ローラーの点検表|資格は特別教育だけ、検査は他の建機と同じ
ローラーは、車両系建設機械のなかでひとつだけ扱いが違う機械です。運転の資格は機体重量にかかわらず特別教育で足ります。3トン以上でも技能講習は要りません。
ところが定期自主検査は他の建機とまったく同じで、年次の特定自主検査も月例も必要です。「資格が軽いから検査も軽い」と受け取られやすく、実際に年次を実施していない事業場があります。この記事では、なぜローラーだけ資格の扱いが違うのかを条文で示したうえで、点検表の中身を整理します。
この記事の内容(8項目)
- ローラーだけ就業制限に入っていません
- 公道を走るときは別の資格が要ります
- 対象になるローラー
- プレートやランマーは別扱いです
- 点検表の中身は他の建機と同じ
- 起振装置は第六号に入れる
- ブレーキは特に重視される
- 実際に起きている抜け
- 1. 年次の特定自主検査を実施していない
- 2. 歩行型が管理対象から漏れる
- 3. レンタル機の期限が把握できていない
- 4. 特別教育の記録が残っていない
- ローラーの点検表にかかわる最近の動き(2026年10月時点)
- ローラーの点検表に出てくる用語
- ローラーの点検表と一緒に押さえておきたいこと
- 年次の検査者の資格は「締固め用」で別枠
- シーズンオフで止めているローラーの扱い
- 傾斜地では誘導者とシートベルト
- よくある質問
ローラーだけ就業制限に入っていません
労働安全衛生法施行令20条12号は、就業制限がかかる建設機械を次のように限定しています。
機体重量が三トン以上の別表第七第一号、第二号、第三号又は第六号に掲げる建設機械で、動力を用い、かつ、不特定の場所に自走することができるものの運転(道路上を走行させる運転を除く。)の業務
第四号(締固め用機械)が入っていません。そのため、ローラーは機体重量が何トンあっても就業制限(技能講習)の対象にならず、安衛則36条10号の特別教育で運転できます。
| 別表第七の区分 | 3トン以上 | 3トン未満 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 第一号 整地・運搬・積込み用 | 技能講習 | 特別教育 | 令20条12号/則36条9号 |
| 第二号 掘削用 | 技能講習 | 特別教育 | 同上 |
| 第三号 基礎工事用 | 技能講習 | 特別教育 | 同上 |
| 第四号 締固め用(ローラー) | 重量にかかわらず特別教育 | 則36条10号 | |
| 第五号 コンクリート打設用 | 作業装置の操作について特別教育 | 則36条10の2 | |
| 第六号 解体用 | 技能講習 | 特別教育 | 令20条12号/則36条9号 |
資格(安衛法61条の系統)
就業制限の対象外。機体重量にかかわらず特別教育で運転できる定期自主検査(安衛法45条の系統)
他の車両系建設機械とまったく同じ。年次9項目・月例・作業開始前がかかる公道を走るときは別の資格が要ります
就業制限の条文は「道路上を走行させる運転を除く」と書いています。公道を自走させるなら道路交通法上の運転免許が別途必要です。特別教育は現場内での運転についてのものだと理解してください。
対象になるローラー
締固め用機械には次のようなものが含まれます。振動ローラーは手押し式(歩行型)もあり、これも動力で自走できるものは特別教育の対象です。
| 種類 | 主な用途 |
|---|---|
| ロードローラー(マカダム・タンデム) | 路盤・アスファルトの締固め |
| タイヤローラー | アスファルトの仕上げ転圧 |
| コンバインドローラー | 前が鉄輪、後ろがタイヤの組み合わせ。舗装の小規模な工事 |
| 振動ローラー(搭乗式・歩行型) | 路床・路盤の締固め。小型の歩行型も多い |
| タンピングローラー | 土工の締固め |
| ハンドガイドローラー | 狭い場所の締固め |
プレートやランマーは別扱いです
