建設機械の車検と特定自主検査|重なる部分だけが免除されます
公道を走る建設機械は、道路運送車両法の定期点検整備と労働安全衛生法の特定自主検査の両方がかかります。似た項目を2回見ることになるため、「片方でよいのでは」という話が現場で出ます。
条文には重複を免除する規定が実際にあります。ただし免除されるのは「点検を行った部分」だけで、検査そのものが不要になるわけではありません。この記事では、どこまでが重なり、どこが残るのかを整理します。
この記事の内容(5項目)
2つの制度は目的が違います
まず前提です。同じ機械を見ていても、法律の目的が違います。
| 道路運送車両法の定期点検整備 | 特定自主検査・定期自主検査 | |
|---|---|---|
| 目的 | 道路運送車両の安全確保と公害防止 | 労働者の危険の防止 |
| 義務者 | 自動車の使用者 | 事業者 |
| 周期 | 自動車の区分により3月/6月/1年(48条1項) | 年次は一年以内(不整地運搬車は二年) |
| 記録 | 点検整備記録簿(49条)。記載5事項 | 記録6項目を3年保存 |
| 実施者 | 使用者(整備工場に依頼が一般的) | 年次は検査業者または有資格者 |
| 対象外 | 小型特殊自動車は除外(48条1項) | — |
「車検」と「定期点検整備」は別のものです
一般に車検と呼ばれるのは継続検査(有効期間の更新)で、48条の定期点検整備とは別の手続きです。重複免除の条文が引いているのは48条1項の定期点検整備のほうなので、混同しないでください。
重複免除の条文
免除は機械ごとに別々の条文で置かれていますが、書きぶりはほぼ同じです。
事業者は、運行の用に供する車両系建設機械(道路運送車両法第四十八条第一項の適用を受けるものに限る。)について、同項の規定に基づいて点検を行つた場合には、当該点検を行つた部分については第百六十七条の自主検査を行うことを要しない。
(安衛則169条の2第6項)
| 機械 | 条文 |
|---|---|
| 車両系建設機械 | 安衛則169条の2第6項 |
| フォークリフト | 安衛則151条の24第3項 |
| 不整地運搬車 | 安衛則151条の56第3項 |
条件は2つあります
現場内でしか使わない機械には免除がありません。「運行の用に供する」と書かれているためです。トレーラで運ぶ機械は、自走で公道を走らない限りここに当たらないのが通常です。
免除されるのは「部分」だけ
ここが最も誤解されるところです。条文は「当該点検を行つた部分については」と限定しています。特定自主検査そのものが不要になるわけではありません。
| 検査事項(安衛則167条) | 車両法の点検と重なるか |
|---|---|
| 一 原動機 | 重なりやすい |
| 二 動力伝達装置 | 重なりやすい |
| 三 走行装置(履帯・タイヤ) | 重なりやすい |
| 四 操縦装置 | 重なりやすい |
| 五 ブレーキ | 重なりやすい |
| 六 作業装置(ブレード、ブーム、バケット、ワイヤロープ) | 重ならない |
| 七 油圧装置(作業装置側) | 重ならない部分が残る |
| 八 電気系統 | 一部重なる |
| 九 車体、ヘッドガード、警報装置、灯火装置等 | 一部重なる |
作業装置は車両法の点検項目に入りません。バケットやブーム、作業用の油圧回路は、車検を受けていても特定自主検査の対象として残ります。
突き合わせに使うのは点検整備記録簿
道路運送車両法49条により、使用者は点検整備記録簿を当該自動車に備え置き、点検・整備をしたときは点検の年月日/点検の結果/整備の概要/整備を完了した年月日などを記載します。この記録簿と、特定自主検査の記録表を並べて、どの号が実際に見られているかを確認してください。
なお点検整備記録簿の保存期間は国土交通省令で定めるとされており(49条3項)、労働安全衛生法側の3年保存とは根拠が別です。両方の期間を満たす形で保管してください。
実務での判断
1. まず自社の機械が48条1項の適用を受けるか確認する
