特定自主検査の対象機械かどうかを判定する|条文を4回たどる
「うちの機械は特定自主検査の対象なのか」。この判定は、条文を4回たどらないと出てきません。法律に機械の名前が書いていないからです。法45条2項は「政令で定めるもの」としか言わず、政令は別の条を参照し、その先に別表があります。
機種名で検索しても、出てくるのはメーカーや協会の一般論で、「うちのこの機械」に当てはめる手順が書かれていないことが多いのはこのためです。判定を間違えると、必要な検査を受けていない状態か、不要な検査に費用を払っている状態のどちらかになります。
この記事では、特定自主検査の対象機械かどうかを判定する手順を、条文をたどる順にそのまま並べます。間違えやすい対象外のパターンと、運転資格との違いもあわせて整理します。
この記事の内容(8項目)
結論|特定自主検査の対象機械は5つ
先に答えを置きます。特定自主検査の対象機械は、労働安全衛生法施行令15条2項によって次の5つです。
| 機械 | 限定の条件 | 周期 |
|---|---|---|
| フォークリフト | なし(最大荷重による除外はない) | 1年を超えない期間ごと |
| 令別表第七の建設機械 | 動力を用い、かつ、不特定の場所に自走することができるもの | 1年以内ごと |
| 不整地運搬車 | なし | 2年を超えない期間ごと |
| 高所作業車 | 作業床の高さが2メートル以上のもの | 1年以内ごと |
| 動力プレス機械 | 動力により駆動されるもの(シャーは含まない) | 1年以内ごと |
限定の条件が付いているのは3つです。建設機械の「自走できること」、高所作業車の「2メートル以上」、プレスの「シャーを含まないこと」。判定でつまずくのは、ほぼこの3か所です。
判定の手順|条文を上から4回たどる
結論だけ覚えると、境界にある機械で迷います。条文のたどり方を1度通しておくと、次からは自分で判定できます。
② 令15条2項の本文
法第四十五条第二項の政令で定める機械等は、第十三条第三項第八号、第九号、第三十三号及び第三十四号に掲げる機械等並びに前項第二号に掲げる機械等とする。
③ 参照先を開く
| 参照先 | 本文 |
|---|---|
| 令13条3項8号 | フォークリフト |
| 令13条3項9号 | 別表第七に掲げる建設機械で、動力を用い、かつ、不特定の場所に自走することができるもの |
| 令13条3項33号 | 不整地運搬車 |
| 令13条3項34号 | 作業床の高さが二メートル以上の高所作業車 |
| 令15条1項2号 | 動力により駆動されるプレス機械 |
ここで大事なのは、15条2項が引いているのは1項の「二号」だけだということです。1項三号のシャーは引かれていません。この1文字の違いで、シャーは特定自主検査の対象から外れます。
令別表第七の6区分|自社の建機がどこに入るか
建設機械の場合は、別表第七まで行きます。6つの区分に、機械が名前で挙げられています。
| 号 | 区分 | 挙げられている機械 |
|---|---|---|
| 一 | 整地・運搬・積込み用機械 | ブル・ドーザー/モーター・グレーダー/トラクター・シヨベル/ずり積機/スクレーパー/スクレープ・ドーザー/これらに類するもの |
| 二 | 掘削用機械 | パワー・シヨベル/ドラグ・シヨベル/ドラグライン/クラムシエル/バケツト掘削機/トレンチヤー/これらに類するもの |
| 三 | 基礎工事用機械 | くい打機/くい抜機/アース・ドリル/リバース・サーキユレーシヨン・ドリル/せん孔機(チユービングマシンを有するものに限る)/アース・オーガー/ペーパー・ドレーン・マシン/これらに類するもの |
| 四 | 締固め用機械 | ローラー/これに類するもの |
| 五 | コンクリート打設用機械 | コンクリートポンプ車/これに類するもの |
| 六 | 解体用機械 | ブレーカ/これに類するもの |
現場での呼び名と条文の名前が違うので、読み替えが要ります。ユンボ・バックホウは「ドラグ・シヨベル」(二号)、ホイールローダーは「トラクター・シヨベル」(一号)、圧砕機やつかみ機は解体用機械(六号)に省令で指定されています。
