誘導者・立入禁止・合図|重機まわりの3条文は二択でつながっている
重機の周りをどう囲うか。バリケードで立入禁止にするのか、誘導員を立てるのか。現場によって運用がばらつく部分ですが、条文を読むとこれは「二択」として設計されています。
しかも誘導者を選ぶと、合図を定める義務が追加で発生します。誘導員を立てている現場は多いので、合図まで書き出しておくと条文の形がそろいます。この記事では157〜159条のつながりを整理します。
この記事の内容(9項目)
- 3つの条文の関係
- 157条の誘導者は二択ではありません
- 157条|機械を倒さないための措置
- 2項|路肩・傾斜地では誘導者
- 作業計画の段階で決める
- 158条|立入禁止か、誘導者か
- 「表示することその他の方法」の幅
- 運転者は誘導者の誘導に従う(158条2項)
- 範囲は旋回半径で決める
- 159条|誘導者を置いたら合図を定める
- 「一定の」が意味すること
- 荷役運搬機械では条文が別です
- 現場でまとめるときの3点
- 建設機械の誘導者にかかわる最近の動き(2026年10月時点)
- 建設機械の誘導者に出てくる用語
- 建設機械の誘導者と一緒に押さえておきたいこと
- 建設機械の誘導者の配置は義務か
- 建設機械の誘導者に資格は要るか
- オペレーター付きで借りた重機は、合図の方法を伝える
- 立入禁止の範囲は、作業の影響が及ぶ範囲で決める
- よくある質問
3つの条文の関係
まず全体像です。同じ「重機の周囲」を扱っていますが、目的が違います。
| 条文 | 守る対象 | 危険の型 | 求められる措置 |
|---|---|---|---|
| 157条 転落等の防止 | 機械(と運転者) | 機械が倒れる・落ちる | 運行経路の措置+路肩・傾斜地では誘導者 |
| 158条 接触の防止 | 周囲の作業者 | 動いている機械にぶつかる | 立入禁止 または 誘導者(二択) |
| 159条 合図 | 誘導の実効性 | 誘導が伝わらない | 一定の合図を定め、誘導者に行わせる |
A:立入禁止で対応
危険箇所への立入を、見やすい箇所に表示等で禁止する。誘導者は不要。
合図の義務も発生しない
B:誘導者を配置
158条ただし書で立入禁止に代えられる。ただし159条により合図を定め、誘導者に行わせる義務がセットで付く
157条の誘導者は二択ではありません
混同しやすい点です。158条の誘導者は立入禁止の代替ですが、157条2項の誘導者は路肩・傾斜地で転倒転落のおそれがあるときに必ず配置するものです。代替ではありません。
つまり路肩や傾斜地で作業するなら、立入禁止にしていても誘導者が要る場面があります。
157条|機械を倒さないための措置
1項は運行経路そのものへの措置です。
事業者は、車両系建設機械を用いて作業を行うときは、車両系建設機械の転倒又は転落による労働者の危険を防止するため、当該車両系建設機械の運行経路について路肩の崩壊を防止すること、地盤の不同沈下を防止すること、必要な幅員を保持すること等必要な措置を講じなければならない。
| 措置 | 現場で見ること |
|---|---|
| 路肩の崩壊を防止 | 法肩からの離隔、土留めの状態、雨天後の緩み |
| 地盤の不同沈下を防止 | 敷鉄板、覆工板、埋戻し部の締固め |
| 必要な幅員を保持 | 機体幅+余裕。すれ違い箇所の幅 |
2項|路肩・傾斜地では誘導者
2項は「路肩、傾斜地等で車両系建設機械を用いて作業を行う場合において、転倒又は転落により労働者に危険が生ずるおそれのあるときは、誘導者を配置し、その者に誘導させなければならない」としています。
3項で運転者は誘導者の誘導に従わなければならないと定められています。誘導者を置いても運転者が見ていなければ意味がないため、運転者側にも義務が課されています。
作業計画の段階で決める
幅員も地盤対策も誘導者の要否も、現場に入ってから決めるものではありません。作業計画(155条)で運行経路を定めるときに一緒に決めるのが条文の流れです。車両系建設機械の作業計画書で扱っています。
158条|立入禁止か、誘導者か
条文はこうです。ただし書がポイントです。
事業者は、車両系建設機械を用いて作業を行うときは、運転中の車両系建設機械に接触することにより危険が生ずるおそれのある箇所に当該作業場において作業に従事する作業従事者が立ち入ることについて、禁止する旨を見やすい箇所に表示することその他の方法により禁止しなければならない。ただし、誘導者を配置し、その者に当該車両系建設機械を誘導させるときは、この限りでない。
