、やっていても記録が無いと確認のしようがありません。労働基準監督署の臨検や、災害が起きたあとの調査で見られるのは記録です。

残すもの条文保存
事前調査の結果154条定めなし(工事終了まで現場で保管を推奨)
作業計画・周知の記録155条定めなし(同上)
作業開始前点検170条定めなし
定期自主検査(月例・年次)の記録169条3年間

保存期間が条文で決まっているのは、定期自主検査の記録だけです。ただし定めが無いものは残さなくてよい、という意味ではありません。調査も計画も、やった事実を示せるのは書面だけです。1枚にまとめて現場に置いておくと、聞かれたときにそのまま出せます。

記録の保存期間は対象ごとに違います。点検記録は何年保存すればよいのかに一覧で整理しています。

チェックリストにして、現場で残す

ここまでの対策を、作業の順に並べたチェックリストにしたものを配布しています。判定は良・否・対象外で、「否」が付いたあとに誰へ伝えて、いつ直って、いつ再開したかまで書けるようにしてあります。

紙でもExcelでも使えます。元請に提出する場合は様式名だけ合わせて、項目はそのまま使ってください。

この記事に対応する様式
重機作業 安全チェックリスト(条文番号つき)/重機作業計画書(調査と周知の記録欄つき)

よくある質問

Q. 重機作業の安全対策で、まず何から手を付ければよいですか
事前調査(154条)と作業計画(155条)です。ここがそろうと、作業中に見るべきものが絞られます。逆に、この2つが無い状態で作業中の見張りだけを増やしても、危険の見落としは減りません。
Q. 誘導者は資格が要りますか
誘導者そのものに法定の資格はありません。ただし合図の方法を定めて、運転者がその合図に従える状態にする必要があります(159条)。誰が誘導者かを作業前に決めて、全員に伝えてください。
Q. 小型の機械でも同じ対策が必要ですか
機体重量3トン未満の機械でも、車両系建設機械であれば154条以下がそのまま適用されます。分かれるのは運転に必要な資格(技能講習か特別教育か)だけです。
Q. チェックリストに全部「良」が付いていれば大丈夫ですか
チェックを付けること自体が義務ではなく、条文の措置を実際に行うことが義務です。チェックリストは、その措置を抜けなく回すための道具として使ってください。
重機作業 安全チェックリスト(車両系建設機械)(Excel・無料)重機を使う作業で守ることを、条文(安衛則154〜170条)ごとに並べたチェックリスト。作業前・作業中・終了時・管理の4区分で、判定と是正まで残せます。
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本記事は一般的な情報の整理であり、法令への適合を保証するものではありません。個別の義務内容は所管行政庁または専門家にご確認ください。記事の内容は2026-09-17時点の情報です。