建設機械の移送と積み降ろし|道板を使うときの3つの条件
建設機械の事故のうち、作業中ではなく積み降ろしの最中に起きるものが一定数あります。道板から機械が滑り落ちる、機体が横転する、といった型です。
この場面には専用の条文があります。労働安全衛生規則161条で、道板や盛土を使うときの条件が3つ定められています。点検表にも作業計画書にも入らない領域なので、独立して押さえておく価値があります。
この記事の内容(5項目)
条文が適用される場面
161条は、どんな移送にもかかるわけではありません。適用の条件が本文に書かれています。
事業者は、車両系建設機械を移送するため自走又はけん引により貨物自動車に積卸しを行う場合において、道板、盛土等を使用するときは、当該車両系建設機械の転倒、転落等による危険を防止するため、次に定めるところによらなければならない。
| 場面 | 161条の適用 |
|---|---|
| 自走で道板を登って積む | 適用される |
| ウインチでけん引して道板から積む | 適用される |
| 盛土や仮設台を使って積む | 適用される |
| クレーンで吊って積む | 161条ではない(クレーン等安全規則・玉掛けの系統) |
| 荷台が地面まで下がる車両(セルフローダー等)で、道板を使わない | 本文の条件に当たらない |
吊って積むなら別の条文です
161条は「道板、盛土等を使用するとき」の規定です。クレーンで吊り上げて積む場合は玉掛けとクレーンの規定に移ります。ワイヤロープの選定や合図はそちらの話になるので、混ぜないでください。玉掛け用具は玉掛け用具の点検と廃棄基準で扱っています。
条文の3つの条件
161条が定める3号は、そのまま作業前のチェック項目になります。
| 号 | 条文のまま | 現場で確認すること |
|---|---|---|
| 一 | 積卸しは、平たんで堅固な場所において行なうこと。 | 路肩・路側帯・軟弱地盤・傾斜のある場所を避ける。雨天後の地盤沈下 |
| 二 | 道板を使用するときは、十分な長さ、幅及び強度を有する道板を用い、適当なこう配で確実に取り付けること。 | 道板の定格荷重と機体重量、幅と履帯・タイヤ幅、勾配、荷台への掛かり代、固定 |
| 三 | 盛土、仮設台等を使用するときは、十分な幅及び強度並びに適度な勾配を確保すること。 | 盛土の締固め、縁の崩れ、仮設台の支持力 |
「十分な」「適当な」は数値で決まっていません
条文は具体的な数値を示していません。判断の拠り所は道板メーカーが示す定格荷重・適合機種・推奨勾配になります。社内基準を作るなら、使用する道板の仕様書から数値を引いて明文化してください。
強度は「機体重量」で見る
道板の定格荷重は機体重量に対して決まります。アタッチメントを替えていれば重量が変わります。カタログの標準機体重量ではなく、実機の構成で確認してください。
積み降ろしの前後に効く条文
161条だけでは足りません。前後の条文が実際の事故に直結します。
| 条文 | 内容 | 積み降ろしでの意味 |
|---|---|---|
| 160条 運転位置から離れる場合 | ①バケット、ジッパー等の作業装置を地上に下ろす ②原動機を止め、走行ブレーキをかける等の逸走を防止する措置 | 積んだ後に運転者が降りるとき。ブームを上げたまま離れない |
| 162条 搭乗の制限 | 作業に従事する作業従事者を乗車席以外の箇所に乗せてはならない | 誘導のために履帯やステップに人を乗せない |
| 163条 使用の制限 | 構造上定められた安定度、最大使用荷重等を守る | 登坂時の姿勢。アームを伸ばしたまま登らない |
| 157条2項 誘導者 | 転倒・転落のおそれがあるときは誘導者を配置 | 道板上は視界が悪い。誘導者と合図(159条)をセットで |
事故が起きやすい順番
実務で聞く事故の型は、おおむね次の場面に集中します。
- 道板の踏み外し|幅が足りない、または斜めに乗り上げた
- 道板の跳ね上がり|荷台への掛かり代が浅く、途中で外れた
- 登坂中の後方転倒|アームやブレードの姿勢が悪く重心が後ろに寄った
- 地盤の沈下|トレーラの片側が軟弱地盤に沈み、道板が傾いた
- 降ろすときの急加速|下り勾配で速度が出た
いずれも161条の3号(平坦で堅固/道板の条件/盛土等の条件)と163条(安定度)に対応しています。条文が想定している危険と、実際の事故の型が一致している領域です。