| A:立入禁止 | B:誘導者 | |
|---|---|---|
| やること | 危険箇所への立入を禁止する | 誘導者を配置して誘導させる |
| 方法 | 見やすい箇所に表示することその他の方法 | 条文に方法の指定はない(159条の合図を定める) |
| 追加で発生する義務 | なし | 159条の合図 |
| 向く場面 | 作業範囲が固定、他の作業と分離できる | 他職と輻輳する、範囲が動く |
| 弱点 | 範囲が曖昧だと機能しない | 誘導者が離れると成立しない |
「表示することその他の方法」の幅
この書き方は2025年4月1日の改正で入りました。施行通達(基発0430第4号)では、表示による禁止が最も適切だという趣旨ではなく、バリケードや施錠など、現場の実態に合った方法を選べるとされています。どの方法でも、作業する人が見て分かる形にしておくことが前提です。図面上だけで囲っても機能しません。
同じ改正で、禁止の対象が「労働者」から「作業に従事する者」に広がりました。自社の労働者だけでなく、一人親方や他社の作業者、現場監督、写真撮影や荷物の搬入で入る人も含まれるとされています。
運転者は誘導者の誘導に従う(158条2項)
158条2項は、ただし書の誘導者を置いたときに、運転者がその誘導に従わなければならないと定めています。157条3項、159条2項と同じく、運転者の側にも義務が置かれています。
範囲は旋回半径で決める
「接触することにより危険が生ずるおそれのある箇所」は機械の外形ではなく動く範囲です。バックホーなら後方旋回半径、ブームの届く範囲まで含めて設定してください。
159条|誘導者を置いたら合図を定める
短い条文ですが、抜けが多いところです。
事業者は、車両系建設機械の運転について誘導者を置くときは、一定の合図を定め、誘導者に当該合図を行なわせなければならない。
前項の車両系建設機械の運転者は、同項の合図に従わなければならない。
| 条文が求めること | 実務での落とし込み |
|---|---|
| 一定の合図を定める | 手信号/笛/無線のどれか。現場で統一する |
| 誘導者に行わせる | 誘導者を指名し、合図の方法を教える |
| 運転者は従う | 合図が見えない位置では動かさない |
「一定の」が意味すること
その場のジェスチャーではなく、あらかじめ決めておいた合図という意味です。人によって手の動きが違うと、誘導者が交代したときに伝わりません。作業計画書か現場のルールとして書き出しておくのが確実です。
荷役運搬機械では条文が別です
フォークリフトなど車両系荷役運搬機械等には、対応する条文が別に置かれています。内容はほぼ同じですが、接触防止の対象が広くなっています。
| 内容 | 車両系建設機械 | 車両系荷役運搬機械等 |
|---|---|---|
| 転落等の防止・誘導者 | 157条 | 151条の6 |
| 接触の防止・立入禁止 | 158条(機械のみ) | 151条の7(機械又はその荷) |
| 合図 | 159条 | 151条の8 |
フォークリフトはフォーク上の荷が張り出すため、条文が「又はその荷に接触することにより」と書いています。立入禁止の範囲を機械の外形で決めると足りません。詳しくは車両系荷役運搬機械の作業計画で扱っています。
現場でまとめるときの3点
- どちらを選んだかを書面に残す。立入禁止か誘導者か。両方使う場所があるなら区域ごとに
- 誘導者の氏名と合図の方法をセットで書く。誘導者だけ書いて合図が空欄、になりやすい
- 路肩・傾斜地は別扱い。立入禁止にしていても157条2項の誘導者が必要になる場面がある
関連:車両系建設機械の作業計画書、建設機械の移送と積み降ろし、主たる用途以外の使用。条文はe-Gov法令検索(労働安全衛生規則)で確認できます。
建設機械の誘導者にかかわる最近の動き(2026年10月時点)
建設機械の誘導者と立入禁止の条文は、2025年と2026年に続けて書き換えられています。中身の骨組み(立入禁止か誘導者かの二択、誘導者には合図)は変わっていませんが、誰を守るかの範囲が広がりました。日付順に並べます。
| 日付 | 出来事 | 誘導者・立入禁止への影響 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 2024年4月30日 | 労働安全衛生規則等の一部を改正する省令(令和6年厚生労働省令第80号)公布、施行通達(基発0430第4号) | 立入禁止などの措置を、労働者以外の人にも広げる改正。施行は2025年4月1日 | 厚生労働省 通達 |
