ガス溶接装置の定期自主検査|年1回と、1日1回は別の話です
溶接機の点検というと、多くの現場ではアーク溶接機を思い浮かべます。使用前に外観と接地を見て、それで終わりです。
ところがガスのほうは、法定の定期自主検査があります。アセチレン溶接装置とガス集合溶接装置は、労働安全衛生規則317条で1年以内ごとに1回の自主検査と、記録の3年間保存が決まっています。電動工具やアーク溶接機とは、かかる条文がまったく違います。この記事では、その中身を整理します。
この記事の内容(7項目)
ガス溶接装置の定期自主検査は、1年以内ごとに1回です
安衛則317条1項が定めています。対象と周期を確認します。
| 内容 | |
|---|---|
| 対象 | アセチレン溶接装置又はガス集合溶接装置(これらの配管のうち、地下に埋設された部分を除く) |
| 周期 | 1年以内ごとに1回、定期に |
| 見るもの | 当該装置の損傷、変形、腐食等の有無及びその機能 |
| 使わないとき | 1年をこえる期間使用しない期間中は不要。ただし使用を再び開始する際に検査を行う(2項) |
ポイントは2つです。①配管のうち地下に埋設された部分は対象外(同項かっこ書き)。埋設部の管理は別に決めてください。②長期に使わなかった装置は、再開のときに検査が要ります。「1年使っていないから検査していない」で再稼働させると、2項に当たります。
異常があったら、直してからでないと使えません
317条3項は「自主検査の結果、当該アセチレン溶接装置又はガス集合溶接装置に異常を認めたときは、補修その他必要な措置を講じた後でなければ、これらを使用してはならない」と書いています。
「様子を見て使う」ができない条文の書き方です。検査で異常が出たら、その時点で使用を止めます。点検表に「異常あり」と書いたまま翌日も使っている状態は、この条文に反します。
ガス溶接装置の記録は6事項、保存は3年です
317条4項が、記録すべき事項を名指ししています。この6つが埋まっていないと、記録として不足します。
| 号 | 記録する事項 | 書き方の注意 |
|---|---|---|
| 1号 | 検査年月日 | 前回から1年をこえていないこと |
| 2号 | 検査方法 | 目視/石けん水による漏えい検査/作動試験など、行った方法を書く |
| 3号 | 検査箇所 | 発生器・安全器・圧力調整器・導管・ホース・吹管など |
| 4号 | 検査の結果 | 各項目の判定。異常があればその内容 |
| 5号 | 検査を実施した者の氏名 | 個人名。外部委託なら委託先の名称と担当者 |
| 6号 | 検査の結果に基づいて補修等の措置を講じたときは、その内容 | 何をどう直したかを書く |
保存は3年間です。
ここは、車両系建設機械やフォークリフトの定期自主検査と同じ形をしています。記録6事項+3年保存という組み合わせは、安衛則のいくつかの機械に共通する型です。ただしガス溶接装置には検査業者による特定自主検査の制度がありません。検査標章も貼りません。
3年保存が決まっているもの、決まっていないもの
| 対象 | 周期 | 記録の保存 |
|---|---|---|
| ガス溶接装置 | 1年以内ごと | 3年間(317条4項) |
| 車両系建設機械 | 1年以内ごと/1月以内ごと | 3年間(安衛則169条・170条) |
| 足場 | 作業開始前/悪天候後 | 仕事が終了するまで(567条3項) |
| 地山の掘削 | 作業開始前/大雨の後ほか | 定めなし |
ガス溶接装置の安全器は、1日1回以上点検します
年1回の定期自主検査とは別に、日常の点検が条文にあります。ここを混ぜて「年1回だけでよい」と読むと足りません。
| アセチレン溶接装置(315条) | ガス集合溶接装置(316条) | |
|---|---|---|
| 安全器の点検 | 水位を容易に確かめることができる箇所に置き、一日一回以上点検(4号) | 機能を容易に確かめることができる箇所に置き、一日一回以上点検(5号) |
| 作業開始時 | 装置を点検し、発生器内に空気とアセチレンの混合ガスが存在するときはこれを排除(3号) | ホース、吹管、ホースバンド等の器具を点検し、損傷・摩耗等によりガス又は酸素が漏えいするおそれがあると認めたときは補修し、又は取り替える(4号) |
| ガス漏れの確かめ方 | 石けん水を使用する等安全な方法による(2号ロ) | 石けん水を使用する等安全な方法による(2号ハ) |
ポイントは、条文で言葉が違うことです。アセチレンは「水位」、ガス集合は「機能」。水封式か乾式かで確かめ方が変わるためです。
もうひとつ。ガス漏れを火で確かめないでください。条文が「石けん水を使用する等安全な方法」と名指ししています。ライターで炙って確かめるのは、条文にも実務にも反します。
日常点検は、この様式とは別紙で残します
年次の定期自主検査記録に、毎日の安全器の点検を書き込むと1枚が埋まりません。日常は日常の紙で、年次は年次の紙で残すのが扱いやすい形です。日常の使用前点検については、アーク溶接機や電動工具とあわせて電動工具・電気溶接機の持込みと点検で扱っています。
ガス溶接作業主任者は「免許」です。技能講習ではありません
ここは実務でいちばん取り違えられます。
| ガス溶接技能講習 | ガス溶接作業主任者免許 | |
|---|---|---|
| 何のため | ガス溶接等の業務に就くため | 作業主任者に選任されるため |
| 根拠 | 安衛法61条・安衛令20条10号 | 安衛則314条・安衛令6条2号 |
| 取り方 | 技能講習(学科+実技) | 免許試験に合格、または所定の要件 |
| できること | アセチレン溶接装置・ガス集合溶接装置を用いて行う金属の溶接・溶断・加熱の作業 | 上記の作業の指揮ほか、315条・316条の職務 |