チェック表に落とすときの注意
1. 点検表と混ぜない
161条は「移送のときに講じる措置」であって、機械の状態を見る検査ではありません。定期自主検査の記録(3年保存)とは別です。同じ欄に並べると、どこまでを3年残すのかが分からなくなります。配布しているExcel様式でも、作業前チェックは別シートにしてあります。
2. 記録の保存義務はありません
161条に記録・保存の定めはありません。ただし実施の証跡が無いのは別のリスクなので、移送のたびに1行残す運用にしておくと、事故が起きたときに説明できます。
3. 道板の仕様を控えておく
「十分な長さ、幅及び強度」の判断根拠は道板の仕様です。定格荷重・幅・長さ・適合勾配を台帳に控えておくと、機械を替えたときに毎回調べ直さずに済みます。道板そのものは点検対象の機械ではありませんが、変形・亀裂・滑り止めの摩耗は見ておく価値があります。
4. 誘導者と合図をセットにする
道板上は運転席から足元が見えません。誘導者を置くなら合図の方法を決めて誘導者に行わせる(159条)ところまでが条文の要求です。詳しくは誘導者・立入禁止・合図で扱っています。
関連:車両系建設機械の作業計画書、主たる用途以外の使用。条文はe-Gov法令検索(労働安全衛生規則)で確認できます。
よくある質問
- Q. 重機の積み降ろしに条文はありますか
- あります。労働安全衛生規則161条が、車両系建設機械を移送するため自走またはけん引により貨物自動車に積卸しを行う場合で、道板や盛土等を使用するときの措置を3つ定めています。
- Q. 道板を使うときの条件は何ですか
- 十分な長さ、幅及び強度を有する道板を用い、適当なこう配で確実に取り付けることです(安衛則161条第二号)。あわせて第一号により、積卸しは平坦で堅固な場所で行う必要があります。
- Q. 道板の長さや勾配に数値の基準はありますか
- 条文には数値がありません。「十分な」「適当な」としか書かれていないため、判断の拠り所は道板メーカーが示す定格荷重・適合機種・推奨勾配になります。社内基準を作る場合は道板の仕様書から数値を引いて明文化してください。
- Q. クレーンで吊って積む場合も161条ですか
- 違います。161条は「道板、盛土等を使用するとき」の規定です。クレーンで吊り上げて積む場合は、クレーン等安全規則と玉掛けの規定に移ります。ワイヤロープの選定や合図もそちらの系統になります。
- Q. 盛土を使う場合の条件は何ですか
- 十分な幅及び強度並びに適度な勾配を確保することです(安衛則161条第三号)。仮設台等を使う場合も同じ号が適用されます。
- Q. 積んだ後に運転者が降りるときの注意は何ですか
- 安衛則160条により、バケット・ジッパー等の作業装置を地上に下ろし、原動機を止めて走行ブレーキをかける等の逸走を防止する措置を講じる必要があります。ブームを上げたまま運転位置を離れないでください。
- Q. 誘導のために履帯に人を乗せてもよいですか
- いけません。安衛則162条により、作業に従事する作業従事者を乗車席以外の箇所に乗せてはならないとされています。誘導は機外から行ってください。
- Q. 道板上で誘導者を置くときに必要なことはありますか
- 安衛則159条により、誘導者を置くときは一定の合図を定め、誘導者にその合図を行わせなければなりません。誘導者を立てるだけでは条文上不十分です。
- Q. 積み降ろしの記録は残す必要がありますか
- 161条に記録・保存の定めはありません。ただし実施の証跡がないのはリスクなので、移送のたびに1行残す運用にしておくと、事故が起きたときに説明できます。定期自主検査の記録(3年保存)とは別扱いです。
- Q. アタッチメントを替えると道板の選び方は変わりますか
- 変わります。道板の定格荷重は機体重量に対して決まるため、アタッチメントの変更で重量が変われば適合する道板も変わります。カタログの標準機体重量ではなく、実機の構成で確認してください。
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本記事は一般的な情報の整理であり、法令への適合を保証するものではありません。個別の義務内容は所管行政庁または専門家にご確認ください。記事の内容は2026-08-31時点の情報です。