振動プレート(プレートコンパクター)やランマーは、運転席も走行装置も持たない手持ちの機械なので、別表第七の「ローラー」とは別の機械として扱われるのが一般的です。分類の判断が資格と検査の両方に影響するため、迷う場合は所轄の労働基準監督署に確認してください。
点検表の中身は他の建機と同じ
ローラーも車両系建設機械なので、適用されるのは安衛則167条以下です。年次は9項目です。月例(168条)は4つの号がありますが、第四号は特定解体用機械だけが対象なので、ローラーで見るのは3項目です。作業開始前(170条)はブレーキとクラッチの機能の2項目、年次と月例の記録は6項目を3年保存します(169条)。
| 号 | 検査事項(条文のまま) | ローラーで見る箇所 |
|---|---|---|
| 一 | 圧縮圧力、弁すき間その他原動機の異常の有無 | エンジン |
| 二 | クラッチ、トランスミッション、プロペラシャフト、デファレンシャルその他動力伝達装置 | 走行駆動、HST |
| 三 | 起動輪、遊動輪、上下転輪、履帯、タイヤ、ホイールベアリングその他走行装置 | 鉄輪(ドラム)、タイヤ、スクレーパ |
| 四 | かじ取り車輪の左右の回転角度、ナックル、ロッド、アームその他操縦装置 | ステアリング、車体屈折部 |
| 五 | 制動能力、ブレーキドラム、ブレーキシューその他ブレーキ | 制動距離、駐車ブレーキ |
| 六 | ブレード、ブーム、リンク機構、バケット、ワイヤロープその他作業装置 | 起振装置(バイブレータ)、散水装置 |
| 七 | 油圧ポンプ、油圧モーター、シリンダー、安全弁その他油圧装置 | 油圧回路、漏れ |
| 八 | 電圧、電流その他電気系統 | バッテリー、配線 |
| 九 | 車体、操作装置、ヘッドガード、バックストッパー、昇降装置、ロック装置、警報装置、方向指示器、灯火装置及び計器 | ROPS、後進警報、非常停止 |
起振装置は第六号に入れる
条文に「起振装置」という語はありませんが、締固めのための装置なので第六号の作業装置に含めて記録します。振動の強弱切替、偏心軸まわりの異音、防振ゴムの劣化などが該当します。
ブレーキは特に重視される
ローラーは重量があり、傾斜地での転落・転倒事故が起きています。第五号の制動能力は数値で残せる欄にしておくと、劣化の傾向が追えます。歩行型は、手を離すと停止する非常停止機構の作動確認が重要です。
実際に起きている抜け
1. 年次の特定自主検査を実施していない
「技能講習が要らない機械だから」という理解で、年次を実施していない事業場があります。ローラーの年次も特定自主検査であり、検査業者または有資格者しか実施できません。検査後は事業者が検査標章を貼ります。
2. 歩行型が管理対象から漏れる
ハンドガイドローラーや歩行型振動ローラーは、小さいうえに現場に置かれたままになりやすく、台帳に載っていないことがあります。自走できるものは対象なので、台帳の棚卸しのときに現物と突き合わせてください。
3. レンタル機の期限が把握できていない
ローラーは工程の一時期にだけ使うため、レンタルの比率が高い機械です。借用機の扱いはレンタル建機の点検義務は誰が負うかで整理しています。受入時に検査標章の年月を確認してください。
4. 特別教育の記録が残っていない
特別教育を行ったときは、記録を作成して3年間保存する必要があります(安衛則38条)。資格が軽いぶん、実施したこと自体の記録が残っていないケースが目立ちます。
関連:車両系建設機械の定期自主検査、解体用機械の点検。条文はe-Gov法令検索(労働安全衛生規則)、施行令は同(労働安全衛生法施行令)で確認できます。
ローラーの点検表にかかわる最近の動き(2026年10月時点)
ローラーの点検表のもとになる条文(安衛則167条〜170条)は変わっていません。変わったのは、年次の特定自主検査の「やり方の基準」と、機械を貸す側・使う人の範囲です。日付順に並べます。
| 時期 | できごと | 根拠 |
|---|---|---|
| 2025年5月14日 | 改正労働安全衛生法(令和7年法律第33号)が公布される | 改正法の概要(厚生労働省) |
