中古建機を買ったときの点検|前の所有者の記録は引き継がれません
中古の建機を買うと「特自検付き」と書かれていることがあります。年次の特定自主検査が済んでいるという意味で、次回期限までの猶予があることを示しています。ただしこれで自社の義務が引き継がれるわけではありません。
定期自主検査の義務者は事業者です(労働安全衛生法45条1項)。所有者でも機械でもありません。買った瞬間から、その機械を使う自社が事業者として義務を負います。この記事では、中古機を受け入れたときに何をすべきかを整理します。
この記事の内容(5項目)
記録は機械に付いてこない
まず前提を確認します。義務も記録も事業者に紐づいています。
| 誰に付くか | 売買したとき | |
|---|---|---|
| 定期自主検査の実施義務 | 事業者(安衛法45条1項) | 買った側が新たに負う |
| 記録の3年保存義務 | 事業者(安衛則169条ほか) | 売った側に残る。買った側は自社が実施した分から |
| 検査標章の貼付 | 事業者(安衛則169条の2第8項) | 買った側が以後貼る |
| 次回期限 | 機械の状態に依存 | 前回実施日から起算されるので引き継がれる |
引き継がれる
次回期限の起算。前回いつ検査したかは機械の事実なので変わらない引き継がれない
記録の保存義務。売主が自社の義務として3年持つ。買主が請求できる権利ではない記録をもらえるなら、もらっておく
法令上の引き継ぎではありませんが、過去の検査記録は機械の状態を知る材料になります。写しをもらえないか売主に確認してください。特に「否」の判定と措置の内容は、どこが弱いかを示しています。
「特自検付き」で分かること・分からないこと
| 内容 | |
|---|---|
| 分かること | 直近の特定自主検査をいつ実施したか。そこから次回期限が逆算できる |
| 分からないこと | 検査事項ごとの結果(どこが良でどこが否だったか) |
| 「否」に対してどんな措置を講じたか | |
| 月例を継続して実施していたか |
標章は年月を示すだけです。状態の良し悪しを保証するものではありません。年次の直後に売られた機械でも、その後の使われ方は分かりません。
月例の履歴のほうが状態を語ります
年次は1年に1回ですが、月例は毎月です。月例の記録が続いているかどうかは、その機械がどう扱われてきたかを示します。記録がまったく無い場合、点検が回っていなかった可能性を織り込んで受け入れてください。
受入時に確認する5点
1. 標章の年月から次回期限を逆算する
車両系建設機械なら一年以内、不整地運搬車なら二年を超えない期間です。買った直後に期限が来ることがあるので、真っ先に確認してください。標章の読み方は検査標章の見方と貼り方で扱っています。
2. 機番を管理番号として台帳に登録する
銘板の機番をそのまま管理番号にすると、点検表・持込機械等使用届・記録を串刺しにできます。登録しない限り期限は誰にも見えません。
3. 別表第七のどの区分か確認する
区分によって運転資格も、事業内検査者の資格区分も変わります。アタッチメント次第で扱いが変わる機械もあります。解体用機械の点検で扱っています。
4. 記録の写しをもらえるか確認する
法令上の権利ではありませんが、商談の中で依頼はできます。断られても記録が無いこと自体は違法ではありません(売主の義務であって買主の義務ではないため)。
5. 自社で受入時の点検をして記録に残す
ここが最も重要です。自社の記録は、受け入れた日から始まります。受入時の状態を残しておけば、後から不具合が出たときに「いつからか」を説明できます。
長く置かれていた機械を買ったとき
中古機は、売りに出るまでの間しばらく使われていないことがあります。この場合再開時検査が関係します。
| 機械 | 除外される期間 | 再開時に必要なこと |
|---|---|---|
| 車両系建設機械(年次) | 一年を超える期間使用しない場合 | 使用を再び開始する際に、各号の事項について自主検査を行う |
| フォークリフト(年次) | 一年を超える期間使用しない場合 | |
| 不整地運搬車(年次) | 二年を超える期間使用しない場合 |
