安全書類(グリーンファイル)のうち、点検に関わる書類だけを整理する
安全書類(グリーンファイル)の解説は数多くありますが、そのほとんどが「全部で何種類あるか」の一覧です。実際に現場で手が止まるのは一覧を見た後で、この書類は法律で決まっているのか、それとも元請の運用なのかが分からないときです。
両者は扱いが違います。法令に根拠があるものは提出したあとも自社に記録が残り続けますが、元請の運用によるものは工事が終われば元請の書類として綴じられて終わりです。この記事では、点検に関わる書類だけを抜き出して、この線引きで整理します。
この記事の内容(5項目)
点検に関わる書類を抜き出す
安全書類は元請や協会の版によって名称や数に差がありますが、点検が関わってくるのは主に次の書類です。
| 書類 | 何のため | 法令上の義務 |
|---|---|---|
| 持込機械等使用届 (移動式クレーン・車両系建設機械) | 大型機械の持込を元請に届け出る | 様式は法定でない。ただし届出内容の裏付けになる定期自主検査は法定 |
| 持込機械等使用届 (電気工具・電気溶接機) | 手持ち工具の持込を届け出る | 様式は法定でない。絶縁抵抗の測定など個別の点検義務は条文にある |
| 持込時の点検表 | 搬入時の状態を元請に示す | 様式・実施ともに法定でない |
| 有機溶剤・特定化学物質等 使用届 | 使用する化学物質を届け出る | 局所排気装置の定期自主検査(1年以内ごと)は法定 |
| 安全衛生教育実施報告 | 特別教育等の実施を報告 | 特別教育の実施と記録3年保存は法定(安衛則38条) |
| 作業員名簿 | 資格・健康診断の状況 | 資格そのものは法定。名簿の様式は法定でない |
元請の運用による書類
提出したら元請の工事書類になる。工事が終われば自社の手元には残らない
法令に根拠がある記録
提出しない。自社に保存期間ぶん残す。工事の終了とは無関係に続く
法令に根拠がある「点検」と保存期間
安全書類として提出するかどうかとは別に、次の点検・検査には条文上の義務があります。保存期間が書類ごとに違う点に注意してください。
| 対象 | 周期 | 記録の保存 | 条文 |
|---|---|---|---|
| 車両系建設機械(年次・月例) | 一年以内/一月以内ごと | 3年 | 安衛則167条・168条・169条 |
| 高所作業車(年次・月例) | 一年以内/一月以内ごと | 3年 | 安衛則194条の23〜25 |
| フォークリフト(年次・月例) | 一年/一月を超えない期間ごと | 3年 | 安衛則151条の21〜23 |
| 不整地運搬車(年次) | 二年を超えない期間ごと | 3年 | 安衛則151条の53・55 |
| 足場(悪天候後・組立変更後) | 作業開始前 | 仕事が終了するまでの間 | 安衛則567条・655条 |
| 局所排気装置 | 一年以内ごと | 3年 | 有機則20条ほか |
| 特別教育の記録 | 実施時 | 3年 | 安衛則38条 |
足場だけ保存期間の考え方が違います
足場の点検記録は「3年」ではなく「足場を使用する作業を行う仕事が終了するまでの間」です(安衛則655条2項ほか)。年数ではなく工事に紐づくため、他の記録と同じ棚に入れると管理が合わなくなります。
また足場は注文者にも同じ点検義務があります(安衛則655条)。組立て・一部解体・変更の後や、強風・大雨・大雪等の悪天候、中震以上の地震の後には、点検者を指名して作業開始前に点検させる必要があります。詳しくは足場の点検チェックリストで扱っています。
提出用と保存用を二重に作らない
安全書類を整えることと、法定の記録を残すことを別作業にすると、同じ点検を2回書くことになります。実務では次の形にすると重複が減ります。
ポイントは①の単位を「現場」ではなく「機械」にすることです。現場単位にすると、現場が終わった時点で3年保存の記録が倉庫に入ってしまいます。
記録に必要な6項目
定期自主検査の記録として条文が求めているのは次の6つです。安全書類の様式にはこれが揃っていないことが多いので、自社の様式で確保してください。
| 記録事項 | 抜けやすさ |
|---|---|
| 検査年月日 | 低い |
| 検査方法 | 高い(目視・作動確認・測定など) |
| 検査箇所 | 低い |
| 検査の結果 | 低い |
| 検査を実施した者の氏名 | 中(会社名だけになりがち) |
| 補修等の措置を講じたときは、その内容 | 最も高い(結果が「否」なのに空欄) |