| 2025年4月1日 | 上の改正省令が施行 | 158条・151条の7が「労働者を立ち入らせてはならない」から「作業に従事する者が立ち入ることについて、表示その他の方法により禁止」に変わった | e-Gov法令検索(改正履歴) |
| 2025年5月14日 | 改正労働安全衛生法(令和7年法律第33号)公布 | 注文者・元方・機械の貸与者などの措置の対象を、一人親方などの作業従事者に広げる改正 | 厚生労働省 改正法の概要 |
| 2026年4月1日 | 改正労働安全衛生法の主な部分と、関係省令の整備(令和8年厚生労働省令第3号)が施行 | 158条の「作業に従事する者」が「作業に従事する作業従事者」に言い換えられた | e-Gov法令検索(改正履歴) |
| 2026年5月27日 | 令和7年の労働災害発生状況(確定値)公表 | 全産業の死亡者700人(過去最少)、建設業214人。事故の型では、はさまれ・巻き込まれ117人 | 厚生労働省 報道発表 |
ポイントはここです。立入禁止の対象には、元請・下請の別や雇用関係にかかわらず、その場で作業する人が入ります。立入禁止の表示や誘導者の配置を決めるときは、協力会社の作業者や一人親方も同じ扱いで周知すると、条文の形と合います。
出典:e-Gov法令検索 労働安全衛生規則(第157条〜第159条・第151条の6〜第151条の8)/厚生労働省 労働安全衛生規則等の一部を改正する省令の施行等について(基発0430第4号)/厚生労働省 労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律(令和7年法律第33号)の資料/厚生労働省 令和7年の労働災害発生状況
確認日は2026年10月3日です。個別の現場での当てはめは、所轄の労働基準監督署に確認してください。
建設機械の誘導者に出てくる用語
建設機械の誘導者まわりの条文に出てくる言葉を、条文と通達の書き方に沿って並べます。
| 用語 | 意味 | 出典 |
|---|---|---|
| 誘導者 | 車両系建設機械を誘導する人。現場では誘導員・合図者とも呼ばれる | 法令上の定義はない(安衛則157条2項・158条・159条で使われる) |
| 一定の合図 | あらかじめ決めておく合図。手信号・笛・無線など方法の指定はない | 安衛則159条1項(荷役運搬機械は151条の8) |
| 作業従事者 | その作業場で作業に従事する人。自社の労働者に限らず、一人親方や他社の作業者も含む | 安衛則158条(2026年4月1日から)、基発0430第4号 |
| 立入禁止 | 運転中の機械に接触するおそれのある箇所に入ることを、表示その他の方法で禁止すること | 安衛則158条1項 |
| 運行経路 | 機械が走る道筋。作業計画に示し、関係労働者に周知する | 安衛則155条2項2号・3項 |
| 作業計画 | 使用する機械の種類と能力、運行経路、作業の方法を示した計画 | 安衛則155条 |
| 車両系建設機械 | 令別表第七に掲げる建設機械で、動力を用い、不特定の場所に自走できるもの | 安衛令13条3項9号・別表第七 |
| 機械等貸与者 | 建設機械などを他の事業者に貸す者。貸す前の点検と、能力・注意事項を書いた書面の交付が求められる | 安衛則665条・666条 |
建設機械の誘導者と一緒に押さえておきたいこと
建設機械の誘導者について、条文の二択の話とは別に、現場でよく出る疑問を4つ取り上げます。
建設機械の誘導者の配置は義務か
建設機械の誘導者の配置は、場面によって扱いが違います。路肩・傾斜地などで転倒・転落のおそれがあるときは、157条2項で配置が必要です。一方、接触の防止(158条)では、立入禁止で対応するなら誘導者は要りません。誘導者を置く場合は、159条で合図を定めることになります。
建設機械の誘導者に資格は要るか
安衛則157条〜159条には、誘導者の資格や講習の定めは書かれていません。そのうえで、合図の方法を教え、誰が誘導者かを指名しておくと、交代したときも同じ合図が通じます。公道で一般の車や歩行者を誘導する交通誘導は、警備業法の枠組みで扱われるもので、ここでいう誘導者とは別のものです。
オペレーター付きで借りた重機は、合図の方法を伝える