安衛則314条は「令第六条第二号の作業については、ガス溶接作業主任者免許を有する者のうちから、ガス溶接作業主任者を選任しなければならない」と書いています。技能講習の修了証では選任できません。
選任したら、氏名と職務を作業場の見やすい箇所に掲示します(安衛則18条)。作業主任者は免許証を携帯します(315条10号・316条7号)。
作業主任者の職務は、点検の実行者でもあります
315条・316条の職務は10項目前後ありますが、点検に関するものが3つ入っています。
- 作業を開始するときの装置の点検(315条3号)/器具の点検(316条4号)
- 安全器の一日一回以上の点検(315条4号・316条5号)
- 保護眼鏡及び保護手袋の使用状況の監視(315条9号・316条6号)
つまり、日常の点検は作業主任者の職務として条文に書かれています。「誰が点検するか」を決める必要がありません。選任した作業主任者が行います。
ガス溶接装置は、置き方と表示も条文で決まっています
定期自主検査のときに、あわせて確認しておくと二度手間になりません。火気禁止の距離が数値で決まっています。
| アセチレン溶接装置(312条) | ガス集合溶接装置(313条) | |
|---|---|---|
| 火気等の禁止 | 発生器から5m以内又は発生器室から3m以内(3号) | ガス集合装置から5m以内(4号) |
| 掲示 | 発生器の種類、型式、製作所名、毎時平均ガス発生算定量、一回のカーバイド送給量(1号) | 使用するガスの名称及び最大ガス貯蔵量(1号) |
| 操作・点検要領 | — | バルブ、コック等の操作要領及び点検要領をガス装置室の見やすい箇所に表示(5号) |
| 立入禁止 | 発生器室(2号) | ガス装置室(3号) |
| 導管 | 酸素用とアセチレン用の混同を防ぐ措置(4号) | 酸素用とガス用の混同を防止する措置(6号) |
| 消火設備 | 設置場所に備える(5号) | 設置場所に設ける(7号) |
| 保護具 | 作業を行う者に保護眼鏡及び保護手袋を着用させる(312条7号・313条8号) | |
移動式のアセチレン溶接装置の発生器は、高温の場所、通風又は換気の不十分な場所、振動の多い場所等に据え付けてはなりません(312条6号)。現場で置き場所を決めるときに効いてきます。
消火設備は、この機会に期限と圧力を確認しておくと確実です。消火器点検台帳で別に管理している現場もあります。
ガス溶接装置の記録表は、6事項の欄を先に作ります
記録の様式は法定ではありません。ただし317条4項の6事項は、欄が無いと埋まりません。ここを先に作るのが要点です。
あわせて入れておくと効くものを3つ挙げます。
- 次回期限の欄。「1年以内ごと」なので、前回検査年月日から1年をこえない日を先に書いておきます。期限切れは、期限を書いていない台帳で起きます
- 装置の管理番号。装置が複数ある事業場では、番号がないとどの装置の記録か分かりません
- 検査方法の欄に、使った器具。石けん水・圧力計・漏えい検知器のどれを使ったかを書いておくと、次回の再現性が上がります
なお、経済産業省が出している「ガス工作物定期自主検査要領」はガス事業法の別制度です。検索で並んで出てきますが、労働安全衛生規則317条とは対象も根拠も違います。取り違えないでください。
電動工具・アーク溶接機の使用前点検は電動工具・アーク溶接機 使用前点検表で、現場の電源まわりは仮設分電盤の点検で扱っています。条文はe-Gov法令検索(労働安全衛生規則)で読めます。
よくある質問
- Q. ガス溶接装置の定期自主検査はどのくらいの頻度ですか
- 1年以内ごとに1回です(安衛則317条1項)。1年をこえる期間使用しない装置は、その使用しない期間中は不要ですが、使用を再び開始する際に検査を行います(同条2項)。
- Q. 記録は何年保存しますか
- 3年間です(317条4項)。記録する事項は、検査年月日・検査方法・検査箇所・検査の結果・検査を実施した者の氏名・補修等の措置を講じたときはその内容の6つです。
- Q. アーク溶接機や電動工具にも定期自主検査はありますか
- ありません。電動工具・アーク溶接機は、その日の使用を開始する前の点検(安衛則352条)が中心です。年1回の定期自主検査と3年間の記録保存が条文で決まっているのは、アセチレン溶接装置とガス集合溶接装置です。
- Q. ガス溶接技能講習を修了していれば作業主任者になれますか
- なれません。ガス溶接作業主任者は、ガス溶接作業主任者免許を有する者のうちから選任します(314条)。技能講習の修了は、ガス溶接等の業務に就くための要件(安衛法61条・安衛令20条10号)で、別のものです。
- Q. 安全器の点検はどのくらいの頻度ですか
- 一日一回以上です。アセチレン溶接装置は「その水位を容易に確かめることができる箇所に置き、かつ、一日一回以上これを点検すること」(315条4号)、ガス集合溶接装置は「その機能を容易に確かめることができる箇所に置き、かつ、一日一回以上これを点検すること」(316条5号)と、条文で言葉が違います。
- Q. 検査で異常が見つかったら使えますか
- 使えません。「異常を認めたときは、補修その他必要な措置を講じた後でなければ、これらを使用してはならない」(317条3項)と定められています。是正して再確認するまで止めてください。
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本記事は一般的な情報の整理であり、法令への適合を保証するものではありません。個別の義務内容は所管行政庁または専門家にご確認ください。記事の内容は2026-09-29時点の情報です。