| 2025年12月24日 | 車両系建設機械特定自主検査基準(令和7年厚生労働省告示第320号)が告示される。ローラーなど締固め用機械も車両系建設機械としてこの基準の対象 | 基発1226第2号 |
| 2026年1月1日 | 特定自主検査は告示の基準に従って行うことになり、旧「車両系建設機械の定期自主検査指針」は廃止 | 基発1226第2号 |
| 2026年4月1日 | 注文者・元方事業者などの措置の対象が、一人親方などを含む作業従事者に広がる。建設機械を貸す事業者の措置も、個人事業者などに貸す場合が対象に入る | 改正安衛法/安衛令10条3号 |
| 2026年5月27日 | 令和7年の労働災害の確定値が公表。建設業の死亡者は214人、全産業のはさまれ・巻き込まれによる死亡は117人 | 厚生労働省 |
ポイントはここです。ローラーはレンタルで使う比率が高い機械なので、2026年4月の「貸す側の措置」の広がりがそのまま関係します。受入のときに検査標章の年月と、貸主の点検記録の写しを受け取る流れにしておくと、借りる側・貸す側のどちらの確認にも使えます。
出典:高所作業車特定自主検査基準等の制定等について(基発1226第2号)、厚生労働省 労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律の概要、厚生労働省 令和7年の労働災害発生状況、e-Gov法令検索(労働安全衛生法施行令)。確認日は2026年10月3日です。個別の扱いは所轄の労働基準監督署にご確認ください。
ローラーの点検表に出てくる用語
ローラーの点検表では、メーカーの呼び名と条文の言葉が混ざりがちです。点検表の項目名をそろえるときの参考にしてください。
| 用語 | 意味 | 出典 |
|---|---|---|
| 締固め用機械 | 別表第七の第四号の区分。「ローラー」と、それに類するものとして厚生労働省令で定める機械からなる | 安衛令別表第七第四号 |
| 車両系建設機械 | 別表第七に掲げる建設機械で、動力を用い、かつ、不特定の場所に自走できるもの | 安衛則94条の2第2号 |
| 特別教育 | 事業者が行う安全衛生教育。ローラーの運転は機体重量にかかわらずこれで足りる | 安衛法59条3項・安衛則36条10号 |
| 特定自主検査 | 167条の年次の自主検査。有資格者か検査業者が行う | 安衛則169条の2第1項 |
| 検査標章 | 特定自主検査を行った年月が分かるステッカー。事業者が機体に貼る | 安衛則169条の2第8項 |
| 起振装置 | 振動ローラーの鉄輪を振動させる装置。条文に語はなく、167条6号の作業装置として扱う | 法令上の定義はない |
| HST | 油圧で走行を伝える装置(静油圧式変速機)。動力伝達装置と油圧装置の両方にまたがる | 法令上の定義はない |
| ハンドガイドローラー | 人が後ろを歩いて操作する小型のローラー。自走するものは車両系建設機械に入る | 法令上の定義はない |
ローラーの点検表と一緒に押さえておきたいこと
ローラーの点検表は、条文の9項目を写せばひとまず形になります。そのうえで、上位の解説ではあまり触れられていない点を3つ挙げます。
年次の検査者の資格は「締固め用」で別枠
特定自主検査を自社で行う場合、検査者の資格は機械の区分ごとに定められています。安衛則169条の2は、第一号・第二号・第六号(ブルドーザ、油圧ショベル、解体用)をまとめて第2項で、第四号の締固め用機械は第4項で別に定めています。ブルドーザや油圧ショベルの検査者がいる会社でも、ローラーを社内で検査するなら、その人が締固め用の資格を持っているかを確かめてください。
シーズンオフで止めているローラーの扱い
1年を超えて使わない期間は、年次の検査を行わなくてよいとされています(安衛則167条1項ただし書)。そのかわり、使用を再び始めるときに9項目の検査を行う必要があります(同条2項)。舗装の工事が少ない時期に保管しているローラーは、台帳に「休止」の印と再開時の検査欄を持たせておくと、再開した日に検査を飛ばすことを防げます。
傾斜地では誘導者とシートベルト