48条1項は小型特殊自動車を除くとしています。自社の機械がどの区分かは、車両の諸元と登録の状況で決まります。判断は運輸支局に確認してください。区分を誤ると、免除の前提から崩れます。
2. 免除を使うなら範囲を書面で残す
「車検を受けたから年次はやらない」ではなく、どの号が車両法の点検で見られ、どの号が残るのかを検査記録表に残してください。残る号だけを検査業者に依頼する形になります。
3. 費用が本当に下がるか確認する
作業装置と油圧が残るなら、検査業者の出張は結局発生します。出張費が総額の大きな部分なので、項目が減っても金額が比例して下がるとは限りません。見積りの内訳は特定自主検査の費用は何で決まるかで扱っています。
4. 月例は免除の対象ではありません
免除の条文が引いているのは年次(167条/151条の21/151条の53)だけです。月例の定期自主検査は別に必要です。
関連:車両系建設機械の定期自主検査、特定自主検査の期限の数え方、法定点検と車検の違い。条文はe-Gov法令検索(労働安全衛生規則)、道路運送車両法は同(道路運送車両法)で確認できます。
よくある質問
- Q. 車検を受けていれば特定自主検査は不要ですか
- 不要になるのは「点検を行った部分」だけです。安衛則169条の2第6項は、道路運送車両法48条1項に基づく点検を行った部分について167条の自主検査を要しないとしているだけで、特定自主検査そのものが不要になるわけではありません。
- Q. どの部分が残りますか
- 作業装置(第六号のブレード、ブーム、リンク機構、バケット、ワイヤロープ)と、作業装置側の油圧装置(第七号)が典型です。これらは道路運送車両法の点検項目に入らないため、特定自主検査の対象として残ります。
- Q. 現場内でしか使わない機械も免除されますか
- されません。条文が「運行の用に供する」機械に限っているためです。トレーラで運ぶだけで自走して公道を走らない機械は、通常この条件に当たりません。
- Q. 小型特殊自動車はどうなりますか
- 道路運送車両法48条1項が小型特殊自動車を除外しているため、同項の適用を受けません。したがって重複免除の前提を満たしません。自社の機械がどの区分かは運輸支局にご確認ください。
- Q. 月例の定期自主検査も免除されますか
- されません。免除の条文が引いているのは年次(安衛則167条、151条の21、151条の53)だけです。月例は別に実施する必要があります。
- Q. 「車検」と「定期点検整備」は同じですか
- 違います。一般に車検と呼ばれるのは継続検査(有効期間の更新)で、道路運送車両法48条の定期点検整備とは別の手続きです。重複免除の条文が引いているのは48条1項の定期点検整備のほうです。
- Q. 免除の範囲はどう確認しますか
- 道路運送車両法49条の点検整備記録簿と、特定自主検査の記録表を並べて突き合わせてください。記録簿には点検の年月日、点検の結果、整備の概要、整備を完了した年月日などが記載されています。
- Q. 点検整備記録簿は何年保存しますか
- 道路運送車両法49条3項により、保存期間は国土交通省令で定めるとされています。労働安全衛生法側の3年保存とは根拠が別なので、両方の期間を満たす形で保管してください。
- Q. 免除を使うと費用は下がりますか
- 項目が減っても金額が比例して下がるとは限りません。作業装置と油圧が残るなら検査業者の出張は結局発生し、出張費が総額の大きな部分を占めるためです。見積りの内訳を確認してください。
- Q. フォークリフトや不整地運搬車にも同じ免除がありますか
- あります。フォークリフトは安衛則151条の24第3項、不整地運搬車は151条の56第3項に、車両系建設機械とほぼ同じ書きぶりの規定が置かれています。
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本記事は一般的な情報の整理であり、法令への適合を保証するものではありません。個別の義務内容は所管行政庁または専門家にご確認ください。記事の内容は2026-10-02時点の情報です。