長期在庫だった機械を稼働させるときは、期限の計算より先に再開時検査を検討してください。年次にあたる検査は特定自主検査なので、検査業者または事業内検査者が実施します。
状態が分からない機械ほど、最初に見る価値があります
前の使われ方が分からない以上、受け入れた時点で年次相当の検査を通しておくと、その後の判断が楽になります。次回期限もそこから起算されるので、自社の管理サイクルに乗せやすくなります。
台帳には「取得日」も持たせる
取得日があると、不具合が出たときに「自社に来てから何か月か」が分かります。中古機は購入年と製造年が離れているので、製造年だけでは判断できません。
関連:建機の点検記録3年保存、建機の点検期限を1枚で管理する、レンタル建機の点検義務は誰が負うか。条文はe-Gov法令検索(労働安全衛生規則)で確認できます。
よくある質問
- Q. 中古建機を買うと前の所有者の検査記録も引き継げますか
- 法令上は引き継がれません。記録の保存義務は事業者に付くもので、売った側が自社の義務として3年間保存します。ただし商談の中で写しをもらうことは可能で、機械の状態を知る材料になるので依頼する価値があります。
- Q. 「特自検付き」とは何を意味しますか
- 直近の特定自主検査が実施済みで、次回期限までの猶予があるという意味です。ただし分かるのは実施した年月だけで、検査事項ごとの結果や、否だった箇所にどんな措置を講じたかは分かりません。状態の良し悪しを保証するものではありません。
- Q. 次回の検査期限は引き継がれますか
- 引き継がれます。前回いつ検査したかは機械の事実なので、そこから起算されます。車両系建設機械なら一年以内、不整地運搬車なら二年を超えない期間です。買った直後に期限が来ることもあるので、真っ先に確認してください。
- Q. 記録が無い中古機を買っても違法ですか
- 買うこと自体は違法ではありません。記録の保存は売主の義務であって買主の義務ではないためです。ただし自社が使い始めた時点から、自社が事業者として実施と記録の義務を負います。
- Q. 受入時に何をすればよいですか
- 標章の年月から次回期限を逆算し、機番を管理番号として台帳に登録し、別表第七のどの区分かを確認し、記録の写しをもらえるか確認し、自社で受入時の点検をして記録に残す、の5点です。特に最後が重要で、自社の記録は受け入れた日から始まります。
- Q. 長く使われていなかった機械はどうしますか
- 各条文のただし書により、使用しない期間の検査は不要ですが、使用を再び開始する際に自主検査が必要です。年次にあたる検査は特定自主検査なので、検査業者または事業内検査者が実施します。期限の計算より先に再開時検査を検討してください。
- Q. 年次が済んでいれば受入時に検査しなくてよいですか
- 法令上は次回期限まで猶予がありますが、前の使われ方が分からない以上、受け入れた時点で年次相当の検査を通しておくと、その後の判断が楽になります。次回期限もそこから起算されるため、自社の管理サイクルに乗せやすくなります。
- Q. 検査標章は貼り替えますか
- 以後は自社が事業者として貼ります。貼付義務者は事業者なので、自社が実施した特定自主検査の標章を貼っていくことになります。前の所有者が貼った古い標章は、最新のものが分かる状態にしておいてください。
- Q. 月例の履歴は確認すべきですか
- 確認する価値があります。年次は1年に1回ですが月例は毎月なので、記録が続いているかどうかがその機械の扱われ方を示します。記録がまったく無い場合、点検が回っていなかった可能性を織り込んで受け入れてください。
- Q. 台帳には何を追加で持たせるとよいですか
- 取得日です。中古機は購入年と製造年が離れているため、製造年だけでは「自社に来てから何か月か」が分かりません。不具合が出たときの判断に効きます。
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本記事は一般的な情報の整理であり、法令への適合を保証するものではありません。個別の義務内容は所管行政庁または専門家にご確認ください。記事の内容は2026-09-18時点の情報です。