路肩や傾斜地で転倒・転落のおそれがあるときは、誘導者を置いて誘導させることが定められています(安衛則157条2項)。転倒時保護構造(ROPS)とシートベルトのある機械を使い、運転者にシートベルトを使わせるよう努めることも求められています(157条の2)。点検表の第九号の欄でROPSとシートベルトの状態を見ておくと、作業前の確認とつながります。
よくある質問
- Q. ローラーの運転に技能講習は必要ですか
- 必要ありません。労働安全衛生法施行令20条12号の就業制限は別表第七の第一号・第二号・第三号・第六号に限られており、第四号の締固め用機械は含まれていません。機体重量にかかわらず、安衛則36条10号の特別教育で運転できます。
- Q. 資格が特別教育でよいなら、定期自主検査も不要ですか
- 不要にはなりません。資格の根拠(労働安全衛生法61条の就業制限)と定期自主検査の根拠(同45条)は別の条文です。ローラーも車両系建設機械なので、年次の特定自主検査、月例の定期自主検査、作業開始前点検がすべて適用されます。
- Q. ローラーの年次検査は誰が実施できますか
- 登録を受けた検査業者、または所定の資格を持つ事業内検査者です(安衛法45条2項)。締固め用機械の検査者の資格は、ブルドーザや油圧ショベルの区分とは別に定められています(安衛則169条の2第4項)。検査後は事業者が検査標章を貼り付けます(同条第8項)。
- Q. 2026年から年次の検査は変わりましたか
- 2026年1月1日から、特定自主検査は厚生労働大臣の定める基準に従って行うことになりました。車両系建設機械は車両系建設機械特定自主検査基準(令和7年厚生労働省告示第320号)が基準で、ローラーもこれに含まれます。検査事項の9項目(安衛則167条)は変わっていません。
- Q. シーズンオフで使わないローラーも検査が要りますか
- 1年を超えて使わない期間は年次の検査を行わなくてよいとされています(安衛則167条1項ただし書)。ただし使用を再び始めるときに、9項目の検査を行う必要があります(同条2項)。月例も同じ考え方です(168条)。
- Q. 歩行型の振動ローラーも対象ですか
- 動力を用いて不特定の場所に自走できるものであれば対象です。小型で現場に置かれたままになりやすいため、台帳から漏れやすい機械です。棚卸しのときに現物と突き合わせてください。
- Q. 振動プレートやランマーはどうなりますか
- 運転席も走行装置も持たない手持ちの機械なので、別表第七の「ローラー」とは別の機械として扱われるのが一般的です。ただし分類の判断は資格と検査の両方に影響するため、迷う場合は所轄の労働基準監督署に確認してください。
- Q. 起振装置の点検はどの号ですか
- 安衛則167条第六号の作業装置に含めて記録します。条文に「起振装置」という語はありませんが、締固めのための装置なので第六号が対応します。振動の強弱切替、偏心軸まわりの異音、防振ゴムの劣化などが該当します。
- Q. 公道を走らせるときはどうなりますか
- 就業制限の条文は「道路上を走行させる運転を除く」と書いています。公道を自走させる場合は道路交通法上の運転免許が別途必要です。特別教育は現場内での運転についてのものと理解してください。
- Q. ブレーキの点検で気をつけることはありますか
- ローラーは重量があり、傾斜地での転落・転倒事故が起きています。第五号の制動能力は数値で残せる欄にしておくと劣化の傾向が追えます。歩行型では、手を離すと停止する非常停止機構の作動確認が重要です。
- Q. 特別教育の記録は残す必要がありますか
- あります。特別教育を行ったときは記録を作成し、3年間保存する必要があります(安衛則38条)。資格が軽いぶん、実施したこと自体の記録が残っていないケースが目立ちます。
- Q. 月例の検査項目は何項目ですか
- 実質3項目です。安衛則168条の第四号は特定解体用機械に限られるため、ローラーは対象外になります。記録は6項目を3年間保存します。
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