重機をオペレーター付きで借りると、運転する人は自社の労働者ではありません。このとき、借りた事業者は、操作する人が必要な資格を持っているかを確かめ、作業の内容・指揮の系統・連絡や合図の方法・運行の経路などを伝えることが求められています(安衛則667条)。誘導者の合図を決めたら、オペレーターにも同じものを渡しておきます。
立入禁止の範囲は、作業の影響が及ぶ範囲で決める
通達では、立入禁止などの義務が及ぶ場所を、作業が行われている一定の区切られた範囲(作業の影響が直接及ぶと考えられる合理的な範囲)としています。現場全体を一律に禁止する必要はありませんが、旋回範囲やブームの届く範囲は外さないように区切ると、判断がぶれにくくなります。範囲の決め方は車両系建設機械の作業計画書の運行経路の決め方とあわせて見てください。
よくある質問
- Q. 重機のまわりは立入禁止にすべきですか、誘導者を置くべきですか
- 安衛則158条では二択です。本文が立入禁止を求め、ただし書で「誘導者を配置し、その者に誘導させるときは、この限りでない」としています。どちらでも構いませんが、誘導者を選ぶと159条の合図の義務が付きます。
- Q. 誘導者を置けば立入禁止は不要ですか
- 158条の接触防止については不要になります。ただし157条2項は、路肩・傾斜地等で転倒・転落のおそれがあるときに誘導者の配置を別途求めています。こちらは立入禁止の代替ではなく必須です。
- Q. 誘導者を置いたら他に何が必要ですか
- 合図です。安衛則159条により、誘導者を置くときは一定の合図を定め、誘導者にその合図を行わせなければなりません。誘導者の配置とあわせて、合図の方法も決めておきます。
- Q. 「一定の合図」とは何ですか
- その場のジェスチャーではなく、あらかじめ決めておいた合図という意味です。手信号・笛・無線のいずれでも構いませんが、現場で統一し、誘導者が交代しても同じ意味になる状態にしてください。作業計画書か現場ルールとして書き出しておくのが確実です。
- Q. 立入禁止の範囲はどう決めますか
- 機械の外形ではなく動く範囲です。「接触することにより危険が生ずるおそれのある箇所」なので、バックホーなら後方旋回半径やブームの届く範囲まで含めて設定します。
- Q. 立入禁止の方法に決まりはありますか
- 条文は「禁止する旨を見やすい箇所に表示することその他の方法により」としています。施行通達(基発0430第4号)では、表示が最も適切という趣旨ではなく、バリケードや施錠など実態に合った方法を選べるとされています。どの方法でも、作業する人が見て分かる形にしておくことが前提です。
- Q. 立入禁止の対象は自社の労働者だけですか
- 違います。2025年4月1日の改正で、対象は「労働者」から「作業に従事する者」に広がり、2026年4月1日からは「作業従事者」と書かれています。一人親方や他社の作業者、現場監督、写真撮影や荷物の搬入で入る人も含まれるとされています。
- Q. 運転者にも義務はありますか
- あります。安衛則157条3項と158条2項は運転者が誘導者の誘導に従うこと、159条2項は運転者が合図に従うことを定めています。誘導者を置いても運転者が見ていなければ機能しないためです。
- Q. 運行経路にはどんな措置が必要ですか
- 安衛則157条1項により、路肩の崩壊を防止すること、地盤の不同沈下を防止すること、必要な幅員を保持すること等の措置が必要です。これらは作業計画(155条)で運行経路を定めるときに一緒に決めるのが条文の流れです。
- Q. フォークリフトでも同じ条文ですか
- 違います。車両系荷役運搬機械等には151条の6(転落等の防止)、151条の7(接触の防止)、151条の8(合図)が対応します。151条の7は「機械又はその荷に接触することにより」と書かれており、フォーク上の荷の張り出しまで対象になる点が異なります。
- Q. 書面には何を残せばよいですか
- 立入禁止と誘導者のどちらを選んだか、誘導者を選んだ場合は氏名と合図の方法です。誘導者の欄はあるが合図の方法が空欄、という書類になりやすいので気をつけてください。区域ごとに使い分ける場合は区域も明記してください。
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本記事は一般的な情報の整理であり、法令への適合を保証するものではありません。個別の義務内容は所管行政庁または専門家にご確認ください。記事の内容は2026-10-03時点の情報です。