この区分は、事業内検査者の資格が分かれる単位でもあります。一号・二号・六号は1つの枠にまとまっていますが、三号・四号・五号はそれぞれ別枠です(安衛則169条の2第2項〜第5項)。自社の保有機種がどこに散らばっているかで、自社実施が割に合うかが変わります。
「動力を用い、かつ、不特定の場所に自走することができる」の意味
令13条3項9号には、別表第七の機械に対して条件が付いています。この条件を満たさない建設機械は、特定自主検査の対象になりません。
| 条件 | 意味 | 外れる例 |
|---|---|---|
| 動力を用い | 人力ではなく原動機で動く | 手押しの機器 |
| 不特定の場所に | 決まった軌道や範囲ではなく、いろいろな場所へ | 軌条を走るもの |
| 自走することができる | 機械自身が走行できる | クレーンに吊って移動させるタイプの基礎工事用機械、据置式のもの |
実務でいちばん効くのは「自走できるか」です。基礎工事用機械には自走できないものがあり、その場合は別表第七に名前が載っていても令13条3項9号に当たりません。ただし、判断に迷う形のものは所轄の労働基準監督署に確認してください。機械の構造で決まるため、カタログの区分だけでは決められないことがあります。
機種ごとの扱いは基礎工事用機械の点検、くい打機・くい抜機の点検で個別に見ています。
間違えやすい「対象外」|よくある6つ
対象外の判定は、対象の判定より間違えやすいところです。よく出てくるものを並べます。
| 機械 | 特定自主検査 | 理由と、代わりに必要なもの |
|---|---|---|
| シャー | 対象外 | 令15条2項は1項2号(プレス機械)のみを引く。年次の定期自主検査(安衛則135条・5項目)と記録3年保存は必要 |
| ショベルローダー・フォークローダー | 対象外 | 令13条3項30号・31号で、15条2項に引かれていない。定期自主検査(安衛則151条の31以下)は必要 |
| 作業床2メートル未満の高所作業車 | 対象外 | 令13条3項34号が「2メートル以上」と限定。定期自主検査の対象にもならない |
| 移動式クレーン・天井クレーン | 対象外 | クレーン等安全規則の体系。年次・月例の定期自主検査と、検査証・性能検査で管理する |
| ストラドルキャリヤー | 対象外 | 令13条3項32号で、15条2項に引かれていない |
| 構内運搬車・貨物自動車 | 対象外 | 定期自主検査の条文自体がない。作業開始前点検(構内運搬車は安衛則151条の63、貨物自動車は151条の75)で管理する |
「対象外=何もしなくてよい」ではありません。上の表のとおり、多くは定期自主検査や作業開始前点検が別に必要です。特定自主検査でないのは「資格者でなくてよい」という意味にとどまります。
クレーン系との切り分けはラフテレーンクレーンの点検で扱っています。名前が似ていて系統が違う機械の代表例です。
運転資格と検査義務は別の条文|3トン未満でも対象
判定で混ざりやすいのが、運転の資格との関係です。この2つはまったく別の条文で、境目も違います。
| 運転の資格 | 特定自主検査 | |
|---|---|---|
| 根拠 | 令20条(就業制限)・安衛則36条(特別教育) | 法45条2項・令15条2項 |
| 建設機械の境目 | 機体重量3トン(以上は技能講習、未満は特別教育) | 重量による境目はない |
| フォークリフトの境目 | 最大荷重1トン | 荷重による境目はない |
つまり機体重量3トン未満のミニショベルも、最大荷重1トン未満のフォークリフトも、特定自主検査は必要です。「特別教育で動かせる小さい機械だから軽い扱いでよい」という思い込みが、いちばん多い抜けです。機種別にはミニショベルの点検表、歩行型・小型建機の点検で扱っています。
ローラーはこの関係がさらにねじれていて、運転は機体重量にかかわらず特別教育(安衛則36条10号)ですが、特定自主検査は他の建機と同じです。詳しくはローラーの点検表にまとめています。
