ローラーの点検表|資格は特別教育だけ、検査は他の建機と同じ
ローラーは、車両系建設機械のなかでひとつだけ扱いが違う機械です。運転の資格は機体重量にかかわらず特別教育で足ります。3トン以上でも技能講習は要りません。
ところが定期自主検査は他の建機とまったく同じで、年次の特定自主検査も月例も必要です。「資格が軽いから検査も軽い」と受け取られやすく、実際に年次を実施していない事業場があります。この記事では、なぜローラーだけ資格の扱いが違うのかを条文で示したうえで、点検表の中身を整理します。
この記事の内容(5項目)
ローラーだけ就業制限に入っていません
労働安全衛生法施行令20条12号は、就業制限がかかる建設機械を次のように限定しています。
機体重量が三トン以上の別表第七第一号、第二号、第三号又は第六号に掲げる建設機械で、動力を用い、かつ、不特定の場所に自走することができるものの運転(道路上を走行させる運転を除く。)の業務
第四号(締固め用機械)が入っていません。そのため、ローラーは機体重量が何トンあっても就業制限(技能講習)の対象にならず、安衛則36条10号の特別教育で運転できます。
| 別表第七の区分 | 3トン以上 | 3トン未満 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 第一号 整地・運搬・積込み用 | 技能講習 | 特別教育 | 令20条12号/則36条9号 |
| 第二号 掘削用 | 技能講習 | 特別教育 | 同上 |
| 第三号 基礎工事用 | 技能講習 | 特別教育 | 同上 |
| 第四号 締固め用(ローラー) | 重量にかかわらず特別教育 | 則36条10号 | |
| 第五号 コンクリート打設用 | 作業装置の操作について特別教育 | 則36条10の2 | |
| 第六号 解体用 | 技能講習 | 特別教育 | 令20条12号/則36条9号 |
資格(安衛法61条の系統)
就業制限の対象外。機体重量にかかわらず特別教育で運転できる定期自主検査(安衛法45条の系統)
他の車両系建設機械とまったく同じ。年次9項目・月例・作業開始前がかかる公道を走るときは別の資格が要ります
就業制限の条文は「道路上を走行させる運転を除く」と書いています。公道を自走させるなら道路交通法上の運転免許が別途必要です。特別教育は現場内での運転についてのものだと理解してください。
対象になるローラー
締固め用機械には次のようなものが含まれます。振動ローラーは手押し式(歩行型)もあり、これも動力で自走できるものは特別教育の対象です。
| 種類 | 主な用途 |
|---|---|
| ロードローラー(マカダム・タンデム) | 路盤・アスファルトの締固め |
| タイヤローラー | アスファルトの仕上げ転圧 |
| 振動ローラー(搭乗式・歩行型) | 路床・路盤の締固め。小型の歩行型も多い |
| タンピングローラー | 土工の締固め |
| ハンドガイドローラー | 狭い場所の締固め |
プレートやランマーは別扱いです
振動プレート(プレートコンパクター)やランマーは、自走する構造ではないため「不特定の場所に自走することができるもの」に当たらないのが一般的です。分類の判断が資格と検査の両方に影響するため、迷う場合は所轄の労働基準監督署に確認してください。
点検表の中身は他の建機と同じ
ローラーも車両系建設機械なので、適用されるのは安衛則167条以下です。年次は9項目、月例は実質3項目、作業開始前は2項目、記録は6項目を3年保存します。
| 号 | 検査事項(条文のまま) | ローラーで見る箇所 |
|---|---|---|
| 一 | 圧縮圧力、弁すき間その他原動機の異常の有無 | エンジン |
| 二 | クラッチ、トランスミッション、プロペラシャフト、デファレンシャルその他動力伝達装置 | 走行駆動、HST |
| 三 | 起動輪、遊動輪、上下転輪、履帯、タイヤ、ホイールベアリングその他走行装置 | 鉄輪(ドラム)、タイヤ、スクレーパ |
| 四 | かじ取り車輪の左右の回転角度、ナックル、ロッド、アームその他操縦装置 | ステアリング、車体屈折部 |
| 五 | 制動能力、ブレーキドラム、ブレーキシューその他ブレーキ | 制動距離、駐車ブレーキ |
| 六 | ブレード、ブーム、リンク機構、バケット、ワイヤロープその他作業装置 | 起振装置(バイブレータ)、散水装置 |
| 七 | 油圧ポンプ、油圧モーター、シリンダー、安全弁その他油圧装置 | 油圧回路、漏れ |
| 八 | 電圧、電流その他電気系統 | バッテリー、配線 |
| 九 | 車体、操作装置、ヘッドガード、バックストッパー、昇降装置、ロック装置、警報装置、方向指示器、灯火装置及び計器 | ROPS、後進警報、非常停止 |
起振装置は第六号に入れる