版の違いに振り回されないために
安全書類は元請ごとに版が違い、名称も項目も揃っていません。全国建設業協会の全建統一様式が広く使われていますが、それでも改訂があり、独自様式を使う元請もあります。
1. 様式を集めるより、中身を持っておく
どの様式でも聞かれることは機械の特定・資格者・検査の実施状況・異常への対応にほぼ集約されます。この4つを自社の記録として持っておけば、様式が変わっても転記で対応できます。
2. 提出前に元請の指定を確認する
版の違いによる差し戻しは時間の無駄です。搬入予定が決まった時点で、どの様式のどの版かを確認してください。
3. 法定の記録は様式に依存させない
元請の様式に合わせて記録を作ると、元請が変わるたびに記録の形が変わります。自社の記録は自社の様式で持ち、提出物はそこから転記するのが結局いちばん早くなります。
※ 全建統一様式の著作権は(公社)全国建設業協会に帰属します。当サイトでは様式そのものの配布は行っていません。
関連:持込機械等使用届の書き方、持込時の点検表とは、電気工具・電気溶接機使用届の点検欄の書き方。条文はe-Gov法令検索(労働安全衛生規則)で確認できます。
よくある質問
- Q. グリーンファイルの中で、法律で決まっているのはどれですか
- 書類の様式そのものを法定しているものはほとんどありません。一方で、届出の裏付けになる定期自主検査や特別教育の実施と記録保存は労働安全衛生規則で義務づけられています。「様式は元請の運用、中身の義務は法令」と分けて考えると整理しやすくなります。
- Q. 安全書類を出せば定期自主検査の記録は不要ですか
- 不要にはなりません。安全書類は元請に提出して元請の工事書類になりますが、定期自主検査の記録は事業者が自社で保存する義務があります。車両系建設機械・高所作業車・フォークリフト・不整地運搬車はいずれも3年間です。
- Q. 足場の点検記録も3年保存ですか
- 違います。足場の点検記録は「足場を使用する作業を行う仕事が終了するまでの間」の保存とされています(安衛則655条2項ほか)。年数ではなく工事に紐づくため、他の3年保存の記録と同じ扱いにすると管理が合わなくなります。
- Q. 足場の点検は元請と下請のどちらがやりますか
- 両方に義務があります。事業者としての点検義務(安衛則567条)に加えて、注文者にも同じ内容の点検義務があります(安衛則655条)。組立て・一部解体・変更の後や、悪天候・中震以上の地震の後に、点検者を指名して作業開始前に点検させる必要があります。
- Q. 記録に必要な項目は何ですか
- 検査年月日、検査方法、検査箇所、検査の結果、検査を実施した者の氏名、補修等の措置を講じたときはその内容の6つです。安全書類の様式にはこの6項目が揃っていないことが多いため、自社の記録様式で確保してください。
- Q. 元請ごとに様式が違って困っています
- 様式を集めるより、聞かれる中身を自社の記録として持っておくほうが早く済みます。どの様式でも問われるのは機械の特定・資格者・検査の実施状況・異常への対応にほぼ集約されるので、そこから転記する形にしてください。
- Q. 書類は現場ごとにまとめるべきですか
- 提出物は現場ごとで構いませんが、法定の記録は機械の管理番号単位でまとめてください。現場単位にすると、現場が終わった時点で3年保存が必要な記録が倉庫に入り、所在が分からなくなります。
- Q. 特別教育の記録はどれくらい保存しますか
- 3年間です(安衛則38条)。安全衛生教育実施報告として元請に提出することもありますが、提出とは別に自社での保存義務があります。
- Q. 局所排気装置の点検も安全書類に関係しますか
- 有機溶剤や特定化学物質を使う工事では、使用届に関連して確認されることがあります。局所排気装置の定期自主検査は1年以内ごとに1回、記録は3年保存です。
- Q. 全建統一様式はどこで入手できますか
- 全国建設業協会および各都道府県の建設業協会が提供しています。様式の著作権は全国建設業協会に帰属するため、当サイトでは配布していません。元請から指定の版が渡されることも多いので、まず確認してください。
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本記事は一般的な情報の整理であり、法令への適合を保証するものではありません。個別の義務内容は所管行政庁または専門家にご確認ください。記事の内容は2026-09-22時点の情報です。