判定した結果は、台帳に残す
判定は1回で終わる作業ではありません。機械を買えばまた必要になりますし、「前に調べたはずだが結論を覚えていない」が繰り返されます。判定した結果は台帳の列にしておくのが確実です。
| 台帳に持たせる列 | 入れるもの |
|---|---|
| 機械の種類 | 車両系建設機械/フォークリフト/高所作業車/不整地運搬車/動力プレス・シャー |
| 検査の区分 | 特定自主検査(年次)/特定自主検査(2年)/定期自主検査(月例) |
| 周期(月数) | 12/24/1 |
| 前回の検査年月日 | 標章の年月または記録から |
この4つが埋まれば、次回の期限は計算できます。特定自主検査 記録・検査標章 管理台帳は、機械の種類と検査の区分をドロップダウンで選ぶ形にしてあり、検査年月日を入れると次回期限日・残日数・記録の保存期限(3年後)が自動で出ます。
「対象外」と判定した機械も、その旨を1行残しておくと次の担当者が調べ直さずに済みます。引き継ぎで抜けが起きるのは、判定の結論が誰の頭の中にもない状態のときです。詳しくは点検の担当が変わるときに引き継ぐべきことで扱っています。
よくある質問
- Q. 特定自主検査の対象機械を教えてください
- フォークリフト、令別表第七に掲げる建設機械(動力を用い、不特定の場所に自走できるもの)、不整地運搬車、作業床の高さが2メートル以上の高所作業車、動力により駆動されるプレス機械の5つです(労働安全衛生法施行令15条2項)。
- Q. 機体重量3トン未満のミニショベルも対象ですか
- 対象です。運転の資格は機体重量3トンを境に技能講習と特別教育に分かれますが、特定自主検査に重量による境目はありません。
- Q. 最大荷重1トン未満のフォークリフトも対象ですか
- 対象です。運転の資格は最大荷重1トンで分かれますが、特定自主検査に荷重による除外はありません。
- Q. 作業床の高さが2メートル未満の高所作業車はどうなりますか
- 特定自主検査の対象外です。施行令13条3項34号が「作業床の高さが二メートル以上」と限定しているためで、定期自主検査の対象にもなりません。
- Q. シャーは特定自主検査の対象ですか
- 対象外です。施行令15条2項が引いているのは1項2号(プレス機械)だけで、シャーは1項3号です。年に1回の定期自主検査(安衛則135条・5項目)と記録の3年保存は必要です。
- Q. ショベルローダーはフォークリフトと同じ扱いですか
- 違います。ショベルローダー・フォークローダーは施行令13条3項30号・31号で、15条2項に引かれていないため特定自主検査の対象外です。定期自主検査は安衛則151条の31以下で別に定められています。
- Q. 移動式クレーンは特定自主検査の対象ですか
- 対象外です。クレーン等安全規則の体系にあり、年次・月例の定期自主検査と、移動式クレーン検査証・性能検査で管理します。検査標章の制度もありません。
- Q. 自走できない基礎工事用機械はどうなりますか
- 施行令13条3項9号が「動力を用い、かつ、不特定の場所に自走することができるもの」と限定しているため、これに当たらなければ特定自主検査の対象外です。機械の構造で決まるので、判断に迷う場合は所轄の労働基準監督署にご確認ください。
- Q. ユンボやバックホウは別表第七のどこに入りますか
- 第二号(掘削用機械)の「ドラグ・シヨベル」にあたります。ホイールローダーは第一号(整地・運搬・積込み用機械)の「トラクター・シヨベル」です。現場の呼び名と条文の名前が違うので、読み替えが必要です。
- Q. 対象外だと分かったら、何もしなくてよいですか
- そうとは限りません。特定自主検査でないだけで、定期自主検査や作業開始前点検が別に必要な機械がほとんどです。対象外の意味は「資格者でなくても実施できる」にとどまります。
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