条文に「起振装置」という語はありませんが、締固めのための装置なので第六号の作業装置に含めて記録します。振動の強弱切替、偏心軸まわりの異音、防振ゴムの劣化などが該当します。
ブレーキは特に重視される
ローラーは重量があり、傾斜地での転落・転倒事故が起きています。第五号の制動能力は数値で残せる欄にしておくと、劣化の傾向が追えます。歩行型は、手を離すと停止する非常停止機構の作動確認が重要です。
実際に起きている抜け
1. 年次の特定自主検査を実施していない
「技能講習が要らない機械だから」という理解で、年次を実施していない事業場があります。ローラーの年次も特定自主検査であり、検査業者または有資格者しか実施できません。検査後は事業者が検査標章を貼ります。
2. 歩行型が管理対象から漏れる
ハンドガイドローラーや歩行型振動ローラーは、小さいうえに現場に置かれたままになりやすく、台帳に載っていないことがあります。自走できるものは対象なので、台帳の棚卸しのときに現物と突き合わせてください。
3. レンタル機の期限が把握できていない
ローラーは工程の一時期にだけ使うため、レンタルの比率が高い機械です。借用機の扱いはレンタル建機の点検義務は誰が負うかで整理しています。受入時に検査標章の年月を確認してください。
4. 特別教育の記録が残っていない
特別教育を行ったときは、記録を作成して3年間保存する必要があります(安衛則38条)。資格が軽いぶん、実施したこと自体の記録が残っていないケースが目立ちます。
関連:車両系建設機械の定期自主検査、解体用機械の点検。条文はe-Gov法令検索(労働安全衛生規則)、施行令は同(労働安全衛生法施行令)で確認できます。
よくある質問
- Q. ローラーの運転に技能講習は必要ですか
- 必要ありません。労働安全衛生法施行令20条12号の就業制限は別表第七の第一号・第二号・第三号・第六号に限られており、第四号の締固め用機械は含まれていません。機体重量にかかわらず、安衛則36条10号の特別教育で運転できます。
- Q. 資格が特別教育でよいなら、定期自主検査も不要ですか
- 不要にはなりません。資格の根拠(労働安全衛生法61条の就業制限)と定期自主検査の根拠(同45条)は別の条文です。ローラーも車両系建設機械なので、年次の特定自主検査、月例の定期自主検査、作業開始前点検がすべて適用されます。
- Q. ローラーの年次検査は誰が実施できますか
- 登録検査業者または所定の研修を修了した事業内検査者です。ローラーの年次も特定自主検査にあたるため、社内の誰でも実施できるわけではありません。検査後は事業者が検査標章を貼り付けます。
- Q. 歩行型の振動ローラーも対象ですか
- 動力を用いて不特定の場所に自走できるものであれば対象です。小型で現場に置かれたままになりやすいため、台帳から漏れやすい機械です。棚卸しのときに現物と突き合わせてください。
- Q. 振動プレートやランマーはどうなりますか
- 自走する構造ではないため、「不特定の場所に自走することができるもの」に当たらないのが一般的です。ただし分類の判断は資格と検査の両方に影響するため、迷う場合は所轄の労働基準監督署に確認してください。
- Q. 起振装置の点検はどの号ですか
- 安衛則167条第六号の作業装置に含めて記録します。条文に「起振装置」という語はありませんが、締固めのための装置なので第六号が対応します。振動の強弱切替、偏心軸まわりの異音、防振ゴムの劣化などが該当します。
- Q. 公道を走らせるときはどうなりますか
- 就業制限の条文は「道路上を走行させる運転を除く」と書いています。公道を自走させる場合は道路交通法上の運転免許が別途必要です。特別教育は現場内での運転についてのものと理解してください。
- Q. ブレーキの点検で気をつけることはありますか
- ローラーは重量があり、傾斜地での転落・転倒事故が起きています。第五号の制動能力は数値で残せる欄にしておくと劣化の傾向が追えます。歩行型では、手を離すと停止する非常停止機構の作動確認が重要です。
- Q. 特別教育の記録は残す必要がありますか
- あります。特別教育を行ったときは記録を作成し、3年間保存する必要があります(安衛則38条)。資格が軽いぶん、実施したこと自体の記録が残っていないケースが目立ちます。
- Q. 月例の検査項目は何項目ですか
- 実質3項目です。安衛則168条の第四号は特定解体用機械に限られるため、ローラーは対象外になります。記録は6項目を3年間保存します。
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本記事は一般的な情報の整理であり、法令への適合を保証するものではありません。個別の義務内容は所管行政庁または専門家にご確認ください。記事の内容は2026-08-15時点の情報です。